米国のアクセラレーターで学んだ、顧客の「真の課題」を見つける方法
現在米国のアクセラレーター(いわゆる起業家養成講座)で学んでいるのですが、その内容が日本のスタートアップ起業家やこれから起業を志す人にも役立つと思ったので、シェアすることにしました。
ちなみに僕の場合はこれから起業をするというわけではなく既に既存ビジネスがあるのですが、海外展開や新たな顧客開拓といった観点でとても学びが多かったです。既にある程度顧客がいる事業をやっている方も、改めて考えてみると発見がきっとあると思います。
アイデアではなく、課題から始めよ。
「良いビジネスアイデア思いついた気がする!」
これは起業を志す人なら誰もが少なからず体験することだと思います。その上で、よくよく考えてみると実現が難しかったり、ニーズがなさそうだったり、既にやられていることだったり、一晩寝て起きたら「やっぱり大したことないかも・・」と冷めてしまうことも多いでしょう。
米国のアクセラレーターでは、製品やサービスのアイデアではなく、「顧客の課題を考えることから始めよ」としつこく言われます。投資家へのプレゼンでも、あなたの事業はどんな課題を解決するのですか?というところからスタートすべきと言われます。
つまりは、アイデアファーストではなく、課題ファースト。もちろんアイデアは必要なのですが、この事業を絶対にやる!と心に決めたアイデアがある場合でも、まずアイデアの深掘りではなく顧客課題の深掘りから始めるのです。
それではここからは、顧客の真の課題を発見するための方法として使われていたものをシェアします。「真の」という部分がミソです。顧客の課題をできるだけ深く考えるためのフレームワークのようなものだと僕は理解しました。
Problem Statement - 顧客の課題を一文で簡潔に表す
まずはシンプルに、思いつく顧客の課題を書き出します。必ず一文である必要があります。この時点では顧客像がそこまで明確でなくて構いません(むしろ自分であっても良いです)。
ここでは、App Ape というアプリ市場分析サービス(自社サービスです)を例にしてやってみることにします。
例)どのアプリがどのくらい使われているのか知りたいけど分からない。
スマートフォンの急速な普及に伴って、世の中には今や無数のアプリがあります。でも、どのアプリにいったいどのくらいユーザーがいて、どういう人たちにどのくらい使われているのか?といったデータはブラックボックスです。これは前職で勤めていた時に自分も感じていた課題です。(個人でアプリ開発もしていたので)
WHY is it a problem? - なぜそれが課題になっているのか?を書き出す
次にやるのは、先ほど書いた課題に対して、なぜそれが課題になっているのか?を書き出すという作業です。先ほどの課題を要素分解(3-5個)して、より詳細にするというステップです。
例)
A. 競合アプリのデータが分からないと困る(Competitive Landscape)
B. 自社アプリの市場規模や市場トレンドが明確に分からない(Market Opportunity)
C. アプリストアを眺めているだけでは肝心な情報が足りない(Alternative)
D. アプリ同士を比較してどちらがどの点で優っているのか分からない(Comparison)
E. ネットで調べても情報が散らばっていたり古かったりする(Information - inconvinence, freshness)
これを考えるときに役立つのは、「メタファー」です。何か分かりやすい他のものに例えて考えてみるという方法です。
例えば僕の場合は、「野球選手の成績データが存在しなかったらどんなことが困るだろう?」と考えました。きっと監督は選手の采配に困るでしょうし、新人をスカウトする際にもかなり困るでしょう。そして、対戦相手のデータがなかったら戦略を立てるのが困難なはずです。選手一人一人の詳細なデータがないと、なんであのチーム強いんだろう?ということがはっきりと分かりません。こんな風に考えていけば、課題が浮き彫りになってきます。
また、このレッスンは英語で受けていたので括弧書きで英語のキーワードが書かれていますが、このようにキーワードを抽出しておくと後で役立ちます。
それぞれ、「競合状況」「市場環境」「代替手段」「比較」「情報収集(便利さ、鮮度)」といった具合にまとめました。
WHY is this true? - なぜそれが正しい課題だと言えるのか?を突き詰める
さて、次のステップですが、ここが一番疲れるところです。脳ミソを使います。
先程リストアップしたA-Eのそれぞれについて、なぜそれが本当に課題だと言えるのか?を何度も自分の中で問答します。
以下のように行います。
A. (競合アプリのデータが分からないと困る)
1 - なぜAが正しいと言えるのか?(競合調査は戦略の立案に不可欠)
2 - なぜ1が正しいと言えるのか?(企画資料に競合比較という項目が必要)
3 - なぜ2が正しいと言えるのか?(敵を把握しないと正しく差別化できない)
4 - なぜ3が正しいと言えるのか?(そうしないとユーザーに使ってもらえない)
5 - なぜ4が正しいと言えるのか?(自社アプリを使ってもらえないと困る)
といった具合に、できれば5回ほど繰り返すと良いとのことでした。これ、実際にやってみると5回も自分で問いかけ続けるのはかなりキツイです。
しかしやってみて分かったのは、これだけなぜ?なぜ?と続けると、よりはっきりと自分の中で腑に落ちるということです。後々投資家から様々な質問をぶつけられた時に、きっと役に立つことでしょう。
このプロセスで大事なのは、「それって理由の説明になってる?」というロジックではなく、本当の悩み・ニーズを引き出すことです。上記の例でいえば、競合調査って戦略立案に必要だよね→資料に入れるもんね→差別化考えるよね→だって自社アプリ使ってもらいたいもんね!といった具合にニーズが浮き彫りになってきています。
B-Eに関しても同様に5回ずつ問答をしたのですが、長くなるのでここでは割愛します。後日Twitterでつぶやきたいと思います。
@shibushuta (良かったらフォローしてください!)
