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私の父親は81歳になった。実家はまだ家業を続けているが、社員がいないこともありそろそろ店を閉めようかと考えているようだ。

私は、両親は出来る限り仕事を続けた方がいいと考えていた。後継者もいないし早く廃業して余生を過ごした方がいいと思っていた時期もあったが、後見人という仕事を通じて仕事が生き甲斐になること、ひいては認知症対策にもなると感じたことから廃業を勧めることはやめた。私は相続も廃業も専門だし、後始末は自分がすればいいと思っていた。

しかし、私も来年50歳になる。40代になった10年前と比べたら気力・体力いずれも低下している。低下した分は、これまでの経験と知恵、あとはテクノロジーを駆使して効率よく生活することで補っているが、今、突然、介護や相続となると正直しんどい。

先日、母親にLINEでメッセージを送ったところ、2日間既読にならなかった。これまでそのようなことはなかったので「まさか…(突然死とか)」と怖くなった。電話をするとそうではなかったのでホッとしたが、これまでなかった不安を感じた。そして、その電話で今後のことについて聞いたところ「そろそろ廃業」というような話が出てきた。うちは子供も小さいし、自分も50歳になるという不安を打ち明けたところ、今年から片付け(相続対策)を始めようという話になった。

相続の際、預金、株式、不動産から借金まで、いずれも調べる方法はある。銀行、証券会社、法務局、信用情報機関に問合せれば調べられる。私は調べる術を知っているが、もし私が両親より先に亡くなったら、実家の片付けは誰がするのだろうということになる。両親の相続となったとき、私の家族は途方に暮れるだろう。

相続という仕事に関わりながら「エンディングノート」というものをこれまで特に推奨してこなかったが、今回、あったほうがいいと思うようになった。これまで調査の依頼をうけた方々の憂鬱な面持ちも今はよくわかる。エンディングノートに遺言としての効力はないものが殆どだが、遺産の内容が一覧でわかるだけでもその後の苦労は全然違う。これまではその「苦労」を仕事として受けていたので精神的な共感が少なかったが、今ようやくその気持ちに近づいてきた。

国立社会保障・人口問題研究所が公表している将来推計によれば、2025年の単身世帯は2015年より8.4%増えて1996万世帯になるとみられている。2015年「7人に1人が1人暮らし」だったのが「6人に1人強が1人暮らし」に変わる。また80歳以上の単身女性は25年までに34%増加して223万人となり、全年齢階層の中で最も多くの単身世帯を抱えることとなることが見込まれている。

苦労する相続人が増えることも見込まれているが、その前にその苦労に寄り添えるようになったのは良かったのかもしれない。

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