いろいろなプロジェクションマッピング
プロジェクションマッピングとは、
映画のような平面的なスクリーンではなく
立体物に映像を張り合わせるように投影する上映の方法です。
映画が、映像空間の中に没入するような鑑賞体験であるのに対して
プロジェクションマッピングは、実空間に映像が干渉するような鑑賞体験となっていて、それぞれの体験の特性は異なっています。
ここ数年は東京駅やディズニーランドのシンデレラ城など
さまざまな建築物に投影する屋外イベントが多くおこなわれ
プロジェクションマッピングのイメージを作っていますが
バリエーションとしては、もう少し色々なものが存在します。
ここではプロジェクションマッピングという技法を
幅広く捉えるために、いくつかの作品を紹介したいと思います。
横浜市金沢動物園でおこなわれた「ひかるどうぶつえん」で
展示された池亜佐美さんの2つの作品です。
単に立体物へ映像を貼り付けているというだけではなく
動物園という場所性や、物語性が、歌詞とアニメーションになり
プロジェクションマッピングされている作品。
お客さんが一緒に踊っている風景や、動物園で過ごした1日も含めて
鑑賞空間全体が美しい世界を作っていると思います。
閉館時にグッバイソングを見ると泣いてしまいそうになります。
プロジェクションマッピングの作品を多く手がける
スカルマッピングが制作した2つの作品。
小さなシェフの登場するレストランの映像はとても有名で
現実の食事に架空の物語を添えるというアイデアも秀逸ですが
映像技術も非常にクオリティが高く舌を巻いてしまいます。
2つ目はベルギーの美術館で展示した作品のようで
展示物をモチーフに空間的なアニメーションを制作しています。
私、重田が2015年に新宿初台のICCで展示した作品で
鑑賞者が本を手に持って映像を投影して見ていきます。
プロジェクターがマッピングするのではなく
鑑賞者が手でマッピングするという逆の事象になっていますが
広く捉えればこれもプロジェクションマッピングの一種
なのかもしれません。
アイスブック - 世界初のプロジェクションマッピングによるポップアップブック。壊れやすい紙の切り絵とビデオ・プロジェクションの絶妙な体験が、あなたをファンタジーの世界の中心へと誘います。アニメーション、ブックアート、パフォーマンスが融合した、臨場感あふれる体験をお届けします。(vimeoより)
ポップアップという見立てで、スクリーンに奥行きを持たせた上で
映像を光と影に見立てて、美しく演出しています。
アイデアが素晴らしいですね。
アイスブックから影繋がりで、重田が2022年に制作展示した作品
ラジオメーターという光で羽が回転するオブジェと、その影を使った作品。
ラジオメーター はプロジェクターの放つ光によって回転していて、
影の形や動きと映像のアニメーションが同期しています。
投影面の造形ではなく、影に対してマッピングしている作品です。
東京ミッドタウンでおこなわれた「テクネ展」で展示された
井上涼さんの作品です。
もの凄い力技ですね。センスで全てをねじ伏せています。強すぎる。
プロジェクションマッピングは、
アイデアや巧みさで勝負している作品が多いのですが
こういう理屈を超えた作品も、もっと見てみたいですね。
最後はMITメディアラボで作られた「MirrorFugue」という作品。
自動演奏ピアノに演奏の記録を投影していて
若い頃の自分、あるいは故人など
時空を超えた存在と擬似的な連弾を体験できる作品です。
制作した石井裕さんが解説していた動画があったので、
こちらを紹介します。