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体験レポート アピチャッポン・ウィーラセタクン体験型パフォーマンス「太陽との対話(VR)」
アピチャッポン監督「ブンミおじさんの森」2010年カンヌ国際映画祭 パルムドール賞受賞。「メモリア」2021年カンヌ国際映画祭 審査員賞受賞。
今回が初のVR作品
1時間の体験は2部制となっており、30分は中央部分にあるスクリーンに映し出される映画を鑑賞。裏表の両面で違うストーリーが流れているため、自由に場所を移動して好きなように鑑賞。その後ヘッドセットを着用し30分VR体験。30分ごとの入れ替え制のため、映画を鑑賞する人と、ヘッドセットをつけている人が混在する状況。
人と人がぶつかるのを避けるため、中で黒服の係員が、常にぶつからないように配慮してくれている。
映画の内容は哲学的で、詩のような言葉が時折語られていた。タイの村人のごく一般的な生活の様子だったり、お祭りの様子だったり。美しく不穏で儚い坂本龍一氏の「async」。ピアノの音に心が揺れ「それでも人は怖くないふりをする」という言葉。
…なんというか映像からも色々と想起させられて、胸に迫るものがあった。それでも人は多種多様に「生きている」説明する言葉が無い分想像を掻き立てられる。
VR体験は、本当に知覚がひっくり返されるような感覚だったのかもしれない。
私の足元から生まれてきた白く光る太陽が徐々に大きくなるにつれ「熱さ」を感じ、無意識に後退りしていることに気づいた時の驚き。あえてその光の中に身を置くことのドキドキ感。「白い光の中から出られなくなったらどうしよう」という不安感。その世界に没入し、ただ見るだけでなく、自分で歩き回り、上から降ってくる岩に手を伸ばす。そこに確かに存在する空間であり、世界だと実感した。
太陽と暗い太陽が重なり合い、太陽が太陽を生み出す。
「太陽との対話」ってこういうことなのかな、なんて思いながら、今回の貴重な体験が、これからの自分を後押ししてくれているような気分になった。