2023.1.3 定期振り返りの会 ~2022年10月-12月編~
鴫野エイカーです。写真はバックアップ用のHDDです。
作った動画やプロジェクトファイルは全てHDDにバックアップしているのですが、4TBあったHDDが先日いっぱいになりました。
活動初期の2017年ごろから使い続けているのでほぼ5~6年の間現役でした。本当にお疲れ様。
このHDDは鴫野の遺産となり冷暗所で保管されることでしょう。
ということで、書いている時点で既に年を越していますが四半期ごとの制作物振り返りです。
※内容は鴫野エイカー個人の見解であり、特定の人物や団体の見方を代弁するものではないことをご了承ください。
※この記事は何かあり次第予告なく編集が入ったり記事そのものが消えたりします。
【LMNS MV】
「ルミナス」と読みます。
hanaさんとは「六月の君は。」カバー以来のご縁です。ADVゲーム界隈の方ということで、ADVゲーOPが大好きな私は普段よりもさらに張り切って編集しました。張り切った結果冒頭だけで8カット分もレイアウトを組んでしまいました。
こちらの楽曲はhanaさんが2022年秋のM3で頒布されたEPの表題曲でして、映像中のロゴはEPのジャケットにも描かれております。ですので、ジャケットの特徴である「特色のピンク」「直角二等辺三角形」を重要なモチーフとして取り入れたうえで、強い光の表現を用いて「きらきら」「まばゆい煌き、輝き」を表現しました。
ビジュアル的なイメージは『はにデビ! Honey&Devil』のOP映像がhanaさんと私の間にある共通リファレンスだったりします。強めに前に進むような歌詞であることを意識し、きらびやかさ、ラグジュアリーさの中に少しだけ攻撃性がのぞくようなビジュアルを目指しました。
ちなみに、ここから7年使っていたParticularを卒業しStardustに乗り換えています。Particularでは重くてできなかった複数エミッターを使用する表現が楽にできるほかビックリするくらいバグが少なく、恩恵を感じています。
【Vのガワの裏ガワ1 作品紹介PV】
各所から映像をお褒めいただきすごく嬉しかった記憶がある映像です。それにしても神絵師の声ってなんで皆良いんや。
画面に表示する文言は私ではない方が作っているのですが、頂いた文言をどう区切って表示すれば読みやすく、かつインパクトとして残るかに対して頭を回しました。限られた尺の中で、どう構成すれば「ママになってほしい」というパワーワードがより印象に残りやすいかを考えています。
「VTuber」というワードを出すタイミングは意図的に後ろの方にしており、「ママになってほしいと水着姿で迫られ――」という文言の真意をいったん隠すことによって言葉の意味深さを演出し、インパクトを与えられるようにしています。
ちなみに、BGMは色々なVTuberの方が使用されている、しゃろうさん作のBGMです。「よくVTuberの配信で耳にするBGMにしよう」という案は担当編集氏のアイデア。まさかいつも何気なく聴いている音源で音ハメすることになるとは。
【ちゃんげろソニック2022 -Online- 演出映像】
3年目。いつもお世話になっております。
アーカイブの視聴期限が過ぎているので静止画しか載せられないのが歯痒いですが、担当楽曲は以下の通り。
『初音ミクの消失-DEAD END- / 弟の姉』
『Fire◎Flower / 湯毛、のど飴、らむだーじゃん、弟の姉、that、__(アンダーバー)、nero』
『うどん/Gero』
【初音ミクの消失-DEAD END- / 弟の姉】
画面をぶっ壊したかった。
こちらの映像は1フレーム~数フレームしか映らない演出をたくさん入れたりグリッチノイズをマシマシにしたりするなど、「本来であればライブ演出の映像でやってはいけないこと」をたくさんやっています。
温度感的にある程度自由にやってよかったということもありますが…これを作った時の私は恐らく吹っ切れていたんでしょうね。「収録ライブだしどうせ後からカット編集が入って映像全編が見えなくなるなら、いっそやりたい放題やっていいんじゃね?」と考えたのです。無意識のうちにフラストレーションが溜まっていたであろう私によるマジの自己満足です。
