【葵 物流3代】R6年中小企業診断士二次試験 事例Ⅰ企業の特徴纏め
※筆者さとーが個人的に纏めたもので、その内容や語句の意味の妥当性・正当について保証する物ではありません。従いまして、試験対策資料としての妥当性を保証する物でもありませんこと、ご容赦のほどお願い申し上げます。
事例Ⅰ
【A社のSWOT】
S…(2000年時点)①業務委託先の企業を集めた協力会の活用や、自社倉庫を保有し保管機能や流通加工や温度・湿度管理する等で地元顧客に密着し、ニーズにきめ細やかに対応可能であったこと。②そしてそれにより地元個客からの高い信頼を獲得していること。
(2010年~)①創業者の長女が入社し、長女の大手物流企業での物流企画や営業の経験を活かした事業展開の能力が加わった。②首都圏事業部がY社との取引を通じて構築した受注処理の効率化や各店舗の在庫管理ノウハウ
(2020年~)①2代目(創業者の長女)の長男が入社し、大手情報システム会社での長男の物流システム構築ノウハウが加わった。
W…(2000年時点)①組織管理が旧態依然としている②顧客の新規開拓力が弱い②伝票管理などが紙で行われ受注管理が非効率
(2010年~)県内事業部と首都圏事業部の連携が殆ど無く、2事業部間のシナジーが無い
(2020年~)県内事業部で適正在庫管理や機動的な商品補充が対応出来ていない。
(2024年~)人事制度が創業時後から殆ど変わっておらず、①処遇面で従業員満足度が低下している場合があること②物流の多様化や複雑化に対応できる制度になっていない。
O…(2000年当時)県内で展開するスーパーX社から長期取引の引き合い
(2010年~)県外との輸送の引き合いの増加
(2020年~)首都圏企業であったZ社の県内進出案件
T…(1990年)①参入規制緩和により価格競争が激化、②顧客の他社への流出
(2024年~)①サードパーティロジスティクス事業者との競争激化②物流の2024年問題を背景とする外部委託先の運送業者の人手不足
【登場人物】
■創業者…トラック一台でA社を築いた。取扱量増、品質向上、他社との差別化のため、条件に適合する外部委託会社を束ね協力会を設置し後に入社する経営幹部に運営を任命したり、自社倉庫を設置し流通加工や適切な保管機能を高めたりし、地元荷主のニーズにきめ細やかに対応することで顧客との信頼関係を構築した。
その後、長女がA社に入社すると、長女の首都圏物流進出のビジョンを汲みプロジェクトチームを結成させた。2020年に経営者権限を長女に譲り長女を2代目としたが、2024年には県内事業部と首都圏事業部の交流が少ないことや、2代目長男の社内認知や素養を高めること、2代目長男の物流システムノウハウの全社拡大のため、県内事業部を長く統括してきた経営幹部を取締役として2代目を支える体制にしたり、2代目長男を経営幹部の直下で県内事業部の統括役とさせたりなどの配置転換の助言を行った。
■経営幹部…長らくA社で従事してきた非同族の経営幹部。協力会の運営や、県内事業部のマネジメントを任されてきた。2024年の配置転換では取締役となり、2代目を支えるポジションや、2代目長男を直下の部下として県内事業部に従事させる役割を持った。
■長女(2代目)…2010年頃にA社へ入社。大手物流企業での企画や営業経験を持ち、首都圏での事業可能性を感じ、プロジェクトチームリーダとして首都圏向けビジネスを展開し、首都圏事業化に繋げた。また、同窓のY社経営者から案件受注し。Y社案件通じ首都圏事業部に在庫管理ノウハウや受注処理の効率化をもたらした。2020年に2代目となると、入社した長男を情報システムノウハウ活かし首都圏事業部下の情報システム部部長に抜擢したが、2代目も長男も首都圏事業部に知見が偏り、県内事業部は経営幹部に一任していた。
■2代目長男…大手システム会社での経験をもち、A社に2020年ごろに入社。首都圏事業部に情報システム部を設立し、専門職のプロパーを雇用、物流システム提案力を武器に首都圏企業に向け営業を行った。やや独断的な面もあり、また、2代目と同じく県内事業部との関わりが薄い。2024年の配置転換では、経営幹部の直下で県内事業部にて運送部と倉庫部の統括約に配置換えとなった。
■Y社…長女と同窓の経営者が経営する外食チェーン。A社首都圏事業部はY社との取引を通じて、受注処理効率化や在庫管理ノウハウを獲得した。
