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書が与える力

月に1度、高齢のご婦人のプライベートレッスンに伺っています。
ピンクのお洋服がよくお似合いで柔らかい笑顔のその方は、足腰が弱くなられ、年相応の記憶のあいまいさをお持ちです。

毎回、私が用意していく手本を少し練習された後、色紙に清書されるのですが、いざ紙に向かい、筆を執られると、顔つきが締まり、目の光が強くなります。そして、ゆったりと筆を運び、力強く美しく書き上げられます。

先日すっくと立ちあがって清書をされた折には、その凛としたお姿に、付き添われているお嬢様も私も、ただただ魅入っておりました。
書き上げた色紙をお嬢様と喜んでおられるご様子に、私は言葉にならない幸せを感じておりました。

書が人に与える力や豊かさには、自身が筆を執ることで感じるだけでなく、それを成している方に宿ってその場の人に伝わる形もあるのだ・・・と心が熱くなりました。
月に1度、このご婦人からいただく熱いものが、また私に筆を執らせています。


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