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デジタルの現物出資

政府が閣議決定した2024年度の税制改正大綱で仮想通貨(暗号資産)の課税体系が見直された。
これまで企業が仮想通貨を所有していた場合、期末に時価評価して課税されていた。
企業が仮想通貨を持っていれば、売却しなくても持っているだけで期末に時価評価されて益が出ていれば税金が取られていた。それが、見直されて短期売買目的でなければ時価評価課税はしないこととなった。

2023年度の税制改正でブロックチェーン企業自身が発行した暗号資産の保有に対する時価評価課税はなくなったが、2024年度は第三者が発行した仮想通貨も時価評価課税から外れた。
これまでは時価評価課税があったことから、日本人のブロックチェーン技術者たちはシンガポールやドバイなどの海外で起業していた。今回の改正で日本でも「Web3」と言われるブロックチェーン技術を活用した事業が活性化することが期待されている。

世界に目を向けると、2024年1月10日、アメリカの証券市場でビットコインの現物に連動する上場投資信託(ETF)が認められた。ビットコインを投資対象とする投資信託で、アメリカでは証券会社を通じて株式、金や不動産に投資する投資信託と同様に売買できるようになった。

これの画期的なところは「デジタル」という目に見えないものが現物商品として扱われるようになったことだろう。
ビットコインは既に世界10位の時価総額であるものの、あまり実用化されていないことなどからその価値に懐疑的な意見も多かった。それがアメリカという世界1位の経済大国で商品として認められたことは、世の中の価値観が変わった瞬間として大きな意味があると思う。これによってビットコインの価値はさらに大きくなっていくことが予想される。

さて、個人の仮想通貨税制でよく言われるのは、利益が出ると雑所得として扱われ、最大で55%の課税がされるということだ。
さらに仮想通貨を相続した場合、これも最大税率は55%となる。
億単位の仮想通貨を相続して納税資金のために仮想通貨を売却するような場合、所得税の最高税率55%と相続税の最高税率55%を合計した110%の納税が必要となり、むしろマイナスとなる可能性がある。

これを回避する方法の一つとして「法人への現物出資」がある。

仮想通貨も他の資産と同様に法人(株式会社、合同会社等)に現物出資することができる。
現物出資は、金銭を出資する代わりに現物(不動産、証券、機材など)を出資して株式を取得する方法だ。
前掲のように仮想通貨を継続保有する場合は期末に時価評価課税されることはなくなった。

法人税の実効税率が33%程であること、ビットコインETFが始まったことを考えると、今年は仮想通貨の現物出資を考える人が増えるかもしれない。

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