体言止めをプロっぽいと思って多用すると、不親切になるんだな
他のライターさんの記事を校閲をしていると、やたらと体言止めを使ってくるライターさんがいて辟易します。
体言止めとは、文章を名詞で終わらせる技法ですね。例えば以下の例文を作ってみました。
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米国の消費者物価指数が前年同月比で8.6%上昇。
約40年ぶりのインフレは収束する気配を見せていない。
同月比では1.0%の伸び率で加速。
賃金の上昇はインフレについていけずに国民の生活を直撃。
米連邦準備制度理事会は金融引き締め政策に舵を取るのか。
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報道記事では多そうですよね。
しかし、ある記者が言っていましたが、報道記事の場合は新聞紙面の面積の制限があるため、どうしても体言止めが増えるのだそうです。決して、かっこいいから使っているわけではありません。
たとえば上の例文は、確かに体言止めを多用することでスピード感が高まり、もしかするとプロっぽさも醸し出しているかもしれません。
しかし、この手の技法をオウンドメディアなどで使ってしまうと稚拙で不親切、ぶっきらぼうな印象を与えてしまうリスクがあります。
なぜなら、体言止めは、本来書き手がきちんと最後まで書かなければならない文末を、略してしまったが故に読者に判断を委ねてしまっている技法だからです。
たとえば上の例文の文末を読者が補おうとすると……。
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米国の消費者物価指数が前年同月比で8.6%上昇(した? している? しそうだ?)。
約40年ぶりのインフレは収束する気配を見せていない。
同月比では1.0%の伸び率で加速(した? している? しそうだ?)。
賃金の上昇はインフレについていけずに国民の生活を直撃(した? している? しそうだ?)。
米連邦準備制度理事会は金融引き締め政策に舵を取るのか。
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いかがでしょう。
実は文末を読者に委ねてしまう体言止めは、書き手が格好付けて情報を正確に伝えることを放棄した投げやりな文章だとも言えるのです。
ですから、私が校閲する場合は、体言止めには必ず赤字を入れています。
文末は、ライターが決めなさい、ということですね。