渋谷社会部 ~視覚障害者を取り巻く環境。今と未来~
出演/
小林幸一郎さん(NPO法人 モンキーマジック代表理事)
水谷理さん(NPO法人 モンキーマジックコーディネーター)
小田浩一さん(視覚障害リハビリテーション協会副会長、東京女子大学教授、NPO法人 モンキーマジック理事)
堀池沙知子さん(株式会社ザッパラス ウートピ編集部)
編集/西山真莉絵
テキストライター/株式会社アスカ21 https://www.asca-voitex.jp
2016年12月13日(火)9:00-11:00放送
小林:おはようございます。ここからは、社会部ということで毎週第2火曜日午前9時から11時は私どもNPO法人モンキーマジックの小林とお届けしてまいりたいと思います。NPO法人モンキーマジックというふうにいいますのは、主に視覚障害の皆さんを対象に、最近ちょっとはやっておりますクライミングというスポーツの普及の活動を通じて、社会をもっと多様性を認め合えることのできるユニバーサルな社会、もっとハッピーで元気な社会をつくっていけたらいいなということで活動を続けているNPO法人です。
2005年に設立されまして、はや12年目の活動になっていまして、私自身も実はこのラジオでしゃべらさせてもらってるんですけれども、目が見えていない視覚障害でして、目が見えないっていうともう全盲の真っ暗闇の世界で生きてらっしゃるんですかなんていうふうによく言われるんですけども、私自身は今48歳です。
モンキーマジックっていうのは猿ですけど私申(さる)年の干支でして、もうすぐ私どもの申(さる)年が終わってしまうというさみしい12月なんですけども、今48歳なんですけども人生の途中28歳で目の病気ですよというのが分かって、だんだん病気が進んで目が見えなくなってきて今はこんなぐらいの見え方というか、明るい暗いが分かる程度になってるそんな私がラジオを通じて皆さんに番組を毎回お届けしております。
2時間の中なんですけれども、毎回ゲストお越しいただいてゲストの皆さんとのお話という形で進めさせてもらうんですけども、最初は私どもNPO法人モンキーマジックの最近の活動をちょっと二、三トピックを拾って皆さんにお届けするというところから始めさせていただいておりますが、きょうは私のほかに今ここには3名おりまして、そのうちの一人モンキーマジックのスタッフの水谷君から最近のモンキーマジックのトピックのことをちょっと紹介してもらおうと思います。
水谷:NPO法人モンキーマジックの水谷です。ちょっと声がこもってる感じします?
小林:うん。なんかいつもとちょっと違う感じが。なんか割れてる?ラジオの皆さーん、どうですか。
水谷:これは適宜戻ってくとは思うんで大丈夫だと思います。最初は、まずモンキーマジックの最近のトピックをお伝えしてから、本編にいこうというのが毎月の流れになってるんですけども、今日は二つですね。小林さんからメーンにお話しいただければと思うんですけど、一つは箕面ビールビアフレンズモンキーギフトセット。
小林:これ実は今年の夏から始まった企画なんですども、最近クラフトビールってはやってるでしょ?最近、家のほうにもない?なんか下北のほうにもお店行ったとか言ってたでしょ、オサムがね。
水谷:下北沢、はい。
小林:ビール屋行ってこの間うまいビール飲んできたとか言ってたけど。
水谷:あれ箕面ビールさんのビールも置いてありましたね。
小林:ね。
水谷:あそこは(店名)何だっけ。。
小林:最近ちょっともの忘れが激しいらしい。そんなクラフトビールっていうのの昔は地ビールなんていうふうによく言ってましたけれども、そういうビール屋さんと私どもモンキーマジックがタイアップをしてモンキーマジックのサポートのため、支援のための活動支援を意味合いとして含めたギフトセットをつくってもらいました。
今年の夏が第1回目の企画でお中元というのがテーマでお中元、ビアフレンズモンキーギフトセットという感じなんですけれども、ことしの夏お中元のギフトセットがありましてことし冬になりましてお歳暮という感じでしたので、モンキービアフレンズギフトセット今やってまして15日まで。きょう13日?
水谷:あと3日です。
小林:あと3日。申し込みあと3日ですので、私どもモンキーマジックのホームページからお申し込みいただけましてビールが3本、これ何で箕面ビールっていうのと僕らが組んでるかっていうと、私たちが法人の設立10周年の記念のパーティーをやろうということになりまして。
たまたま恵比寿のレストランに下見に行ったときに「おいおいオサム、ちょっとビール飲もうぜ」ってビール頼んだところ、「小林さん大変です」「何?」「王冠に私たちモンキーマジックのロゴと同じような猿がいます」ということを教えてくれて、「何? 何?」っていうことでその場ですぐにスマホで調べてもらって、こんな会社があるんだ、しかもこのビールうまいじゃんいうことですぐにつてをたどってなんとか社長にアポイントを取り付けて1カ月後にはちょっと社長に会いに行って、私たちこういう団体なんです、来年1年間申(さる)年が始まります。この申(さる)年をきっかけにしてこれまで組み合わさったことがない障害者とビール、アルコール飲料というものを組み合わせて既存の考え方にとらわれるのではなくて、新しい組み合わせの中から世の中をもっと元気にハッピーにしていこうというようなことに一緒に手を貸してくれませんか? というお願いをして始まったのがこのビアフレンズ、まさにビアフレンズです。モンキーギフトセットというビールです。ビールのギフトセットです。
水谷:そうですね。またこのビアフレンズモンキーギフトセットの売り上げの一部は、NPO法人モンキーマジックの活動を通じて、障害のある人とない人が一緒にクライミングを楽しむ交流型クライミングイベント事業の運営に充てられますと。
小林:そういうことです。
水谷:なので、飲んで応援していただきたいというところです。
小林:猿のいるビールたちがいっぱい届きますので、それからすてきなお世話になった方にぜひ届けていただきたいと。ビールだけじゃなくてグラスとかモンキーマジックと箕面ビールタイアップのオリジナルの小さなバッグ、サコッシュも付いてますのでぜひこれお楽しみに。あと3日です。
水谷:あと3日です。先ほどの下北沢のビアバーは「うしとら」さんですね。今思い出しました。
小林:「うしとら」さんです。下北沢に。そんなところに行ってもドラフトのビールも楽しめたりする箕面ビールさん。ギフトセットとしてお届けいただけますので、おいしいビールがお世話になった方に届けられるそのギフトが私たちNPOの活動の支援につながりますので、ぜひご利用ください。ということが一つ目のトピックです。
水谷:二つ目が2017年1月22日日曜日開催、パラクライミング日本選手権大会2017。
小林:長いですね。これ、こっちは何かというとパラクライミングという名前が出てきたんですけども、パラクライミングっていうのは皆さんパラリンピックっていう名前は、ことし夏にリオでもオリンピックのあとに障害者のスポーツの祭典というかたちで開かれましたけども、そのパラリンピックの同じでパラクライミングは障害者のクライミングの競技のことをパラクライミングというふうに呼んでまして、それの日本選手権が来年1月22日京王線の明大前駅近くの明治大学内の総合体育館内にあるクライミングウォールを利用して行われます。出場するのは主に視覚障害と、それから肢体障害。例えば車いすに乗ってらっしゃる方とか、足が片方ない方とかそんなような障害の方がクライマーとして出場する大会です。
水谷:欠損障害部門ですね。
小林:はいはい。レックアンプティーって呼んだりしたりしてるんですけれども、そんなような感じの大会です。予選と決勝がありまして、朝から大会は開かれてます。出場する選手は数は20人前後かと思うんですけれども、これぜひ多くの方に応援に足を運んでいただきたいというのが、これ二つ目のトピックとしてのお願いなんです。
1月の22日日曜日、東京杉並区にあります明治大学のクライミングウォールで開催でして、どなたにでももちろんお越しいただけます。どなたにでもご覧いただけます。目の見えないクライマー、それから欠損部門、足のない方、足の動かない方の部門なんかの日本の頂点となる大会です。
ちなみに、これ私も選手の一人として出場する予定なんですけども、日本は世界の中でこのパラクライミング競技ものすごい強い国なんです。ことしの9月にフランスのパリでも大会がありまして、日本は金メダルを二つ持ち帰ってるそんなような国でして、そんな世界のもう最強チームの競技が見られますのでぜひ多くの方に足を運んでいただきたいお願いです。応援しに来てください。
私たちパラクライマーの有姿を多くの方に応援で支えてもらいたいなと思っております。1月の22日日曜日です。詳しくは、主催となります日本山岳協会のホームページにありますので、分かんなかったらモンキーマジックへの連絡でも大丈夫ですのでお待ちしております。よろしくお願いします。(※視覚障害部門のほか、実際開催された部門は神経障害部門)
水谷:よろしくお願いします。
小林:これ二つ目ですね。
水谷:はい。
小林:一つ目が箕面ビールさんとのタイアップ。ビアフレンズモンキーギフトセットのご案内。二つ目が1月22日日曜日パラクライミング日本選手権。障害者のクライミング競技の応援、皆さんいらしてくださいっていうお願いでした。
水谷:ぜひよろしくお願いします。小林さん、10分で収まりました。
小林:優秀?
