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見えない壁

昨年から外国人の起業支援をしている。外国人の経営管理ビザを専門とする行政書士と連携し、私は外国人の会社設立登記を担当している。ネパール、パキスタン、スリランカなどの南アジアの国の人が多い。

ビジネスの内容は様々だが、日本の中古品を本国や中東に輸出するビジネスが多い。特に日本の中古車は人気で良く売れるという。商品の仕入れは日本の運送会社や建設会社などと交渉して中古車や中古機材を買い取っているとのこと。必要があれば解体までする。商品はネットオークションで販売して輸出している。
人気の理由はやはり「品質」。そして中国の製品は雑だから人気がないとのこと。丁寧さや細かさは日本らしさと再認識した。

品質以外に日本の良いところを聞いたところ「システム」と言われた。製品のシステムの話ではなく、日本の社会システムのこと。ルール(法律・規則)がしっかりしているからフェアだし安全だと言われた。

例えばドバイではお金(賄賂)で交渉して問題を解決するそうだ。日本のような細かいルールはない。お金があれば解決できるが金額は交渉力にかかってくるし、そもそもお金がなければ解決できない。金持ちだけが優先され、金持ちが自分の横を通り過ぎていく、そんなアンフェアな世界にいる人たちにとって日本は魅力的だろう。

とはいえ日本でも課題はある。まずビザが取れるか否か。都道府県によって違いがあるそうで、そもそも申請を(実質的に)受け付けてくれないところもあるそうだ。逆に取りやすいところもあり、地域によって違う。

もう一つの課題は住む場所と働く場所。住居や事務所が借りれない。外国人というだけで貸してもらえないことが多いそうだ。貸す側としては短い期間のビザ(4カ月など)だと貸しづらいという事情もある。仕方ないので日本にいる支援者が地方の古い物件を購入して貸しているケースもある。
 
先日、地方の某県でパキスタン人の会社設立登記をする際に現地の公証役場に定款認証の依頼をした。そうすると、公証人から日本人の設立では絶対に求められないような書類(事業計画書など)を要求された。そのパキスタン人が本当にビジネスをするのか疑っているようだった。

2018年から会社設立の際に公証役場で反社チェックをするようになった。マネーロンダリングや詐欺目的の会社設立を防ぐ目的で行われている。士業や金融機関も本人確認を厳しくするように法律が変わった。そんな世の中の流れもあって疑う気持ちもわかるが、それは偏見ではないかと思うくらいの要求に驚いた。

日本は住んでしまえばルールに守られ安心な国だが、そこに至るまでに見えない壁がある。これまではそれでもよかったかもしれないが、人口減少の最先端を走る国としてはそろそろ壁を壊していく必要があるだろう。

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