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展覧会レポート 福田美蘭 美術ってなに? 名古屋市美術館

2023年9月23日(土)〜11月29日(水)名古屋市美術館開館35周年記念企画

福田美蘭って誰?の方が先に立ってしまった私をお許しください。
作品ごとについている作品説明が丁寧で理解しやすいので、一緒に行った中学生の娘も充分に楽しめるような内容だった。ただ、作品の意図に関する観る側の想像の隙は与えられない感じがした。

ただ、名画が名画たる所以など、常識と言われるものへの懐疑を軸としたコンセプトの作品や、鋭い視点の作品は、ハッとさせられたり、考えさせられたり、ふっと笑顔が溢れ心が緩むなと、非常に楽しい。56点ほどの中から、5点は名古屋市美術館が所蔵している作品を着想源として新作を制作展示。

志村ふくみ《聖堂》を着る

現在滋賀県立美術館に所蔵されている、志村ふくみ作《聖堂》という作品は、実際に袖を通すことは叶わない代物。しかし絵画の中でだったら着用できるよね、という絵画の可能性について伝える作品。

ミレー 種をまく人

ジャン=フランソワ・ミレー「種ををまく人」は、山梨県立美術館が所蔵。
実際の作品は、農夫が種をまこうとして、腕を振り抜く前の様子が描かれているが、その腕の動きを分かりやすくするために、前方に振り抜かれた状態に書き直した作品。

三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛

写楽は大首絵を描く時、実際に舞台に立つ役者を見ながら描いたという。写楽が描いた大首絵は独特な似顔絵の形。それならば、と、実際に見たであろう役者を写実的に捉えた作品。背景も、舞台にあったであろうものを描いている。

帽子をかぶった男性から見た草上の二人

マネが描いた「草上の昼食」の中に描かれている男性の視点からの画を、マネの作風を崩さないように描いた作品。福田美麗の画力と、想像力、視点が面白い。

ブッシュ大統領に話しかけるキリスト

アメリカの同時多発テロ(911)発生に際し、ブッシュ大統領は、テロが起こった原因より「報復すること」しか考えておらず、そんなアメリカに異議を申し立てる国もなかった。話を聞かないブッシュ大統領が耳を傾ける相手はキリストしかいないのではないかという、作者の考えを絵にしたもの。

新作 プーチン大統領の肖像(カリティアード)

国民の支持率が下がると、上半身裸で乗馬するなど、自分の肉体美を見せつけるような映像をメディアに流すことで、頼りになる男を演出、イメージさせることで、支持率を持ち直してきたプーチン大統領。肉体のボリュームを探求したモディリアーニのカリティアードに繋がりを感じた作者は、三次元のプーチン大統領を二次元の線としてどのように表現できるか探求した作品。

Portrait

「絵画は壁にかけるもの」という固定概念に疑問を呈した作品。
作品を発見したときは、ちょっと怖かった笑

そのほか、作品を見る角度によって、作品の中の静物の時間が経過して腐敗していくように見えるトリックアートも手がけている。

名画の中の人物に自身が扮装し、実写化したような作品を制作している森村泰昌の作品に通じるものがあるなーと思っていたら、福田美麗の略歴に、森村氏とのコラボ?展覧会も名古屋市美術館で開催していたような記載もあった。

誰が袖図の絵柄も子どものためのぬり絵。

子どものためのぬり絵なのに。クレヨンが、二色しかない。これは、ISILというテロ組織の旗の色や覆面の色の黒と、殺される人質が着る服の色のオレンジ。よりにもよって子どものためのぬり絵に・・・。キャプションを読んだ時に怖すぎてびっくりした。

与えられた環境のままに、それが当たり前だと純粋に信じて疑わない子どもたちのことを思うと、普通とか、その環境自体を疑うことについてかんがえさせられる。

全体を通して、「自分が持つ当たり前」を再考させられる内容だった。

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