プロダクトマーケティングマネージャーとはなにか
はじめに
この記事は以下を参考に執筆されています。
What Is Product Marketing? by Dave Gerhardt
Product Marketing Manager vs. Product Manager: Where Do You Draw the Line? by Maddy Kirsch
5 Skills Every Product Marketing Manager Should Have by Matylda Chmielewska
プロダクトマーケティングマネージャーというポジションは、日本ではまだあまり定着していないように思います。
この記事では、そもそもプロダクトマーケティングマネージャーはどういった役割を担い、なにに対して責任を持ち、プロダクトマネージャーなどのポジションとどう異なるのか、そして、持つべきスキルについて解説します。
なお、プロダクトの開発においてプロダクトマーケティングマネージャーが必要な理由については、私の前回の記事をご覧いただければと思います。
なぜSaaSにプロダクトマーケティングマネージャー(PMM)が必要なのか?
プロダクトマーケティングは、プロダクトをマーケットに投入するにあたって必要となるプロセス全体を指しています。
プロダクトマーケティングマネージャーは、「顧客理解」と「マーケティング」に注力し、顧客からの関心を集め、利用を促進します。
簡単に言ってしまうと上記のとおりなのですが、この記事では、冒頭にあげた記事から、より深くプロダクトマーケティングマネージャーを理解するのに役立つパートを抽出し、整理します。
プロダクトマーケティングマネージャーはなにをするのか?
プロダクトマーケティングマネージャーは、プロダクトのローンチ前には、ポジショニング、メッセージング、顧客からのフィードバック収集、プロダクトをマーケットに投入する戦略全体について役割を担います。
そして、ローンチ後には、セールスイネーブルメントに取り組み、需要を高め、定着率を上げ、プロダクトの成功全体にフォーカスします。
https://www.drift.com/blog/what-is-product-marketing/ から引用
プロダクトマーケティングマネージャーはなにに責任を負うのか?
プロダクトマーケティングマネージャーの使命
プロダクトマーケティングマネージャーは、以下のことを確実にするために、顧客とマーケットを深く理解しなければなりません。
- プロダクトとその新しい機能が適切にマーケットにポジショニングしており、
- セールスやマーケティングチームが、新しい顧客を惹き付けるための知識や資料をすべて持っており、
- プロダクトが、ターゲット顧客のニーズを満たし、ペインを克服でき、
- プロダクトの需要と定着率が継続的に増加しており、
- プロダクトがマーケットの進化に追従できる。
プロダクトマーケティングマネージャーのアウトプット
プロダクトマーケティングマネージャーの仕事により、期待されるアウトプットには以下のようなものが含まれます。
- 購入者のペルソナ
- ポジショニングやメッセージング
- セールスのための営業資料
- チームの市場理解を助けるための情報
- プロダクトの市場投入戦略とローンチ計画
ステージごとのプロダクトマーケティングマネージャーの役割
プロダクトマーケティングマネージャーの役割は、プロダクトのローンチまでの各ステージで以下のように変化します。
なお、以下のステージはプロダクトの企画からローンチだけではなく、ローンチ後のフィーチャーの開発についても同様です。特にフィーチャーにおいては、一時点において複数のステージでの役割を果たさなければならないということもあるかもしれません。
ステージ 1. カスタマーデベロップメント(顧客開発)
ローンチ前、プロダクトマーケティングマネージャーの仕事は、ターゲット市場の定義と潜在的な顧客を理解することです。
ステージ 2. ポジショニングとメッセージング
市場を定義し顧客を理解した後、プロダクトマーケティングマネージャーは、学習結果を実行可能なものに変えます。これは通常、ポジショニングに関するドキュメントや主要なメッセージといった形をとります。これらは「このプロダクトは誰のためのものなのか?」「このプロダクトはなにができるのか?」「このプロダクトが他と異なるのはなぜか?」といった質問に回答できるものでなければなりません。
