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「似ている」ことよりも、他にない「リアル」へ
夜は少し寒くなったが、週末は12月並みの気温らしい。大抵季節の名の付いた祝日は実感のない気候の多い、四季を感じられない日本だ。
学生時代に母親の知人のおばさんから「志賀さんとこのボン(ええとこの子ではない)若い頃の橋幸夫に似てはるわぁ」と言われたことがある。これはとりあえずおばさんのアイドルを思い付いたのであって、褒め言葉だと思いたいが、他人は自分が思うソレとは違う印象を勝手に持つものである。
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好きでみていた大河「風林火山」山本勘助役の内野聖陽に似ていると言われる。これも髭と骨格がそう言わせているのだと思うが、満更でもない。
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ある日、「志賀さんって、イナバコウシに似てる」と女子に言われた。
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B'zの稲葉浩志さんは同い年やん、似てるかなぁ、でも嬉しいなぁっと話してたらどうやら話の辻褄が合わず。骨格が似てるのか、確かに僕のボケツッコミは似ていると思ってた今田耕司のことだった。どないやねんっ。
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さて。
過日、就職して6年のTくんとの再会。ご両親と共に店に来てくれた。立派になった彼の成長を見て、近頃の僕の何が成長したのだろうと記憶がグルグルしながらその時を楽しんでいた。同じ場所にずっと変わらずある酒場には、向こうから新しいドラマがやって来る。また、幸せな瞬間が訪れる。
2016年、大手広告代理店に進みたいと希望していた彼は一人で店に来た。確かに酒場には、街ですれ違うような人々が、ただただグラスを傾け「普通の人」として背中を丸く過ごす。本音を吐露し僕らは近くなる。それは若者でも、目上の大先輩も変わらない。そうして客層はつくられるものだ。
大学OB訪問をしたいと言う。最初思い浮かんだのは、D社執行役員になって独立したけどなぜか今でも時折会う近い存在、一つ上のF本氏だったが、それなりの立場の人に相談するのもナンなので、違うアプローチを考えた。いまだ、トップダウンとかオーナーが知り合いとかを利用するのは苦手だ。
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そこで同社グループにいる頼みやすい鷲Oくんに、その大学のOBはいるか?と打診してみた。彼は今でも野球をやっててとにかく体も声もデカい。僕は彼のことを「ホームベース」だと思っている。ついでに言えば、彼の嫁もマシンガントークの面白夫婦で、おそらく、互いの話は聞いていない。
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そこから紹介された男が、これも何と昔から知るウチのお客さんD社N村くんであった。必然のような意外な繋がりにホッとした。意思は硬く優しい男だから、いい話になるだろう。ザ・マミィのどっちかに似ている彼なら。
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そうこうしている内に、その他のOB訪問と共に努力を重ねた彼は、H報堂に就職することになった。思わずズッコケそうになったが、先の鷲OくんやN村くんとも、今でも家族間で交流があると聞き、自分が関わったこともまんざら無駄ではなかったと安堵した。縁を反故にしない。大切なことを知っている彼だ。どこに行こうと、しっかりと足跡を積み重ねることだろう。
Tくんが配属された部署の上司が、これまた若い頃から知ってるN村アキオくんだと、7年ぶりの再会で知った。アキオくんは神戸にいる頃よく一人でカウンターに座り、あれこれ語り合ったものだ。表参道であった彼の盛大な婚礼に際し、なぜか友人代表でスピーチをした。二次会が白金であり、華やかすぎるゲストに目が泳ぎそうになった。その後、彼はその煌びやかな道をさらに進むことになる。「局長のことをアキオくんって呼ぶのは志賀さんだけですよ」と言われたが、酒場から巣立つ人々を僕は親戚のおっちゃん気分で見ている。あの頃から互いの関係性は何も変わっていないし、変わればいずれかが突っ込んでくる。親戚筋のような関係に肩書きは必要ない。
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元来「似ている」とか「のような」と言われてもいい気はしない。誰かの足跡に寸分違わず着いていくよりも、振り返って自分のソクセキしか残っていない方が性に合っている。誰かに似ている…有名著名人に会ったことがある…人気店になる…それでも本質的なものは変わりようもない。
パクリや模倣ではない。レプリカやコピーでもない。人の繋がり、関わりはその人ならではのはずであり、この店ならではのものの方がしっくりくる。似ていると評されるよりは唯一無二、『本物』でありたいと願う。
本物なら揺るぎはないし、追随するものなど目に入らない。
「のようなもの」は大抵が「残らないモノ」だから。
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