具体例を挙げると上の画像。「歌詞をバイナリ変換して出てきた0と1の数字を数フレームだけ差し込む」という、言われなければ絶対に分からないことをやっております。
二次創作のキネティック・タイポグラフィをベースに、「消失」らしさが存分に出るよう構成しました。
グリッチノイズマシマシにしたラスサビ周辺、編集担当の方がバチバチに編集してくださりめちゃくちゃカッコよくなったのが印象的でした。
【Fire◎Flower / 湯毛、のど飴、らむだーじゃん、弟の姉、that、__(アンダーバー)、nero】
花火をドカドカ打ち上げたかった。
「消失」とはうって変わってライブ演出で使いやすい映像を作りました。久々にできました、温かみのあるグロー表現。
あり得ない量の花火がドカドカ打ち上がっているくらいが好みなので花火の数を多くすることを意識しました。そのため「Stardustで作った花火をスプライト化してStardustで打ち上げる」という荒業をやりました。
花火をドカドカ打ち上げた理由はもう一つあって、収録時カメラのフォーカスが演者に当たって背景映像がボケたときもある程度画面の華やかさを保ちつつ雰囲気を演出できるという点があります。ライティングやカメラワークなど、ステージ全体を見た際の映像の見え方を意識して作っています。
ちなみに『うどん / Gero』も作りはしたのですが、2年前に制作したものを調整しただけなのであまり言うことはありません。今回もGeroさんがはっちゃけてくれて良かった。
【Baby Sweet Berry Love(朝倉杏子様Cover)】
RIOT MUSICさんから新規デビューされた朝倉杏子さんのカバーです。「Fantastic Future」の次にリリースということで、やや古めのオタクである鴫野は「変猫やんけ!!!」とデカい声を出しました。10年近く前のアニメってマジですか。
普段MVを制作するときはキャラクター性以上に楽曲の特徴や歌詞、ノリ方に重きを置いて映像を構成しがちなのですが、今回は「いかに杏子さんの存在を魅力的に見せるか」に重点を置きました。
というのは、楽曲の情報を頂いた時に「杏子さんがステージ上でこの曲を披露している姿、見てみたいなぁ」→「披露している時魅力的に映すべきは曲じゃなくて杏子さんだなぁ」と思ったからです。なので、背景をLEDドット風にしたりスポットライトを多く配置したりしてステージ上っぽくするサビ部分の演出は絶対必須でした。
気づかれた方がいるかは分かりませんが、サビ以外の部分は1番と2番で構成やカメラのイージングを微妙に変えております。同じカットの焼き増しはちょっとつまらないと思ったことに加え、「1番と同じカットが続く」と視聴者に思わせてちょっとビックリさせたかったからです。
【まななつ3周年記念3Dライブ 演出映像】
3周年おめでとうございます。
担当楽曲は以下の通り。
『ドレミファロンド / まななつ』
『Habit / ましろ爻』
『youthful beautiful / 奈羅花』
『ワンスアポンアドリーム / 来栖夏芽』
『愛言葉Ⅲ / まななつ』
『ドレミファロンド / まななつ』
制作した5本のなかで一番シンプルだと思います。最後に全員の立ち姿を邪魔することなくマスコッツ5体を出せたときはガッツポーズを決めました。ちなみに、私的にはここで使わなきゃいつ使うんだというくらいフォントはユールカ一択でした。
『Habit / ましろ爻』
5本の中では一番尖りました。選曲からして尖ってもいい気がしたので…
この選曲はけっこう難しいんじゃないかという気持ちが強かったです。攻めた歌詞が魅力的なのではっきり表示したいと思いつつ、言葉の数が多いので歌詞ごとの表示時間と画面の情報量のバランスがとりにくくどうしても歌詞の認識しやすさが下がる。情報量とテンポ感の塩梅に気を遣いました。
『youthful beautiful / 奈羅花』
ベースカラーを奈羅花さんのイメージカラーである赤と迷いましたが、曲のイメージを取り入れ青にしてみました。ステージに映し出された爽やかな背景映像とマッチしてよかった。今思うと、もうちょっとパーティクルを半透明にして抜け感を出してよかったかも。
