Yusuke42_№15

2024年5月30日 14:50

🇫🇷TEMPURA
AUTOPORTRAITS DE TOKYO

フランスで年4回発行される日本文化を紹介する雑誌“TEMPURA”で連載中のインタビュー記事
“AUTOPORTRAITS DE TOKYO”＝”東京に住む人たちのセルフポートレート”を日本語訳したものをnoteに記録しています。

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TEMPURA_№15 / 2023.10

Yusuke 42
Lawyer

Text : Mathieu Rocher (Interview : Ayaka Shida)
Photo : Ayaka Shida

私が弁護士という仕事を選んだ理由は、少数派とされる社会的弱者の立場に立ち、彼らの人権を守れるようになりたかったからです。性格的にも合っていたんだと思います。中学生の頃から理論好きで、理屈っぽい子でした。
教師だった父の影響も大きいです。
父は不良生徒や、学校から排除された子供たちの面倒を見ていました。
また、社会科の教師だった彼は政治や物事に対して批判的な見方を持ち、自分の考えを持っていました。これも、今の私が「みんなが言っていることが正しい」と鵜呑みにせず「そうでないこともある」と考える性格につながったと思いますし、今でも弁護士としての核になっていると思います。

東京に住むことはとても気に入っています。
私は元々東京の田舎である青梅出身で、都会に憧れていました。そして今、私の職場は日本橋にあります。日本橋は私の田舎の故郷とは正反対の都会です。とても便利な場所で、事務所から裁判所まで電車一本で行けます。

私の専門分野は民事と行政訴訟です。行政訴訟は報酬が少なく、取り扱う弁護士も非常に少ないです。ほとんどの場合、勝つ見込みはないとされています。でも、声を上げることに意味があると思っています。これはフェミニズムと同じだと思うんです。誰かが声を上げても、最初はかき消されてしまうかもしれない。でも、それが積み重なっていくことに意味があるんです。

法律が時代に追いついていないことを考えなければならないと自覚しています。
例えば、コロナの間に多くの業種が営業停止を余儀なくされました。バーやキャバレー、弁護士など、あらゆる業種に給付金が支給されましたが、セックスワーカーには支給されませんでした。これは憲法14条の『法の下の平等』に違反しているのではないでしょうか。
私たちは今、この問題に対して戦っています。相手側の主張では、「それが本来不健全なビジネスであり、そこに給付金が支払われることを国民は理解できないだろう」というものです。でも、実際に調査・アンケートを行うと、公衆はダブルスコアで手当を支給すべきだと答えたのです。私たちは一審で敗訴しましたが、11月に高等裁判所の判決が下されます。

私は自分の仕事に満足しています。ある意味では、筋の通ったことを主張できる立場にいられるからです。ただ、いつも紙一重のラインがあると感じています。事件の当事者にならないことが重要なことで、第三者としての目線が必要なんです。その主張が合憲なのか、合法なのかを冷静に考える必要があります。
あまり感情的にならないようにしていますが、戦略として、情熱的な姿勢を見せなければならないときもあります。例えば、記者会見などですね。

東京のような大都市では、地方とは違って多くの弁護士がおり、検察官とは生涯で一度会うだけの場合が多いです。
私がいま扱っている案件は都内の訴訟だけでなく、全国から相談が来ています。
これは日本で行政事件を扱える弁護士の数が少ないことも一因です。
コロナの時期を経た現在、リモートでの裁判も行われています。もちろん、これらのケースは少数ですが、東京で働く弁護士だからと、クライアントが安全と感じるのかもしれません。

弁護士になった当初と比べると、私の働き方は少し変わりました。
無理をしなくなりましたね。無茶をしながら働くと、かえって非効率的なことに気がついたんです。30代まではよく徹夜をする夜型人間でしたが、今は朝型になりました。今朝は午前5時に起きましたよ。
裁判で勝てない時が続くと、幸せではないかもしれません。でも、弁護士という仕事が好きなので、全体的には幸せです。自分がやりたい仕事ができているのですから。

