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50歳台女性 動悸

2-3か月前から動悸を自覚するようになった。普段ならやすんでいれば軽快する動悸が、今日は2時間以上持続するために当院受診となった。

意識清明、血圧128/85、脈拍110整、体温36.7、体温36.7℃、SpO2 98%。
既往歴:脂質異常症、メニエール病、腰椎椎間板ヘルニア、うつ病、パニック発作。
手術歴:直腸癌術後(2年前)
処方薬:ロスバスタチン、ビタミン製剤、ジフェニドール、ジフェンヒドラミン
アレルギー歴:なし

参考動画:https://youtu.be/Z-U6ZCoKJAg

まずは脈が整であることが正しいとして考えていくと、第一印象は貧血です。実際にこの方は未閉経で過多月経があった。しかし、直腸がん術後2年ということはそれは定期受診されているはずで定期的に採血はされていると思う。結膜貧血もなく、貧血らしくはないけどもこれは検査前確率が高いから除外されるものでもないと思います。だから貧血はLikely。
次は、脈が上昇する疾患の鑑別になります。血圧が下がっているとするならばSHOCKをきたす疾患を探していきます。まずはSステロイド不足。あるかもしれないけど、なさそうな感じ。だから、副腎不全はless likely。
Hypovolemia。食事も摂れているとのこと、粘膜はmoist。だからHypovolemiaはなさそう。
Obstructive。JVDはないようです。胸郭動きも左右差なし。バイタルも落ち着いている。心尖拍動は未実施。肺塞栓はless likely、心タンポナーデ、緊張性気胸はなさそう。
Cardiac。下腿浮腫なし、ラ音聴取なし、ギャロップ音なし。だからcardiacじゃなさそう。
Distibutive。皮疹なし、抗原暴露の既往もなし。wheezeなし。だからアナフィラキシーやsepsisはなさそう。
次は、血圧が下がらなくて脈が上がる疾患。心不全、呼吸不全は上記よりなさそう。疼痛も否定される。低血糖はそれらしい薬は内服していない。今回は大腸がん術後だから気にしないけど、もしこれが胃がん術後ならダンピング症候群による低血糖も鑑別に挙がる。
パニック発作とかもあるようだから、パニックに伴うものも否定できない。けれどこれは除外診断です。だからLess likely。発熱もない。
甲状腺機能もありそう。よくみたら安静時振戦がある。甲状腺腫大なし、圧痛なし、眼球突出なし、下痢もない。甲状腺機能亢進症はLikely。
褐色細胞腫も頭をよぎるけど、頭痛なし、汗もなし。
薬剤性は私がよく経験するのはシロスタゾール。悪性症候群とかもあるからドパミン作動系の薬剤も気になるけど、上記薬剤の内服歴はない。
そもそも脈が整ではないかもしれないから、心房細動もLikely。

以上より、
Likely 甲状腺機能亢進症、貧血、心房細動
Unlikely 副腎不全、褐色細胞腫、低血糖。
まず行う検査は、心電図と採血(HbとT4/TSH)
心電図はsinus, PAC。
採血はHb 10.5、TSH 0.01以下、T4 3.57
したがって、動機の原因は甲状腺機能亢進症による上室性不整脈と考えられ、内分泌内科へ紹介となりました。

Hb 10.5, MCV 78.3, Plt 46.6, Ferritin 検出限界以下→鉄欠乏性貧血は確かに存在したが、今回の動悸の原因とは考えにくいと思います。
AST 41, ALT 82, ALP 143, g-GTP 70と軽度の肝胆道系酵素上昇がありました。uptodateによるとAST/ALT/ALPの上昇は20-40%にみられるようです。肝胆道系酵素上昇の鑑別に甲状腺機能低下症は注意していましたが、亢進でもあるようです。勉強になりました。
第三世代のTRAb陽性でした。



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