不謹慎な話
爺ちゃんが死んだ時の話。
出棺前に一悶着。
死装束?ってやつ?
白装束に着替えさせ、
思い出の品とか花とかを
棺に入れて飾りつける。
その時、親父が、
「せっかくだから」
と言って、
脇に置いてあった、
三角の頭巾を付けようとした。
葬儀屋が、
「それを付けると人相が…」
と言って止める。
親父は譲らず、
「せっかくだから!」
それを見かねた親戚が集まって、
てんやわんやの大騒ぎ。
はたから見ていて、
思わず笑ってしまった。
「親父らしいな…」
でもその時、ふと思った。
子供達のバカなやりとりを見て、
爺ちゃんも笑ってんのかな…
爺ちゃんは、昔気質の大工で、
ものすごく気難しい人だったから、
笑ってるのを見た記憶がない。
子供ながらに、近寄りがたいなって、
思ってた。
でもなんか、
亡くなった爺ちゃんの回りに集まって、
あーでもない、こーでもないって、
本気になってケンカしてる、
親父達、兄弟姉妹の、
ある意味、滑稽なやりとりが、
バカバカしくも、微笑ましかった。
見たこともない、
爺ちゃんの笑った顔が、
目に浮かんだ。
人は悲しいから笑う。
笑っていなきゃ、心の安定が保てない。
そんな時がある。
不幸や惨めさに
心を縛り付けることもできるけど、
どんなに過酷な状況でも、
絶望的な状況でも、
希望を見い出すことはできる。
何を思い、感じ、考えるかは、
それぞれの自由。
その自由こそが、
人の尊厳の源。
人の不幸を笑ったり、
見下したりは問題外だけど、
不謹慎だと言われても、
自分の境遇を笑い飛ばせるくらいの、
たくましさを身につけたい。
それぞれみんな、
大変なことはあるだろうけど、
そんな中でも、
絶望にとらわれず、
希望の種を見つけてほしい。
そんなあなたの背中を見て、
人は勇気を持てたりもする。