展覧会レポート 椅子とめぐる20世紀のデザイン展 ジェイアール名古屋タカシマヤ
会期 2024年4月18日(木)〜5月5日(日)
タカシマヤの展覧会で、北欧系と言ったら、織田コレクション!
博物館級の状態もいい名品の数々。
ガウディ、ミース・ファン・デル・ローエ、フランク・ロイド・ライト、アルヴァ・アアルト、ハンス・ウェグナー、イームズ、アルネ・ヤコブセン、、、あまり詳しく知らない私でも分かる、錚々たるアーティストによる作品類。
小物も入れて、ざっと180点の展示は、なかなかの充実具合。
20世紀のはじまり
画像だと分かりにくいのだが、オルブリヒの作品は、座面の絵柄がとても印象的。
よく見ると、アールヌーボーの時代のクリムトが描くような女性2人の向き合う姿がパターンとなっていて、とても美しい。もちろんウィーン工房製。
モダニズムへ バウハウス、フランスで活躍するデザイナー
1925年、バウハウスの教員だったマルセル・ブロイヤーが、スチールパイプを使った椅子(ワシリーチェア)を発表。
それまでは木材を使用するのが当たり前だったが、工業化する時代の変遷により、パイプ管の加工技術が向上し、製品化に成功。このスチールパイプの椅子を発表したことで、デザインのバリエーションがより豊かに。
素材も、スチール、皮、布、プラスチックと、様々な素材が使用されるように。
ヴァーゲンフェルトは、1923-24に、バウハウスの金属工房で学び、在学中にはランプも制作。1925年には製品化しバウハウス社から発売された。その後、こちらの製品を企業と協働し開発。装飾を極限まで排除することで、画期的なデザインを目指すだけでなく、機能的で人々の生活をより便利になるように製品を複数の企業と共創した。
この作品を見ていて思い出したのは、アメリカコネチカット州のニューケイナンにある「GlassHouse」。
フィリップ・ジョンソンによる、自身が週末過ごすための家。
実際に内部も鑑賞したのだけれど、素敵!とはいえ、住むとなったら。。と考えてしまった。
家に居ながらにして自然の中に居るかのような感覚を味わえる家ではあるんだけど、メンテナンスが大変とか、プライバシー面でなんとなく落ち着かないとか、実際に住むことを考えると、機能性も高いとは言い難い。
高いデザイン性と機能面の両立は今でも大きな課題なのだろうなと思う。
デザイン黄金時代 ミッド・センチュリー
書いてあることを要約・・・
工業化による量産が可能になったモダンチェアと並行して発展したのが、「成形合板」。型に入れて、加熱・加圧することで成形する技術。1930年代のフィンランドが先駆けて技術を開発。
アルヴァ・アアルトは1932年のアームチェア41(バイミオ)を家具製造社と協働し、独自の手法を開発した。
真の意味での実用化は、アメリカのイームズ夫妻が1941年に第二次世界大戦にて米海軍のために負傷兵の脚部固定用添え木を制作したこと。
フィンランドのモダンデザインの紹介に、見たことがあるグラスワーク!タビオ・ヴィルッカラの大皿シリーズ。
岐阜県現代陶芸美術館で開催されていたフィンランドのグラスワーク展でも同じ作品が展示されていた。
そして、北欧デザイン
木の薄板を何枚も重ねて接着剤で貼り合わせた積層合板を、型に入れて加熱・加圧し成形した座面と、スティールパイプの足を付けた、アルネ・ヤコブセンのアントチェア(3100)。この椅子を筆頭に、軽量でスタッキングもできる、同じ形態のチェアが試行錯誤を経て次々と誕生。セブンチェアやグランプリチェアなど、程よくしなって体にフィットする、モダンな椅子は、今の時代も人気の椅子の一つではないだろうか。
「時代を象徴する部屋」ノルディック・モダンのティー・パーティー
ダイニングテーブルは、デンマークの巨匠ボーエ・モーエンセンの可変型テーブル(1960年)。最大で14人用にまで伸ばせるすぐれもの。こんなテーブルがあったら人呼びたくなるよねーというキャプション。住環境さえ整えれば、こちらの机を迎え入れたいけれど。。。
1950年代には、プラスチック製の椅子も発表される。一本脚の椅子など、近未来を思わせるデザインも。
「時代を象徴する部屋」アメリカのミッド・センチュリー のくつろぎ
スタンドライト以外のフロアライトは、イサム・ノグチ。どことなく日本風の香りがするライト。手前側の3脚と、奥のオットマン付きの革製チェア、手前の楕円形ローテーブルはイームズ夫妻の作品。
斬新なデザイン ポストモダンへ
うーん、書いてあることが難しい。
要約すると・・・
1930〜1940の第二次世界大戦期は、オーガニックな自然を取り入れた風土的モダニズムがあらわれ
1950年代にはその有機的なデザイン素地とした作品があちこちで人気を博した。
1960年代には、ポップアートなどの影響で未来的な作品が現れ、プラスチックや合成繊維を使った製品が一般化。アーティストがどんどん個性を極めてきて、脱モダニズムの流れとなって、ポストモダンへ。
でも、この流れによる斬新なデザインも、実は機能主義、アールデコの大衆的スピンオフ・・・なのだそうだ。
カウンター・カルチャーを「下位文化」と表記するのは間違ってはいないみたいなんだけど、「対抗文化」と記した方が理解しやすいのかなと思った。そもそも、文化に上位も下位もないし。下位って、って引っかかってしまったわ。
サブカルの一部がカウンター・カルチャーとな。勉強になるわ。「劣性遺伝、優性遺伝」を「潜性遺伝、顕性遺伝」と呼ぶようになったみたいに、別の言葉を使ったほうがいいんじゃないかしら、と、、話が逸れた。。
フードプロセッサーも、キッチンスケールもフォルムが洗練されてる。
「時代を象徴する部屋」イタリアン・モダンの輝き
イタリアといえばカッシーナ!という印象が強かったけれど、この中でカッシーナ製のものは、無し。1960年代後半から、1980年代の作品が集結。
「時代を象徴する部屋」バンビーノの秘密基地
説明パネルと、実際の展示が違っていて、どれがどれ?を探す気力がこの頃にはすでになかったけど、とにかく一つ一つの作品も素敵で可愛いお部屋。
時代に生まれ、時代を超える
織田氏が提唱する、時代を超えて愛される作品条件は
1.機能的であること
2.美しいプロポーションであること
3.構造がしっかりしていること(安全性が高いこと)
4.エポックメイキングであること
5.ロングセラーであること(25年以上生産され続けていること)
6.あまり重すぎないこと
7.修理が可能であること
8.環境に配慮した素材であること
9.ものと価格のバランスがとれていること
10.量産性に配慮されていること
そしてもう一つ、優れたデザインに絶対不可欠な条件として、「デザイナーの情熱が込められていること」。
エポックメイキングとは、常識や価値観を覆すこと。その作品や価値観のこと。
そして。
使用側が求めることで、作られ続け、創出につながる。使い続けていたら次の時代に移り変わって行ったってこともあるよねーと。
デザインは人を幸せにできるかの答えの半分は、使用者側にあるとのことでした。
最後は実際に座れる椅子がいくつかあった。
イームズのラウンジチェアはびっくりするほど体にフィット。立ち上がりたくなくなるし、実際に立ち上がるのが結構大変だった。体勢が崩れるから。
こんな椅子があったら、読書も楽しいだろうな。。あ、気持ち良すぎて寝ちゃうか。
思いの外、面白い展覧会でしたー。