家事や育児をどのようにシェアするか? それが、10年後も、20年後も「ただいま」って帰りたくなる家庭のカギを握る。
「渋谷時事問題部」2016年4月19日(火)14:00-15:00放送
【ゲスト】三木 智有さん/NPO法人 tadaima! 代表理事(写真左)
―― こんにちは。この時間は最近よく目にするニュース・話題をじっくりと掘り下げていきたいと思います。司会を担当させていただくのは、NPO法人サービスグラントの小林と津田です。どうぞよろしくお願いします。
この時間はゲストとして「NPO法人tadaima!」代表理事でいらっしゃいます三木智有(みき・ともあり)さんにお越しいただいています。よろしくお願いいたします。
この時間フォーカスを当てるトピックスとして、「復職をする女性の応援」というものを取り上げてみました。
この4月、育休から明けで復職をした女性、つまり、子どもを保育園やいろいろな所に預けて、会社に戻る女性たちを応援しようというようなニュース・キャンペーンを主にインターネットで、目にするようになってきました。
私は、4月5日にハフィントンポストというインターネットのニュース記事で、「4月に復職したママへ、そして企業へ ハッピーパックというアイディアを試してみたら?」という記事を見たのですが、その記事によりますと、柔軟な働き方で女性の進出をまず支援しようというgoogleがやっている「womenwill」という取組みを紹介しています。記事には、「子どもが生まれたら仕事を辞めてしまう女性は実に62%に上り」、また、「日本は働くママを応援してくれる社会だと思いますか」という質問に対して、回答「そう思う」という人が48%と実に過半数を下回ってしまったというような調査結果が載っていました。私も実は子どもを持っている母親で働いている身であり、今日来ている津田も去年の12月に復職しました。仕事を辞めるという選択をしなかったんですけど、確かに社会が応援してくれてるなって実感はあったりなかったりというところで、わかるなあ、周りのママ友見てもそうだなと、共感を持ってニュースを見ました。
先ほど紹介したGoogleが行っているwomenwillの「#HappyBackToWork」というキャンペーンでは、「働くママを応援しよう」ということで、アイディアがたくさん集められているそうで、現時点でも5000件を超えているということなんですね。
寄せられたアイディアには、“帰社時に「すみません」と言って帰るのやめましょう”というような、小さなアイデアですけど大事ですよねというのが集まっています。あるいは家庭でもですね、例えば“パパの洗濯を上手にしよう”というアイデアなどがあったり。料理はママだけがするものじゃない。そういう考えを変えましょう。ということなんだと思います。そういうアイディアが集められているようです。
会社編、家庭編とそれぞれアイディアがありましたけども、この家庭編で出てきたようなアイディア、これを実際に実施するための支援をされているのが「tadaima!さん」なのかなというふうにニュースを見た時に思いました。ここで改めて、三木さんに自己紹介と団体の活動の紹介をお願いしたいなと思います。
三木:わかりました。僕たちは「NPO法人tadaima!」という団体で中で、10年後、20年後も、「ただいま」って帰りたくなるような家庭でいようねっていうのを一つ大きなスローガンとして掲げながら、活動している団体になります。
主な活動としてはですね、今、記事を読んでいただいたように、女性が働き続けようと思ったりとか、男性がその家庭にもっとコミットしていこうと、考えたときに、けっこう、夫婦と社会の間にはいろんな問題があるなっていうふうに僕たちの団体では考えています。
その中の一つが、家庭の中の問題であったり、家事とか育児をどういうふうにシェアしていったらいいのかなっていう、結構プライベートに近いような問題も、大きく関係してくると考えています。
そこで、うちの団体では、パパ向けの家事講座とか、家事をシェアしようねっていう講座を開催することによって、パパがもっともっと家庭とか家事とかっていうものを楽しんでいけるようなマインドを身につけてもらおうというパパ向けの家事講座が一つ行っている事業です。あとはパパが家事を頑張るっていうのももちろんすごく大切なことなんですけど、パパが家事を頑張るだけではなくて、ママ自身がもっともっと家事を上手に家族にゆだねていくっていう事も必要ないじゃないのかなというふうに、考えています。なのでママがもっと上手に家族に家事をゆだねられるようにするための一つの工夫として、家の中を整えて、そういう環境、「舞台づくり」をしていくっていうのが、家事がシェアしやすい環境づくりを目指したコンサルティングで「おうち準備パック」という事業も行っています。
