大量リリースを支える組織的Go to Market
こんにちは。SmartHRでプロダクトマーケティングマネージャー(PMM)をやっている@shigeです。
SmartHRは、2024年7月1日に約214億円のシリーズEラウンドの実施を発表しました。
あわせて新プロダクトの展開についてもプレスリリースを行いました。
本記事では新プロダクトを大量にリリースしていく上でのGo to Marketについて、課題とSmartHRなりの解決方法について紹介します。
新プロダクトの大量リリース
SmartHRでは祖業の労務や近年力を入れているタレントマネジメント事業だけではなく、新しい領域へのチャレンジも続けています。
また、既存領域での新プロダクトのリリースもスピード感を持って取り組んでおり、2024年中だけで8個の新規プロダクトをリリースしていく予定です。
2023年以前は年に1~2個程度のリリースだったのですが、マルチプロダクト戦略実現のため基盤に投資を行ってきたことが功を奏し、効率的なプロダクト開発ができるようになってきています。
お客様に新たな価値が提供できることは良いことではあるのですが、その価値をお客様に届けるマーケティングや営業、CS活動にとっては、リリースが連続することで混乱を招きかねないという懸念がありました。
大量リリースによって起こった課題
SmartHRでは基本的に一人の営業・CSが労務もタレントマネジメントも販売
・支援するという体制を取っています。
これは、労務とタレントマネジメントを同時に導入いただくことがSmartHRの勝ち筋であり、お客様にとってもメリットが大きいと考えているためです。
それ故、労務領域のアップデートを把握しながら、タレントマネジメントの新プロダクトもキャッチアップしなければならないし、新領域についても把握する必要があります。
こういった体制ということもあり、実際に2024年初期は「大量のプロダクトリリースがあるが大丈夫だろうか…」という漠然とした不安を感じさせてしまう、といったことがありました。
(一方でタレントマネジメント領域のプロダクトも非常に増えており、提案の難易度も上がっていることから、プロダクトセールスやプロダクトCSといった、特定領域に特化したセールス、CSの設置も始まっています。今後リリースする勤怠やIdPでは最初からプロダクトセールス・CSが置かれています。)
具体的には以下のような課題が想定されていました。
各プロダクトの担当PMMがGo to Market(GTM)を考え、ビジネスサイドの各部署とコミュニケーションを取り準備を進める必要があるが、同じようなタイミングで同じような依頼を複数してしまう可能性がある
プロダクトのリリース日はプロダクトサイドで決めるため、複数のプロダクトが近い日付でリリースされてしまい、マーケティングリソースが最適化しづらい
営業やCSがプロダクトの詳細をキャッチアップしきれない
プロダクトごとに初期スコープのターゲット層が異なるが、Tierごとにどのプロダクトを重点的にキャッチアップすべきかわからない、優先順位がつけられない
特に新領域では、従来の提案方法と全く異なるのではないか、新しいドメイン知識のインプットが必要なのではないか、などの不安が募る
プロダクトのGTMを担うPMMとしては、自分の担当プロダクトを最優先で考えるため、それぞれのタイミングで、ビジネスサイドの各部署とコミュニケーションを取ります。
そのため、各部署に対してバラバラと情報が伝達され、全体感が掴みづらく、統一された意思決定機関がないため優先順位などが決められないという状態によって、上記のような課題が出てきていました。
この状態を抽象化して図示すると以下のようなイメージです。(実際にはIS/セールス/CSはTier別に事業本部があり、それぞれ販売戦略を担うメンバーがフロントに立っていますが、理解しやすさを重視し簡略化しています)
さらにプロダクトのリリース速度も早くなっているため、従来より早く情報共有していくことが求められます。
ものによっては開発着手から3ヶ月程度でリリースするものもあり、そうすると開発着手とほぼ同時にGTMの準備を始めなければならないようなスケジュール感で進める必要が出てきます。
各PMMがGTMにあたってやるべきタスクを精査して実行していくとなると、大抵のメンバーは新プロダクトのリリースに携わるのが初めてであることもあり、ナレッジは共有されているものの負荷が高く、再現性が低いと考えていました。
GTM委員会の発足
「各PMMが各部署とコミュニケーションを取ることによる問題」と「各PMMがGTMをゼロベースで考えなければならない問題」を解消するため、「GTM委員会」を発足しました。
GTM委員会とは、主に各部署の戦略やプランニングを担うメンバーとPMM、GTMマネージャーで構成されたチームです。(GTMマネージャーは専属のメンバーがいるわけではなく、社内で兼務する形で担当を置いています。)
その発足背景などについて社内のドキュメントから抜粋します。
上記の図に当てはめるとこのようになります。
実際はここまで簡略にはなっておらず、結局PMMが個別に各部署と話すこともありますが、GTM委員会によってコミュニケーションの交通整理ができました。
PMMから新プロダクトに関するインプットを受け、GTMにあたって共通化できる部分はGTM委員会で吸収し、PMMの負荷を下げることもできます。
そしてGTM委員会は統合された意思決定機関の役割を担うので、「各Tierでどのプロダクトを優先的にキャッチアップするのか」「進行しているキャンペーンとどう連動させるか」などを決定、推進していきます。
GTM委員会にて営業やCSのメンバーが円滑にキャッチアップできる状態を整えることで、プロダクトのGTMの最大化を狙うことができると考えています。
GTM委員会での議題は例えば以下のようなものがあります。
プロダクトAの売り出しにあたってプロダクトBと絡めた訴求パッケージを作りたい
SMB領域でプロダクトCのエクスパンションを強化したいという依頼があったが、今はプロダクトDに注力しており、かつベストなタイミングは別にあるので見送りたい
基本的にエクスパンションで攻める想定のプロダクトEについて、新規セールス時点でも情報を出していきたいがこのようなメッセージングでよいか
など、bizサイドでの動きを俯瞰しつつ、プロダクトごとに最適なGTMを検討しています。
GTMマネージャーの役割
また、GTM委員会において重要なのがGTMマネージャーの存在です。
GTMマネージャーは英語の記事ですが以下のような定義があるようです。
「GTM戦略とプロセスの管理に責任を持ち、部門横断のチームと連携して、スムーズなローンチオペレーションを実現する」ということで、GTM委員会を組織する上で、それをマネジメントする役割としてGTMマネージャーを置くのが適切であろうと判断しました。
現時点では、社内で兼務する形でGTMマネージャーを置いていますが、いずれはPMMチームとしてGTMマネージャーの役割を持てると良いと考えています。
GTM委員会とGTMマネージャーによって、年に8個のプロダクトリリースがあっても大きな混乱なく、効果的なGTMができると考えています。
来年はさらに多くのプロダクトをリリースしていく見込みなので、現時点で委員会を組成したことは基盤への投資同様、将来への重要な投資になるであろうと考えています。
まだ道半ばのため出せる情報は多くないのですが、SmartHRではこのようにGTMを組織的に行おうとしています。
さいごに
SmartHRではPMMを募集しています。
労務、タレントマネジメント、新領域のすべてでポジションをあけており、少しでも興味があればぜひお話させていただけると嬉しいです。
また、まだ正式にオープンはしていませんがGTMマネージャーも募集しています。
もし関心ある方がいらっしゃいましたら下のフォームから「GTMマネージャーにも興味あります」などと書いていただけるとありがたいです。
こういったイベントもやりますので、もう少し詳しい話が聞いてみたいという方がいらっしゃいましたらぜひご参加ください!
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