俺流作曲の手引き
「どうやって曲を作っていますか?」という質問を受けることがあります。まぁこれは僕に限らず、オリジナル楽曲を作る人は訊かれることなのではないかと思いますが、自分なりの方法の一部をいくつか書き記しておこうと思います。細かい技術的、理論的なことはちょっと説明が大変なのでまたの機会としますが(機会あるのか?)音楽理論を勉強する必要があるか?についての持論も書いておきます。作曲初心者、行き詰まった人のヒントになれば。あくまで持論ですから異論は受け付けません(笑)
雰囲気パクリ
「あぁ良い曲だな」と思う曲に出会ったらまず、なぜ自分はその曲を良いと思ったのか、どの部分が好きなのかを分析するようにしましょう。これを繰り返すことが「引き出し」を増やすことに繋がるし、自分の曲の好みも明確になります。例えば「コードに対するメロディの乗り方が良い」「リズムが良い」「言葉の乗り方が良い」でも、何でもいいと思います。簡単なことで良いのです。その曲の良さ、好きなところを明確にしておきます。
そしてその手法を使って曲を作ってみましょう。完全なパクリではありません。雰囲気を拝借するだけです。僕はこれを「雰囲気パクリ」と呼んでいます。完全なパクリではありませんよ!「オマージュ」までも行かない感じです。参考にして練習です(笑)
構成を参考にする
例えばサザンオールスターズの「TSUNAMI」のような雰囲気の曲が欲しいと思ったとしたら、イントロは無しでAメロはメジャーキーでスタート、Bメロはちょっと物悲しい雰囲気のキーに変更、Bメロ後半〜サビで再びメジャーキーに戻る。という展開を自分なりに作ってみる。といった具合です。サビも音数少なく、ロングトーンを使ったメロディにしてみます。構成は1番、2番、間奏を入れてサビを繰り返します。まぁこれぐらいは曲を作ったことのある方ならすでにやっているでしょう。
実際にTSUNAMIはAメロがDメジャーキー、Aメロの最後にDコードからD7を挟んでBメロで一瞬転調(Dmかな)、Bメロ後半でDキーに戻すというテクニックを使っています。これ解説は難しくなるので書きませんが(笑)
テンポ、リズムを真似てみる
「こんな曲欲しいなぁ」と思ったらテンポ、リズム、テンポ、キー(メジャーかマイナーか)を真似てみてください。BPMはいくつぐらいなのか、8ビートなのか16ビートなのか、シャッフルなのか。コードはどれくらい動くのか。例えばAメロのコードは2拍毎に変わる?1小節毎?それとも4小節動かない?などです。
好きなジャンルの大まかな傾向を捉えておく
例えばメロディ重視のJ-Popなどは結構コードが動いて展開してゆきます。ファンクやソウル、R&Bなどのブラックミュージック系っぽい曲が欲しければ16ビートにしてあんまりコード動かさないで1コードか2コードを繰り返してリズムを強調します。ハードロックやヘヴィメタルではギターリフがあると良いし、メジャー、マイナーはあんまり明確にしないパワーコードを使っていく(それでも傾向としてはマイナーキーが多い)、あんまりたくさんコードチェンジしない。などです。
コード感でも特徴を出すことができます。オシャレな雰囲気にしたいのなら7thコードは必須です。C→Am→Dm→Gという進行があるとしたらCM7→Am7→Dm7→G7としてみましょう。反対に爽やかな青春ロック!を演出したいのなら7thは無い方が良いかもしれません。
作曲に音楽理論は必要ですか?