また、これまではパパとママ御夫婦で家事とか育児頑張っていこうよというような話をしてきた中で、これからは子どもに対してもどういうふうに家事を伝えていったらいいのかなとか、子どもにも家事をちゃんと学んだ状態で大人になってもらいたいっていうような希望も、ある中で、子どもに対してももっと家事を教えていけるような、そういう場所っていうのが家の中だけじゃなくて外にもあっていいんじゃないかということで「キッズ家事プロジェクト」というプロジェクトも、2015年からスタートしています。
―― パパ向け、ママの意識改革、お部屋も変えちゃう。その子どもも変えちゃうぞっていう全方位でやっていらっしゃいますよね。家庭ごと預けたい気持ちになったんですけれど(笑)
今この「4月」っていうタイミングがちょうどそうだからだと思うんですけども、このキャンペーンだったりとか、復職したばかりの女性のしんどさや、「こんなに頑張ってるぞ」みたいな大量のブログなり記事なりをよく見るんですけれど、それを三木さん's eyeから見たご感想は?
三木:はい。やっぱり女性、ママが、復職をしたりとか社会出るために頑張っていこうっていうそのニュアンスで、もう前提として「ママが社会に出づらい環境があるんだよ」というところが多く語られているようになってきてるっていうのは一つのうれしいことなのかなと。まだまだ課題はあるんですけど、まずはそこからのスタートだなって思っていて、それを企業だったりとか行政だけではなく一般の人たちだったり当事者のママさん達や、また時にはパパさんからもそういう声が発信されるっていうのはすごくいいことだなっていうのは、自分も発信する側の立場に立ってもて、改めて感じるところなんですね。
それで、ママさんが「社会で働きやすくなるために」と考えたときに、多分今までは会社の規則をどうしようとか、会社の中で制度をつくっていこうみたいな話が持ち上がってきたりとか、後は保育園の数を増やそうとか、幼児保育に対応していこうとか、そういう会社とか社会からのアプローチっていうのが、先に語られ始めた部分なのかなというふうに思います。その中で、今回のGoogleの取り組みなんかでもそうなんですけど、一番最近になって変わってきたのが、家庭内のことがようやく語られるようになってきたなってことだと思います。パパも、「家事は一緒にやっていこうね」だったり、それこそイクメンという言葉が示すように、「パパも育児をやっていこうよ」っていうところが、そのママさんたちが働き続けたり、社会に出るっていううえで、どれだけ必要なことなのかということも、みんなが少しずつ認知し始めているなと。そうのは、僕も実際いろんなお客さんと接する中で感じるところです。
――確かに…何でしょう?家のことは「頑張って当たり前」みたいなのがありますね。家の中のことって、「言っちゃいけない」、「言うこと自体がはばかられる」、あるいは「外の人が聞いたら手助けしにくい」エリアだと思うんですけど、そこがだんだんとと共有できるようになってきたというのは大きな変化ですよね
三木:そうですね、本当に。その家庭の中のことに対する閉ざされた価値観みたいなのは、やっぱり今でも当然あるのはあって、全部オープンにするのがいいとまでは思わないんですけど、女性自身がその思いを抱えちゃっているケースが、いまだにあるなっていうのは、講座とかをやっていても思う部分ではあるんですよね。だから、パパとしては「何かやんなきゃいけないな」って思ったり考えたりしているんだけれども、実際に、ママの方が分からない。「いや、あなたは仕事忙しいから手を出さなくていいのよ」とか、逆に「手を出されると邪魔だからって出さなくていいのよ」とか、動機はそれぞれですけど、なかなか手をだしずらい環境っていうのは、実は今だにまだあるかなって感じたりしますね
――なるほど、実際私の家でも、やっぱり家のことは私の担当、旦那は仕事に集中してねっていうのが前提である感じですね。
――津田も当事者でしたね(笑)確かに一度家庭内で役割が決まってしまったり、ずっとお父さんお母さん世代の価値感を引きずっていると、固定した役割を変えてくっていうのは自分たちではかなりの負荷がかかるなというのが実感としてあります。ソーシャルな「tadaima!」さんのような団体が出てきて、そこを第3者的なところから支援してもらえるという意味で、tadaima!さんのサービスを見たときに「新しいなあ、ここに踏み込んじゃうだ」という驚きがありました。
今まさに、この3月4月復職しようとしている女性が、生活を変えようとしている時なんですけど、「tadaima!」さんにも、ヘルプや相談の声が寄せられているんでしょうか?
