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新宗教の建造物の探訪録(7)日本山妙法寺
今回の探訪先は、「日本山妙法寺」の三里塚にある成田平和仏舎利塔です。
日本山妙法寺は、その名のとおり日蓮宗系の教団です。ただし、他の新宗教にある全くオリジナルの教義や、伝統的宗派の教義に全く違う解釈を加えるといった教団ではなく、日蓮宗派の流れを汲む分派といっても良いのかもしれません。実際、以前にご紹介した国柱会と同様に「日連聖人門下連合会」という日蓮宗を中心とした宗派のグループにも所属しています。一方で、この連合会には日蓮宗檀家集団から独立した霊友会系の新宗教や、日蓮正宗やその系列の新宗教は所属していません。
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日本山妙法寺の特徴は具体的な平和運動を展開する点です。例えば原発反対運動の一環として「平和行進」と称して東京から広島までリレーしてアピールする活動や、写真のような仏塔をあちらこちらに建てるのが有名です。
ただし、成田平和仏舎利塔はもう少し込み入った事情があります。成田空港建設反対運動は、地主農家や新左翼も巻き込んで激しい闘争が展開されていましたが、この平和塔は、工事の妨害のために滑走路建設地に建てられていたもので、そこから大音量で読経が流れるなど異様な様相だったそうです。
結局、成田空港総裁の懇願を受けて建設地を「初めて」訪れた開祖が反対運動を継続することは困難と判断し、塔を現在地に縮小して建て直しました。
こうした活動を展開していることから日本共産党など左派との親和性があるとされます。ただ、日本山妙法寺は非暴力主義ですから、成田闘争で大暴れした中核派ほか新左翼との関係は厳しそうです。
なお、この仏塔の敷地内には日本山妙法寺の成田道場が併設されており、田舎の神社兼集会所のような非常に質素な建物です。全国には3桁の道場がありますが、多くが古い民家か古い日蓮寺の転用のようで、渋谷の本部も含めてかなり地味なものばかりです。こうした地味な雰囲気や、戦前の右翼思想に影響も与えている国柱会とともに日連聖人門下連合会に加わっているところを見ると、教義ですぐに対立する新宗教も少なくない中、面白い位置付けの教団と評価して良いのでしょう。
【続く】