これは色々な意見があると思いますが、僕は「知らなくても曲は作れるが、知っていた方がより幅広く、変化のある曲が手早く作れる」というのが結論です。
そもそも音楽理論とは
音楽は理論からできているわけではありません。説明できるようにするために理論があるものです。誰かが先に理論を考えたのではなくあくまでも音楽が先にあります。ですから理論など勉強しなくても「簡単な曲は」作れます。全く音楽理論は知らないけれどギターやピアノが多少できて、ある程度音楽を聴いてきた人であれば作曲はできると思います。でもその曲は理論で説明がつきます。それも、非常に初歩的な内容で説明がつくことがほとんどです。「音楽理論など知らないがオリジナル曲を作った」という曲は、とてもシンプルな曲になることが多いと思います。鍵盤であれば白鍵のみでできるような。もちろんそれが悪いことではありません。シンプルな曲シンプルなメロディは伝わりやすいし、覚えやすいものです。
ただし、いつまでもその手法では限界があります。音楽(コード)理論を知ることは基礎を知ること。僕はよく数学に例えるのですが「公式を知ること」に近いと思います。数学苦手なんですが(笑)、公式を知っていればそれに当てはめて簡単に答えを導き出せますが、知らなくともじっくり考えれば答えが出ます。例えば台形の面積を求めよと言われた場合、公式に当てはめれば簡単ですが公式を知らなくともよく考えたら答えが出せそうですよね?
つまり、試行錯誤して色々なコード進行を試して「よっしゃ!オリジナルのコード進行ができた!これは新しい!」と思っても、それはよーく考えて台形の面積がわかったのと同じことです。多くの人が聴いて普通に聴けるコード進行はだいたい公式(理論)があり、全て(というと語弊があるかもしれないが)既存なのです。「理論に囚われていたらオリジナリティが出せない。だから理論なんて要らない!」というのも良いのですが、オリジナルだと思っても既存なのです。もちろん「よく考えて台形の面積を導き出せた」という経験は大事なことですが、多くの公式を知っていることに一切デメリットは無いのです。
むしろ、その「既存の公式」を知っていた方がそれを外す方法も模索できるということになるのです。
以上のことから上で述べた「知らなくても曲は作れるが、知っていた方がより幅広く、変化のある曲が手早く作れる」と考えています。
ダイアトニックコードを覚えよう
そのための一歩として「ダイアトニックコード」を覚えてください!簡単に言うと「メジャースケール内にできる7つの基本コード」です。キーCなら白鍵のみで弾ける基本の7つ。ググればいくらでも詳しい解説がありますので、そちらを見てください(笑)。まずこれを覚える。次にダイアトニックコード「以外」のコードを曲に入れていくことを研究してみてください。そうやって幅を広げます。僕は「いかにダイアトニックを外すか」を考えて曲を作っています。
音楽とは実に不自由な芸術
音楽(特にコード進行)は、上記の通りそのほとんどが既存であり、出尽くしています。ノイズのようなジャンルはこの限りでは無いかもしれませんが、多くの人が聴きやすく(ある程度ポピュラリティーがある)、破綻しない音楽で「今までになかったもの」を作り出すのはとても難しいことです。絵画やデザインなどの世界に比べると圧倒的に自由度が低いかもしれません。
色々な音楽を聴こう
ですから歌詞やアレンジなどのトータルの組み合わせの妙でオリジナリティを出すしか無いのです。幅広いジャンルの音楽をたくさん聴いて、良い手法、好きな手法を自分の引き出しにたくさんしまっておき、それらを組み合わせてゆくのです。たくさんの音楽を聴くことの重要性はここにあります。
こんな話を聞いたことがあります。子供達に「架空の動物の絵を描いてみて」と言うと、例えば頭がキリンで体がゴリラとか、羽の生えた象とか、見たことのある動物を組み合わせた絵になるのだそうです。作曲もこれと同じことと考えています。つまり、聴いたことのある音楽の組み合わせしかできないのです。
僕は高校時代は聖飢魔IIが大好きで聖飢魔IIばかり聴いていて、コピーも多少はしました。ある時曲を作ってみたいと思い、実際にバンド用に書いたのですが、まんま聖飢魔IIみたいな曲が出来上がりました(笑)
一部の天才奇才ならばもしかすると聴いたことのない音楽を作り出すことができるかも知れませんが、僕が作曲家としてとても斬新で前衛的な天才と思っているスティーヴ・ヴァイも、バークリー卒で実にアカデミックです。理論を熟知した上で新しい曲、ギターの可能性にチャレンジしています。我々のような凡人はとにかく幅広く、多くの音楽を聴くに越したことは無いのです。
作曲は楽しい
色々書きましたが、できた曲がどんな曲であれ子供みたいなものです。そりゃ他人から見たら可愛げがなくとも、自分にとっては宝物です。産みの苦しみは絶えませんが、この世にどんどん宝物を増やして、残して行きましょう!