風邪はなぜ「引く」のか?
新型コロナウイルスの感染流行は人々の生活様式をガラリと変えてしまいました。
その根本は、「コロナに罹ってたまるか」という気持ちがあるわけです。ですから皆さん、懸命に3密を避けることを心掛けている訳です。
ちなみに、「3密を避けましょう」というかけ声を聞いたときに、私は真っ先に真言宗や天台宗の密教における「三密」を連想してしまいました。
密教における三密とは身密(しんみつ)・口密(くみつ)・意密(いみつ)のことですね。
「ね」と言われても困るかもしれませんが、宗教好き(仏教もキリスト教もユダヤ教も)な私にとっては、3密と言えば密教の「三密」だったわけです。
閑話休題。
「コロナに罹る」は「インフルエンザに罹る」と同じ言い方ですね。まとめて「病気に罹る」とも言います。
しかし、「あれ?」と思うのは「風邪に罹る」とは言いにくい。やはり「風邪を引く」が据わりが良いですね。
しかし風邪以外で「引く」と言ったかな?
ちょっと思いつきません。
なぜ、風邪は「引く」なのでしょうか。
「引く」は手前に引き寄せるだけでなく、体内に「引き込む」意味もあるそうです。
つまり、元々は「悪い風」を体内に引き込むと病になることから「風を引く=風邪を引く」になったようです。
ですから、元々は悪い「風」だったのが、悪い風は「邪気」ということで、どうやら鎌倉時代くらいから「風邪」という字をつかうようになったとか。
ただしこの当時は読み方が「ふうじゃ」で、「かぜ」と読むようになったのは明治時代からだそうです。
ではどうして「風」を身体に「引く」と風邪になると考えたのでしょうか。
これは古代中国で、病の原因は六因(「ろくいん」とも「りくいん」とも)と呼ぶ6種類の邪気だと考えていたことに由来するみたいですね。
六因は「風・寒・暑・湿・燥・火」という6種類の邪気。
この内の「風」を引き込んだときに風邪を引くわけです。それで平安時代の頃に、「風邪を引く」という使い方が始まったらしいのです。
まぁ、平安時代の事ですから、当時は貴族用語ですね、おそらく。いつからか庶民にも伝わったのでしょう。
ということで、「風」は邪気の一つだったので、風邪以外にも中風や風疹、痛風、破傷風なども引き起こすと考えられました。
面白いのは、「引く」は必ずしも自分の方に寄せるどうさだけではなく、「退く」意味もあります。
ですから、「熱が引く」では熱が体外に出ていくイメージで使われていますね。
ということで、風邪には気をつけましょう。