三木:そうですね。
さきほど、うちで部屋作りのサービスもやってますよ、と紹介させていただいたんですけど、これは「お家準備パック」っていう名前のサービスで、赤ちゃんを迎える準備や育休から復帰するための準備を、やっていきましょうねっていうサービスの名前なんです。今ちょうど育休から復帰するところ、したばかりという方が、お客様としてご依頼が多く、問い合わせもきているところになります。
さっき、小林さんがおっしゃったように、家の中での役割分担や、家の中のカタチって決まってしまうと、それを覆すのは、双方なかなか大変なんですよね。それを覆すのにはやっぱり「いいタイミング」っていうのがあります。それが、「その暮らし方をガラッと変えていかなくちゃいけない」っていうタイミングで、まさに子どもが生まれたり、今の時期であれば、妻が育休から復帰するとか、「家にずっといられる今までの生活とは全然変わるんだ」となったとき、なんです。そういう話が夫婦でやりやすかったり、そういう話をしていかなくちゃいけないよねっていう気持ちにお互いなって初めてそこで、このめんどくささみたいなものを払拭していけるきっかけになるのかなと思っています
――なるほど、確かに。「生まれる」と「復職」。家族がひとり増えて、どんな変化が起きるだろう…と考えるタイミングと、あとは復職。「えっ?会社に行くの、明日から?」みたいな(笑)私も、生後4ヶ月のまだ寝返りもできない赤ちゃんを保育園に預けての復職だったんですけれど、「えっ、朝7時半に保育園って、どうやって行くんだろう…?」、「それまでに何をしてたらいいんだろう?」って、復職が近づいてきてはっとするんですね。そうすると、復職までに何してなきゃいけないか、家がどういう状態になってなきゃいけないかって、大体ぎりぎりになって慌てるんですよね。
津田さんは「TODOリストを書くのが好き」っていう特殊な方なんですけど、そんな津田さんはやっぱり完璧な感じで復職を迎えたんでしょうね。
津田:そうですね。やっぱりその復職するとか、子どもが生まれるって物理的にできなくなることが多くて、まずそこで旦那に家事をアウトソースしていった感じなんですね。出来できないからやってほしいということで。でも、やっぱりやってると、できないことがどんどんどんどんふえていっているので、復職したタイミングでは完璧ではなかったですけども、日々役割分担を変えながら何とかやっているっていうのが今だと思います。
――そうですよね。単純に、朝起こす、布団たたむ、ご飯用意する、洗濯する…いろんなタスクがもう無限にあるわけです。
それを自分がやっていたけど、出来なくなるからそれを切り分ける。以前、「おうち準備パック」の内容を三木さんから伺った時に、そんな単純な話でもないのかなというお話を三木さんから聞いたことがありましたよね。
三木:はい。「おうち準備パック」というサービス自体としては、お部屋づくりをしますよっていうのがメインになってきますので、ご夫婦で一緒に、復職とか、赤ちゃんが生まれて、生活の変化に備えるための「空間づくり」をやっていきましょうというのが一つのポイントになります。例えば部屋の変化を使いにくかったものが使いやすくなったりですとか、あと実際にお会いしたお客様の話の事例でいうと、朝の保育園の準備で、旦那さんに朝ごはんづくりを本当はお願いしたいと。なので、キッチンの整理をすることで、各々が使いやすいキッチン環境を作ってほしいというご依頼があったんですが、よくよく話を聞くと、旦那さんは料理が全然得意じゃないそうなんです。なので、得意じゃない人に家事をまかせると、ものすごくイライラしてしまうみたいなんです。
しかも、すでに復職しているので、イライラした状態を減らすには、もうちょっと別のこと任せた方が良いんじゃないかと。例えば、朝のお子さんの保育園の準備を手伝ってもらったら、その間に奥さんが、朝ごはん作って、出勤の準備ができる環境が出来きますよね。普段、手伝ってもらっていないのに任せると、子どもの服や保育園に持っていくものや、園からのプリントの置き場所が分からないので、スムーズに準備出来ないんです。なので、朝の子どもの準備がしやすいように、支度スペースとキッズスペースみたいなものをリビングの中につくってしまえば、すぐにお出かけができると。すると奥さんは、朝ご飯作りだけに集中することができるんですよね。それだけでもだいぶ楽になったりします。
