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【耳読note】『朽ちないサクラ』柚月裕子

(あらすじ)
県警警察本部のマスコミ対応をする広報広聴課の職員である森口泉(もりぐちいづみ)と、米崎新聞社の県警担当の記者である津村千佳(つむらちか)は、同じ地元の友人で、今では親友の仲である。

ある日、女子大生がストーカーの男に殺害される。

女子大生の両親が提出したストーカー行為の被害届を、県警は1週間先延ばしにしていた。それは県警担当職員の慰安旅行が原因であるということが分かり、唯一、米崎新聞社にスクープされた。

泉は、うっかり慰安旅行の件を千桂に漏らしてしまい、口止めをしていたのだが、スクープされたことのネタ漏れは、千桂であると疑念を抱き、こっそり千佳を呼びだして話を聴くが、千桂はそのネタ元は私ではないときっぱり否定する。

千桂は「これは何か裏がある」と言い残して、ひとりで真相を掴みに行動に出る。そして1週間後、千桂は遺体となって発見される。

千桂の死を受け入れられない親友の泉は、同僚の磯川俊一と一緒に、独断で調査を始めるのだが…。

(感想・ネタバレ)
ストーカー事件と
警察の失態のスクープのネタ元と
カルト教団、警察公安が複雑に絡んで
物語はどんどんピースが繋がれていく過程が面白い。

ストーカー事件に関わった人
警察の失態に関わった人、千桂の死…。

全てにおいて、関わった人間が不幸になるのだが
唯一、得をしたものがいる。

「公安警察」

そして、オウム真理教を思い起こさせるような「公安警察」の存在。

公安警察をググってみると・・・

『公安警察(こうあんけいさつ)とは、警察庁と警視庁、各都道府県警察の公安部門の総称で、公共の安全を維持することを目的とする警察組織です。国民の安全と安心を確保するために、テロやゲリラ、違法行為の取締り、北朝鮮による拉致容疑事案の捜査、対日有害活動の取締り、サイバー攻撃の捜査や対策、NBC(核・生物・化学物質)テロへの対応などを強化しています。』

そしてその公安警察の恐ろしさ
国を守るためということならば手段を選ばない。

はじめ、この本の題名「朽ちないサクラ」の意味が
途中までよくわからなかった。

「サクラは公安警察を意味する」ということで納得した。
どんな状況になっても、「公安警察」は守られる。
国を守るためにはきれいごとでは済まされないことはわかるが
それに関わった人間は、何が正義なのかわからなくなる。

「警察」というものは人を殺すことを国家権力で守られた存在で
個人で立ち向かっても勝てるものではない。

主人公の泉は納得のいかない親友の死で心を折られ
その解明に独自で動いた結果
個人の死よりも「国家の安全」を平気で優先する
「公安警察」の存在を知り、さらに打ちのめされる。

でも、その結果
自ら出した答えが
警察職員から「警察官」になろうと
最後に立ち上がる。

泉のやるせない気持ちと
そこから前向きな気持ちへの心の動きが
とても爽やかだった。

泉と事件の真相を一緒に最後までサポートをした
泉の同僚の磯川俊一とはその後どうなったのだろうか。

てっきり、物語りの中で泉と磯川は
最後に結ばれるものと思っていたのは僕だけであろうか…?

続編も楽しみだ。
ん⁈
そもそも、磯川は登場するのか?

また、この小説は「映画」にもなっている。
劇場に観に行こうと思う。


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