No.2 成海瑠奈(なるみるな)回文問題

令和3年12月29日(水)追記:本``研究''(?)のきっかけを与えてくださった成海瑠奈女史に謝意を申し上げ, その引退の記念にこのnoteを捧げる. 

0. Abstract

成海瑠奈(なるみるな)回文問題に関するTwitterの方のつぶやきを整理, 加筆し, まとめた. ちなみに本稿は一連の騒動とは何の関係もなく, 一切触れない (彼女のことは件の騒動以前には知らなかったし, それ以後も個人的興味はない). 

1. Introduction

 近頃何かと話題になっている(?)「成海瑠奈」が何故か気になっていた. 何日かそのままだったのだが, ふとその名前が読みまで込みで回文(なるみるな)になっていることに気付いた(これが妙に気になって頭に残っていた原因だった). この事実に気付いた人はそれなりにいたようで, むしろ私などは大分遅れていた部類であったようである. と同時に「珍しい事例だ」と思い, 他の例やそのカラクリについて少し考えてみた. 更にその応用として, 同種の日本語の回文的な名前を系統的に構成する方法を与える.

2. Some examples and analysis

 まず手っ取り早く思いつく, popularな姓, 田中, 佐藤, 鈴木あたりを考えてみると

たなか なた
さとう とさ
すずき ずす

となり, どうもしっくりこない. もう少し真面目に考えて思いついたのが

かみき みか
まえだ えま

でいずれも5文字かつ女子っぽい例になった. そうでない例として

こばやし やばこ
おかもと もかお

を思いついたが, 流石にこれは変である. 

 以上のように適当な姓から考えるとうまい例を構成できない. そこで原典になった「なるみるな」を反省してみる. すると名前の「るな」の逆順が「なる」になっていることに気付く. 一見, 当たり前のように思えるが, この発想はなかなかに応用が効く. 実際, 名前を「るな」にfixすれば, 「なる」姓は基本よいので, たとえば

なるき るな
なると るな

がその例になる. またこの変奏で名前を「りな」にすると

なりき りな
なりた りな

もよいことがわかる. 

 これらの例を観察すると, いずれも5文字かつ女子っぽい名前に落ち着いていることがわかる. この現象はたとえば以下のような説明(?)ができる. まず日本語の回文は中心点が無いと同じ音が続くので奇数になりやすい. ゆえに名前の回文の最小単位は5文字である. 1文字では何もできず, 3文字では名前か姓のどちらかが1文字, その残りが2文字であるので日本人の名前としてはそもそも殆ど例がないからである. 次に姓と名で, 3-2に分かれることが多く, 2文字の名前は女性的(?)になりやすいのであろう. 

 無論それぞれの過程に反例はある. たとえば偶数文字の回文も

なか かな

のようにあり得ないではない. ただし, これよりはやはり

なかい かな
なかお かな
なかた かな

のような5文字の方がより現実的な名前であろう. 
 また5文字であっても姓と名で2-3に分かれる例もある. 典型的なのは「おだ」であり, 

おだ さだお
おだ まだお

のようになる. これは同時に5文字の回文で男性的な名前の例にもなっていることに注意しておこう. ただし, この例は後述する回文的名前をある程度組織的(?)に構成できる成海瑠奈的構成法(あるいはその変奏)からは作りにくい例であるので, その意味で例外的であると思われる. 

3. ``narumiruna''-type construction and its examples

 以上のように, 一般に日本語の名前の回文の例としては, 「成海瑠奈」のように, 5文字かつ姓と名で3-2に分かれる(女性的)場合が多いことが推察される. 以下これを「成海瑠奈的回文」と呼ぶことにし, この観察を逆に応用して, 同様の例をある程度系統的に構成する方法(成海瑠奈的構成法)を考える. それは先にも少し述べたが, 苗字から探すのではなく, 2文字の名前を先に決めてその逆順で意味のある音を探す方法である.
 先に述べた例は「るな」, 「りな」, 「みか」, 「えま」, 「かな」であり, これらの逆順が「なる」, 「なり」, 「かみ」, 「まえ」, 「なか」になることから, 3文字目のvariationに応じて, 成海瑠奈的回文の例が構成できることになる. 以上はいずれも女性的例であったが, たとえば名前を「りお」, 「みと」にすれば

おりた りお
とみた みと

といった男性的(VTuberか!!)な成海瑠奈的回文も構成できる. 

4. Concluding remarks

 以上のように成海瑠奈から出発して, 同種の日本語の回文的名の系統的な構成とその例を与えた. 成海瑠奈的回文であれば, 成海瑠奈的構成法により恐らく全ての意味のある例を列挙することも可能なorderであり(高々50^3=125,000個で実際にはこれよりも遥かに少ないと思われる), 本来ならばそこまでやって何かしらのlistを構成するところまですべきなのであろうが, 流石にそこまでの労力を割く気も手間もない. また「おだ」の例のように, 5文字でも2-3に分かれる例の構成は, 3文字の名前の1文字目を無視してから逆順を考えるというやや変則的な方法が必要になる場合もある. 更に7文字以上の例(そもそもどの程度存在するかもわからない. 恐らく5文字の場合よりもずっと少なくなると予想される)の構成にどれくらい有効かの検証は行っていない. 

 そもそも私はこの手の専門家(こういうのは言語学系が一応専門家になるのだろうか?)ではない素人なので, 以上の考察は主観的であり, 先行研究も一切調べていない. 既に専門家の手で何かしらの研究が成されている可能性も十分あるが, とりあえず個人的備忘録としてまとめた次第である. 

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