――何かの支度スペースっていうのが新しいですよね。旦那さんが、そこに行けば、簡単に支度が完結するように、部屋を変えてしまうということですね。男性ってそういう仕組みとか、一目瞭然な環境って非常に重要な気がします。
三木:家の使い方って、僕たちはゾーニングって言っているんですけど、そのゾーニングで、区切りを作っていくことがすごく大事です。このスペースは何々をするスペースだよね、とか。例えば、「リビングだったら、くつろぎのスペース」というのは大体、誰しもが分かっていると思うんですけど、ただ「くつろぎのスペース」っていうだけじゃなくて、そこでもうちょっとイメージを膨らまして、子どもが遊べるスペースにしたりとか、それこそ朝の支度ができるスペースも兼ね備えるりとか。
あとは、ダイニングもご飯は食べるだけじゃなくて、例えばお子さんが小学校に入るくらいであれば、そこでちょっと宿題をや勉強をやったりできるスペースにもしてあげる。でもそれだけじゃなくて、ダイニングで勉強するんだったら、少し勉強道具や文房具が近くで取り出せて、ご飯のときになったらすぐそこに片付けられるような、収納の棚を少しでもでもいいから作ってあげることもできます。朝の支度にしても、リビングの中のどこかに、子どものものをまとめておく場所を作っておくと、小さいうちはお父さんお母さんが準備してあげやすいし、子どもが大きくなってきて、5歳ぐらいになってくるとは自分で出したり準備出来るようになってくるんですよね。そのとき、大人がやりやすい場所に、服とかがしまってあるのか、それとも子供が自分の服を自分で取り出せる場所にあって、子ども自身で出来る環境になっているかで全然違ってたりするんですよね。そういう子どもの動線作りを、家全体を見ながら僕たちが提案をして作っていく、というのが「準備パック」のゾーニング作りです。実は、もう一個特徴があって、ご夫婦で一緒に参加いただくっていうのが一つ大きなポイントになってくるんですね。
――そうなんですね。
三木:こういう部屋づくりとか、片付けのサービスってだいたい、奥さん側が1人で申し込みをして、旦那さんのいない間に誰かが来て、家の中バーッと後片つけて終わりましたっていう状態になることが多いですが、それだと旦那さんがどんどん置いてけぼりされてしまうわけです。知らない人が来て知らない状態に片付けられても、家の中のことってやっぱりできるようにはならない。なので、御夫婦で一緒に話し合って、どういう家にしたいね、とか、こういう暮らしにしていきたいねって話をしてもらうって、そういうコミュニケーション作りのきっかけっていうのが、裏の目的じゃないですけど、僕たちがその夫婦で一緒に取り組んでもらうために大変重要だなと考えているポイントになります。
――なるほど、じゃ、そのゾーニングであったり、スペースをどう活用していくかを、三木さんがきれいに、さっとやってしまうのではなく、ご夫婦と一緒に対話しながら一緒にやっていくイメージですか
三木:そうですね。実際に例えば2回ぐらい、お家に伺うんですけれど、もちろん伺う時は、僕たちも2~3時間全力で動き回って家具動かしたり片付けしたりするのはもちろんやるんですが、そこに行くまでに、夫婦でどれだけそのディレクションがとれてるかっていうのがすごく大事で、そこの話し合いがうまくできていると、作業がすごくスムーズに進みますね
――それ会った瞬間分かりそうですね。
三木:あっ。わかります。
――よし頑張るぞって鉢巻姿が見えそうな御夫婦と、旦那さんがすごい後ろ向きな御夫婦では、そんな雰囲気を察してコミュニケーションのあり方を考えて、それぞれに違ったアプローチをするんですか?