■Z社…首都圏で展開する大手スーパーマーケットだったが、県内への進出を目指し、その際にA社に案件を持ちかけた。しかし、A社は県内事業部における在庫管理や機動的な商品補充が十分に対応出来ず、現状、取引は部分的な物に留まっている。
【A社の組織】
組織構造:県内事業部のみ→県内事業部と首都圏プロジェクトチーム→県内事業部とノンアセット型の首都圏事業部の2事業部制
組織の特徴:①創業者→長女への経営者継承し、更に長女の長男も入社後部長に抜擢されておりファミリービジネスの形。②一方で非同族の経営幹部が長らく県内事業部を統轄している。③長女とその長男は首都圏事業部で従事し、長女は首都圏顧客との物流コーディネート事業拡大し、外食チェーンY社との取引を入手し受注処理の効率化や在庫管理ノウハウ向上に繋げた。長女の長男は大手システム会社での経験を活かし同事業部内に情報システム部を設置、情報システムのプロパー専門職を雇用し物流提案力を高め首都圏企業向けに営業活動を強化した。④一方で長女とその長男が従事する首都圏事業部と、県内事業部の交流が殆ど無かった。そのため2024年に創業者の助言に基づき配置換えを実施。具体的には長女の長男を県内事業部側に従事させ、組織の交流深め組織活性化と、長女の長男の情報システムノウハウを県内事業部に伝播させ、Z社県内進出のような事業機会への対応力強化を狙った。⑤人事制度が旧態依然としており、処遇に不満の声が上がっている。
【キーワード】
■サードパーティロジスティクス…委託を受けた第三者企業が、物流業務を行う。
アセット型とノンアセット型があり、アセット型は倉庫や車両などを保有している場合であり、自社設備を使用するため、サービス品質の向上に繋がりやすい。ノンアセット型は保有していない場合であり、様々な倉庫/輸送業者を選択し物流提案が出来るため、顧客のニーズに対応しやすい。
■成果主義のメリット/デメリット…メ①従業員のモチベーションを向上させることができる②年功で自動的に給与や賞与が上昇しないため、人件費負担の増大を回避することが出来る/デ①従業員の組織協力意識が低下する②短期的な成果に拘り中長期的な課題への取り組みが低下する③長期的な人材育成がしづらい恐れ
※参考:成果主義導入においては、目標設定や評価の公平性、透明性を担保し、多面評価、社内公募、能力開発、目標管理制度の機会などが提供される事が望ましい。
※参考:能力主義…職能資格などに基づく昇格/昇級などで、成果主義とは異なる。
※参考:多様な専門人材に対応する人事制度…公平性、目標管理制度、資格やマイスター制度を取り入れ専門知識に対するインセンティブを従業員に提供するなどで、従業員の様々なスキルを正当に評価することなどが挙げられる。
■年功主義のメリット/デメリット…メ①従業員の生活設計が容易になる②長期的な人材育成が可能になる③組織への帰属意識や協力意識を高められる④長期的な人件費見通しの策定が立てられる/デ①若く優秀な人材がいても抜擢や昇進(昇給)出来ず、モチベーションを低下させてしまう恐れがある②実際の能力と賃金のギャップが発生する可能性がある
③組織人員の年齢が全体的に上昇すると、人件費の増大が進む恐れがある。
■物流の2024年問題…昨今の働き方改革に関連した、トラックドライバーの労働条件の改善(年間時間外労働時間を制限(960時間)するなど)に伴う、労働時間の短縮などで、物流全体の貨物輸送の供給力が低下することで発生する様々な問題。
■プロジェクトチーム…複数の部門の専門知識を有するメンバーを集め、特定の課題に取り組むため臨時的に構成される組織。承認数で構成され権限委譲されるため、スピード感、柔軟性などをもって課題に取り組むことが出来るメリットがある。
■ファミリービジネスのメリット/デメリット…メ①経営者=オーナーの為、①迅速な意思決定がしやすく、経営者のモチベーションも向上しやすい②後継者(子女等)を早期から社内に認知させ、次世代の経営者としての教育を実施しやすい/デ①オーナーのワンマン経営となり、コーポレートガバナンスが機能不全に陥る懸念がある②後継者が適切な素養を備えているかどうかが懸念される③ファミリー内での後継者争い等で混乱生じる可能性。