水谷:いつも20分ぐらいかけてやるんで。
小林:優秀。
水谷:優秀です。完ぺきっす。
小林:おれ、始まりの小豆がシャカシャカいってるみたいなあのジングルの気が抜ける感じがいいのかなと思った。ね。
水谷:そうですね。小林さん、もうちょい気持ちマイク近くのほうがいいかなというところですね。
小林:この辺でしょうか。
水谷:はい。音は全く問題ないとのことです。
小林:分かりました。じゃあ、僕らNPOモンキーマジックからのご案内はこの辺にして、冒頭お話ししたように私は一人の視覚障害者です。私たちNPOモンキーマジックも主に視覚障害者の方を対象にということで活動が始まって広がってきている団体です。
この4月から始まった渋谷のラジオ、第2火曜日の私たちの放送社会部なんですけれども、早いものでことし12月私たちも昨日もちょっとイベントでの忘年会があったりとそんな季節になりまして、ことし1年間をちょっと振り返っての今月は企画にしていきたいということで、視覚障害の今と未来なんていうことを今日はちょっとテーマにして進めていきたいというふうに思っていますので、そんなテーマにちょっと合うような形でゲストをきょうはお二人お迎えしています。
水谷:まずお一方めが、視覚障害リハビリテーション協会副会長、東京女子大学現代教養学部教授の小田浩一さんです。おはようございます。
小田:おはようございます。自己紹介ですよね。
水谷:そうですね。すいません。お願いします。ありがとうございます。
小田:東京女子大学で教鞭(きょうべん)を執ってます小田浩一(オダコウイチ)といいます。NPOモンキーマジックの設立当初からの理事をやってますので、きょうは応援に駆け付けた次第です。
僕自身、視覚障害リハビリテーション協会の副会長っていうのをしてますけども、大学で教えてるのはあんまり視覚障害のことなんかじゃないので、なんか視覚障害の専門の話をするのにこの人なのって思ってる人もいるかもしれないんですが、そこはむしろモンキーマジックと一緒にやってるっていう感じなんでちょっとほかの視覚障害のグループの人たちと違った観点から視覚障害の人たちの未来を考えようっていう、そういう意味ではとっても意気投合したような感じの副会長をやってます。
大学では、コミュニケーション専攻っていうとこにいまして、それでまさにラジオとかテレビとかっていったようなマスメディアがどういったふうに世の中に影響を与えてるのかとかっていうようなことをやってるのが専門の専攻なんです。
ただ、僕はマスメディアが専門じゃなくて、もっと人間寄りっていうか人間と人間のコミュニケーションがどういうふうに人に影響与えてるかみたいなことに関心がありまして、コミュニケーションをするためのすごい人間にとっての大事なものって感覚器官っていうのが大事なんだよ。
目とか耳とかしゃべることもそうですけど触覚とかそういうのがコミュニケーションにすごく入り口として大事なんですけども、その感覚器官が特にどういうふうに影響するのっていうことに関心があって、それでもともと心理学やってたんですけども、心理学の中でも一番心理学っぽくない、それ心理学なんですかって言われるような感じなんで、僕は目の心理学とか言ってるんですけど、目がどういうふうに人間に影響して目がどんなことやってんのかっていう研究をしてるのに近いんです。
それで、そうすると仕事がどっちかっていうと眼科寄りになるっていうか視力の検査をしたりとか視野の検査をしたりとかっていうのと関係があるので、今眼科の人たちと一緒に視力が下がった人たちがどういうふうにすれば、例えば読書がうまくいくようになるかとか、歩くのが楽になるかとかっていうような研究をちょっとしているもんですから、こういう視覚障害リハビリテーションの副会長なんかもやってるっていう感じです。
一つ僕面白いことをちょっと言いたいんですけれども、コミュニケーションっていうのを専攻にしてるっていうことなんですが、コミュニケーションって実は問題解決のためのすごい大事な手段なんです。
それで、これさっきなんかちょっとそういう話もしてたんですけども、例えば視覚障害っていうと目が見えない。目が見えないから物事が解決しないっていうふうに思ってるんですが、実際には例えばじゃあ目が見えなかったら点字を使えば字が書けるようになるって。これって視覚障害は解決してないんですけど、コミュニケーションの手段を解決したことによってコミュニケーションができるようになるから問題解決しちゃうんです。
あるとき僕が昔お世話になった上司が、僕は電話をかけてるときは障害者じゃないんだって言ってたんですけど、電話さえかけてれば誰とも同じようにコミュニケーションができる。向こうも見えないしこっちも見えないからラジオと同じです。音声だけでコミュニケーションしてるので、むしろそういうときは自分のほうがよっぽどコミュニケーションが上手にとれるから、コミュニケーション上の問題がなくなってそこではすごくフリーな、むしろいいことができるっていうふうに言ってたんですけど、だから視覚障害って見ちゃうとそこに問題があってあたかも解決しないように見えてるんですけど、コミュニケーションのほうから見ると問題も解決してるかもしれない。それちょっと面白いと思ってるんです。そんなことをやってます小田といいます。
小林:いいですか、なんかそこ横から。なんか最近スカイプで会議をしますとかってよくない? ありますよね。なんかスカイプで会議をすると、いやどうぜ僕ら目が見えない人間は人が集まって会議をしてもスカイプで会議をしても同じだから、電車賃もったいないスカイプでいいですよなんていうふうに言う人がいるんですけど、なんか不思議でそれでも会って話したほうが話が弾んだり広がったりするときもあったりとかして、人間て不思議だなあと思うときがあるんです。でも、確かに電話で話してるときは目が見えなくても見えてる人と同じスタンスに立って物事やれますよね。
水谷:E-Mailのコミュニケーションもそうですね。
小田:そうですね。
小林:だから、確かに僕らに得意なことと僕らに不得意なこととっていうのは、かなり色がはっきりしてる感じがすごいします。コミュニケーションっていう目でいくとすごくその辺ってはっきりしてきます。
小田:そうなんです。だから、コミュニケーションのチャンネルを増やしてできることを増やすっていうことは、結構いろんなとこでできるんじゃないかと思ってるんですけど。
小林:え〜、コミュニケーション……。
小田:専攻。
小林:専攻ですか。なるほど。すごいさすがにいきなり専門な感じのひっかかり……。
水谷:でも、本当にもっときょうはそういったお話聞きたい。
小林:すごい分かりやすく。
小田:よろしくお願いします。
水谷:よろしくお願いします。もう1名が私から紹介するので、じゃあ自己紹介お願いします。株式会社ザッパラス、ウートピ編集者 堀池沙知子(ホリイケサチコ)さんです。
堀池:ホリイケです。よろしくお願いいたします。
小林:よろしくお願いします。
水谷:よろしくお願いします。 堀池さんは何されてるんですか、っていうところからいいですか。
堀池:「ウートピ< http://wotopi.jp >」っていう女性向けのネットメディアの編集をしております。
小林:ウートピ?
堀池:はい。
小林:ウーマントピック?
堀池:そうです。
水谷:なるほど。
小林:当たり?
堀池:女性っていうふうにひとくくりにしちゃうと、またちょっといろんな方がいるので語弊があるかもしれないんですけれども、二十代、三十代の女性に向けて、自分の意思でちゃんと歩いていこうっていう女性を応援して寄り添っていくっていう趣旨のもとにやっております。
水谷:なんかキャリアがテーマだったり、あとはやっぱりもちろん恋愛がテーマだったりとか、ジェンダーがテーマになったりとか、すごいいろんなさまざまな切り口で女性目線であり、女性の活動を応援したり後押ししたりするような記事になってますよね。
堀池:ありがとうございます。
水谷:私は男性ですけど、よく見てます。
堀池:ありがとうございます。そうなんです。だから、あんまり女性目線っていうとまたちょっと、、いろんな人に見ていただきたいです。
小林:へえ。そちらでどんなことをされてらっしゃるんですか。
堀池:そちらの編集をしていて、どのような企画を立てるかとかどういう記事を出していくかとか、そういうのを考えて記事として出すっていうことをしてます。いつもこうなんだろう、いろんな人のお話を聞くのが専門なのであんまりしゃべりに慣れてないのですごい緊張してます。
水谷:最近一番ハマった記事って何ですか。
堀池:はまった記事?
水谷:これ良かったなっていう。
堀池:なんかウートピって、じゃあ働く女性向けのメディアだから、結構仕事ができる人が対象なんじゃないかみたいなふうに思われてるのかなと思っていて。私、今33歳なんですけれども、自分が仕事ができるっていつも思ってないんです。いつもいろんな変なところでトラブル起こしたりとか、毎回1日は謝ってるんです、人に。お願いしますとすいませんって毎日言ってて本当仕事できないってこういうふうにいろいろ思うんです。
水谷:後輩もいっぱいいるけど、みたいな。
堀池:後輩いないんですけど。
水谷:30代、働く。
堀池:そうですね。
水谷:堀池さんと私は同い年で、もともと小林さんの家からも東京女子大からも近い西荻窪のシェアハウスで一緒だった、っていう仲間です。
小林:すごい今どき。シェアハウス、ウェブメディア。
水谷:編集者。
堀池:ですよね。なんかちょっといいですよね。
水谷:キラキラだね。なんかね。
堀池:渋谷で働いててさ。
小林:そうそう。しかも……、
堀池:意識高いよね。でも、仕事できないっていうのをもんもんと思ってて、最近DJアオイさんっていうコラムニストの方がいるんですけれども、その方にちょっとそういう連載をお願いして仕事ができないっていう連載をしていて、私は毎回詳しくは記事を見ていただきたいんですけれども、アオイさんの言葉に励まされてまたあしたから頑張ろうって思っています。なので、読んでいただく方にもそう思っていただければいいなって思ってます。
小林:すてき。それ男向けにもおじさん向けにも欲しい感じ。
堀池:でも、本当に男性の方が読んでもなるほど思うと思います。
小林:仕事できない?
堀池:うん。
水谷:できるっていう……、
小林:自分のこと言われて……、
水谷:そうね。
堀池:でも、30代になるともう仕事で失敗できないってやっぱ思っちゃうんです、私が。
水谷:そうですね。
堀池:やっぱできるのが何かできて当たり前っていうふうに思われるから、多分そこの苦しさってきっとあると思うんです。みんなできるふうに見せてると思うんです。私も見せてるんです。
水谷:すごい分かります。
堀池:Mac使って記事書いてかっこいいって。そんな女性にちょっと苦しいって思うときってやっぱあると思うんです。なんで、そういうなんか苦しいなとかちょっとモヤモヤを抱えてる女性に向けて書いてます。書いてるのあアオイさんなんですけど。
水谷:いえいえ。編集者ですからね。編集者も大事な……、
堀池:偉そうなこと言ってます、私。
小林:いいですか、質問。
堀池:どうぞ。
小林:ウェブメディアって最近すごくいろんなのが多いし増えてると思うんですけども、そのウェブメディアっていうこういうのが出ましたとか、こういう記事がありますとか、それから読んでくれる人を増やさないと当然ビジネスとして広告も増えないでしょうしって思うんですけど。そこに興味があるのはなぜかというと、僕ら視覚障害のこととか障害者とか福祉とかってそういうのって、興味や関心が人は目に留めるかもしれない。例えばニュースが流れる、新聞に記事が出てる、っていってもその障害者っていう字が踊ってる時点でもう読み飛ばす、チャンネル変えるっていうのが当然だと思うので皆さんからすると、例えば世の中にたくさんあるウェブメディアの中で自分たちのものを拾ってもらったり、そこに興味・関心を持ってもらうのってどんなことをしてるのかっていうのがすごい興味が今出てきてしまったんですけど、いきなり広がってく話ですんませんが。どんなことをしてウートピのことを埋もれずに知ってもらうようなするんですか。
堀池:でも……、
水谷:いわゆる……、
堀池:ウートピのことを知ってもらう……、
水谷:ITの技術的なところ以外で、っていうんですよね。
小林:そうそう。広告を打ったりただするだけなのか、何かでバズるように口コミで広がっていくような仕掛けとかっていうようなものとか。
別に興味・関心を持ってない人なんだけれども、実は読んでもらいたい記事に開いてもらったり、ウートピを知ってもらったりするためのいろいろな仕掛けをされてらっしゃるのかなあと思うんですけど。
堀池:なんか技術的なことっていうのは私もちょっと分からないんですけれども、ただ記事を作ったり企画するときに考えてるのは、ちょっと3秒ぐらい先にいくっていうことです。
やっぱりウートピ、私のブログとかフェースブックではないので、やっぱり私の趣味とかでもちろんほかのメディアもそうだと思うんですけど、私の趣味・関心でいろんな世の中のものを取り上げるわけではなくて、でも空気ってあるんです、世の中の。
みんながこれもう知りたがってそうだなっていうその空気をキャッチしたちょっとほかのメディアより1秒ぐらい先にそれを……、
水谷:取り上げる?
堀池:取り上げて出すとやっぱり皆さん関心持ってくれます。
水谷:早すぎてもいけないし。
堀池:そう。10秒先に出しすぎて失敗したのが私の20代です。
水谷:20代?