三木:そうですね。「やっぱりもう旦那さんがいまいち乗り気じゃないんだよな」みたいな方も中にはいらっしゃって。でもそういう場合って、何で乗り気じゃないのかなっていうのをちゃんと聞き出すっていうことはすごく重要で、もちろん、うまくいかないときもあるんですが、本当は自分のこういうスペースが欲しかったとか、何か自分のもの捨てられるんじゃないかと思って、ビクビクしているみたいなケースもあったりしたので。僕たちは別に奥さんの味方っていうわけではなく、家族みんなのそれぞれの想いをある程度実現できるようにしていきましょうねっていうようなことで、ご夫婦の間になるべく立って第三者として接するようにというのは気をつけています。
――そういう第三者的役割が、スムーズにいくためには非常に重要な気がしますね。
三木:そうなんですよね。御夫婦だけだと結構喧嘩になるんです。
――そうですね。マニュアルや、こういう支度スペース作ったらいいよっていう本を間に置いてしゃべると絶対喧嘩になるなって思います。そこを三木さんが対話しながらやっていくっていうのは、すごいポイントですよね。でもお一人でやっていたら、全然体が足りないと思うんですけど三木さんだけがやっているんですか?
三木:もう1人スタッフがいます。
――他のスタッフさんもいらっしゃるんですね。「tadaima!」さんに利用申し込みをされる人ってどういうきっかけで、「tadaima!」さんのドアをたたく方が多いんですか?
三木:いくつかパターンはあるんですけど、ウェブを見て申し込みをされる方は、片付けをやってくれるんじゃないかみたいなことで申し込みをいただきますね。ただ、最近だと育休復帰に向けての家の準備をしましょうということで、ワークショップとかを開催させてもらったりしてるんですが、そうするとそこに来られた方が、「実際に家でコンサルティングを受けてみたい」ということで、家に帰られて旦那さんと話をして、来てくださいというような感じでご依頼されたりとかっていう感じですね。この3月4月はもうそれで結構予約がいっぱいな感じですね。
――なるほど、たくさん利用申し込みが、来ているということですね。
ちなみに、ワークショップの内容が非常に気になるんですけれど、どういう内容のワークショップなんですか?
三木:そうですね。実際にもう間取り図を持ってきていただいて、その中で現在の間取りがどんな間取りなのかって、その部屋を見ながら、どういう課題があるのかをまず、洗い出すというか、考えるところから始まるんですね。もちろん単純に「片付いてないんです。」みたいな方もいれば、育休から復帰するにあたって、子どもたちの部屋とか、寝かしつけをどうしようということだったり、ベビーベットどうしよう…だったりとか、何かそういう悩みはいろいろ出てくるので、それを聞きながらこういう配置してみたらどうだろうかとか、こういうふうにしたら解決するんじゃないだろうかというところを図面を見ながら実際に話し合いをしていきます。でも、まずは自分たちで考えてもらうようにしています。どういうスペースにしたいのかっていう、さっき言ったゾーニングを実際に図面を見ながらやってもらって、その中で質問があればどんどんしてもらう感じになるので、大体1回のワークショップで5人から多くても10人ぐらいまです。でないと、他の人たちに全然アドバイスができないぐらい、質問が来るので、
――なるほど。でも図面を見ながら、そこから動線を想像してもらって、もう一度家を見つめ直してみるっていうのはすごく面白そうな感じがしますね。
三木さんが、何でこういうゾーニングとか図面にお詳しいんですか? これまでの経歴伺ってもよろしいですか?
