TM NETWORK
前回の記事にも書いたように、僕はミュージシャンとしては深く掘り下げてたくさんの作品を耳にしたアーティストが極めて少ない。そんな中、前回の聖飢魔IIと並行して中学時代〜高校時代にかなり聴いていたのがTM NETWORK(TMN)だ。今や知らない人も多くなってしまっているかもしれないが、小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登という3人組グループである。音楽とは関係のないスキャンダルが多く、ついに引退をしてしまったが、個人的には小室氏のキャリアの中で音楽的に一番優れていた時期なんじゃないかと思っている(商業的には別)。
前回語った聖飢魔IIとは全く畑違いな音楽性のTM(TM NETWORKからTMNに改名しているが当記事ではTMで統一する)がなぜ好きだったのか、自分自身でも分析しながら語っていこうと思う。
まず何が良いと思ったのか?
初めて聴いたのはもう6枚目のアルバムの後に出たリミックスアルバム「DRESS」だったので割と遅かったと思う。友達の家に行くとかかっていたので何となく聴くようになった。聖飢魔IIほど衝撃的に好きになった訳ではないので明確な理由ははっきりしないが、歪んだギターがほとんど鳴っていなくてサラッと聴けるところ、それと16ビート、ダンスビートが良かったのだと思う。今現在も8ビートよりも16の方がどちらかというと好みなので、その辺りが良かったんじゃないかと思う。
歌詞が当時の中高生にとって恋愛バイブル
いや、バイブルはちょっと表現が違う。歌詞の内容は極めてファンタジックかつ都会派で、特に作詞を数多く担当した小室みつ子(3枚目までは西門加里名義。小室哲哉とは親族関係はない)のその歌詞がまた最高なのだ。中高生だった僕たちにとって、もう少し大人になったらこんなシチュエーションの恋愛ができるのかな?とか、好きな人と歌詞のようなシチュエーションになることを想像したりしていた。オリジナル4thアルバムである「SELF CONTROL」が一番好きなアルバムだが、これは全体的に冬をイメージさせる内容となっていて、今でも冬になると聴きたくなる、ちょっと切ないアルバムだ。SFやファンタジー、純粋な恋愛などが描かれており、10代の我々の心をくすぐった。
小室サウンド
いわゆる「打ち込み」を中心としたサウンドはもうお馴染みだが、当時の日本にはまだそれほど多くなかった。耳障りがよく、かつ楽器として存在していない電子的な音を多用していたし、同じフレーズの繰り返しというのも得意技だろう。歌メロもそれほど複雑なのもはなく(これはGlobe以降のプロデュース業でも同じ)、比較的覚えやすいメロディだ。
一番有名と思われる「GET WILD」だが、これはスネアが鳴っていない(ドラムの2拍目、4拍目とかに鳴っているやつ)。結構珍しかったんじゃないかと思う。4つ打ちが一般化したきっかけだったのではないだろうか。
また、これは1984年のデビュー作から言えることだが、すでにラップを取り入れていた。小室哲哉の先見の明は素晴らしいものだった。
6枚目のオリジナルアルバム「CAROL」もぜひオススメしたい。おそらくこの作品が最高潮じゃないかと思っている。作品は通してストーリー性があり、ライブもそのストーリーに沿ったミュージカルのような形で行われた。これも当時は珍しいものだったと思う。そして何と言ってもこの作品は音がめちゃくちゃ良い。大概80〜90年代の音を今聴くと何か物足りなかったり、音圧やクリアさが足りないように感じたりするもので、これは機材やトレンドなどの様々な要素が関係していると思うが、それを感じないのだ。今聴いても素晴らしいサウンド。
ギターが弾けない木根尚登
聴き始めた当時はすでに僕もギターを手にしていたのだが、TMのライブビデオを観ていてどうにも釈然としないことが一つだけあった。それは、木根尚登という正規ギタリストがいるのにもっと目立ったフレーズを弾くサポートギタリストがいる点であった。時期により異なるが、B'zの松本さんが弾いていたのは有名。正規ギタリストがいるのに派手なエレキのフレーズや、ギターソロもサポートの松本氏なのだ。
そして、木根尚登の手元を見ていても、実際その動きの音が鳴っていないように思えた。これはギター始めたばかりの初心者から見てもそう感じられた。それでも、聴こえるかどうかぐらいの音量でもアレンジの一部として、グルーヴの一部としては必要なのだろうと無理やり解釈をしていた。
ところが違ったのだ。
木根尚登はギターがほとんど弾けない状態で、ライブに於いても当て振りをしていたのだ(笑)。これは数年前に某テレビ番組で本人がカミングアウトしていたから書いてしまって差し支えないだろう。この番組を見た時に、自分が当時感じていた疑問の答えが出たことが痛く嬉しかった。あぁ俺の目に狂いはなかったのだと。その時に、すごい練習をしてGET WILDが弾けるようになったという動画の紹介をしていた。それがこちら。
しかし本人の名誉のために。木根尚登が才能を発揮したのはソングライティングである。実際に数々の名バラードを残しており、僕がバラード系で一番好きな「Fool On The Planet」も木根尚登の作品だ。
宇都宮隆のダンス
正直にいうと、ボーカリスト宇都宮隆は歌唱力で勝負するタイプではないが、ダンスが凄かった。単純に憧れもしたし、あれだけ踊りながら歌う人も日本にはあまりいなかった。甘いマスクとステージング、独特の話し方などがファンを魅了した。
TM NETWORKとは
今でこそ当たり前のようなテクノ、ダンスミュージックとポップスを融合し、日本の音楽シーンに知らしめた。そして、若者に響く歌詞、派手なライブパフォーマンス・・・聖飢魔IIとは違った方向性でのエンターテイナーであったし、小室哲哉氏の最高傑作グループだったと思う。
自分にとっては作曲手法なども大きな影響を受けており、小室哲也氏が引退となった今後は見ることができないのが非常に寂しい限りだ。
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