堀池:はい。毎回、前職なんですけど、デスクに「おまえのブログじゃねえんだよ」っつって言われて怒られてました。だから、早すぎてもいけないし遅すぎてももちろんメディアとしては駄目だし、3秒から5秒ぐらいちょっと先に取り上げる。時代を空気を感じて先取るっていうのが。でも面白いです。すごいスリルがあって。
小林:スリル?
堀池:うん。
小林:ビジネスっぽい。
堀池:そうですか。
水谷:仕事できそう。
堀池:そうでしょ。
小林:仕事できそう。
水谷:いや、仕事できるでしょ、そりゃ。
堀池:そうそう。なのでいつも妄想してたの。インタビュー受けたらどうしようかって。
小林:シェアハウスだしウェブメディアだし渋谷だしっていう感じ。3秒、5秒先をいく。
堀池:でも、普通は3秒なんですけど私はちょっと好きなものとか興味・関心があるのは5秒心掛けてほかのメディアより先に取り上げるっていうのは心掛けてます。そうすると、やっぱり媒体に説得力が増すんです。ここの媒体は、みたいな。
小林:さっき前職で上席の方に「おまえのブログじゃねえんだよ」って言われたって言ってましたけれども、ご自身が関心があるっていうことと世の中の3秒、5秒先がいくっていうのとは違うっていう話だと思うんですけど、自分の感性の中で3秒、5秒先をいくっていうところを拾ってくわけですよね。
堀池:そうです。だから、シェアハウスに住んでるっていうのもやっぱりそういうのをキャッチする材料にしてるっていうのあります。
家に30人ぐらいいるんですけど、住んでる人が何に興奮して何を面白いと思っててどんなテレビを見てどんな食べ物を食べて休日にどんな行動をするとか、そういうのを見てるとなんか分かるんです。なんで結構それで取材させてもらったりとか仕事につながったりっていうのは結構ありました。
小林:小田さん、視覚障害者もやっぱりシェアハウスに住んだほうがいいのかもしれないですね。
小田:でも、視覚障害の世界だけでやる必要ないんじゃないですか。そうすると、視覚障害の3秒前じゃあんまり面白くない。
小林:確かに。
小田:いろんな人との3秒前のほうが……、
水谷:マーケットが狭すぎる、そんな感じがします。
小田:もっと広くていいんじゃないですか。僕ちょっと思ってたのは、なんか60代とかいうののシェアハウスやると高齢者のそういう3秒前が分かって面白いのかなと。
水谷:なるほど。
堀池:確かに。
小林:確かに。でも、なんか60代、70代のシェアハウスっていうのはもうすでにありそうな感じもしないでもない。
小田:グループホームですね、なんか。
小林:確かに。
水谷:でも、一番お金を握ってるっていうところのビジネスチャンスがありそうなにおいがすごいしますね。
小林:確かに。ビジネスチャンスだね、そこには。
水谷:そうですね。そういったこの4名で今日はさまざまな角度から。テーマとして小林さんがさっきお伝えしていただいたとおり、視覚障害者の取り巻く環境、今と未来についてっていうことで。
今年、視覚障害者にかかわって起きた出来事なんかを話の入り口にしてダイバーシティーとか多様性を一つのテーマとして、渋谷・東京を中心に今後どんなことで各個人が行動に移せるのか、発信できるかについて話を進めていければと思います。かなり重たい空気にもなり得ないようなテーマだったりとか、もちろんことし起きた駅のホームからの転落事故の話とかもあるんですけど、各個人が当事者として私や堀池さんは一般人としての当事者で、小田先生は専門家として、小林さんは視覚障害者としてっていうようなことで2時間進めていければと思います。
小林:分かりました。じゃあ、ちょっと1回ブレークですか。
水谷:そうですね。曲名、小林さんからですかね。
小林:分かりました。毎回4月から社会部、第2火曜日は私たちNPO法人モンキーマジックが常にラブコールを送っていつか一緒にコラボレーションしたいって信じてやまない「MONKEY MAJIK」からきょうの曲は『カンパイ』です。
小林:毎月第2火曜日この時間は渋谷社会部、私どもNPO法人モンキーマジック私代表の小林がお届けしております。曲は「MONKEY MAJIK」で『カンパイ』でした。
今日は私のほかに3名がこのスタジオにおりまして、モンキーマジックの水谷君、そして堀池さん、そして小田さんという4人でお届けしてまいります。
まず、最初の30分は、私どもモンキーマジックの活動の最近のご紹介、そしてゲストのお二人堀池さんと小田さんの自己紹介をしてもらったんですけど、早速かなり面白かったです。
これきょう前半部聴けなかった方は、アーカイブになるポッドキャストのほうからぜひ聴いていただきたいと思うんですけども、ここから先きょうのせっかくのテーマなんですけども、「視覚障害、今とこれから」ということで未来をこれからつくっていくようなテーマの話にしてみたいと思うんですけども、堀池さんはモンキーマジックのスタッフ、水谷君と同じシェアハウスに暮らしていたというところで水谷君とのつながりがあるということでした。
東京女子大学の小田先生は、私どもモンキーマジックの理事をしていただいているんですけれども、大学の中でコミュニケーションを学部のほうで教えておられるということだったんですけれども、視覚障害とか眼科とか目の研究をずっとされておられるところから広がりがあるということでした。
そんな中で私も今のモンキーマジック、視覚障害の人にクライミングをという活動を通じて小田先生にちょっと紹介があって知り合って、先生ぜひ私どもの理事になってくださいというお願いをしたところ、これ以上僕を忙しくするんですかという中、なんとかお引き受けいただいたというような感じの経緯があったんです。
やっていただいて一番最初は2007年に東京女子大学で視覚障害リハビリテーション協会、今小田さんが副会長をやられておられる視覚障害リハビリテーション協会と日本ロービジョン学会いうのがありまして、そこの合同大会。
小田:そうですね。合同会議。
小林:合同会議いうのがありまして、そこの学会ですよね、先生たちの集まりは。その学会の場にクライミングウォールを建てて体験会をやるというのをやらせていただいたのが、そもそも小田先生と私たちモンキーマジックとの大きな動きの始まりだったんですけれども。
水谷:実際にもうこれやったんですね。
小林:やりました。小田先生も登ってました。かなり視覚障害のそういう横で学会のポスター発表がされてたり、福祉機器の展示会をやってる横で、おれたちだけが高さ6メートルぐらいのクライミングウォール建てて「ガンバ!」とかって言ってやっている異質な空気だったんですけども、そこは相当視覚障害を支える仕事の現場の皆さんにはインパクトがあったみたいで、いまだにいろんな場所で「東京女子大でやってましたよね」っていうふうに言ってもらえるんですけれども、そこがきっかけで小田先生と今僕らもう9年近いお付き合いになってくんですけども、支えてもらってるんですけど、僕は専門家である小田さんが理事としてモンキーマジックにかかわってくださって本当にいろんな形で応援してもらってるんですけども、小田さんが僕らの活動をどんなふうに見てらっしゃるのかなんていう辺りからちょっと後半の話にだんだん広げていけたらいいと思うんですけども。どうでしょうか。
小田:僕2007年のときは学会の会長をやってたんですが、その合同開催そのものが結構一つのチャレンジだったんです。それで、日本ロービジョン学会っていうのは医療系の学会で、視覚障害リハビリテーション協会っていうのはリハビリテーションの関係の専門家の会。この二つはなかなか仲が悪くてなかなかうまくいってなかったんで、無理やり結婚させようっていうので合同会議を開催したんです。
小林:小田さん、ちなみに日本ロービジョン学会は医療系で視覚障害リハビリテーション協会はリハビリ系っていうんですかね。これ具体的にはどういう方たち、医療系っていうのはつまり病院の先生たちっていう?
小田:眼科医中心につくられてる学会です。眼科医の方たちの中でロービジョンに関心のある人たちが集まって、実際はある一つの研修会の卒業生を中心にしてつくられたような学会なんですけど、それはもともとは眼科学会のサテライト学会として2000年ぐらいでしたかね、できた学会です。そこの理事も当時してたんです。
それで、視覚障害リハビリテーション協会のほうのたしか理事もしてたのかな。本当は両者が一緒にやらないと視覚障害の人は幸せになれないです。っていうのは、視覚障害の人たちが見つかるのは眼科の中なんです。ところが、視覚障害が見つかった眼科医が視覚障害になったあとにもう何もできないって言ってるんだとリハビリテーションが進まないので、そこで視覚リハの専門家のほうにうまく患者さんを誘導してもらわないと結局リハビリテーション始まんないんです。
ところが、この二つのグループが全然仲がうまくいってなかったので、僕は無理やり結婚っていうのを提案して、それで3年の試行期間を設けて結婚してみましょうってことになりまして3回だけ合同学会やったんです。それで、その中でモンキーの話に戻ってこないと困るんですけども、結局3年の結婚は失敗しましてそのあとまた別れちゃったんですけど、でもそれはともかくとしてその3回の合同学会のうちの真ん中の会に僕が担当になりまして、そのとき視覚障害リハビリテーションってやっぱりまじめすぎると。まじめすぎるっていうのもなんなんですけど、本当は圧倒的に高齢者が多いんです。高齢者65歳以上が70パーセントなんです、視覚障害の人っていうのは。
小林:日本の視覚障害のうち?
小田:そうですね。視覚障害人口のうち70パーセントは65歳超えてるんです。もうそれ10年前だからもっとだと思いますけど。
小林:日本の高齢化率よりもはるかに先をいってるんですよね。
小田:そうですね。
水谷:日本全国の視覚障害数は、今は31万5000人ですか。
小田:厚生労働省が31万人って言ってます。それは手帳がもらえる人っていうことなんですけど、眼科医会の推計によるとWHOっていう国際機関が出してる基準を当てはめると170万人ぐらいっていわれてます。
小林:170万?
