デフフッドを取り入れた授業作りへの道筋
デフフッドの視点で授業を実践という教育目標
「デフフッド」とは、「ろう者になるための自己探求過程」のことです。聾学校における重点目標として、「デフフッドの視点で教育の実践を図る」を盛り込むことは重要な意義があると考える。各教科において、教科書をそのまま使うのではなく、ろう者の視点、たとえば手話特有の語り、見方を取り入れたり、ろう者の立場ならどう考えるかを踏まえようというものです。
数学科にこそ、デフフッドの視点が求められる
特に数学科の場合はデフフッドの視点がとても大切であると考えています。多くの先生は数学はデフフッドとはあまり関係ないと考えがちですが、ろう者の視点で数学をどのように理解するのかという言語プロセスを理解することが重要です。聾学校において、ろう者の視点での指導をしていなかったというミスリードも否定できません。ろう当事者の教師も同じようにミスリードを引き起こしている可能性があります。というのは、彼らの多くは聴者の数学科教師から数学を教わってきているからです。中には、数学教育について研磨をしてきた当事者もいますが、全国でも少ない方でしょう。
聴者の視点からの脱却を
上記のことから、聴者視点からの脱却を図り、「デフフッド」を意識したカリキュラムを教育課程に盛り込みたいと考えたのは自然な成り行きともいえましょう。筆者はかつて情報科の授業や数学科の授業で取り入れており、このことについて、5年前に開催された全国聴覚障害教職員シンポジウム愛知大会で「ろう教員のアドバンテージ」とは何かという分科会で紹介しました。これを皮切りに「デフフッドを取り入れた授業作り」について実践しつつ理論固めに取り組みました。宮城教育大学松崎先生もこのことに興味を持っていただき、いろいろアドバイスをいただきました。この授業作りは多くのろう教員が実践しているものでもあるのですが、学校全体で取り組んだことは多分ないでしょう。学校全体で取り組むべきだと、埼玉県にある大宮ろう学園と坂戸ろう学園両校で3年前に取り組み始め、全日本ろう教育研究大会埼玉大会を全校の共通目標とすることにより、デフフッドを取り入れた授業作りについて実践報告につなげられたように思います。松崎丈先生は、デフフッドについて重要な視点は、ヒドゥンカリキュラムを組むことであるとしています。文部科学省の定めた学習要領に、ヒドゥンカリキュラムを採用することで、デフフッドの視点での教育の実践が可能になると私たちは考えています。これが、聾学校における重点目標なのです。全国でも一つしかない希有な重点目標です。画期的なことだと自負しています。
以下は引用です。