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世界人口の推移と穀物生産

近年、急激な人口の増加とそれに伴う温室効果ガスの排出増は、食糧・エネルギーの供給と気候変動および地球環境に大きな影響を及ぼし、さまざまな問題を引き起こしています。それら問題を解決し持続可能な循環型社会を実現するためには、バイオテクノロジー、特に植物科学の力を欠くことはできません。

<これまでの植物科学の貢献>
産業革命以降、世界人口は増え続けてきました。第二次世界大戦以降、1950年には25億人だった世界人口は、1970年には37億人、2000年には60億人、そして、2025年には80億人に達しようとしています。さらに、2060年には100億人に達すると予測されています。
これまで、人類は人口増加に伴って穀物生産量も飛躍的に増加させることで、食糧危機を乗り越えてきました。

資料:国連「World Population Prospects:The 2006 Revision」、米国農務省「Grain:World Markets and Trade(April 2008)」、「PS&D」を基に農林水産省で作成 https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_zyukyu_kakaku/

特に、穀物生産の飛躍的な増産にも関わらず、耕作面積は1970年代からほとんど増えていないことは注目すべき点です。過去50年間で2倍まで増えた穀物生産量は、森林伐採や開墾などによるものではなく、単位耕作面積あたりの収量を増産することによってもたらされてきました。
単位面積あたりの穀物生産量を倍増させてきたのは、農業の機械化、灌漑や区画化などの土地の改良、栽培方法の最適化、化学肥料や農薬、品種改良、遺伝子組換え等、農業関係者の絶え間ない努力の成果によるものです。
とかく悪者扱いされる化学肥料や農薬、遺伝子組換えですが、それらなしでは現在の穀物生産量を維持できません。

資料:国連「World Population Prospects:The 2006 Revision」、米国農務省「Grain:World Markets and Trade(April 2008)」、「PS&D」を基に農林水産省で作成 https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_zyukyu_kakaku/

<今後の課題>
しかしながら、既存の技術での穀物生産の増産はそろそろ限界に近づいています。今後、耕作面積を増やさずに100億人を養っていくためには、さらなる増産につながる技術が必要です。また、現在の農業は、耕作機、化学肥料、農薬など、その燃料や原材料、生産時に大量の化石燃料に依存しており、化石燃料に依存しない農業も強く求められています。そのためには、新たな品種の創出と革新的な栽培手法の開発が不可欠です。

これまでの作物の品種改良は、自然変異および化学物質や放射線を用いた人工的な変異から人類に都合のいい形質を持つ変異をもつ個体を人為的に選抜して育て交配することによって行われてきました。近年、ゲノム情報をもとにした分子マーカーを活用した選抜によって、また、ゲノム編集や遺伝子組換えによって、品種改良のスピードアップが図られています。しかし、従来の既知の遺伝子の変異や単一(少数)の遺伝子操作では、新しい機能を持たせた作物を創出するには限界があります。今後は、多様な植物種で明らかになったゲノム情報をもとに、複数の遺伝子群を組み合わせて、ある生物種の代謝経路を丸ごと移植する、新しく遺伝子を組み合わせて新奇機能を作り出す等の合成生物学的なアプローチで、全く新しい作物をデザインして創出する革新的な技術を開発する必要があるのではないかと考えています。

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