小田:はい。そのうちの9割ぐらいはロービジョンって見えるんだけど見えにくいっていう状態だっていうふうにいわれていて、光が見えるあるいは全然見えない人は10パーいるかいないかっていうことのようですけど。
そういうこと考えると、65歳以上の人たちが多いってことになると、生活をどう楽しんでいくかっていうのが非常に重要です。もうなんか学校に行くとか仕事に行くとかじゃないんです。人生これからどういうふうにあとの時間を楽しく過ごしていくかがその人たちの生活の質にすごく影響する。
そうすると、もっとレクリエーション的なものでやれることっていうのがチョイスがないといけないんですけど、そういう展示とかほとんどないんです。なかった。だから、モンキーの話が来たときにこれは面白いんじゃないかって。高齢者でもできますってことなんで、小林さんは高齢者じゃないですけど対象の人としてそういう人みんな考えられるってことなんで、そういうのどんどんやったほうがいいんじゃないかって。
ウォールが建って登ってるって目立っていいっていう、そういうものを少し出していきましょうっていうんで、ちょうど利害が一致してそれでお金はどうしようかって言ったら、小林さんがお金はなんとかなるかもしれないっていうことで、体育館の中に無理やり壁つくっちゃったんですよね。
小林:そうですね。なんか僕らにとっても視覚障害のある人たちに僕ら側はクライミングを届けたいと思って活動を始めたんだけれども、最初のうちはどこに話を持ってっても、例えばそれこそ眼科医さんに話を持ってっても、盲学校に話を持ってっても、リハビリをしてくれるような訓練施設みたいなとこに相談持ってっても、僕は暑苦しくクライミングっていうスポーツは障害者の未来を変えるんですぐらいの感じの話をするわけです。
ところが、周りの人たちは「はあ? あんた何言ってるんですか。そんな危ないことさせられるわけがないでしょ」というのが反応だったんです。
水谷:10年前のクライミングジムでさえ結構玄人しか集まらない場所でしたよね。
小林:そうそう。クライマーによるクライマーのため、のみたいな。もうアメリカ独立のなんか歴史館みたいなそんな話しっぷりだった。ところが、じゃあそこで自分たちは引き下がるわけにもいかなかったので、どうしたらそれが広がるだろうっていうふうに僕が考えて外堀から埋めてけばいいんだと思ったんです。
それで、本人たちに声が届かないんだったら声を届くのに周りが納得できるような、それで首を縦に振ってくれなかった眼科医さんとか、それから盲学校の先生とか、訓練施設の人たちとかそういう方たちが納得できるように学術的なところを理解してもらうところからちょっとずつ外堀を埋めてけばいいんだと思って、それで今の小田先生の日本ロービジョン学会、それから視覚障害リハビリテーション協会が一緒になってやる大きな大会があります。一緒にどうですか。いうところだったんで、これはもう渡りに船だなぐらいの勢いで僕らはクライミングの壁をつくって、これまで障害者に届いたことのなかった先生、今レクリエーションとおっしゃってくれましたけれども、そういうようなものを届けていくっていうきっかけづくりを始めたのが一番最初2007年。
小田:そうですよね。
小林:あっという間でしたね。
小田:あっという間でしたね。
小林:その後もクライミングの背景もどんどん変わってきて、それから僕自身も自分の病気もどんどん進んで、その当時はまだ壁があるのもはっきり分かってましたし。相当近づけば一生懸命パソコンの画面なんかも自分の目で見てやってたんですけども、今は自分は目の病気も進んでさっき先生おっしゃってましたけどもロービジョン、日本語だと弱視なんて言ったりするんですかね。
ロービジョンっていうような状態から今僕は明るい暗いが分かるぐらいになってしまったので、全盲なんていうふうに言われたりすることもあったりするんですけども、状況はどんどん変わってきたんですけどもクライミングは変わらずやらせてもらってるのと、あともう一つはモンキーマジックの活動自体はその当時からしてもおかげさまで広がりを持たせようと思っていろいろなことをやらせてもらっていて、視覚障害の世界を違う切り口で世の中に伝えたいと思う活動をしていて、それで小田先生すごい応援してくださってると思うんです。
僕らの活動ってどの辺がちょっと面白かったりちょっと変わってたりするんですか?ほかの視覚障害のいろいろな皆さん世の中に理解してもらうと思ったり伝えようと思って頑張ってくださってる方が多いと思うんですけども、僕らの活動ってどの辺がちょっと変わったりしてると見てらっしゃいますか。
小田:ちょっと変わってるとは思わない。もっと大きく変わってるような気がするんですが。
小林:もっと大きく変わってる?
小田:そうですね。視覚障害のスポーツっていっぱいあったんです。例えば盲人バレーとか、それから盲人用の卓球とか、盲人なんとかって付くのがたくさんあるんです。
小林:知ってます? そういうのって堀池さん。
堀池:いや、分かんない。知らなかったです。
小田:そうですよね。大体、日本の視覚障害のそういうスポーツっていうのは視覚障害の人たちが楽しめるように専門のものをつくっていて、盲学校の中だけでやってるとかそういう感じんなんです。
だから、外へ出ていかないんです。特殊化されてるのでプレーしようと思ったら自分も目隠ししなくちゃいけないとかそういう感じになっちゃうんです。
ところが、モンキーの場合は同じウォールを使って自分たち、視覚障害のある人もない人も一緒にやりましょうっていう、開かれた感じのスポーツの仕方。こういうのってあんまりなかったんです。盲人スキーとかマラソンとか一緒に走るっていうのはあるんですけど、これもあくまでもなんか一緒に楽しむっていうよりは、どっちかっていうと盲人主体であとはボランティアが付いていきましょうみたいな感じの、いつもそういう雰囲気が漂ってたんでモンキーはそこが違うっていうところが大きいっていう、だから、社会に開かれてる。
だから、ノーマライゼーションとかそういうのに非常に近いし、ダイバーシティっていうのはそれこそ社会に訴えていくような感じの活動だっていう意味で、僕はちょっと違うと思わなくて相当違ってる。社会に対するインパクトが相当違ってると思ってます。
小林:なんか今、結構盲人っていう言葉が聞こえてきたじゃないですか。僕そこすごい抵抗があったんです。盲人バレーとか盲人卓球とか盲人スキーみたいなのって。
とっても印象的だったのが、自分がある海外のクライミングの初めて優勝して日本に帰ってきたときにもっと自分が優勝したっていうことを利用したほうがいい。それをきっかけにして障害者のクライミングをもっと多く広げていきましょうっていうことで、クライミング競技を今まとめている日本山岳協会の人と一緒にどうしてやったらいいだろうということで、日本の幾つかの障害者スポーツの団体に連絡をしたんです。
そしたら、ある団体から言われたんですけど、あなたたちは何ていう名前の団体なんですかって。「NPO法人モンキーマジック」ですって。こちらはいい名前でしょうぐらいの感じで言ってみたんです。そしたら、その名前が駄目ですって言われて。
堀池:何で駄目だったんですか。
小林:何で駄目だったって思いますよね。僕も「はあ?」って……、
小田:同じ団体だと思ってないんじゃないですか。
小林:そう。思って。その名前が視覚障害者クライミング協会とかそういう名前じゃないとうちでは加盟できないって。
堀池:何でですか。
小林:分かりにくいとか。
堀池:どっちが分かりにくいんですか。
小林:向こうの、僕らの名前がモンキーマジックっていう名前が分かりにくいとか、ふざけたような名前でそれじゃ駄目だとかって言って。
堀池:堅いんですね。
小田:堅いですね。
小林:堅い。
堀池:堅いですね。
小田:堅いです。
小林:堅いんですよ。だから、僕らは何でモンキーマジックっていう名前にしたのかって、モンキーは猿っぽくて登ってるみたいなイメージですけど、マジックって手品師って種も仕掛けもありませんって言って手品するじゃないですか。でも、そこには種も仕掛けもあって誰でもができることをそれっぽくやってるだけですよね。
目が見えないクライミングとか障害者のクライミングっていってもそんなすごいことできるわけないって思ってるんですけど、いやそれは実は誰にでもできることをやってるだけですっていう手品と同じなんです。
手品ってすごいっていうけど誰でもできることやってだけなんですっていう、そういう思いがあって付けたんです。
いいでしょって、、駄目ですって言うんです。
堀池:本当堅いんですね。
小田:堅いんです。
堀池:その人たちこそもっと社会に出たほうがいいですよね。
小林:そう。だから、さっき小田先生内向きって言ってたんですけど、僕もやっぱりそれはそうだと思って。
多くの障害者スポーツの中では、どうぞ僕らのやってることは障害があってもなくても一緒に楽しめるものなんです。みんなでアイマスクしたらできますみたいなそういうような話が多いんです。
でも、ちょっとやっぱそこにはみんなが今持ってる能力をそのまま使うのではなくて、ちょっとあるスポーツなのでルールだといえばルールなんですけども、あるちょっと制限をかけることでみんながやってるような感じになっちゃうので……、
水谷:あと1分ぐらいでお知らせ入ります。
小林:はい。ちょっとそこももったいないと思ってて。それでもっとオープンな感じでやれるような感じにできてったらいいなっていうのはすごくあったんです。ちょっと後半、そしたらもうすぐ今もう10時?
水谷:もう10時です。
小林:もう10時? はい。なので、ちょっとお知らせ挟んで、そんなスポーツとしてのクライミングやってる僕らと、それから僕らのことを応援してくださってきた小田さんが……、
水谷:30秒。
小林:専門家として応援してくださってるので、それをまた後半やっていきたいと思います。
小田:よろしくお願いします。
水谷:よろしくお願いいたします。もうなんかあっという間に1時間終わったので、あと1時間もあっという間に終わるなというところなので、別に駆け足にする必要は全然ないんですけど、すごいまだまだお話伺いたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
小田:よろしくお願いします。
堀池:よろしくお願いします。
小林:おれしゃべりすぎた?
水谷:いえいえ、全然大丈夫です。
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小林:引き続きまして、NPO法人モンキーマジック代表の小林が第2火曜日、渋谷の社会部をお届けしてまいります。9時からお話ししてまいりましたけども、今日はゲストがお二人と、それから毎回一緒にやっておりますNPO法人モンキーマジックの水谷君と。
水谷:はい。
小林:ゲストのお二人は、堀池さん。
堀池:はい。よろしくお願いします。
小林:お願いします。それから小田先生。
小田:よろしくお願いします。
小林:よろしくお願いします。ということで、この4人で進めてまいりたいと思うんですけども、今日どんな方たちがいらしてるか、またこれからちょっとお話ししていくと、どんどん展開していくんですけども、今しゃべっております私、小林なんですけども、私、視覚障害でして、目が相当見えておりませんで、相当と言っても明るい暗いが分かる程度しか見えないというか、見えてる視覚障害なんですよね。
今日は12月、今年最後の第2火曜日ということで今年1年を振り返って、せっかく私、視覚障害の小林がこの番組を持たせていただいているので、視覚障害の今と未来ということでちょっとお話を進めていきたいなというふうに思うんですけども。
僕、イメージとして障害者とか福祉って、さっきもちょっとお話ししたんですけども興味がある人は興味があって知ってるんだけども、多くの人は「あ、杖持って歩いてる人でしょ」とか「盲導犬連れて歩いてる人でしょ」、例えば視覚障害で言えば。
そういうような知識はあるんだけども、じゃあその人たちがどんな人たちなのかとか、例えば世代とか、見え方もそうだと思うんですけども、いろいろ視覚障害って言ってもあると思うんで、なんかもう少しせっかくこの渋谷から発信できるこの今回の機会なので、視覚障害って何なの、どんなことなのっていう辺りを少し皆さんにお伝えできるきっかけとしてまず始められたらいいかなと思うんですけども。
堀池さんはこれまで特に、見えない人、見えにくい人との接点はなかったというふうに聞いているんで。
堀池:あ、でも前職の時に同僚に目が見えない人がいて。
小林:あ、いた?