ここから編集後記🐈‍⬛
インタビューに至った経緯や私個人の意見を書いてます。
編集後記と言いながら、ほとんど私の日記みたいになってて公開するのがなんとなく恥ずかしいから
最新号・公開した方がいいなと思うもの以外は最低金額で有料設定にしてます🙃

ユウスケさんは民事と行政訴訟の弁護士さんです。
行政訴訟はあまりお金にならないし、勝つこともなかなか難しいので、行政訴訟専門の弁護士さんは少ないんだそうです。

セックスワーカーに支給されなかった『持続化給付金等支払請求事件』（こちらは判例に。23年控訴審判決で敗訴→上告）や、

映画『宮本から君へ』の助成金交付が内定していたのにも関わらず、出演者の逮捕により取消になったことの妥当性が争われた訴訟を担当されていて
こちらは23年11月の最高裁判決で逆転勝訴
「不交付が広く行われれば、表現行為の内容に萎縮的な影響が及ぶ可能性があり、表現の自由を保障した憲法21条の趣旨に照らして看過しがたい」として、相手の独立行政法人に対して不交付決定処分の取り消しを命じる判決を言い渡しました。（漢字多くてごめん）

このインタビューをさせてもらったのは、ちょうど最高裁の前に設けられた口頭弁論が終わったタイミングでした。
ユウスケさんによると、この手のケース（地裁→勝訴高裁→敗訴）は負けることが多く、弁論が開かれ逆転の可能性が出てくることは珍しいんだそう。「表現の自由を広げるための判決が出ることを期待しています」とおっしゃっていましたが、本当にそうなりましたね。

この映画の総合プロデューサーは河村光庸さんという方ですが、この方は社会性•政治性の強い映画を数多く手がけており、2022年に病で亡くなっています。高裁で負けた後の上告中に。
こうして弁論が開かれたことに、何か感じるものがありますね、とユウスケさんはおっしゃっていました。

この頃は憲法9条改正について世の中でよく議論されていた時期でもありました。
憲法、法律が時代に追いついていないことについて考えなくてはいけないという意識はあります、と挙げてくださったのが上記の2件だったんです。
セックスワーカー給付金に関する訴訟では憲法14条「法のもとの平等」に、『宮本から君へ』の訴訟では憲法21条「表現の自由」に反するのでは？というところが論点でした。

このような法律と時代のバランスのお話や、正義について、考え方のルーツとなったお父さまのお話、年齢とライフスタイルによる仕事との向き合い方の変化のお話など、たくさんお話ししてくれました。

私自身が女性であり、フリーランス、アジア人、写真など表現することが仕事という社会的に弱い立場になることが多いとされる身で、ユウスケさんのお話をお聞きして、たくさんの勇気をもらった気がしました。

世の中の納得できないことや権力と直接戦ってくださる先生のような職業ではなくとも、自分の仕事や分野•できることの中で、それらと戦うことはいくらでもできるのかもしれないな、
私はそのために写真や記事を作りたいんだなあ、と思うことができました。
↑これをXでポストしたところ、ユウスケさんがすごく嬉しい言葉をくれました。

公共訴訟と同じく、というより訴訟以上に、例えば、力のある/何か訴えかけるような一枚の写真によって個々人に強い影響を与えたり人生を変えることの方が多いように思います。これからも素敵な写真や記事により社会に様々なメッセージを発信し続けていただきたいです。このたびは有難うございました！

平裕介@YusukeTaira さん📝Xより

私の大好きなお友達のひとりが検事さんなんですけど、その方が「わかりやすい言葉を使うことを心がけてる、私たちは言葉にならない声をあげている人の言葉を翻訳するのが仕事だと思ってるから」って話してくれたことがあるんです。
立場は違えど、ユウスケさんもそうなんだろうな。この短いポストには、私がずっと探して、欲しかった言葉が溢れてる😋端的に、するどくて、寄り添ってくれる、素敵な言葉！ありがとうございました✨
（ちなみに、私のお友達のSNS食レポはとてもわかりやすいです😇笑）

写真も気に入ってます。穏やかなのにキレ者感漂う不思議な雰囲気伝わるかな。

こんな方が一緒に戦ってくれるってすごく心強いなと思いました。

お忙しいところありがとうございました😊

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