No.80 「ラグナクリムゾン」備忘録特別編 --アニメ「ラグナクリムゾン」のキャスト雑感--

0. Abstract

 先日, アニメ「ラグナクリムゾン」のキャストの第一弾が発表された. 

これを受けての雑感を述べる. また良い機会なので声優のキャスティングについての「一般論」とそれに基づく2つのパターンについて短くまとめ, それも踏まえた上で未発表のキャストの予想を備忘録としてlistしてみる. 

1. 発表されたキャストの雑感

 私の一番最初の感想は

監督 高橋賢 『あ, 大沼心じゃなくて「作監」が来たんだ.』
ラグナ役
小林千晃 『誰? この人... ねぇ…… 誰なの? 怖いよおッ!!』
クリムゾン役
村瀬歩 (三度見してから)『ファッ!?』
レオニカ役
水瀬いのり 『予想通り過ぎて草も生えん...』

であった. 監督に関しては以前のnote

https://note.com/shibushibuyanyan/n/n65b0a9a26322

で触れたので, ここではこれ以上は述べない. 小林千晃に関しては本当に文字通り知らないし, 水瀬いのりに関しても以前の予想通り

https://note.com/shibushibuyanyan/n/n903dd40b194f

だったので, その通りの反応になった.
 問題はやはりクリムゾン様で

クリムゾン役 村瀬歩

は余りにパワーワード過ぎて驚愕した. 以前のnoteでも繰り返し言ってきたが

「クリムゾン様は絶対, 井上麻里奈がbest solutionだ」

とこの4年くらい信じて疑ってなかったことも大きい (これを越える「解」など存在しないと思っていた). おかげで週末の紅葉狩り中で山中を歩いていたのに

「村瀬歩でクリムゾン様の解を構成する」

という命題を考え続けるハメに... 
 で,「ラグナクリムゾン」の作中のクリムゾン様のセリフを, 片っ端から私の脳内の村瀬歩にしゃべらせるsimulationを行い検討した結果,

『全く驚くべきことであるが, 確かに村瀬歩はクリムゾン様の「解」である. しかしまずそんなことは思いつかない. 仮に思いつけたとしても, それにGoサインを出す勇気は私にはない』

という結論に. 

 ちなみに

ラグナ役 小林千晃

の方も, 詳しくはわからないが, 多分「正解」だと思う. というのも, ラグナのCVは, 4年以上折に触れて検討してきたが, 少なくとも私が知っている声優の中に「正解」は存在しなかった. つまり「正解」があるとすれば, 私の知らない人でなければならなかったので, 小林千晃は少なくとも「解」の必要条件は満たしている.
 ただし, ラグナというキャラクターはかなりの難物で, 「解」の構成は非常に難しい. ラグナは死神ラグナとの関係性といい, あのクリムゾン様が持て余すほどに, 色々な意味でチグハグで, 定まらないことが本質だからである. 本来, タイムリープした場合, こういう記憶や意思の混濁や混乱, それに伴う精神的な不安定さや揺らぎというのは必然的な事象で, そこを如何に描写するかが重要である. にも関わらず, 殆どのタイムリープものはこの点の考慮をすることが殆どない. 「ラグナクリムゾン」はこの辺を非常に丁寧に描写しており, それが魅力の一つだが, 同時にそれゆえにラグナは非常に難しい役どころになっている(伊達に私が4年も「解」を想像できなかったわけではないのだ). だから, その小林某がどんな「解」を構成するのかは割と興味がある. 
 もう一点気になるのが,

「老ラグナを誰がやるか」

ということ. つまり老ラグナと少年ラグナで声を変えるのか, 変えないのか. 変えるとしたら誰にするのか. 個人的に老ラグナで声を変えるなら(これも前から何度も言っているように), 三木眞一郎だと思うのだが, どうなることやら. 