堀池:はい。
小林:お。
堀池:そうですね。彼が初めてでしたね。あ、いたな。いましたね、同僚で。
小林:あ、結構いた? あ、出てきた。
堀池:うん。
小林:じゃ、ちょっとその辺も含めて、じゃあ職場はどんな職場で、どんな同僚がどんな仕事してたのかなんていうのも、ちょっと面白いところになるかなと思うので。
堀池:ぜひぜひ。
小林:じゃあ最初に小田さんに。
小田:はい。
小林:小田さん、コミュニケーションというのを大学で教えられながら、僕ら視覚障害者の中では視覚障害研究のもう本当に前をごりごり進んでいかれる方のイメージなので、ちょっと小田さんのほうから世の中の人に視覚障害ってどんなことなんですか、っていう辺りをお話少しかいつまんで説明してもらっていいでしょうか。
小田:はい。その話だったらば、今の視覚障害っていうのは、今、小林さんが説明したとおり白いつえを突いて歩いている人とか、それから点字を使っている人とか、それからなんだかよく分からない、そういう誰かのことだと思うんですね。
それは今の視覚障害について僕らが思ってることだと思うんですけど、僕はだいたい未来のこと考えてこう言ってるんですけど、視覚障害っていうのは人の問題じゃなくて、それぞれの人が抱えてるリスクだと思ってるんです。全部の人が抱えているリスク。つまり高齢になると視覚障害になる確立ってすごく高くなってくるんです。
日本は超高齢社会なので、70、80になっても生きてますよね。そうすると、かなりの人が少なくとも白内障とかになって見えなくなっちゃった体験とか持っていて、白内障は日本の場合は手術でほとんど治っちゃうんですけども、ほかの病気がやっぱりいろいろ出てきます。緑内障だとか加齢黄斑変性症だとか、それから日本人で多いのは糖尿病性網膜症というのはすごく多いんですね。
糖尿病になると、糖尿病って実は目にも出るんで視覚障害になってしまう人がいたりして、とにかく高齢になると視覚障害になってしまうリスクっていうのはみんな持ってるんです。
だから、誰かのことじゃなくて自分のことなんです。だから僕たちは視覚障害のこと考える時に、今いるあの人のことじゃなくて、これから自分たちが高齢になっていった時に視覚障害になっても困んない社会をつくっていくという未来をつくっていかないと、自分がはまっちゃうんですよね。そこをまず発想の転換をしてもらったほうがいいと思うんです。
その時に、じゃああなたは点字やりますか、それからあなたはじゃあ趣味諦めますかっていうふうに考えていったら面白いっていうか、未来はそういうふうにしてほしい。だから今、自分がやれてる趣味は、たぶん視覚障害になってもまだ続けたいと思うんですよね。
山に登りたい人登りたいし、壁登りたい人は登りたい。小林さんなんかそのまま登り続けてますもんね。そういう未来をちょっとでもつくっていかないと、つまんない社会になる。
あなた視覚障害なったからもう点字やりなさい。盲人バレーやりなさい。盲人バレーやってくれる人どこにいるんですか。月に1回どっかのなんとか障害センターでやってるらしいから行ってみればと。明日は何して楽しんだらいいのっていう、そういうことですよね。
ずっと生きてるわけなので、その状態って、だからそういう状態なんです。そういうリスクだと思ってくださいと僕は思ってるんです。
小林:なるほど。僕、自分が目の病気ですよっていうふうに言われたのは、さっきお話し、28の時で、今48なんで20年たったんです。それまで自分がまさか障害者になるなんて思ってもいなかった時、視覚障害者、さっき小田さんも白いつえ持ってるか、犬連れてるかぐらいのイメージだった。
もう一つ視覚障害者っていうのは、全員真っ暗闇で生きてる人だと思ってたんです。この辺もなんか多く皆さん抱えてる固定的な見方じゃないかなって思うんですよね。
小田:そうですね。暗闇の中で生きてるとか言ってますもんね。いいかげんやめたらいいと思うんですけど。ダイアログ・イン・ザ・ダークの人に悪いかもしんないけど。
小林:その辺ってどうなんですかね。いろんなさまざまな見え方。僕だったらさっき明るい暗いが分かる、そんなふうに見えてる視覚障害者ですってお話ししたんですけども。
小田:そこもすごく実は視覚障害の世界っていうのは難しいところがあって。今、全盲の人っていうのは分かりやすくて、だいたい誰にでも分かるんですけど、目つぶれば分かるんですが。明るさが見えてるっていうのもよく分からないんですけど、もっと分からないのがロービジョンとか弱視っていわれてる人たちで、視野がすごく狭い、でも文字が読める人とかっているんですよね。
堀池:へえ。
小田:そういう人は視野が狭いので自分の足元が見えないし、歩くのがとっても怖いので白杖突いてるんですけど、でも文字が読めるので文庫本とか読めちゃったりするんです。そういう人はだいたい世間からは、あの人はうそつきだ、詐盲(さもう)だとかって、盲のまねしてるんだと言われちゃったりする。
反対の人もいるんです。真ん中辺が見えなくて文字は全然読めないんだけど、歩いたりするのに全然問題ないから白杖突かないで歩いてる。スタスタ歩いてるんだけど文字が読めないから、点字で読まなきゃいけないとかですね、そういう人もいたり。本当にさまざまなタイプの視覚障害があるんです。
水谷:明るい所だったら自転車乗れる、なんて方もいらっしゃいますよね。
小田:ああ、そうですね。明るさの問題もあったりして、逆に明るいと見えなくなって暗いほうがいい人もいるし、ちょっと暗くなると全然見えなくなっちゃう人もいるし、本当にいろんなタイプがいますね。それ全部まとめて視覚障害とかロービジョンとか言ってるので。
世間のイメージが全盲のイメージなんで、そういう人たちはみんな、あの人はうそつきだとか、調子のいい時だけ見えるんじゃないかって言われて、かなりつらい思いをしてたりするんですよね。
堀池:そうですね。確かに。
小林:確かに僕は、今小田先生がおっしゃっていただいた中で言うと、目の中心部が先に見えなくなってったんですよ。なんかイメージしづらくないですか。目の中心部が見えなくってって。
小田:そうなんですね。なんのことって感じですよね。
小林:なんか具体的にイメージできる例がないんですけど、僕が1番分かりやすい例だなと、自分でこれだと思ったんですけど、アダルトビデオの。
小田:ああ、ぼかしがなあ。
小林:隠さなきゃいけないところがあるわけですよ。
小田:はいはい。
水谷:なるほど。
小林:それって見たいと思うところが常に隠され続けるわけですよ。
小田:そうですね。
小林:こう動いていったら常にそいつが付いてくるわけです。僕らの目の中心部の見えない人っていうのは周りが見えてるので、こっちのほうに、左上に何かがあるなと思ったら、そこを見ようと思って目線を持っていくと、それが隠されるんです。
人間の目ってそんなに器用じゃなくて、だから今どきだと、スマホを手にしながら歩いている人って普段の歩くスピードでは歩けないですよね。でも周りがなんとなく見えてるんで、人がいたり障害物があったり階段があるかぐらいは分かるんだけど、画面を見てるから普段のスピードでは歩けなかったりするんで。あんな感じなんですけど、たぶんアダルトビデオのほうが絶対イメージできる。
小田:確かにそうかも。
小林:見たい所が常に隠されて続けるってこういうことだなっていう感じだと思うんですよね。
小田:完全に黒いわけじゃないんですよね、しかも。
小林:そう。グレーな。
小田:そう。なんかちょっとグレーとか。しかもなんか。
小林:昔のテレビが、チャンネルとチャンネルのあいだのザザザザザザって砂嵐みたいになってるのが、目の中心にあったりする。
水谷:もどかしいっすね。
小林:今、たぶんこの話が分からない人もラジオ聴いてるんじゃないかって思うけど、そういうような感じで目が隠されたりしてするんです。だから周りから見えなくなったりとか、いや右半分が見えないんですよとか、上半分が駄目なんですみたいな人も結構いたりとかして。
堀池:もう人によって違う感じなんですか。
小田:そうですね。人によって。
小林:全然違うんです。
小田:で、どこが欠けてるかによって、できることはちょっとずつ違ってるみたい。
堀池:あ、そっか。なるほど。
小林:あともう1個言われるのが、小林さんはいつから見えなくなったんですか、とかって言われるんですけど、僕は病気が分かったのは20年前で、段々見えなくなってきているので、いつから見えなくなったのかっていう実感はゼロなんです。今でもこの明るい暗いも、そのうち分からなくなるんだろうなと思うので。
でも見えなくなる病気ですよって言われたのは20年前だしな、じゃあいつから俺は視覚障害なんだっていう感じにもなったりするんで。この辺って分かりにくい。
小田:分かりにくいですね。
堀池:本当そう。最近の技術とかをどうやって認識するんです。例えばさっきAIっておっしゃってましたけど、私たちは目に見えるからAIはこういうもんだっていうふうに分かるんですけど、例えばなんか新しい物が出てきた時にもう……。
小田:目は使えないってことですね。
堀池:そうです。
小田:目以外のところでっていう。
堀池:そうです。だからテキスト情報というか聞いた感じで理解するのか、どうやって理解するんですか。
小林:私の場合?
