さて、地球人はどの方向へと向かって行くのだろう。私は「易きに流れる」のがヒトの常だと思っている。
『そして今では、デジタル人民元が20年には発行されるのではないかと言われるまでになっている。1月25日の旧正月に間に合わせるという話があったくらいだ。現時点でもその詳細は公開されていないが、デジタル人民元は仮想通貨で使われるブロックチェーン(分散型台帳)技術を導入するようだ。通貨の売買で値段が不安定に変動する仮想通貨と違い、デジタル人民元は、人民元に連動させることで価格の安定したデジタル通貨として使えるようにする。簡単に言えば、人民元がそのままの価値で「データ」に交換でき、ネットなどで現金と同じように扱える。今のところ世界にはデジタル通貨を発行している国は存在しないため、デジタル人民元が実現すると、世界初の「国家が発行するデジタル通貨」ということになる。ただ中国ではすでにネット決済などキャッシュレス化がかなり進んでいる。特にアリペイやウィーチャットペイといったモバイル決済が恐ろしく普及しており、19年は利用者数が6億人を超え、利用額は40兆ドルを超えると言われている。都市部では、98%以上がモバイル決済を使っているらしい。これらの決済では、単なる買い物だけでなく、公共料金の支払いからローンまで利用できるようになっており、人々の暮らしになくてはならないものになりつつある。これは中国当局にとってもありがたいことで、モバイル決済の普及により、これまで問題になってきた偽札への対策になるし、政府はデジタルでひもづけられたさまざまな取引情報を吸い上げることで人々のカネの流れも徹底管理できるようにもなる。しかしそれほど普及した決済システムがあるのに、なぜデジタル人民元を発行しようとしているのか。これだけだと、決済手段が1つ増えるだけにすぎないと思えるが、実はそこには中国政府による“壮大な野望”があると見られている。 ずばり、世界における、ドル覇権の崩壊と人民元の台頭である。デジタル人民元は、中国国内で銀行口座を持つ必要があるドメスティックなモバイル決済と違い、基本的には誰でも持つことができるようになる。国境も関係ない。実は今、中国を訪れる外国人旅行者が、都市部を中心に、モバイル決済を使えず買い物ができないという現象が起きているという。銀行口座を作れない国外からの旅行者はモバイル決済も基本的には利用できないからだ。そこで外国人にデジタル人民元を持ってもらうことで、インバウンドの消費も取りこぼさずに済む。この話のように、デジタル人民元を発行する裏には「外国」がある。旅行者のみならず、外国企業との取引や、国家間のやりとりなどにもデジタル人民元を使ってもらいたいのだ。中国政府が推し進めている現代版のシルクロード経済圏構想である「一帯一路」で協力する数多くの国々とも、デジタル人民元でやりとりするよう促すこともできるだろう。中国がインフラ設備で投資をしている国家などに対しても、同様だ。このように、デジタル人民元が世界で広く使われ、国際化していくと、何が起きるのか。世界で最も普及している基軸通貨であるドルの牙城が崩れることになるのである。基軸通貨とは、世界で中心的・支配的な役割の通貨で、国際金融取引などで基準として採用されている通貨のことを指す。現在、米国の法定通貨であるドルは、米国の影響を強く受けており、言うなれば米国が国際通貨の動きを握っている状態だ。中国政府は、デジタル人民元でそこに割って入ろうとしている。デジタル人民元が世界で広く使われれば、ドル支配の影響を受ける必要はなくなるし、中国政府が世界の金融の動きを監視することもできるようになる。さらに現在、ビジネスや個人による海外送金のほとんどは、国際間の資金決済システムである「SWIFT(スウィフト=国際銀行間通信協会)」のシステムで行われている。このSWIFTは米国の監視下にあるとも言える。例えば、米政府が企業や個人に経済制裁を課すような場合には、SWIFTを使えなくするといった具合だ。つまり、SWIFTを支配する米国が世界の金の流れを管理しているということになる。そうした米国の覇権を打ち崩したい中国は、15年に独自で人民元の国際銀行間決済システム(CIPS)を立ち上げている。だがそれよりも、デジタル人民元が国際間で最も使われるようになり、決済などを監視できるようになれば、米国の影響を気にすることもなくなる。現在のような監視状態ではなく、思うがままに動けるのである。世界のカネの流れを手中に収めることも可能だろう。中国はそれを目指している。』
イノベーションを起こす場合次の二つの方法しかない。まず一つ目は「圧倒的で今まで地球上に存在しない革新的な技術やサービスである」ことと、二つ目は「現在行われている支配的な方法論に基づいた違う仕組みである」ことだ。一つ目はなかなか登場しにくく歴史上でも「宇宙人にでも教わったか?!」と言うくらい珍しいのでそう起こることはない。二つ目はしばしば覇権争いの道具とされ戦争にしてきた原因なのだが「デジタル人民元」はこの二つ目の方法論で進められていることが現実味を帯びてきた証である。さて、地球人はどの方向へと向かって行くのだろう。私は「易きに流れる」のがヒトの常だと思っている。
2020年に発行か? 中国が「デジタル人民元」に抱く、危険な野望
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2001/09/news014.html