ステージ 3. ポジショニングとメッセージの指導
ポジショニングとメッセージが決まったら、それを会社の全員に周知するのがプロダクトマーケティングマネージャーの仕事になります。
全員がプロダクトのポジショニングについて同じ理解度でなければなりません。そのため、プロダクトマーケティングマネージャーにとって、組織全体に主要なメッセージを伝えることが重要になります。
ステージ 4. ローンチ計画の作成
プロダクトマーケティングマネージャーはローンチ計画を作成します。これは、マーケティング、セールス、サポートなど、組織を横断したさまざまなチームを含むものとなります。
ステージ 5. ローンチに必要なコンテンツの作成
プロダクトマーケティングマネージャーは、デモやスクリーンショット、セールス資料、ブログコンテンツ、ランディングページ、Webサイトの更新に至るまで、組織内のほぼすべてのチームと協力してこれらのコンテンツを作成します。
ステージ 6. チームの準備
プロダクトのローンチにおいて、社内のコミュニケーションは社外のコミュニケーションと同じくらい重要です。すべての時間をローンチ準備に使うことがプロダクトマーケティングマネージャーの仕事です。ウェブサイトが稼働する準備ができていることを確認したり、サポートチームが電話を受ける準備ができていることを確認するといったことまで含みます。
ステージ 7. ローンチ
ローンチはプロダクトマーケティングマネージャーにとって決定的な瞬間です。顧客が訪れはじめるタイミングです。優秀なプロダクトマーケティングマネージャーであれば、ローンチのために臨機応変にすべてを調整する準備ができています。
プロダクトマーケティングとマーケティングの違い
マーケティングはアトラクト(潜在顧客を訪問者に転換させるフェーズ)とコンバート(訪問者をリードに育成するフェーズ)に焦点をあわせています。
マーケターは会社とそのブランドを宣伝し、マーケティングメッセージの一貫性を担保します。
一方で、プロダクトマーケティングはリードへのマーケティング、リード育成と受注促進、カスタマーサクセスを目的とするすべてのことに焦点をあわせています。
プロダクトマーケティングとマーケティングを考えるにあたっては、マーケティングファネルが役に立ちます。
https://www.drift.com/blog/what-is-product-marketing/ から引用
プロダクトマーケティングマネージャーとプロダクトマネージャーの違い
プロダクトマネージャーとは
プロダクトマネージャーは、プロダクトに対する最終的な責任を負います。例えば、プロダクトの戦略、プロダクトロードマップの作成、そしてそれを開発チームに伝達するといったことが含まれます。
今まで見てきたとおり、プロダクトマーケティングマネージャーは市場や顧客を理解し、ポジショニングやメッセージを決めることに責任を負うのに対し、プロダクトマネージャーはより開発に近い領域で、プロダクトの成功に責任を負います。
プロダクトマーケティングマネージャーとプロダクトマネージャーの補完的役割
健全な組織では、プロダクトマーケティングマネージャーとプロダクトマネージャーが密接に連携し、補完的な役割を担うことで、プロダクトを成功に導くことができます。
また、これら2つの役割は一見兼任可能かと思われます。しかし、仮に1人で行おうとした場合、以下のようなタスクを1人でこなす必要があります。
- マーケットに関する情報収集
- ユーザー/顧客/購入者のペルソナ作成
- プライシング戦略
- プロダクトロードマップの作成、管理
- プロダクトバックログの管理
- 社内外のステークホルダーの調整
- 勝敗分析
- リサーチ
- 顧客調査の実施と分析
- セールスおよびマーケティングツールの導入、管理
- 広報や社外の企業との連携
- 外部アナリストとの連携
- セールスおよびサポートのためのトレーニングの実施
上記にあげたのはタスクの一部です。
1人が両方の役割を担うのは手間がかかりすぎます。
また、プロダクトマーケティングマネージャー/プロダクトマネージャーの役割は負荷が大きいため、1人で兼務しようとしたとき、上記のような非常に重要なタスクの一部が実行されないことがあります。
なお、プロダクトマーケティングマネージャーとプロダクトマネージャーの役割分担については、私の前回の記事もあわせてご覧いただくと理解しやすいかもしれません。
なぜSaaSにプロダクトマーケティングマネージャー(PMM)が必要なのか?
