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ゴミステ場の決戦①

この話は、バレーボールを通して成長する若者たちの青春群像劇とは真逆の、老人いざこざ町内会の話である。爽やかさのカケラもない、思い出すだけで気が滅入ってしまうクズのクズによるクズについての話。

町内会の存在や活動に対して、私は敬意を払っているし、できる範囲での協力も惜しまないつもりなのだが、その「できる範囲」が極端に狭いので、今まで町内会活動に参加をしたことなどなかった。ただ、持ち回り制のため15年くらいに1度の割合で「班長」なる役割が与えられ、その15世帯くらいのリーダーになる年が、30代の頃だったろうか、かつて1度だけあった。そして2021年末、我が家は2度目の班長の命を受けたのだった。かつての班長時代は、特別なことは何もなく、ほぼスルーで1年間ことなきを得たのだが、今回は班長を拝命されるとほぼ同時に、町内会長が我が家の玄関先に立っていた。任期は翌年からだと言うのに雪の降る年末の日に半透明の老人が消え入りそうに力なく。

「‥実はゴミ捨て場のことで、その敷地に隣接する中古車屋と揉めている。私のところにも問い合わせが来たが、ゴミ捨て場は班毎に設置だから、私は対応できない。班長さん、その中古車屋さんと話して決めて欲しい。」
完全に弱りまくって日和りまくったその老人は、玄関先でそう告げると、困惑して二の句の告げない私を尻目に、何かに怯えるように、そそくさと去っていった。何かではなく、明らかに中古車屋に怯えていたのだが。

しようがない。とりあえず電話するか。まずはその中古車屋の言い分を聞こうではないか。中古車屋は土日も営業しているから問題ないだろう。そう思いその日(日曜)の午後に電話する。接客中だったのだろうか、出なかったので留守電に伝言を残す。しばらくたって着信があった。簡単な挨拶と状況について質問をすると、電話口の声は音量とスピードが次第に高くなっていく。途中から私は電話を切らずに、テーブルに置きっぱなしにした。オンフックにせずとも声が聞こえる。「おい!! 聞いてんのか!! おい!!」と聞こえたので、電話を持って「はい」とだけ答える。怒鳴り捲し立てる電話先の声を確認してまたテーブルに置きっぱなしにする。だいたい1時間くらいだろうか、来客のため先方が先に電話を切った。すぐに私はその番号を「狂人ゴミステ」と登録した。ちなみにゴミステはゴミ捨てではない。ゴミ捨て場と言っても通じるが、北海道では基本ゴミステーションとも呼ぶのだ。

イベントディレクターの経験をそこそこ積んでいる私は、そうした狂人対応も慣れている。私の中の狂人対応の鉄則として「自分から逃げないこと」というルールがある。黙ったまま、チンピラ二人を相手に2時間睨めっこしたこともあった。相手には「なんかめんどくさい奴」「絡みたくない奴」と思われることが大事。持久戦に持ち込むコンクラーベ状態になれば、あとは先方がしびれを切らすのを待つだけ。一度、それをやっておくと、その先、下手な絡み方はされなくなる。(つづく)


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