2. 声優のキャスティングについて

 その前に, 良い機会なので, 私が考える声優のキャスティングについての「一般論」を少し述べておく. そもそも声優の仕事は, 私はこの「用語」を非常に気に入っているが, 

『その「役」に対しての「解」を構成すること』

であると考えている(ここで「解」は未定義に用いる. 実際, 定義することはかなり困難だと思う). 巷間言われるように『「役」を作る』のではなく, それより高度な『「役」に対しての「解」を構成している』のである.
 実際, アニメはキャラや役で成立するわけではない. まず前提となる原作ないしは脚本の「流れ (flow)」や「時間発展 (dynamics)」が存在する. その前提を踏まえた上で, その「流れ」をアニメという形で具体的に実現する. で, 声優はその実現された「流れ」に沿った形の「役」の「解」の構成するのである. 
 これは『「役」を作る』と同じに感じるかもしれないが, 厳密には違うと考えている. たとえば同じ声優が同じ作品の同じ「役」を演じるにしても, 演じている媒体がアニメなのか, ドラマCDなのか, 朗読劇なのか, 舞台なのか等々に応じて「解」としては変わってくる. それは同じ作品でも媒体によって, 「流れ」が変わってくるからである. だから声優は単に『「役」を作る』よりも高度な仕事をしているのだ. 

 以上の持論を踏まえて, 更に声優のキャスティングを考えると, 次の2つのパターンがある. 

I型 その声優自身を「解」としてキャスティングするパターン
II型 その声優が, 諸々を踏まえて構成するであろう「解」をキャスティングするパターン

 これも一見わかりにくいかもしれない. 実際, 上述の持論に則るならば, 厳密には全てがII型とも言える. だが, これを区別するにはかなり主観的な理由がある. それは, たとえば「ラグナクリムゾン」でも「ワールドトリガー」でも何でもいいが, 適当な(狭義には良くできた)作品を読んでいる時にキャラから声が聞こえてくることがあるからである(ゴミみたいな作品ではこういうことは起こらず, やはりある程度完成度が高い作品固有の現象だと思われる). つまり, 小難しいことをあれこれ考えずとも, キャラが最初からその声でしゃべってくるのである.
 どうもこれは私だけの個人的な体験というだけではないある程度普遍な現象のようで, あるいは本当に, 作者がそのキャラを描いている時に最初からその声優をイメージして描いている可能性さえある気がする. つまり「文字通り」の意味で

『最初からその声優自身がそのキャラの「解」として構成されている』

というケースが, 特に声優の影響が大きくなった近年(ここ20年くらい?)の作品では, 少なからずあると考えられ, それをI型と呼んで, 通常のII型と区別しているのである. 
 つまり直感的に誰それと決めてしまうのがI型で, 仮に想定した「解」から適切な声優を探すのがII型である. 標語的に言えば

「解」ではなく声優から考えるのがI型
声優ではなく「解」から考えるのがII型

ということになるだろう. 

3. ``ぼくのかんがえたさいきょうの''キャスティング

 今後情報がopenになるにつれ, これは意味の無くなることなので, 文字通りの「備忘録」として記録しておく. ついでなので, 上述のI型II型の区分も併せて述べておく. 

 まず翼の血族から. アルテマティア様は, これまで無限に言い続けた来たが, 

上田麗奈

一択である. もちろんこれは典型的I型で, 初登場の

「世界よ 静止なさい」

の時から上田麗奈の声で聴こえた. 実際, 声から一切の「色」を排除して(これは存外難しく, 完璧にできる人はそう多くないと思う), まっさら, 真っ白にして純粋に狂っているという「最適解」は, 現状これしかないのではないか. 
 次いでウォルテカムイも, 散々言ってきたように, I型

鈴木達央

一択だったのだが, 件の騒動があったので若干ゃ微妙になってしまった. これが余りにbest solution過ぎて代打の候補が浮かばない(銀英伝DNTの第4章で鈴木ポプラン君は三木シェーコップと一緒にイゼルローン要塞で女を引っかけまくっていたから, まぁもう問題ないとは思うのだけれど, 確かにリスクがないわけではないのだろう). II型の方から考えて, ワンチャン

小林親弘

はアリ(つまり彼ならばどんな「解」を構成するかは興味がある)だと思ったが, 自信はない. 
 トロワ君も完全にI型

緑川光

一択(福山潤あたりでもいいと思うが, 後述するように福山潤は別の役で使いたいのでここは外す). 異論ある? 
 ボルギウスは老人と青年を同じ人にするか否かでキャスティングが変わる. I型的には変えた方がいい事例で, この場合は

老:秋元羊介 青年:前野智昭

だと思う. 老人と青年を同じ人にやらせる場合は, 少し悩むが, II型的に言って

森川智之

かなと(老人の方は利根川先生の変奏でうまく「解」を作れそう). 
 難しいのはオルト-タラコンビ. この2つはセットで指定した方がいい事例で, I型で行くには, 難しくII型で考えた方がよいタイプ. それで思いついたのは次の2組である. 

