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「事を憎んで人を憎まず」の教えが示す問題解決の本質
私たちは、社会で起きる様々な問題や事件に直面した時、ついその当事者を非難したくなるものです。しかし、そこで立ち止まって考えてみることが大切です。果たして問題の根本的な解決につながるのは、人を責めることでしょうか。
「罪を憎んで人を憎まず」という古くからある教えがありますが、これは問題解決の本質を突いています。罪を犯した人を憎むのではなく、罪そのものを憎む、つまり問題が起きた背景や構造的な原因を見つめ、それを改善していくことが重要だというのです。
私はこの教えをより一般化し、「事を憎んで人を憎まず」と捉えています。ここで「事」とは、問題が発生した状況やシステムのことを指します。個人の資質や行動を責めるのではなく、そうした行動を引き起こしてしまう状況やシステムこそを問題視し、改善の対象とするべきだというのが、この考え方の核心です。
例えば、組織内でミスが発生した場合、当事者を処罰したところで、同じようなミスが再び起きる可能性は十分にあります。むしろ、なぜそのミスが起きたのか、どのようなプロセスや環境に問題があったのかを検証し、再発防止のための仕組みを構築することが肝要でしょう。
また、社会問題についても同様のことが言えます。犯罪や不祥事の当事者を非難するだけでは、根本的な解決にはつながりません。そうした問題を引き起こす社会的な要因や構造的な欠陥を見つめ直し、それを是正していく努力が必要不可欠なのです。
もちろん、罪を犯した人が責任を取るのは当然ですが、そこで思考停止してしまっては、同じ轍を踏むことになりかねません。私たち一人一人が「事を憎んで人を憎まず」という姿勢を持ち、建設的な議論を重ねていくことが、より良い社会を作っていく上で欠かせないのではないでしょうか。
人は誰しも間違いを犯すものです。大切なのは、その間違いを個人の問題として矮小化するのではなく、問題を生み出す土壌そのものを変えていく努力を惜しまないことです。「事を憎んで人を憎まず」の精神こそが、そのための指針になると私は考えています。
(Update:2024/5/5)
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