【STORY 2024-25 vol.4】 大庭圭太郎|末っ子スピードスター、"速さ開眼"はある日突然に?
りそなグループ 2024-25シーズン B.LEAGUEで、2シーズンぶりにB1の舞台に戻ってきた滋賀レイクス。Get Louder!をシーズンスローガンに、ホームアリーナを熱く沸かせる戦いに臨む選手のストーリーを紹介します。
第4回目は#18 大庭圭太郎選手です。
成功体験で「これで生きていく」
九州共立大学の4年生でありながら、Bリーグでのキャリアは2シーズン目。特別指定選手として滋賀レイクスにやってきた大庭圭太郎は、すでにB1でのプレー経験を持つ"現役大学生"だ
エナジー溢れるディフェンスとスピードが持ち味で、特にスピードは茨城ロボッツの一員として過ごした昨シーズンに、B1で通用することを証明している。身長173㎝とプロバスケットボール選手としては小柄な部類に入る大庭が生き抜くための最大の武器でもあるスピード。しかし、意外にも高校時代の"ある時"までは、「脚が遅いから使えない」と評されるようなコンプレックスポイントでもあったのだという。
大庭がバスケットボールを始めたのは小学3年。親の影響で始めたというがが、もともとは野球少年だった。それもあり、はじめはなかなかバスケに夢中になれなかった。転機は中学3年生、全国的にもハイレベルな福岡市で県大会まで勝ち上がる成功体験が、競技者としての大庭のスイッチをオンにした。
「勝つ楽しさを知った感じです。その頃は『これ(バスケ)で生きていこう』とまで思いました。勉強が苦手でしたし、これをやっていくしかない!という感じでしたね」
"つまらない"をあえて選んだ高校時代
高校の進学先に選んだのは地元福岡から県を跨いだ広島県の如水館高校。監督のことを知っていた母親の助言もあったというが、決め手は練習参加した際に「すごく、つまらない」と思ったからだという。
「ほんとに練習が地味で面白くなかった。でも、つまらないことって大事な場合が多いじゃないですか。自分に必要なことがここ(如水館)にはいっぱいあって、それを教えてくれるんだろうなぁと思いました」
実際、地味な練習が多かった。基礎練習の繰り返しで、試合に出られない日々が続いたという。それでもポジティブにバスケットと向き合えたのは「これで生きていく」と自分で決めていたからだ。
「バスケットで活かせる体の使い方とか、ボールの突き方とかを細かく教えてもらいました。つまらないけれど、すごくいいなとは思っていました。あとは結構、走りましたね。バスケコート2面の間にバレーコート1面があるような広い体育館っだったんですが、そこを1周25秒くらいで10周走ったりしていました。その『10周ダッシュ』を朝練で、夕方はシャトルランなどもやる。振り返ると走ってばっかりですね(笑)。それでも脚が速くはならなくて、冗談で『その太い太ももは飾りか』とか言われてました」
謙遜かとも思うが、高校入学時の50m走は8秒だったと聞くと、同年代平均でも決して"俊足"ではないと信じさせられる。今のプレースタイルからは想像がつかないが、直向きに笑顔で毎日走り続けていたという姿は容易にイメージが湧く。そんな大庭に"バスケの神様"が舞い降りたのは高校2年の夏合宿、それも突然だった。
ある日突然「あ、俺、速いんだ」
「合宿中のある練習試合で、ドリブルで相手を抜いたら、周りから『速っ!』と言われたんです。えっ?と思いました。ずっと自分は遅いと思っていましたから。その後も全速力で走る度に『速っ!』ていう反応が返ってくるんです。なんで急にそうなったのか、今でも不明ですけど…『あ、オレ、速いんだ』と自覚するようになって、その合宿を境に人生が変わりました」
一般的に、バスケットボール選手のコートでのスピードと短距離走のタイムは直結しないと言われるが、卒業時の50m走のタイムは6秒台と、確かに確かに速くなっていた。その"開眼"の理由はインタビューでは解き明かせなかったのだが、スピードを手にした大庭のプレーは、その時から現在に通じるスタイルに激変していく。
「スピードを使ったら相手を簡単に抜くことができる。チビでも生きる道を見つけられたというか、大きい相手でもちぎってしまえば何とかなるなと感じることができた。相手を置き去りにする面白さというか、『止めてみろよ!』っていう楽しさを知りました。ほんと今のプレースタイルの始まりみたいな感じです」
高校卒業後、大庭は元プロ選手の川面剛監督の指導を求めて九州共立大学に進学する。そこでプロを現実的な目標として意識したと話す。
「高校の時はスピードでガッガッと最後まで行けていたけれど、大学では行けないこともあるし、チームオフェンスも複雑になる。その中で、監督からはプロのガードとしてミスをしない状況判断やガードとしてのメンタルを教えてもらいました。そのあたりからプロをリアルに意識し始めました」
届いたB1オファー、迷わず即決
そして大学3年の昨シーズン、茨城ロボッツから特別指定選手としてオファーが届く。全国的には無名に近い存在に届いたB1クラブからの誘い。「こんなチャンスが人生の中で何回もあるわけじゃない」と迷いなく即答した。20歳の若さでプロデビューを果たした大庭は、昨シーズン48試合に出場し豊かな将来性をコートに刻んだ。
そして今シーズンから滋賀レイクスで新しい一歩を踏み出す。
「自分を茨城に誘ってくださったマークさん(マーク貝島AC/当時は茨城GM)のスキルトレーニングが受けられる環境に魅力があってレイクスを選日ました。それに大学時代に長崎ヴェルカの試合を見て、ケニーさん(前田健滋朗HC)のバスケットに魅力を感じて、このコーチの下でバスケがしたいとも思っていました。個人として成長できる環境だと確信しています」
成長もプレースタイルも"爆速"で駆け抜けるスピードスター。自身2シーズン目のB1で、どのように化けるか楽しみでならない。