三木:元々はインテリアコーディネーターとしてずっとフリーランスで2006年から活動していました。
――なるほど。じゃあもう、その道のプロだったっていうのもあるんですね。
三木:そっちの方が専門ですね、もともとは。もともと住まわれる方にとって居心地の良い空間を作っていきたいなっていう思いでインテリアの仕事を始めてたんですけど、どうもそれが実現できてないんじゃないだろうかというような迷いを感じて。というのも一緒に働いていた先輩だったり、営業さんだったり、実際接しているお客さんを見ると、離婚してしまう家庭も多かったですし、夫婦でインテリアの相談にこられる方なんかも、旦那さんはほとんどうなずいてるだけ、みたいな方がその当時まだ多くて、自分の住む家の筈なのに、そんな興味ない感じでいいんですか?みたいな事を感じていて。自分のやってるかっこいいデザインをするとか、そういうコーディネートのあり方だけではない、もしかしたら本当に中に住んでいる住まい手さんに対して何かアプローチをかけていく必要があるんじゃないのかなっていうふうに感じて、ただコーディネートするだけじゃなく、人との関係性みたいなものや夫婦というものにもうちょっと注目した活動をしたいという思いで「tadaima!」という団体を立ち上げました。
――なるほど。住まい手に出会ったり、夫婦の関係ということに着目されたということなんですけど、三木さん夫婦も同じようにお子さんを迎える時だったんですか。
三木:いやその当時はまだ結婚もしてなかったですね。
――ご結婚されていない時に、どうしてそんな風に考えられたんでしょうか?
三木:まだ結婚もしてなくって、なんですけれど、今の妻と知り合ってはいて、結婚するかしないかみたいな話になってたんですが、その中で先輩たちを見てるとどうも結婚に幸せがなさそうだっていう…
――おっと、今日は若い大学生のボランティアも来てくださっていて(笑)何か夢のある話でお願いします。
三木:何とか夢のある話にもっていきます(笑)
――期待して聞いています。今は低い所から入っていくんですよね。
三木:そうです。それでどうも結婚生活が窮屈そうだなっていうのは思ったわけですよね。少なくとも、自分はそうはなりたくない、というふうにやっぱり思ったわけです。
自分はそうなりたくないなと思ったときに、でもせっかくインテリアの仕事をしていて、いろんな御夫婦に接する機会があるのに、何でみんなが幸せそうになれないのかっていう原因すら俺には分からないなあっていうのがあって。それで、何かしたいなっていう思いはずっと抱えていました。実際はこういう活動を始める前に結婚、ということになったんですけど。
――NPO法人「tadaima!」さんの活動をする前にですか?
三木:そうです。「tadaima!」の活動を始める前に、何かやってみたいなと思ってはいても何もできない状態が続いて。その間に結婚をしました。その結婚後に、「何か新しい活動始めたいんだよねーっ」ていうなことを妻に言ったら、「何か新しいこと始めるんだったら、今までやっていたインテリアの仕事なんかも全部やめて新しいチャレンジだけにしなさい」ということで。
――素晴らしいですね。なかなか言えませんよね。
三木:そうなんですよねー。だから僕はそれで仕事をやめまして、晴れてプー太郎になって、がけからドーンって落とされたっていう感じなんですけれど。おかげで自分がやりたいことに真剣に向き合う時間を作ることができたので、そこでいろんな御夫婦にヒアリングをしたりだったりとか、それこそ、その当時ですね、僕サービスグラントさんにも、プロボノとして参加をさせていただいたりとかしておりました。お世話になりました。そういういろんな人たちに触れ合ったりとかする中で、もっと課題を知ろうということで、100人の御夫婦にヒアリングをしました。何でそういう幸せそうな人たちと余りうまくいってない人たちがいるのかなっていう、その原因を少しでも知りたいなと思って聞いていたところ、もちろん個別に具体的な課題がたくさんあるんですが、共通したのがやっぱり家事とか育児っていうものをどれだけ夫婦で協力しあいてるかっていうのはかなり今後の生活に大きな影響を及ぼすんだなっていうの感じました。当時子どもがいなかったので、しかも育児団体って結構あったんですよね…育児は自分ではよくわかんないだろうと。家事だったら、もしかしたら自分も何かできることがあるんじゃないかなということで、家事支援を進める団体を作りました。
