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呼吸千里の碑 風景印と記念碑

 愛知県常滑市にある尾張大野おわりおおの郵便局の風景印には呼吸千里の碑が描かれています。

 世界最古とも謳われる大野海水浴場の開発を記念する重要な石碑として、風景印に残されていることは意義深いことです。

大野海水浴場

 呼吸千里の碑は、常滑市にある大野海水浴場を顕彰するもので、明治23年に地元有志が建立したものです。碑には詩が刻まれており、愛知県令だった国定廉平が大野滞在中に詠んだものです。

http://www.tokoname.jp/tutinoko/i8.htm

 大野海水浴場は「世界最古の海水浴場」とも銘打っています。12世紀頃の歌人鴨長明かものちょうめい
生魚の 御あへもきよし 酒もよし 大野のゆあみ 日数かさねむ
と大野海岸のことを詠んでいます。このことが世界最古を謳う根拠とされています。また、江戸時代には「潮湯治」という名称で海水浴をしていた絵が残されています。

 1881年(明治14年)に後藤新平ごとう しんぺい(1857-1929)が大野を海水浴場として医療保健の見地から適地と推奨し、愛知県令の国定廉平くにさだ れんぺい(1841–1885)が資金援助を行い、海水浴場として整備されました。国定は、長州藩の武士の家に生まれ、1880年(明治13年)に愛知県令となり、その在職中に亡くなりました。


記念碑の地図

 記念碑は大野海水浴場駐車場にあります。


碑文

里千吸呼
酒是芳甘魚亦鮮蓙氛不到枕書眠
官人楽境人知否例浴恩波己四年
大野客中作 韓山

此詩故縣令韓山國貞君来遊中所作也近年大野村海水浴以其多
功験病客来浴者不少、盛夏之時官吏賜暇故浴客最多、君以其
地在部内、毎年暑中来浴、蓋以有所適病也、有棲名恩波宜眺
望、君浴畢讀書於此倦則飲酒賦詩、間雅自娯、毎經数句而去、
故里人亦多知之者、今茲君嬰病奄然棄世而浴期將至、里人思
慕之不置、乃刻此詩於石、以永供紀念云、明治十八年六月一
日竹塢飯田俊應需 識之
明治二十三年八月十一日 常山井村貫一書 鶴年刻
内務次官従四位 勲五等 白根専一題額

今回、上の漢詩部分だけPerplexity AIに読み下してもらいました。優秀ですね。

酒は是れ芳甘にして魚も亦た鮮なり
蓙氛到らずして枕書眠る官人の楽境人知るや否や
例に恩波に浴して已に四年

地元の酒と魚の美味しさを称え、静かな環境で読書しながら眠る様子を描写しています。この場所が官人(役人)にとって楽しい境地であることを述べ、すでに4年間この恩恵に浴していることを明かしています。「恩波」という表現は、海水浴場の波を恩恵に例えたものと解釈できます。韓山国貞君が健康上の理由で海水浴に通っていたことを考えると、この「恩波」には健康回復や維持の意味も込められているでしょう。この詩は、大野海水浴場の魅力と、そこで過ごす時間の価値を端的に表現しています。


尾張大野郵便局

 風景印は郵便局で押してもらえる絵入りの特別な消印で、色は赤茶色です。郵便窓口に「風景印を押して出してください」とお願いすれば、差し出す手紙やはがきに押してもらえます。また、85円以上の切手を貼ったカードなどに押してもらえます。その場合、差し出さずに持ち帰ることができます。

 風景印は1955年(昭和30年)7月15日から使用開始されたものです。郵便窓口は平日のみの営業です。また、11時30分から12時30分までは窓口営業を休止しています。ご注意ください。

風景印の左半分は雪舟の「慧可断臂図」で、
大野にある斉年寺の国宝(京都国立博物館所蔵)


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