堀池:はい。
小林:人によってたぶん違うと思うんですけど、たぶん大抵の物はすごいもう妄想してます。
堀池:へえ。
小林:大抵の物は妄想するんですよ。AIとかの場合は、テクノロジーの技術的な物というのはまだなんとなく想像が付くわけなんですけど、すごい想像できないのは、かわいい女の子。
堀池:やっぱそうなんだ。
小林:とか、あの子はブスっていうようなのって言葉で表現できなくて、目で見た感性、感覚の世界ですよね。きれいな景色とか、すごい建物ができたよって、僕スカイツリーってすごいいまだに興味があって。どんななんだろう。
堀池:へえ。あ、そっか。
小林:だから技術テクノロジーのほうが言葉で説明してくれたり、自分がその恩恵にあずかったりすることもあって。例えばコンピューターで僕らは普通にEメールでやりとりするので。それはどうやってるかというと音で読み上げてくれたり。
堀池:らしいですね。Facebookとかも。
小林:そうです。スマートフォンとかも。
堀池:なんでコメント付けられるのかなって思ったことがあって。友達がいるんですけど、毎回「いいね!」を押してくれるんですけど、どうやって「いいね!」を押そうと思うのかなとか、どうやって認識してんのかなっていうのはよく思ってました。
小林:だから小田さんは昔、国立の施設で仕事されてた当時、その当時からこういうコンピューターテクノロジーみたいなのが視覚障害の世界を変えてくっておっしゃってたって聞いたんです。
小田:そうですね。僕の1番最初のテーマは、コンピューターをどうやって視覚障害教育に応用するかっていうテーマだったので。その当時はでもものすごい逆風で、みんなからなんか言うごとに説教されてましたけど。
水谷:逆風だったんですね。
小田:コンピューターが人間救えるわけねえだろうみたいな。要するに、人間が救わなければ機械なんかに救えるはずないじゃないかみたいなことをよく言われてました。
水谷:ああ、なるほど。
小田:それとか、コンピューター触ってると自閉症だろうとかですね。もう本当にひどかった。当時は逆風で大変でした。
水谷:やっぱ新しい物が、例えばラジオが世の中にできた時には、本を読まなくなるから駄目だって言われたりとかっていうようなのと一緒なんですね。
小田:そうですね。
水谷:小林さんの場合はあれですよね。28まで、見えにくくなる前までははっきり見えてたから、その分新しい物ができても、例えばこういう物とか形容をして説明しやすいっていうのはありますよね。
堀池:ああ、そっか。なるほど。
小田:つながってるからね。でも小さい頃から全然見えなくても、それはそれなりの接近の仕方があるので。どうしても分からない物もあったり、それもさっきのスカイツリーみたいに大きいやつはなかなか難しいんですけど、そういう時は模型を作って触ってもらうとか、いろんな方法が盲学校なんかではいろいろなされてますけど。だからそれなりの方法はあるんだと思うんですが、でも難しい物もありますよね。それでよく言う視覚障害の世界で有名なのは、「バーバリズム」って言葉が有名なんですけど。
小林:バーバリズム。
小田:うん。バーバリズムっていうのは、見たことがない、体験したことがなくて、視覚障害になった人たちというのは外出の機会とかが減る傾向があるので、誰かが話したこととか書かれてることから学習することが増えてしまうんです。
そうすると、そこからの妄想だけで自分のイメージを作ってるので、実体を知らないっていうのを言葉、バーバリズム言語主義って言うんですけど、言語的なものだけしか知らない。本当の実体に関心を持たないで、どうしても……。だから面白いのは、盲学校の子供たちに絵を描かせると、鳥が4本足だったりするんです。
小林:つまり……。
小田:触ったことないし、見たこともないので、鳥の羽が手の代わりになったんだっていうことが分かんないから、ほかの動物と同じように足が4本あるんじゃないかみたいなそういう絵って結構よく出てくるんです。
水谷:なるほど。
小林:なんか昔、恐竜でいたんじゃねえかぐらいのそんな感じのものが出てくるわけですね。
小田:ペガサスみたいなね、出てくるんです。割とよく出てきます。そういうのがだからバーバリズムって言うんですかね。どうしても体験が減ってしまって、言葉の中だけでっていう。
小林:聴覚障害、耳の聞こえない聞こえにくい人たちとのやりとりの中で、ノンバーバルコミュニケーションとか、逆で出てきますよね。なんか言語以外のやりとりっていうのが出てくるけど、視覚障害なんかでは、自分がそうだけど、今、初めて聞きました。でもすごい分かる気がします。すごい堀池さんが「はー」って感心されてるのがすごい……。
堀池:はい。
小林:僕なんかすごい興味がある感じなんですけど。でも世の中からは知られてない世界の話ですよね、小田先生、この視覚障害のことって。
小田:そうかもしれません。
小林:興味がある人は、とか身近にいる人は知ってるけど、知る必要もないし、知るきっかけがないのかなっていうか。
小田:知りたくないのかも知れないですね。そこが一つの問題かなって思うんですけど。
堀池:知りたくないっていうのは、どういうことですか。
小田:つまり、自分はそうはならないだろう、怖いからそこからは遠ざかっていたいっていう意識が強いんで、そこがまたすごく大きな問題で。
そうするとそういう情報をまた得ようとしませんよね、積極的に。ところがさっき言ったみたいに、リスクとしては結構高いので。
堀池:自分もなり得るってことですよね。
小田:そうね。なったときに困るわけです。あらかじめ知っていればまだやりようがあるんだけど、知識もなんにもなくて怖いと思ってるから、なったらすごく落ち込んで、なかなかそれが次の社会復帰とかリハビリに結び付かないって問題がある。
水谷:想像力があるかないか、なのかなって私は常々思ってるんです。例えば飲み会してて、明日から目見えなくなったらどうするなんて話してると、だいたいの人って言うと語弊がありますけど、「いや、俺がそんなことになったら命を絶つ」とか、やっぱもう言っちゃうんですよね。それ、絶対自分がなると思ってない。で、なったらもう人生終わりだっていうその選択肢しかないというか、その考えしかないっていう。
それがもしかしたら自分の身近な人がなったりとか、寄り添って生きていく必要があるとか、生きていきたいって思った場合に、自分はどう思うかっていうと、その時に初めて当事者として考えられるのに、そこまでに身近にないから、情報も入ってこないし得ようともしないし。やっぱりおっしゃるとおり情報を得るのが嫌だから、怖いからっていうのがすごいあるのかなって。
小田:うん。怖いんだと思いますね。でも小林さんみたいに、お酒飲むの好きだし、登るの好きだし、いいかげんな人みたいなんにたくさん会うと、あれでいいんだっていうふうに思うんで、そこが大事なんだと思います。
水谷:同じシェアハウスのもう一人の友達は、中央線 西荻窪(にしおぎくぼ)で、酔っ払った小林さんをよく見る。
堀池:こうやって。
水谷:そう。電車の中でガックンガックンしている小林さんをよく見るっていう笑
小田:そうそう。大事なことですよね。
小林:だから、特別な人として見られてるわけでしょ。つえを手に持ってるだけで特別な人として見られているわけで、でも実際のところは一緒にお酒飲んで、一緒にクライミング楽しんで、ゲラゲラ笑ってっていうようなことなんだけれども。
ところが、さっきいつから視覚障害になったのかっていう話と同じ、つえを持った瞬間に別の自分とは違う生き物になってしまうんですよね。それがすごい不思議だなって思った気付きで。じゃあ自分が逆だったらどうだったんだろうと思うと、確かに自分もそういう見方だっただろうなっていう気は正直するんです。
だから自分たちが例えばこういうラジオとかを通じて、同じような固定的な見方をしている人たちに、一人でも二人でも、なんかちょっと気付きというか、少しでも見方を変えてもらうようなことができたらいいなって思うので、だから電車の中で酔っ払ってガクンガクンしてる僕を見て、視覚障害だからあの人危ないじゃなくて、酔っ払ってるから危ないから降りましょうって声を掛けてもらうぐらいの気持ちのきっかけが、なんか出発点が変わってくれたら、同じ人と人、同じ人が暮らす社会としての関わり方みたいになってくるんで、よりうれしいなっていう気はすごいするんですけど。でもやっぱりすごい遠い存在だなって思うんです。
水谷:私も小林さんと知り合って、やっと近づいた、みたいなことがあるんです。視覚障害者ってさまざまな見え方があるから、例えばモンキーマジックのクライミングイベントで初めて会った視覚障害者の人とかに、どのぐらいの見え方なんですかっていうのは、やっと聞けるようになった。
前は聞くのが失礼なんじゃないかとか、嫌な思いをするんじゃないかって。でも本当はお互いコミュニケーション取って知ったほうが、その後のやりとりがしやすいというか、安全という意味も含めてとかいうのがやっと5年間でよく分かったというのも一つ。
で、もう一つが、例えば小林さんとかに町で見たら気軽に声掛けてくださいとか、車いすの人とか、つえ突いてる人とか、耳が聞こえないんだろうなあの人はっていう人に、気軽に助けてあげてくださいねとか、よく耳にする目にするフレーズって、いや難しいだろうなって私は思うんですよ。
そういう時に、一つ飛び越えやすいきっかけみたいなの何かなっていうのを日々考えたりするんですけど、その辺りってどうなんですかね。今も昔も変わらないんですかね。
小田:難しいことは変わんないじゃないんですかね、たぶん。それと、そういう援助の話になってくると、いろいろ援助の行き違いみたいな話もたくさんあります。
視覚障害の人なんかと話してると、本当は駅からちょうど出て行って改札出たばっかりのとこで、たまたま親切な人に出会っちゃったら、どうもその人は、私がこれから電車に乗るんだとばっかり思い込んで改札の中に引き戻されてしまって、ホームまで連れて上がられちゃって、せっかく下まで下りたのにみたいなことがあったりとか。そういう思い込みっていうんですかね、その場の雰囲気で目の見えてる人は、この人はきっとこれからホームに上がるんだろうと思っちゃったみたいな。
そこは大事なのは、本人に「何がしてほしいんですか」、「これからどちらに行かれるんですか」って。
堀池:聞くことですもんね。
小田:聞くことなんですけど、聞くことって実は非常に難しいんです。っていうのは、視覚障害でなくて目に見えてる人同士って会話する時に、あなたに話してるんですよっていうことを目で合図するんです。相手の視線を捕まえてから話すんです。だから目の視線が合わないと、話し掛けるタイミングをつかめないです、普通の人は。
だから目の前にいる視覚障害の人を助けたくてその人に話し掛けたくても目が合わないので、どのタイミングで話していいのか分かんないうちに、なんとなくタイミング失っちゃうって場合が多いんじゃないかなって思うんですけど。で、知らない人だったら、その時に声掛ける方法もなかなか。小林さんって知ってれば、「小林さん、小林さん」って言えばいいんですけど、知らない人が歩いてたらいったいなんて言ったらいいか。
堀池:いきなり触っても。
小田:そう。
堀池:びっくりしちゃいますよね。
小田:びっくりしちゃいますからね。そこら辺が結構大きいんじゃないですか、声掛けにくい。
小林:確かに助けてもらう時、僕はすごく声を掛けてもらう時が多いんですけど、「すいません、すいません」って言われた時に、俺に言われてるんだか。
小田:誰に言われてるんだ、とかね。
小林:周りにすごい人が多いと。でも、確かに声を掛けてくださる方もすごい気にして勇気を出して声掛けてくれてると思うんです。昔だったらシルバーシートっていう時代に、おじいちゃんおばちゃんに席譲るのって、「どうぞ、席座ってください」って言うのって、「言おうかな、どうしようかな」みたいなこんななんかがあるのと同じで、たぶんその「すいません、すいません」って声掛けてくれるのはすごい勇気を出してくれてるんだろうけど、自分に言われてるのかどうなのかなって思うと、「あ、私ですか」って言うと、全然違う誰かと話してた、なんてやっぱりあるわけです。でもそこで心が折れてると僕らは僕らで駄目なんだろうなっていう思いというのはすごくあること。
小田:そんなこと気にしないでやらないとねっていう。
水谷:小林さん、何て声掛けるのが1番分かりやすいし自然なんですか。「そこの白杖の方」みたいな。
小林:でも俺、白杖(はくじょう)っていう言葉は世の中の標準語ではないと思う。
堀池:はくじょうって、白い杖ってこと?
