シブヤコミュニティ散歩Vol.11 渋谷が多様な文化の発信地であり続ける理由 道玄坂商店街振興組合 大西陽介さん
渋谷盆踊りをはじめ、渋谷の街のあちこちに楽しいイベントをしかけている道玄坂商店街振興組合の大西陽介さん。大西さんのお家は4代続いて道玄坂に関わり続けており、おばあさまは生きているハチ公に会ったことがあるのだそうです。Vo.2では、そんな大西さんが感じる渋谷の魅力やその秘密、また、渋谷のこれからについて伺いました。
道玄坂で4代目。変わり続ける街を見つめる
ー道玄坂商店街振興組合ってどんな組織なんですか。
大西さん:
この辺りでもともと商売をしていた店主さんが集まって始まった組織です。いまはお店は閉めてビルのオーナーとして道玄坂に関わっている、2代目、3代目の人が多いですね。
ふだんは月に1回清掃活動をしたり、道のあちこちに花壇があるので年に2回花植え活動をしたりといった美化活動を中心に活動しています。
ー大西さんも、ひいおばあさまの代から続く4代目だと伺っています。
大西さん:
曽祖母が呉服屋を開いた縁で、ずっと道玄坂で仕事をしています。1960年代ぐらいまではこの一帯はまだ木造2階建てで、1階がお店、2階が住居、みたいな建物が並んでいて、いまとはぜんぜん違う雰囲気だったようです。そういう街角の写真を集めて、「渋谷アーカイブ写真展」を去年西武百貨店さんで開催しました。展覧会には、3代目の大西忠保が撮影した写真も多数展示しています。
渋谷の音楽にどっぷり浸かった学生時代
ー大西さんと渋谷の思い出は?
ぼく自身は鉢山町で生まれ育っています。小さい頃は、お祭りの時期は道玄坂沿いに縁日が出るのでそれが楽しみで来たり、まだここ(道玄坂センタービル)の1階で洋服屋をやっていて父親の事務所もあったので遊びに来てジュースをもらったり、という感じでこのあたりをうろうろしていましたね。あとは、近所の文房具屋に売ってないものがあると、東急ハンズまで来て探したりもしていました。
中学、高校は電車通学だったのですが、学校帰りには渋谷で降りてあちこちのレコードショップを回るのが日課でした。
ー音楽がお好きだったんですね。
大西さん:
大学に入ってからはDJも始めたので、古いものから新しいものまで、レコードを探しに来ていました。当時はインターネットがないので、お店にいかないと新しい音楽の情報って仕入れられないんですよね。今日はどんな曲が流れてるかな、と思いながらレコード屋を回るのが楽しみでした。あとは、当時あった「SHIBUYA FM」というコミュニティFMの音楽を聴いて、面白いDJが選曲しているのに刺激を受けたりもしていました。
そのうちに、自分もDJをやったり、渋谷のいろいろなクラブを回ったりするようになりました。イベントの告知をするために、自分たちでフライヤーやMIXテープを作って古着屋とかセレクトショップに配って回ったり。けっこう地道な活動なんですよ。
一応大学も行っていましたが、友達はだいたいクラブで出会った人ばかり。ぜんぜん学業には身が入りませんでしたね(笑)。
渋谷の多様性には理由がある
ーDJ活動のほうは、今は?
大西さん:
子どもができてからほぼセミリタイアに近いのですが、それでもいろいろな人に誘ってもらって、いまも2〜3ヶ月に1回ぐらいはやっていますね。
また、昨年からは、渋谷音楽祭に参加しています。昨年は「Dogenzaka Block Party」と銘打って、ダンサーとDJのコラボレーションの企画をしました。渋谷音楽祭は、多様なジャンルの音楽に出会い、交流し、混ざり合うことを目的とした音楽祭です。これだけいろいろなルーツの音楽を聴けるライブハウスやミュージックバー、クラブがあるのは渋谷だけだと思うんです。それは、本当に渋谷の強みというか、魅力だと思います。
ーその多様さは、どこから生まれてるんでしょうか?
60,70年代ぐらいから、渋谷ではいろいろなカルチャーが小さな路地裏で生まれていたという話は聞きますね。あとは、けっこう魅力的な隣街に囲まれているんじゃないかなと思うんですよね。原宿、代官山、裏渋とか奥渋といわれるようなエリアなど、どこを向いても面白い街ばかり。そういう魅力的な街の面白い人たちの結節点になっているのではないでしょうか。
もともとは渋谷の街で面白いことを小さくやっていた人が、家賃が高かったりして周辺に散って行ったと思うんですけど、そういう人たちが集まるとしたら結局渋谷になる。それは他の繁華街に比べても恵まれている気がしますね。
街の変化をしなやかに受け入れる人たち
ー今後の渋谷に期待するところは?
大西さん:
パリといえば世界中の人がエッフェル塔をイメージするように、東京や日本と言ったときに、渋谷の景色がまっさきに出るようになったら面白いと思っています。もしかするとスクランブル交差点はもうそういう存在になりつつあるのかもしれませんね。
この先にどうなるか、というのは正直わかりません。たぶん半世紀前の人も、今こんなふうになっているなんて思いもよらなかったはずです。たとえば、60年代の渋谷ってぜんぜん若者の街ではないんですよ。だからいま若者の街と言われていても、いつまでもそうだとは限らないと思います。いい意味で時代の流れに乗っていく場所なんでしょうね。まちづくりの視点でも、新しい取り組みをやっているのは渋谷ですし、先取りの精神は街に根付いていると思います。
地元の人も、あまり過去にとらわれないというか、変化に対して柔軟な人が多いです。お年寄りでも「昔はよかったね」としんみりするような感じはあまりないですね。
住んでいる人も含め、そういう柔軟さやしなやかさが、渋谷の魅力でもあるんじゃないかなと思っています。
店舗情報
道玄坂商店街振興組合
https://shibuyadogenzaka.com/
渋谷音楽祭
2024年度開催日程:
10月21日(土)、10月22日(日)
https://shibuyamusicscramble.tokyo/
ライタープロフィール
八田吏
シブヤ散歩新聞副編集長。ライター/ディレクター。産前産後の家庭と産前産後の家庭とサポートのプロをつなぐマッチングサイトMotherRingディレクター。自宅から一番近い繁華街が渋谷なので、映画に行くのも友達とのお茶も、本や洋服などの買い物も、だいたい渋谷区内で完結しています。