プロダクトマーケティングマネージャーに求められるスキル
各社によってプロダクトマーケティングマネージャーの役割や求められるスキルは異なります。
LiveChat社の 5 Skills Every Product Marketing Manager Should Have がよくまとまっていますので、そこから抜粋して記載します。(一部簡略化のため省いている箇所もありますので、気になる方は原文をご確認ください。)
1. 共感力とさまざまなレベルの顧客とつながるスキル
共感力は、顧客に接する職種だけでなく、ランディングページ作成など一般に公開されるものに取り組む際にも不可欠なスキルです。
共感力は、生まれつきあり/なしが決まっているものではなく、時間をかけて手に入れることができます。
ユーザーがプロダクトに対してどのような状況でリーチし、プロダクトを通してどのように行動するのかを正確に把握しなければなりません。メールやサポートセンターを経由して顧客に直接連絡をとり、顧客が困っていることを確認しましょう。
2. クリエイティビティと問題解決スキル
プロダクトマーケティングマネージャーは、さまざまな範囲や難易度の問題に直面します。新機能のちょっとした文言のレビュー、リモートでのユーザーテスト、顧客からのヒアリング結果をプロダクトマネージャーや開発者に伝え議論する、といったことがあります。
プロダクトマーケティングマネージャーになるには、可能な限り柔軟であることが求められます。ある瞬間、コピーライトを書いているかもしれませんし、次の瞬間には技術的な問題をエンジニアと話し合っているかもしれません。
また、プロダクトマーケティングの一連の業務を、無関係なタスクの集合としてではなく、ユーザーに価値をもたらすための連続したプロセスと見なすべきです。こういった観点でプロダクトを見ていくと、すべての事象が互いにどのように影響しあっているのかがわかります。
3. リサーチと分析スキル
ユーザーのセッション情報は、ユーザーのプロダクト使用方法を観察するための最も効果的な方法ですが、特に部分的または完全にリモートのチームにとっては、整理が必ずしも簡単ではありません。そのため、プロダクトマーケティングマネージャーは、リサーチおよび分析ツールに精通する必要があります。最も有用なものとしては、Mixpanel、Amplitude、Google Analyticsなどがあります。
ただし、分析ツールの使用方法を知っているだけでは不十分です。真に重要なスキルは、データの解釈方法と、さらに重要なこととして、収集したデータをプロダクトの意思決定のためにどう使うかを知っていることです。特に長期的にプロダクトの成長に影響を与える可能性のあるパターンや障害となっていることを探す方法を学ぶ必要があります。
また、プロダクトの内部で何が起こっているかだけでなく、競合他社が現在取り組んでいることに遅れをとらないようにすることも重要です。自身のプロダクトがマーケットでポジショニングできているかどうか、もしくはどのようにポジショニングすべきかを分析できなければなりません。
4. マーケティングスキル
プロダクトマーケティングマネージャーにとっては、マーケティングスキルも必要となります。明確で効果的なコピーライティングが書けることは特に有益です。プロダクトマーケティングマネージャーは、技術に詳しくないユーザーでも簡単に理解できる言葉で、複雑な技術用語やプロセスを説明できなくてはなりません。
ユーザーにプロダクトを理解させるだけではなく、彼らにプロダクトを好きになってもらわなければなりません。このとき、単純なコピーライトでは十分ではありません。プロダクトが彼らの日々の活動にどのような価値をもたらすのかを説明できなければなりません。
5. 戦略的計画とビジネススキル
プロダクトマーケティングを知るには、ビジネスの基礎を知ることが不可欠です。そして、あなたが尊敬し、学べる人を少なくとも数人見つけてください。彼らとつながり、助言を求めてください。それがあなたに必要なすべてのスキルを向上させる方法であり、さらに重要なことは、開発段階のすべてのステージでプロダクトを成功させ続けることです。
また、Openview Labs のようなリソースをチェックすることを強くお勧めします。ここでは、成功したプロダクトマーケティングマネージャーやプロダクトに携わる人たちのインタビューを見ることができます。
最後に
前回の記事では、主にプロダクトマーケティングマネージャーとプロダクトマネージャーの違いに焦点をあて、簡潔な内容のみでしたが、今回はプロダクトマーケティングマネージャーについて、その役割や責任領域について体系的にまとめました。参考になりましたら幸いです。
5 skillsは少々抽象度が高いように思いますので、次回は、各社が出しているプロダクトマーケティングマネージャーの求人からジョブディスクリプションをまとめて傾向を掴むということがやれたらおもしろいかな、と考えています。
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