解1 オルト:杉田智和 タラ:中村悠一

解2 オルト:福山潤 タラ:小野大輔

解1の杉田智和は「DRIFTERS」のサンジェルマンのイメージ, 中村悠一は「ゴブリンスレイヤー」のドワーフのイメージの変奏から(もちろん杉田-中村というメタ的関係もある. その関係をオルト-タラの関係にも応用することも想定している). 解2は「黒執事」のグレルとセバスチャン(声の質は違うけど路線としては近い気がする. というか小野Dのこういう役の「解」に興味がある)の変奏からである(なんかポプテピピックみたいだな). ちなみに順番を位階順にしていないのは, タラテクトラよりもオルト・ゾラの方がしゃべる量が圧倒的に多いので, pairで考えた時に声優の役としてメインとなるのがこちらだからである(ちなみにタラちゃん単品だと安元洋貴も考えたのだが, 彼には別の役の方が合う気がしたのでそちらに回した). 
 ネビュリムはI型

梶裕貴 or 花江夏樹

あたりに聴こえた. 実際, ネビュリムは``2部''でも主要キャラになる可能性があるので, 同じく``2部''の主役レオの水瀬いのりとの兼ね合いで結構重要ポジションだから, それなりのキャストを選んでくると思う. ただ``2部''の展開が明らかになる前に声優の選定が行われていた可能性も十分あるので(実際, ネビュリムの再登場は最新話だったし), その場合はまた様相が再度変わるかもしれない. 
 メルグブデは, II型で「いい感じの Kamase or Hetare」ということから考えて, 

下野紘

にしてみました(``いつもの下野紘''をデブボイスにチューニングしたらどういう「解」になるかが気になるということもある). 
 ドルニーアは情報量が極端に少なくて判断材料が乏しい. だからなんとも言えないが, なんとなくI型で微かに

津田健次郎

の声が聞こえるような気がする(しいて言えばリメイク版の「月姫」のヴローヴからの連想なのかな?). ただツダケンを使うには出番が少なすぎるなと.
 グリュムウェルテは明らかにI型

安元洋貴

だろう(安元洋貴に「血は炎」とか「血主」とか言わせれば, それでグリュムウェルテになる). 
 
 以上をまとめると, 翼の血族は

アルテマティア:上田麗奈 (I型)
ウォルテカムイ:鈴木達央 (I型) or 小林親弘 (II型)
トロワ:緑川光 (I型)
ボルギウス:森川智之 (II型)  or 老:秋元羊介 (I型), 青年:前野智昭 (I型)

タラテクトラ-オルト・ゾラ:
解1 オルト:杉田智和 タラ:中村悠一 (II型)
解2 オルト:福山潤 タラ:小野大輔 (II型)
ネビュリム:梶裕貴 (I型) or 花江夏樹 (I型)
メルグブデ:下野紘 (II型)

ドルニーア:津田健次郎 (I型)
グリュムウェルテ:安元洋貴 (I型)

というlistになる. 

 次に銀装兵団. もう長くなってメンドーだから, ゴチャゴチャ言わずにいきなりlistを提示すると

スターリア:早見沙織 (I型) or 小清水亜美 (I型)
アイク:細谷佳正 (I型)
ガルム:中博史 (II型)
クリス:小山剛志 (II型)
シン:田村睦心 (II型) or 藤原夏海 (II型)
へゼラ、グレア:種崎敦美 (I型)
フー:遊佐浩二 (I型)
マジョルカ:井澤詩織 (II型)
ナサレナ:石上静香 (II型)

となる. I型の注釈はいらないだろうから, II型で想定した「解」(無論これは「第0近似」で実際には更に色々「フィルター」をかけて考える)とそこからの連想の過程だけ簡潔にそれぞれ述べるなら, 

ガルム:武闘派系つよつよ細目おじいちゃんキャラ ~ ヴィザ翁(ワールドトリガー) ~ 中博史 (ガープもやってるし, ヴィザと足して2で割るといい感じな気がする)

クリストファー:熱血系有能副官兄貴キャラ ~ クロウ(うたわれるもの) ~ 小山剛志

シン:武闘派系小生意気少年兵キャラ ~ 田村少年 or セオト (86) ~ 田村睦心 (II型) or 藤原夏海 (II型)

マジョルカ:クレイジーサイコレズ系変態妹キャラ ~ 井澤詩織

ナサレナ:技巧派系有能ゴリラ裏切り(黒幕)キャラ ~ 石上静香

という感じ. 