水谷:白いつえ。
小林:白いつえのこと。
堀池:ああ。
水谷:視覚障害者の方がこう、足元を確認してる白いつえを白杖っていう。
堀池:あ、白杖っていうんだ。知らなかった。
水谷:白いつえと書いて。
堀池:知らなかった。
小林:だって、まさか「そこのめくらの人」って言えないもんね。
小田:言えないんですよ、これが。
水谷:だって声掛けられないのに、いきなり肩とか腕とか、まあ、もちろん良かれと思って触っていただいて誘導してくれる方もいらっしゃると思いますけど、いきなり「大丈夫ですか」とか、手とか握れないじゃないですか。だからやっぱり声掛けるとか。
小田:そうですね。
小林:こちらのすれ違いはあるにせよ、全然接点持たなかった人が声掛けてくださるのは、1番やっぱ分かりやすいのは「すいません」って、「大丈夫ですか」とか、あと、「ご案内しましょうか」とか「お手伝いできますか」っていうふうに言われたら。
水谷:なるほど。
小林:「お手伝いしましょうか」は、自分に言われてるのかなっていう感じがすごいある。
水谷:なるほど。はいはい。
小林:だから、そういうのは1番自分も反応しやすいかなっていう気はするね。あとはどうだろう。東京は一人で町を動いてる障害者が多いと思うんですよ。車いすの人とか視覚障害の人も。
でも東京を離れて地方都市、地方都市を離れて地方って、僕ちょっと出張も多くてちょこちょこいろんな場所行くんですけど、一人で視覚障害の人が移動してる、行動してるっていうことがほぼないみたいで。だから、東京だから周りの人も声が掛けやすくなってきてるんだなと最近実感して。
堀池:え、地方の人はじゃあ、ご家族とかと? どう……。
小林:地方の人のほうが、もう本当に生まれて初めて見た生き物ですよ。
堀池:へえ。
小林:目の見えない、つえ持ってる人が。
堀池:が、いるみたいな。
小林:いるみたいな。
堀池:へえ。
小林:そういう感じの反応とかありますね。あと、最近面白いなと思うのは、日本ってセブンイレブンに行こうが、マクドナルドに行こうが、ドトールコーヒーに行こうが、僕らが一人で行くじゃないですか、店員さんがサッと来て「お手伝いいたしますね」って言ってやってくれるんです。それが本当、素晴らしいなって思うんです。
でも全ての店舗の全てのスタッフに行き渡ってるわけではないので、研修を順次やってるっぽいわけです。そうすると、行くじゃないですか、「ああ!」みたいな感じで。
水谷:「来ちゃった」。
小林:「来ちゃった」みたいな。そうそう。
水谷:「来ちゃった」。
小林:「やっと研修で習ったことをやるチャンスが来た……」って。おどおどしながら「肘でよろしいですか。どうぞこちらへ」みたいな感じで。
水谷:ああ、いいっすね。
小林:でも、それを研修で広がってるっていうことの素晴らしさと、それを実際に表現する機会として、我々も誰かと一緒だったらそんなの必要ないので、一人で街を出歩いたり、何かをするっていうことが結局、周りの人の理解につながるんだろうなっていうふうに思うので、教育として受けたものを、それが学校であったりとか、企業であれば企業内の研修だったりとかっていうので受けたものを表現する場も必要なんだろうなっていうのは思ったりします。
逆に堀池さん、さっきおっしゃってた一緒に働いてた方って、どんな方で逆にどんな見え方、ご存じだったらで。どんなお仕事されてる。
堀池:前の会社で、その方はマッサージ、うちらの前の会社にマッサージのなんか施設があったんです、会社の中に。
小林:ああ、ヘルスキーパー。
堀池:そうです。目が見えない方が働いてて。何人かいたんですけど、ちょっと話がすごい合った人とすごい仲良くなって、ご飯とか食べにとか行ったりしたんですけど。
でも、お花とかもらったこともあるんですけど、どこでどうやって買ってきたのかなとか気になったりとか。
小林:プロポーズ?
堀池:あ、全然。
小林:あ、違う。
堀池:普通に退職した時にお花もらったんですけど。でもその方は結構もう慣れてるから、全然一人でどこへでも行けるんだよね、みたいな感じで、ちょっとたばこ吸ってきていい?とかって言って一人どっか行ってたばこ吸ってきたりとか。こんなに動けるんだって思いました。
小林:やっぱりそれも人によって結構。
小田:そう。だいぶ違いますけどね。
小林:大きいですよね。
堀池:で、さっきかわいい子がどうとかって話あったと思うんですけど、聞いたんですよ。私はどういう感じだと思うのか、とか。向こうはまったく見えない方だったので。
でも私の声から判断して、その方も20年ぐらい前から見えなかったから、20年ぐらい前のアイドルであの子に似てるんじゃないかとか。
水谷:なんかうれしいね、それ。
堀池:うん、そうだね。そうなの。面白かったですね。
小林:面白い。なんかそういう一人でも接点があると、全然きっと違いますよね。
小田:うん。そうですね。でも、その人がどういう人かによって、その後の印象がずいぶん決まっちゃいそうですけどね。
水谷:確かに。
小林:確かに一人しかいないと。なるほどね。視覚障害って言っても見方も本当にそれぞれだし、よく言うのは先天性、生まれつき見えない、もしくは小さい時に見えなくなっちゃったとかそういう人なのか、私らみたいに人生の途中で見えなくなった人なのかっていう。
堀池:先天性の人しかいないと思ってました。
小田:ですよね。実際イメージとして、そうですね。
堀池:そうですね。びっくりしました。
小田:ところが、先天性の人はほんのちょっとしかいないんです。
堀池:あ、そうなんですね。
小田:ええ。
堀池:割合としてどのくらいなんですか。
小田:どのくらいでしょうね。全国の盲学校に今いる人が2000人切ってるんじゃないかと思うので、だから170万人からしてそのぐらいなんで、ほんのちょっとなんです。
堀池:そうなんですか。
小田:先天的に視覚障害になるような病気っていうのは、出現率が0.01%とかそのぐらいじゃない。だから本当に希少な珍しい、今では、日本では珍しいことになってしまってます。
堀池:そうなんですね。
小田:はい。だから実際には、盲学校に行って先天的な人っていうのはほとんどなかなか出会えないはずで、大半は人生の途中で見えなくなった人。しかもその内のほとんどは、高齢になってから見えなくなった人。
堀池:じゃあ、みんななり得るっていうことですよね。
小田:そうですね。
堀池:でも高齢化社会だから、みんななり得る人が多くなってるってことですよね。
小田:そうです。増えてます。
堀池:でもそれって、いいことっていうと語弊があると思うんですけど、なんだろう……。
小田:そう、出会うチャンスは増えてるはずですよね。
堀池:うん。自分事として考えられる。
小田:そう。そういう時代じゃないかなとは思いますけど。昔のほうが先天の人が多かった。でも今は圧倒的に後天の人が多いし、高齢の人が多いし、病気のタイプも全然見えなくなる人はほとんどいなくて、かなり見えたままで人生を過ごしてるっていう人が増えてるっていうことです。でも大半は見えてるので、なにがしかの見えが残ってる人が多いから、自分がそういう状態だっていうことを隠している人が多いんですよね。
やっぱりさっき言ったみたいに、それ言っちゃうと「あなた都合のいい時だけ見えてるでしょ」とかって言う、「うそついてるでしょ」とかって言われちゃうのが嫌なので、だいたい本当は見えにくいのに隠しちゃってるっていうことが多いと思う。
水谷:白いつえ、白杖を持つのも、最後まで抵抗する方が多い、っていう。
小田:抵抗する人が多いです。
堀池:それは男性が多いとかそういうのもあるんですか。
小田:いや、どっちも多いんじゃないですか。
堀池:どっちも多いんだ。
小田:ええ。
水谷:人生の途中で段々見えなくなっていくから、白いつえを持つイコール視覚障害者であることを認める、、自分に抵抗するっていうのが。まあ、小林さんから聞いたんですけども。
小林:俺はいまだにつえを持つのは、必要だから持つけれどもすごい嫌で、衆人の目にさらされるっていうようなイメージでした。僕、2006年にロシアに行かなきゃいけなくて。
堀池:え? 2006年ですか?
小林:はい。ちょうど今から10年前にロシアに行くんで、今思えばその時にもう相当ずいぶん、今よりは全然見えてましたけど、やっぱりちょっと人にぶつかったりとかなんかが出てきてて、もう、ちょっと持たなきゃ駄目だなあと思えて、つえって言っても段差を見つけたりとか障害物見つけるために使う目的と、もう1個、私は視覚障害なんですっていうことを周りの人に知ってもらうっていう目的のつえがあって、当時の僕は後者のほうだったんです。
それでつえを持つようにっていう覚悟決めたんですけど、人前でつえを出すことが嫌だったし、恥ずかしかったし、ものすごい抵抗感がありました。自分は障害者だっていうことを人に知らしめるというか。
便利だとか、持たなきゃいけないっていう、そうすることにあなたは安全にって言われるけども、そんな問題じゃないんですよね。心がそれを拒絶してました。
水谷:白杖持った人の周りだけ人がいないみたいな。
小林:あった。
水谷:歩いてるとき、モーセの十戒のように、人がこう、よけて。
堀池:はけてくんだ。
水谷:はけてく、よけてくみたいなところもたまにありますよね。
小林:ある。
水谷:今は結構もう、まあまあこの渋谷とかの町だと、みんな比較的そんなことなく自然とスッとよけたり。
堀池:盲導犬を持つ人と持たない人ってなんかあるんですか。
小林:盲導犬を持つ人と持たない人は、持ちたいって言ったか言わないか。
堀池:そうなんですね。
小林:でも、くれ……。
堀池:くれ(笑)。
小林:くれっていうか、盲導犬自分が持ちたいって言ったからって、持てるもんでもないんです。
堀池:じゃないんですか。
水谷:合宿のような訓練をしなきゃいけない。
小林:4週間の。
堀池:人間も?
水谷:うん。
小田:そうです。
水谷:一緒に。パートナーとして。
堀池:免許みたいな感じ?
