見出し画像

デザイナーが思う「美大で学ばないとデザインの仕事ができない」という勘違い

「美大出身じゃないんですが、デザイナーになれますか?」
「未経験なんですが、デザイナーになれますか?」

キャリア相談でたびたび聞かれる質問のひとつである。
結論から言うと、「もちろん働ける」
「未経験募集」の会社はあるし、美大出身じゃなくても活躍しているデザイナーはいる(かくいう私自身もTHE 美大の出身ではない)
ではなぜこのような質問が後をたたないのか。それは「デザイン業界自体がクローズドであること」「デザインという仕事への誤解」に原因があるのではないだろうか。
この記事では、「デザインという仕事への誤解について」と「非美大生/未経験者の持つデメリット(と対策)」について紹介していく。

「デザインの仕事」ってどんな仕事?

「デザインの仕事」とは、「ユーザーや世の中の課題に向き合い、解決策を思考する仕事」である。
近年は少しずつ広まってきている(と信じている)が、世間一般にはまだまだ「おしゃれでセンスがあって、見た目にきれいなものを作るクリエイティブな仕事」とイメージされがちである。
見た目にきれいなもの、はユーザーの物欲を刺激する大切な一要素ではあるが、デザインの仕事の全てではない。デザインの仕事の本質は「課題解決」にある。

近年、デザイン分野以外の領域でもデザインという言葉が使われるようになった。特にビジネスや経営面で、イノベーションを起こすためには必須と言われることもある。
デザインを「未知の課題/問題に向き合い、どう解決していくか思考していくこと」と切り取ると、クリエイティブな現場だけでなく、どんな領域にも必要な考え方であることがわかる。
そしてアートセンスといった感性が必ずしも必要じゃないことも感じ取ってもらえるのではないだろうか。

デザインの仕事に必要なスキル

上記を踏まえると、デザインの仕事をするには

​・デザイン以外の分野への幅広い興味関心
・課題(やクライアント)に共感する力
・課題を客観視し「まだ見ぬ未知の課題」を発掘する力
・考えを言語化/具現化する力
・常識に囚われない自由な発想
・まずやってみる行動力と積み上げたものをぶち壊す勇気

などなど技術以外の思考や行動に関してのスキルが非常に重要な土台になる。業界や業種も問わないスキルであり、一生モノだ。
この考え方を育てながら、手を動かし技術を身に付け、どんな時代/どんな業界でも活躍できるデザイナーを目指してほしい。

非美大生/未経験者の持つデメリットとその対策

では美大生や経験者と、そうじゃない人の差はなんだろうか。どう埋めていけばいいのか。これからデザインに挑戦したい熱意ある人たちの背中を少しでも押せればと、思いつく限り列挙する。

デメリットその1:デザインの仕事に対する誤解

上述のような「デザインという仕事」に対する考え方がそもそも違う場合。美大生は基礎教育の一環で「アートとデザインの違い」として「デザイン=課題解決」と学んでいることが多い。非美大生/未経験者が「デザイン=きれいなものを作る仕事」と考えていると、面接で落とされてしまうだろう。
ただ、美大生や経験者が誤解していないとはいえ、正しく理解して経験を積めているかというと、現状「そうでもない」ことが多い。美大生も課題解決に焦点を当てた実習を積むことは少ないし、ひたすら技術のみを高める会社も多くあるからだ。
誤解を解き、上述のスキルを身につけていけば、非美大生/未経験者でも十分に戦っていける。そしてこのスキルを身につけるのにクリエイティブな環境は不要だ。今自分のいる環境で、戦い方を身につけてみてほしい。

デメリットその2:アウトプット量の差

美大生は日々の授業で、経験者は日々の業務で、多くのアウトプットを積み上げている。対策は「追いつかなくてもいいからとにかく作ろう」だ。急に根性論で申し訳ない。ただこればかりは作ってみないとわからないのだ。
「アウトプット」と言われたときにトレースばかりをする人がいるが、これはやめたほうがいい。ソフトウェアの習得や、色の規則など基礎教育的に行う分にはいいが、どうしても思考力が低下する。
何かを参考に真似るのはいい。ただ、それを消化し自分なりに解釈し、新たなクリエイティブを生む必要がある。トレースばかりではその観点は育たない。ぜひ課題を見つけて「新しいものを作るアウトプット」を中心にとにかく作ってみてほしい。
そしてできればメンターを見つけて、フィードバックとブラッシュアップを行ったほうが良い。私で良ければ相談にも乗るのでTwitterでDMください。

デメリットその3:デザイナーの知り合いがいない

美大生であれば先輩や教授、経験者であれば職場や取引先など、デザイナーと接する機会が多くある。困ったら相談することもできる。だが、非美大生や未経験者の場合、「そもそも周囲にデザイナーが一人もいない」というパターンが非常に多い。
最初に記載した「デザイン業界自体がクローズドであること」に原因があると思うのだが、相談相手がいないのはなんとも孤独で不安だ。「やってみたいのに何を頑張ればいいのか」と右も左もわからなくなってしまう気持ちもいたしかたない。
対策は「積極的に外にアピールしに行く」こと。TwitterなどのSNSでデザイナーに話かけに行くのもいい。デザイナーが集まるイベントに参加するのもいい。とにかく接する機会を作ろう。
余談だが、私は飲み屋で隣になった人が偶然デザイナーだったり、関係ないところでもデザイナーに出会ったりする。不思議な習性である…。

==============================

現職デザイナーも見つめ直そう

「きれいなものを作るのがデザインの仕事ではない」と断言しているが、おそらく10年前であればそれで食べていけただろう。
だがいまは違う。デザイナーに求められる領域は日に日に広がる一方だ。
目の前の制作物やコンテンツにしか目を向けず、経営やビジネスに興味を持てないようでは、これから需要はどんどん失われていくだろう。
これからデザイン業界に殴り込もう!という熱意ある未経験者や非美大生に負けないよう、現職デザイナーや美大生にも、自分の働き方や考え方に改めて向き合ってみてもらいたい。えらそうにたくさん書いたが私もまだまだ発展途上だ。

==============================

ここまで読んでいただきありがとうございました!