『ワンスアポンアドリーム / 来栖夏芽』
サビのパーティクル、蛇足にならないだろうかと思っていたのですが杞憂でした。テキストの動きはやってることがちょっと細かく、「立てた人差し指の上でくるっと回る動き」を作りたかったのでテキストアニメーターで3D回転させた上からY軸(横向き)の回転を追加しています。
『愛言葉Ⅲ / まななつ』
何よりも話したいのがラスサビの「メーデー僕と~」の部分。言わずもがな3人それぞれをイメージしたモーションにしています。「まななつの3人がこの歌詞割りで歌う意味」を考えた際、3人のイメージカラーを取り入れつつあえてバラバラな印象にすることはほぼ確定していました。オタク的解釈を挟むと「イメージはバラバラだけど歌詞の表示場所は同じ」というのがミソだったりします。
全体を通して心掛けたことは4つあります。
1.最初に曲のタイトルを必ず表示する
→初めて曲を聴いた人が原曲を調べやすいように表示することにしました。YouTube上での配信ライブはたいてい概要欄に曲名が書いてありますが、画面にも出した方が親切かなと。
2.どんな場面に表示されても歌詞が読めるようにする
→たとえば「光って真っ白くなった画面の上に真っ白い文字を載せても見えない」と言ったことが無いよう、表示物の視認性には気を配りました。夏芽さんが振り返り配信で「あまり聴き込んでいない曲でも歌詞があるとわかりやすい」と仰っていたように、曲の理解を手助けするはずなのに見えなかったら意味ないやん!と。私がまさに耳で聴いただけの歌詞をよく誤認するタイプなので、この点はより気を配りました。
3.歌詞を必要以上に動かしすぎない
→いくらテキストモーションがカッコよかろうが、一番見せたいのは演者の姿です。演者を映したいのにテキストバキバキに動かしてそっちに視線誘導してどうするんや、という思想があるので動きをある程度抑えました。
4.極力オブジェクトを画面の中央に置かない
→単純に、演者の顔に被ったりするとカッコ悪いためです。他の方のライブ映像も拝見し、どのくらいの塩梅が体に被らずいい感じに見えるか考えて調整しました。
本当は今年の総括を書きたかったのですが、既に年が明けてしまったので2023年の目標を。
まず、健康。
鴫野は現在27歳ですが、ここ最近体調に対する余裕のなさを自覚することが増えてきまして。無理をしたら無理をした分のツケが回ってくる年になってきたのは明白なので、これまでやってきた体に鞭打つ制作を減らしながら、長生きできるような生活を心がけます。
次に、自主制作作品を出すこと。
2019年のFRENZ以降自主制作作品を世に出していないので、そろそろ何かやりたい気持ちがあります。
さらに、文章力の向上。
文章を書くことそのものは全く苦ではなくむしろモチベーションを持って取り組めるのですが、如何せん鴫野は考えをアウトプットするのがド下手なタイプなのでまどろっこしい文章になりがちです。早いこと脱却したい。
最後に、演出力の向上。
これが一番重要です。
『学戦都市アスタリスク』のミニドラマ、『人外教室』のミニドラマを作ったあたりからでしょうか、画面に映った映像の先にいる視聴者の存在、もっと言うと「視聴者をどうしたいか」を意識する機会が増えまして。「この音を拾えば視聴者を視覚的に乗せられる」「こう動かすとキャラの魅力が伝わる」「この表現は視聴者からはこう見える」などといったことを考えて制作することが多くなり、それが作ることの楽しさになりつつあって。それってすなわち、コンテンツの演出と言い換えられるなと。
「たんに動くだけの映像を作っているのではなく、映像を通してコンテンツの演出をしている」という意識を忘れてはならない。そう考えるようになってから、もっと中身のある演出ができるようになりたいと思いました。もし映像が作れなくなったとしても、何かを演出することはやめたくないなあ。
という感じで、前年よりもはるかに濃い2022年でした。
2023年も頑張ります。よろしくお願いいたします。
©️Mayu Kurokagi 2022/株式会社KADOKAWA刊