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【広告運用】アカウント構造の考え方

広告媒体によって名称などの差はあれど、アカウント構造は下記のようになっています。

アカウントという大きい箱があり、その配下にキャンペーン、更にその配下に広告グループ、広告グループの中に広告文(バナー)/KWが格納されている図

このnoteでは、このアカウント構造をどのように設計していくのか?をリスティング(特にGoogle)中心に説明していきます。
広告運用業界は日進月歩であり、このnoteもすぐに時代遅れになるかもしれません。それを念頭に置いていただき、媒体からの情報発信にアンテナを張りつつ読んでくだされば幸いです!

新卒マーケターを想定して書いているので、基礎的な内容を含みます。
ご了承くださいませ。

※文章中のリンクを踏むと、そのKWについて検索できます。
例:CV

結論

アカウント:請求先別に分ける
キャンペーン:商材別に分ける(+指名)
広告グループ:想定ユーザーニーズ別に分ける

結論から申し上げますと上記が私の考える全てです。

・アカウント

アカウントに対して請求先は基本一つしか結び付けられませんので、請求先単位でアカウントを分けます。

広告代理店ならクライアント別、事業会社なら基本1つですが、規模の大きい会社で全く別ベクトルの商品開発を別部署でやっている場合などは分ける必要がでる場合もあるでしょう。

・キャンペーン

「おまけ:アカウント構造の変遷」内で後述しますが、自動学習を最大限に活用するために基本的に1商材1キャンペーンで運用します。
これはCVをキャンペーン単位で設定する、つまり自動学習は基本的にキャンペーン単位で行われるからです。

例えば、複数商材を1つのキャンペーンで運用すると何が起こるでしょうか?
それぞれCVポイントが異なるにも関わらず、同じ自動学習の傘の中で配信されることで、意図しない配信なども発生する可能性があるでしょう。
広告グループで分ければよいと考える方もいるかもしれませんが、現状広告グループ単位でCVを分けることはできません。(2022年8月11日現在)

全く違う方向性のCVポイントなのであれば、わざわざ混在させて並行して自動学習させるメリットも薄いため、分けるのが妥当でしょう。

では逆に、同商材で2つにキャンペーンを分けると何が起こるでしょうか?
自動学習は学習対象の流入数が多ければ多いほど精度が高まっていきますが、それをわざわざ母数を割って自動学習の進みを遅くしてしまうことになります。

更に、同目標のキャンペーンが2つあることによって、配信の自社競合(カニバリズム)が起こる可能性も高くなります。
何か特定の理由がない限り、同商材でキャンペーンを分けるのはお勧めできないでしょう。

その「特定の理由」の1つが、ブランド名で検索するユーザーの網羅的な獲得です。
商品名で検索しているユーザーは他のKWと比べてCV傾向がとても高いことが考えられます。
予算的な制限を受けず、確実にそのユーザーに対して広告を表示させるようキャンペーンと予算を別建てして取りこぼしを防ぐ必要があるでしょう。

そのため、同商材でも一般的なKWと指名KWはキャンペーンを分け、配信設定による制限を極力排除した状態で指名キャンペーンを運用する流れがベストになるはずです。

・広告グループ

同じCVポイントのキャンペーンの中で何を基準にグループ分けするか。
ここからは宗派が分かれる領域かと思いますが、私の結論は「ユーザーニーズ」です。
※他の意見もあれば、よかったら教えてください。
一緒に議論しましょう。

具体的に:
私が化粧品ECの広告運用担当者だとします。
主力商品の美容液(ビタミンC配合)を売り出すために広告費を投資すると決めました。

購入してくれそうなユーザーの検索KWとして考えられるのは以下です。
①美容液 ビタミンC
②しみ 改善
③美容液 比較
④美容液 選び方

①-④のKWを見てどう思いましたか?
私はそれぞれのKWでユーザーの検討度が異なると感じます。

①「美容液 ビタミンC」は明確にビタミンC配合の美容液を探している人でしょう。
自社製品を買う可能性が頗る高い、顕在層だと考えられます。

②「しみ 改善」はシミを改善したいものの、「美容液の購入」まではたどり着いていない人です。そもそもの検討に美容液という発想がまだないものの、解決策として自社製品が刺さる可能性がある潜在層ユーザーだと考えられます。

③④「美容液 比較/選び方」は美容液を検討している人なので自社製品が刺さる可能性は比較的高いでしょう。たくさんある美容液の中で何を重視しているかわからないため①よりも確度は劣りますが、準顕在層と位置付けてよいでしょう。

①-④のKWおよびユーザーを同じ広告グループで集客するとどうなるでしょうか?
全く違うユーザー動向にも関わらず同じ広告文、LPを当てることになります。

最も獲得したい①の顕在層ユーザーに合わせて、「ビタミンC配合美容液として他社と差別化できるポイント」を訴求しても、②-④の人たちにはさっぱりかもしれません。

では②の潜在層ユーザーに合わせるとどうか?「シミ改善にはビタミンC美容液がよいのです!」と訴求すると、①のユーザーは「そんなこと既に知っている」と離脱し、③④のユーザーは「そんなこと別に悩んでない」と離脱するでしょう。

※KW別に違うLPを割り当てることはできますが、広告文は目下不可能です。(2022年8月11日現在)
出来ても数百~数千のKWにそんなことしてられません。

そこで、ニーズによって広告グループを分けておけば、行動傾向の違うユーザー群それぞれに対して適切な訴求を当てることができます。

①広告グループA「顕在層」
想定KW:美容液 ビタミンC / シミ改善 美容液
広告文:選ばれ続けるビタミンC美容液 定期便は3,000円~
LPFVの訴求:「ビタミンC配合美容液 ○○」