小田:そうっていうか、扱い方の勉強をしなくちゃいけない。
堀池:あ、そうなんですね。
小田:そんなに簡単じゃない。その日からスッと使えるってもんでもないんです。それにお世話もいろいろあるし。
堀池:確かにそうですよね。
小田:だから、犬を持てる人がどうかっていう判定もされたりなんかする。
小林:卒業試験とかもあるんですもんね。
小田:うん。
堀池:え、本当免許みたいですね。
水谷:うん。仲間の視覚障害の方が……、去年ですっけ? 小林さん。今年か。
小林:ん? 卒業試験? あ、卒業試験あったな。去年。
水谷:ノブさんが。
小林:うん。去年。
水谷:去年か。
小林:うん。
水谷:ちょうどアイメイト、盲導犬が2代目になる時の訓練の時には、もんもんとしたFacebookの投稿が日々あったっていう。
小林:そうそう。面白かった。
水谷:そうっすね。じゃあ、ちょっといったん。
小林:そうね。
水谷:曲を挟んで。
小林:ここで。
水谷:後15分ぐらいになるので、ぜひ小田先生から紹介をお願いします。
小田:僕は小田コウイチっていうんですけど、小田・Kって書くと小田和正ですかって言われるんですが、その小田和正さんの『今日もどこかで』をお願いしたいと思います。
---
水谷:
はい。小田和正さんで『今日もどこかで』でした。めちゃめちゃいい曲ですね。
小林:いいねえ。小田和正。
水谷:ずっと君をいつも見ている。見ているっていう歌詞でこの時間中盛り上がってたんですけども。じゃあ小林さん、後12分ぐらいです。
小林:はい。じゃあ第2火曜日、渋谷社会部 NPO法人モンキーマジックの小林とゲストお二人、小田さん、堀池さんと一緒にお届けしてます。それから進行はモンキーマジックの水谷くん。そして私、小林とでやっております。
今ここまで視覚障害、いったいどんな生き物なのぐらいの感じのお話をちょっとしてきましたけれども、生まれつき見えない人がいたり、人生の途中で見えなくなってく人がいたり、それから全然明るい暗いが分かる程度、真っ暗闇の人がいるのかと思えば、見えてる部分がある、見え方がみんなそれぞれ実は違う。そんな人たちもひっくるめて視覚障害なんですなんていうような話をちょっとここまでしてきて。
このラジオを聴いていただいてる先の皆さんに少しでも、普段興味、関心持つこともないような視覚障害について、なんか知恵を持ってもらえたらうれしいななんていうような時間を過ごしてきたんですけども。
さてこっから先は一緒に皆さん、じゃあ我々何ができるのかななんていうことをちょっと話しながら終わりに向かっていきたいなというふうに思ったんですけれども、今日いらっしゃってるのは……。私は、今しゃべってる小林は視覚障害なんです。僕は目が見えてる世界は、明るい暗いが分かる程度という視覚障害なんです。それから、いらしてる小田先生は視覚障害のご研究が専門と言ってもいいぐらいかな。
小田:そうです。
小林:いうふうに思いますし、それから堀池さん、それから水谷くんは二人とも目に障害もなく、特に障害もなくいらっしゃる。
堀池:私もいろいろ障害はあると思います。いろんなところに。
小林:僕も背が低いっていう障害もあるような気がしてるんですけど、障害って言っていくといろいろな広がり方が。
堀池:そう。実はいろいろあると思う。みんな……。
小林:何が障害かって、本人の問題もあるような気がすごく。
堀池:しますよね。
小林:するんですよね。立場がみんなちょっと違うという視点で。例えばここ今4人いるんですけど、女性っていうのも一人ですもんね。
堀池:そうですね。
小林:ね。その違いをみんなあって、僕は視覚障害、研究をされてる小田先生、女性の堀池さん、男性の水谷くん、いうような感じなんですけど。今年振り返っていう、もともとこの番組、今日2時間やってきてるんですけど、視覚障害者が電車のホームに転落して亡くなられるっていう痛ましい事件が東京と大阪で続いたりとかしたのもあって、それぞれの人たちがいったいどんなふうなことをしていくことが来年に向かってできるかな、なんていうことを考えて今回、視覚障害の今と未来っていうようなテーマにしたらいいかねっていうことをおさむと二人で話ししてちょっと考えたんですけども、ちょうどさっき小田和正の曲が流れてる時に、みんなそれぞれ辛抱強いというか、繰り返していくことが必要なのかななんていうような話もちょっと出ましたよね。その辺どうですか。堀池さんなんか。
堀池:はい。心が折れないことが大事だなと思いました。
小林:折れたことあるんですか?
堀池:よくあります。
小林:よく(笑)。
堀池:昨日も謝って折れかけましたよ。毎日謝ってるんで。
小林:なるほど。
堀池:でも、折れないのが大事ですよね。
小林:障害を持ってる方との接点しか、例えば視覚障害の方との接点とかで、そんなことありました?
堀池:それはちょっと今すぐにパッと思い付かないんですけど。でもさっき席譲るって話ももちろん断られたこともあるし。でも別に断られたからってもう私傷つかないんです。よく傷ついたって話するじゃないですか、みんな。私もう傷つかないんですね。
水谷:強いね。
堀池:あと、仕事相手にさ、ツイッターでなんか私との打ち合わせの後にさ、明らかに私に向かってだろうなって悪口を言われても、もう折れない。
水谷:折れない。偉い。
堀池:折れてたら生きていけないから。
水谷:偉い、偉い。
堀池:っていう感じで、障害者の方に対してもなんか話し掛けて、それがちょっとからまっちゃったとしても折れないのが大事なのかなってちょっと思いました、聞いてて。
水谷:僕ら同い歳で33、34になって、20代を社会とずっと接点があって働いているからこそ、30代迎えて、30代中盤になるからこそ、得てる気付きみたいなところがあるんですかね。
堀池:そうね。
水谷:たぶん20代だったら、私も心折れてるだろうなっていうのはすごい感じます。
堀池:そこで折れないって思えてるのが、年重ねてきたよかったなって思います。樹木希林さんみたいなこと言っちゃった。
小林:さっき電車で席を譲ってもらう譲ってもらわないっていう話の中で、「いいです」って言われたらなんとなくちょっともうやめようかなって思っちゃったりするように、目見えない人が町中で歩いていて「すいません」って勇気を出して声掛けたら、「いいです」って言われたらもうやめようかなって思っちゃったりしたりするような。
堀池:でもそれって相手によることですよね。たまたま向こうがちょっと必要としてなかっただけだったりとか、ちょっとなんかどっか気分が悪かったりとか、ちょっと機嫌悪かったりとか。
小田:本当にいらない時もありますよね。
堀池:そうそう。だからそれはこっちがいろいろ考えてもしょうがないから。
小田:そう。お互いさまで、あちらからしても声掛けられたら必ずお願いしなきゃいけないかなって気にしてる場合もある。声掛けたほうも自分がやるんだったらとことんやんなきゃいけないかなと思ってるところがあって、そこはコミュニケーションが足りてないんじゃないのっていう気もしますけどね。
お互い何がしてほしいのか、どこまでやってほしいのか。で、頼まれたほうも「いや、そこまではちょっとできないですけど、ここまでなら」っていうような、そういうネゴシエーションができるといいですね。
でも障害と思った瞬間に、なんかお互いそれをとっても、とことんやんなきゃいけないんじゃないかみたいなふうに思っちゃうところがちょっと嫌な感じ。
堀池:疲れちゃいますよね。
水谷:良かれと思って言ったのに断られた、憤っちゃったみたいな。
小田:そうそう。ちょっとそれはどうなんだろうと思うけど。
小林:あるある。
小田:それって別に障害があるからないからって実はあんま関係なくて、困ってれば誰でも困ってるとこだけ助けましょうかでいいような気がするんですけど。
だから障害のある人はそういう意味では非常に偏見を持たれていて、例えば連れて行く場所でも、連れて行った所が酒屋だったりしたら怒るかもしんないですよね。
堀池:酒屋?
小田:自分が図書館だったら喜ぶかもしれないけど、それがなんかいかがわしい飲み屋だったりしたら、私はなんでこんなことを。障害のある人なのにそんなとこ行くんですか。私は嫌ですみたいな、そういうことあったりするっていうね。でも目が悪いだけで普通の人なんで、酒屋にも行けば、いかがわしい飲み屋にも行くし、図書館にも行くかもしんないけど、もっとどうでもいいとこにも行きたいですよ。
だから、障害があると急にそういうきれいな生活をしなきゃいけないんじゃないかってみんなが思うところも、ちょっと大変ですね。よく考えてみれば、自分が目が見えなくなったらどうですかってやっぱりそこに尽きるんじゃないかなと思いますけど。ただいい人もいれば、もちろんきれいな生活してる人もいるかもしんないけど。だってその辺のおじさんとかおばさんがみんな視覚障害になるわけですから、無理ですよね。
小林:自分の中で、さっき堀池さん「すいません」とかっていう話されてましたけども、僕も自分が目が見えなくなってきて、人に向かって「ありがとうございます」っていう言葉と同時に「すいません」っていう言葉が増えるんです。
例えば電車に一人で乗る時に、自分の最寄りの駅とかだったら大丈夫ですけれども、例えば僕一人でじゃあ北海道、札幌に行きますとか、じゃあどこかちょっと遠くに行きますと。電車で乗り換えをしなければいけない時に、駅員さんに窓口に行って「すいません、どこそこ駅に行きたいんですけども、東京駅の乗り換えのお手伝いをお願いしたいんです」って言うと、全部やってくれるんです。「電車ここで乗ってください」。そうすると下りた所で向こうの駅の駅員さん。
堀池:待ってる?
小林:待ってて乗り換えしたりする。
小田:いい時代になりましたよね。
堀池:うんうん。
小林:ところが今の話で、この時期、忘年会で酔っ払って「ういうい」っていい感じになって行くと、自分が酒臭いのに、赤ら顔して駅員さんにやってもらうのとかちょっとやっぱりどこかで。
小田:抵抗がある。
小林:すいませんっていう心苦しさがあったりするのは事実で。それをお金払ってサービスとして僕は買うわけではなくて、駅員さんとかは「いやいや、もう電車乗ってお金払っていただいてるんで、僕らのサービスです」って当然のサービスですって言ってくれるんですけど、やっぱりどこかにそういう心苦しさみたいなのもある。
でも他方、それこそそこに折れててはいけなくて、それでも自分は外に出続けないと、自分という人間が引きこもっていって社会のお荷物になってしまったら、それはそれでよくないだろうなと。自分は外に向かって胸張って出て行けるようにし続けなきゃいけないという葛藤があるのは事実です。だから僕らは僕らで負けない心は大事で、柱にぶつかったりとか迷ったりとかは日常茶飯事なんですけども、でも続けようっていう気持ちにはなります。
小田さんは研究の専門家としてたぶん、自分が正しいだろうと思うことが周りから「いや、違う」って言って通らなかったりとか、いろいろぶつかる壁がそれこそ僕なんかよりもたくさんあると思うんですけど、その辺って。すごい僕の中で小田さんって壁をぶち破ってくっていうか。
小田:そうですか?
小林:押し続けてる感じのイメージなんですけど。
小田:まあ、あきらめないっていう意味ではそうかもしれませんけど、でもやっぱり折れますよ。いやあ、今回は全然駄目だったなとか、相変わらずだなとか、結構くじけますよ。
堀池:どうやって立ち直るんですか。
小田:なんかそのうち忘れちゃいます。
堀池:ああ、よかった。寝て忘れるのが1番です。
水谷:小田先生もくじけるっていうのがなんか、僕らは安心材料になるっていうのはあります。
堀池:うん。よかったって。
小林:ああいうホームの事故があってみんなが関心を持つっていうことは、何かが変わってくきっかけにはなるかもしれないんだけど、それって記憶の中からどんどん薄れてきますよね。
堀池:そうですね。
小林:そこで一人一人がここも負けずに続けて声を掛けてほしいし、僕らは声を掛けてもらったことに対して感謝するべきところは感謝するし、外に出続けるべきだと思うし。
水谷:後1分ぐらいです
小林:はい。そういう仕組みを、世の中をつくっていくために、研究したりとかして情報をどんどん出してってほしいなっていうのは思うし、みんなが動き続けないと世の中は動かないっていうことは感じがしますよね。
小田:そうですね。今回の事故について言えば、いろいろな鉄道関係の人たちが非常に激しく今、動いているので、安全柵のほうの設置がだいぶ増えてくんじゃないかと思うんです。それからここんとこ立て続けに起こってるので、どうして起こるんだろうっていうことについての関心もまた再び増えてるんで、研究する人も増えてくると思うんですけど、その中で実際、社会の中でそれをいったいどうやって実現していくのかってなんはこれからの一つのテーマだと思いますけど、そこに今日の話で出てたお互いに同じ人間として困ってる人を助けるっていうことの中で出てくるコミュニケーションのすれ違いみたいなことはあんまり気にし、、、
※発話が途切れる。
(番組終了)
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(テキストライター/株式会社アスカ21 https://www.asca-voitex.jp )
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