初めましてとアロマンティック・アセクシャル
彼氏いないの?
何で作らないの?
欲しいって思わないの?
寂しくないの?
他人に聞かれて困る問いは、誰しもあると思う。
私にとっては、こういう問いがとても困る。
なぜ彼氏がいないのか。
欲しくないからだ。
なぜ欲しくないのか?
そんなの、欲しくないから欲しくないのだ。
興味がないのだ。
例えばあなたにこんな質問をしたとする。
競馬に興味がある?バレーボールやってみたいって思ったことない?
興味がないとして、じゃあそこに明確な答えを見つけられるだろうか。
興味がないことに、理由は見いだせない。
だって、興味が、ないんだから。
こんな問答を自分の中でする。
けど決して他人には言わない。
今は仕事に集中したくてさ、とか忙しくて恋愛する時間がないんだよね、とか最もらしい答えを何個か胸の内に用意してその場を乗り切る。
ゲイとかレズビアンの方たちとはちょっと毛色の違った難しさを持っているのかなと思うのは、そういう時である。
彼らは恋愛感情や性的欲求を持ってはいるのだ、その矢印の先がマジョリティとは違うだけで。
だけど私は、恋愛感情や相手に向ける性的欲求がない。
そして、“ない”ことを説明するのはとても難しい。
特に“ある”のが普通な人たちに向けては。
最近はそんな難しさに直面している。
“ない”ことの証明は、どうしたらできるんだろう。
というか、私は誰かに証明する必要があるのだろうか。
Netflixで「きのう何食べた?」という西島秀俊さんと内野聖陽さんが演じる、史郎と賢二のゲイカップルの暮らしを観て、色々と考えることがあった。
彼らが素敵だなと思うのは、生活する上で彼らのセクシャリティを全面に持ち出したり、そういうものへの理解みたいなものを周りに過度に期待していないところだと思う。
賢二さんが、史郎さんの両親が“ゲイカップルの片方は女の格好をしている”と思い込んでいるのを知った時、「史郎さんの両親が、僕が家では女の格好をしていると思うことで安心するんだったら、勘違いされたままでいいじゃない」と笑って言っていた。
史郎さんも賢二さんも、両親のゲイに対する間違った思い込み、イメージを無理に訂正しなかった。
それを観た時、私は何だか雷に打たれたような気がした。
もちろん、セクシャルマイノリティへの理解が広がればいいと思う。
もっと、アセクシャルやアロマンティックについて知ってくれる人が増えれば、私はこの社会で少し息がしやすくなると思う。
だけれど、“新しい価値観・新しい存在”というのは、一方でその人が培ってきた“モノの見方・価値観”というものを壊すものであることでもあると思う。
現在スポットライトを浴びているフェミニズムも、LGBTQ +も、誰かにとっては、今までの価値観を揺るがし、社会を見つめるレンズにヒビを入れる絶大なパワーを持っている。
自分にとって馴染みのないもの、新しいものというのは、常に破壊と創造をもたらす可能性を秘めているのだ。
だから、受け手にかなりの体力を要求する。時間も要求するだろう。
賢二も史郎さんも、両親にその“ヒビ”が入ることを好まなかった。
今その目にかけているレンズはそのままで、だけどゲイであることも少しそのレンズに映る、そんな部分を目指していたように思う。
私は、両親や友達に自分がアロマンティック・アセクシャルかもしれないということを話してはいない(すみません、私はまだ自認までには至っていません)。
話す必要があるのかな、どれくらい自分というものを差し出して理解を求める必要があるのか、というのは常に自問している。
だけど、私は大切な人のレンズにヒビを入れたくはないかな、と思う。
どれだけ恋愛感情や人に向ける性的惹かれを“ない”と説明したところで、やっぱり“ある”人には分からないことがあると思う。
それを“諦め”と誰が言えるのだろう。
自分のことを深く分かって欲しいという欲求ほど、激しく根源的な欲求はないと思う。
そして私はその欲求を否定しない。
時にそれは美しい人間模様を生み出すことを知っている。
だけど今はその欲求よりも、大切な人のレンズに“ヒビ”を入れないことを優先したいと思う。
そこまで辿り着いたのに、胸に浮かぶのは、だけど、やっぱり、誰か一人でも自分のことを理解してくれれば、どんなにいいだろう、どんなに救われるだろう、、、という思い。
今これを書いているのは、そんな“理解されたい”欲求が自分の中で渦巻いてどうしようもなくなったからです。
近しい人からの理解は積極的に求めず、しかし“社会”とか遠いところに向けて言葉を吐き出す私は、やっぱりバカなんだと思います。
でも、だから語ろうと思います。自分の言葉で。
希望は編むものだと思うので。自分の言葉で。
ということで、これからどうぞよろしくお願いいたします!
しがつ
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