②広告グループB「準顕在層」
想定KW:美容液 比較 / 美容液 安い / 美容液 おすすめ
広告文:有名人も使用する美容液 1週間で桃肌へ
LPFVの訴求:「@コスメで評価No.1*! ○○監修の美容液」
*…2022年8月○○調査会社 など、ちゃんと根拠を記載するようにしてください。

③広告グループC「潜在層」
想定KW:シミ 改善 / シミ 消し方 / シミ 対策
広告文:シミなどの色素沈着に シミ対策ならビタミンC美容液
LPFVの訴求:「臨床試験で証明された効果 シミ改善美容液」

いかがでしょうか?
コピーやKWは適当ですが、「ニーズで分ける」という意図が伝われば嬉しいです。

ニーズで分けることで広告文/LPのマッチ度もあがり、CTR/広告ランク/スクロール率の向上に寄与するでしょう。いかにユーザーに合わせて設計するか?という部分で、設計に差が出てきます。

マッチ度とCVRが比例する一般的な例として、水道修理など訪問サービスのLPを挙げます。

上記のページはユーザーの位置情報を取得し、「大阪市対応!」などをFVで訴求しています。(※私が執筆中に大阪市にいたため大阪市で表示されています。)

今まさに水道トラブルにさらされており、一刻も早く来てほしいユーザーからすれば、「自分の地域はちゃんと担当してもらえるんだ!」と安心できます。
そうなれば、目標である「電話」まで行動を結び付けてもらいやすくなるでしょう。

では、ユーザーニーズの数だけ無限に広告グループを分けるとどうでしょう?
広告文もLPもKWに合わせて作成できるので、理論上CVRは最大化されるはず。
その考えは、2014年以前において主流でした。

おまけ:アカウント構造の変遷

時を少し遡り、2014年。
キーワードの数だけ、キャンペーンと広告グループ、広告文が存在するアカウント構造が主流でした。

自動学習の精度が今ほどは高くなく、全て人の手で手動入札管理をしていたため、そのような構造にすることでKW単位での結果の確認や調整がしやすくなると考えられていました。

すると何が起こるでしょうか?
答えは簡単で、莫大な工数がマーケターに振りかかります。

手動入札のためKWそれぞれでマーケットを見つつ入札単価を調節します。さらに、汗水垂らして収集してきたデータを基に、オーディエンス別・曜日別・時間帯別・アフィニティカテゴリ別に入札調整を細かく細かく行います。

その知見を全てノウハウとして残すのは莫大過ぎて不可能ですし、そもそもマーケターもほぼ勘でやっていた部分が大きいでしょう。
少なくとも数百、全てのKWを一つ一つ分析し、全てに最適な仮説を立て実行していたとすれば、その人は既に過労で倒れているはずだからです。

そんな運用事情は2014年に変革を迎えます。
Googleが推奨アカウント構造として「HAGAKURE」を発表したからです。
※Yahoo!にも「CORE思想」というものがありますが、コンセプトはほぼ同じのため割愛します。

内容は要約すれば、「最大限シンプルなアカウント構造にして、機械学習を活用してください」というものになります。
これは最初期、複雑怪奇で難解な迷宮へと変貌していたアカウント構造を打開する光明に…

なり得ませんでした。

部分一致の精度があまりに低かったため、むやみに拡張ばかりされたせいで関係ないKWのImpCTが急増、CVはダウンという現象が起こりました。
最悪ですね。

ただ、そんな最悪な状態からも目覚ましいスピードで自動学習の精度やアルゴリズムはアップデートされ続けてきました。

・進化していく自動学習

今や、機械学習のしやすいアカウント構造にするだけでもCPAが半減するなんてことがあり得ます。
※実際代理店時代、古めかしいアカウント構造で非効率な運用をし続けているクライアント様もかなりの数いらっしゃいました。

マーケターが汗水を垂らさずとも、媒体側で勝手に学習し、入札を自動調整してくれるのですから楽なものです。

・ではマーケターはもはや必要ないのか?

求人市場を見ると、否だとわかるでしょう。
マーケターはそんなところに工数を割かず、ユーザーニーズそのものの分析や新しい母集団へのアプローチ方法・ターゲットリードの獲得促進施策など、より戦略的なところへ時間を使い上流の販促を実装できるためです。

※逆に広告運用「のみ」で勤務し、調整だけやっているようなマーケターは無能なので解雇したほうがよいでしょう。(裁量に依りますが。)

・余談

少し話を戻し、「1キャンペーン1広告グループ1KW」の構造について。

さすがに極端すぎる上に前時代的だと先述しましたが、前章「広告グループ」で触れた、いわば「1キャンペーン100広告グループ100KW」はどうか?という内容に触れます。

結論、私は「やめとけ」宗派です。
広告グループ単位での機械学習が進まず、結果的にCVRが下がることが予想できるからです。(工数はその分増えるため、やる意味がないと考えています。)

ただ、それなら
「1キャンペーン10広告グループ100KW」なら?
「1キャンペーン5広告グループ100KW」なら?
・・・

結論、わかりません。
運用する商材の特性によるためです。
広告グループをどこまで細分化するのか?という部分はマーケターがPDCAを回しながら効果検証していく必要があるでしょう。

アカウントが成熟するにつれて徐々に奇々怪々な構造へ逆戻りするケースも代理店時代はよくあることでした。

その上で、しっかりとユーザーのニーズを見つめて「どこまで細分化すべきなのか」を再考するのもマーケターの仕事でしょう。


以上で、「アカウント構造の考え方」noteを終わります。

あくまで笹食い自身の2022年8月時点での考えですから、1年後には時代遅れだと称していることもあるかもしれませんね。

みなさまの考え方についても、是非コメントなどで教えていただければ嬉しいです。

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