Commonalities and Differences - 共通点と相違点を見つける
上のプロセスで問答を繰り返したものを全体的に眺めてみると、いくつか共通点が見つかると思います。それは大事なキーワードである可能性が高いので、留めておきます。例で言えば、データ・戦略・情報といったワードが良く出現してきました。
一方で、相違点も浮かび上がってくるはずです。相違点が浮かび上がってくる理由としては近しいけど異なる悩みを述べている場合や、想定している顧客の層(ターゲット)が少しずれている可能性などがあります。例で言えば、Aというアプリの視点から競合であるBというアプリを見るのと、客観的に見てAとBを比べて分析したい(メディアなどの視点)という場合でニーズが少し異なるといった具合にです。
Revised Problem Statement - 顧客の真の課題を捉えた一文をつくる
さて、ようやく最後のステップです。上記までのプロセスを踏まえて、想定する顧客の課題をできるだけ明瞭に、要点を捉えて再度書き直します。そう、「真の」課題を書き出すのです。
例)アプリビジネスの関係者達は戦略を練るために情報収集したいが、市場環境や競合状況を把握するための、便利で鮮度の良いデータがなくて困っている。
コツとしては、「誰が」「どんな課題を」「なぜ」抱えているのかが分かるようにすると良いです。入れたい要素をできるだけ網羅した上でシンプルさを保つのはとても難しいですが、あくまでこれは自分のために使うものなので、最初の文を書いた時よりも顧客の課題がクリアになっていればそれでOKです。作文に拘ることよりも、最初と比べて顧客の「真の」課題と言えるものが見えてきたかということが大事です。
また、こういった思考を繰り返すプロセスも大事ですが、同時に顧客の悩みを直接聞くことも重要です。それによって、顧客の課題がよりクリアになっていくのは間違いありません。考える→悩みを聞く→考える(顧客の課題をまとめる)という繰り返しによって、ブラッシュアップしていきましょう。
最後に
このnoteでは自分が起業初期に戻ったつもりで例を書きましたが、実際はプロダクトの海外展開のために別のバージョンでやりました・・・「米国で成功したアプリを国外に展開する際に、ターゲット国のアプリ市場の情報がないと困る。」みたいな課題から入りました。これ、実は日本企業が海外展開する際も同じことが言えるんじゃないかと思います。(ここからは宣伝です。)
App Apeでは去年から日本だけでなく米国・韓国・インド・インドネシアなどの海外アプリ市場データも提供していますので、アプリの海外展開をお考えの際は是非参考にしてみてください!
データから市場のポテンシャルを見たり、国外での競争状況を把握したりするのは攻めの意味でも守りの意味でも重要だと思います。
個人単位でも気軽にクレジットカード決済でご利用いただけるようになっていますので、起業直前直後の方や、アプリに興味のある社長さんや社長室・経営企画室の方がまずは1アカウントから使い始めるのもオススメです!
ということで、米国アクセラレーターでの学びをシェアしてみました。好評であれば他のレッスン(Empathy Drawing, Human Insight, Target Market, Value Propositionなど)に関しても記事にしていこうかなと思います!
最後に、我々の事業への想い(顧客の課題解決に対する)がこちらにまとまっていますので、良かったらご覧ください!
サポートいただいたお金は、母校である高専や故郷の新潟など、後世や地域のために活用したいと思います。 よろしくお願いいたします!