 ついでにクリムゾン様の愉快な下僕たちにも言及しておくと

スライム:金田朋子 (I型)
ゴーレム:高木渉 (II型)
キメラ & ヘビ:蒼井翔太 (II型)

となる. ゴーレムはコミカルとシリアスの振れ幅から選定して(千葉繁御大も考えたが, クリムゾン様を引き立てるためにあえて少し``抑えて''みた), キメラ & ヘビは完全に

クリムゾン:村瀬歩

への「当てつけ」(ソッチがその気ならコッチもその気になったらぁ!! これで文句ないやろ!!). ただ, その割には存外悪くない「解」が得られそうな気がする. 

 その他, 重要そうなところを挙げると, ``2部''のクリムゾン様の気配が濃厚なギルゼア様

水橋かおり (I型)

で, No.2 狩竜人のサイクス君「小物界の大物(ガチ)」から

小西克幸  (II型)

あたりか. 最後に「陽キャ系オバカKamaseキャラ」である第13位階ウルシュガウルン君

吉野裕行 (II型)

を推しておこう. 

 これでレーゼ王等のこまいキャラを除いて, 大多数は網羅できたはずである. 現時点での``正答率''が3割(レオの水瀬いのりだけ合っていた)だから, まぁ, 上述の3分の1でも当たれば「大健闘」と言っていいだろう. 
 ついでに言っておけば, レーゼ王は柴田秀勝 (I型) かなと思う. ただそうすると, 老ボルギウスも秋元羊介よりも, 飯塚昭三のイメージになる気がする. このように声優のキャスティングは特定のキャラに関してのbest solutionsを積み上げていけば成功するわけではなく, 全体のバランスが大事なので, そこの兼ね合いも難しく面白いところだと思う.

 それに私の予想の正否はともあれ, この制作スタッフは, 少なくとも声優の選定に関しては間違えない気がする. まぁ, 後は製作体制やら, スポンサーや事務所のpower politicsやらの諸々の制約を乗り越えて, どこまで希望通りのorderを通すか次第だろう. 

4. まとめ

 今回は声優のキャスティングに焦点を絞ってやってきたが, まぁこれに関してはある意味で

「良くも悪くも画竜点睛」

なので, 問題はそれ以前の段階でケッ躓かないことである. それも含めて, 現段階でopenになっている情報からアニメ「ラグナクリムゾン」の私の見解をまとめると以下のようになる:

・キャラデザは不安. 微妙な表情やら色合いやらがなんか違う. 小林大樹の絵は割とclearなので, 普通にtraceしてもそんなに作画コストはかからないと思うのだが, 妙なdeformをされている気がする. 
・音楽(ある意味声優よりも重要)も不安. 澤野サウンドとか, 岡部サウンドのように壮大だったり, 重厚だったりする必要はないけど, 「ラグナクリムゾン」の曲はもう少し重く, darkな感じだと思うんだけど. 
・監督は信用していい(と思う).
・キャストで読み取れる制作の姿勢は, 私が(ドン)引くぐらい, 攻めまくり. これは, 大ハマりするか, 大ゴケするかのどちらか(いずれにしろ大荒れの場)になる予感(現状の期待値は4:6 or 3:7ですかね)...

 本当に良いアニメなんて, 年に数本程度(5本はまずない)だから, 基本的にはアニメに対する期待値は低い(尤も最近では「期待値が低い」のはアニメに限った話ではないが). 無論「ラグナクリムゾン」が本当に良いアニメになってくれることをもちろん望んでいるが, どうなることやら. 
 まぁ最悪の場合, 細かい問題点は全部無視して,

『「ラグナクリムゾン」という鬼才小林大樹のartに対し, 今のアニメ(業界)はどこまで追いすがり, 食らいつき, 戦えるのか』

という観点から鑑賞して楽しむことにする(「なかなかやるじゃん」となるか, 「やっぱり10年は早かったね」となるか...).

いいなと思ったら応援しよう!