津田:なるほど。ちょっとお伺いしたいんですけど、家事シェアって、結構お嫁さん側から見たらハッピーなんですけど、旦那さん側から見ると仕事がふえるというようなふうにも見えなくもないと思うんですが、なんでその幸せそうな御夫婦の方は男性、旦那さんの方からみても幸せだったんでしょうか。
三木:男性にも実はすごく大きなメリットがあると思っていて、まず家庭的なメリットっていう所でいうと、その家事育児のタスクみたいなものの仕事の管理っていうのを奥さんだけに属人化させちゃうと、結局奥さんに何かがあったとき、風邪ひいり、病気になったでもいいですけど、何かあったときのリスクヘッジが全くできないんですよね。そうするとそのときに結局大変な思いをするのは旦那さんだったりするんです。なので、普段から家事をやっておけば、何かあったときにも当然お互いで対応がしやすいということがあったりとか、あとその男性自身の圧倒的なメリットとしてはやっぱり家事育児に参加をすることで奥さんがもちろん笑顔になったりとか余裕が生まれたりするんですよね。その奥さんに生まれた気持ち的な余裕とか時間的な余裕って、当然、自分の快適さにも影響してくるし、そういう余裕とか、信頼関係が築けるっていうのも大きくって、結局家庭の事一緒にまわしているんだよねっていう関係性が生まれることで、奥様からのパートナーからの信頼を得られるんですよね。
信頼が生まれることで、変な話なんですけど、自分のわがままも聞きやすくなるというのはあります。わがままきかせるためのものではないんですけど、やっぱりそこの信頼関係が1番簡単に築けるのが家事育児のシェアないじゃないかなと思います。
――いろんな意味ですごくフェアな関係にさせてくれるものなのかなって思いました。
三木:そうですね。男性だと、いざとなったら俺の出番だぜみたいなふうに思ってる方ってたまにいて、でもその「いざ」が来るまであなたの出番がないよってなると、いざがくるまで妻からの信頼って得られないよって。「いざ」っていう時には頑張るかもしれないけれど、そのときに本当に頑張れるかどうかよく分からないし、だったら、日常的に信頼貯金を貯めていったほうが圧倒的にいいだろうっていうのは思います。
――なるほど。逆に信頼貯金が下がることが多いですからね。
三木:いざって時に頑張って取り戻せないこともあるから。借金返済できないかもしれないかもしれません。
――「いざ」が起きてみたらこんなもんかって。大したことなかったらそれだったら、私が頑張るわって
どうですか。なんかこうやっとちょっと明るい話になってきましたけれど。
結婚はもしかしたらまだまだ先なイメージあるかもしれないんですけども。どうですかお話し聞いてて。
―― なんか、どのくらいの世代の方が中心にお願いしているのかがわからないんですが、ひょっとすると、そういう三木さんとかがなさっていることで、私たち世代、できてるつもりになっちゃっているところがあるかもしれなくて。そうすると、逆にそのことが見えづらくなってますよね。お互いに、色々社会的にこういうことが問題になっていて、「知っているでしょう?」「認知されているから」って。どのぐらいの世代の方が tadaima!さんに依頼されているんですか?問題があるから依頼しているのか、それとも、よりよくするためにお願いしている人の方が多いのか…どんな感じなんですか?
三木:実際うちに依頼されたり、あと講座にに来られたりとかする方っていうのは、大体20代後半から30代、40代いかない位のの方が多いです。やっぱり、ライフフェーズが変わるタイミングでっていうのがあるので、お子さん第1子、第2子が生まれるタイミングだったり、育休から復帰をするタイミングだったりっていうので、そのぐらいの方が多くなるのかなというところは、ありますね。
やっぱりそういう人たちと接する機会が多い中で、学生さん、特に女の子に対して思うのが、結構その若い時の「女子力アピール」が後の生活をそのまんま形付けちゃうケースが多かったりするなあっていうのがあります。
――わかる気がします。「彼のために作ってあげたいご飯」っていうレシピ集がでちゃう、というお話ですよね
三木:それでいいんですよ。全然嬉しいんですけれど、いいんですけど、そうすると男の人って、「やっぱりこの子はご飯作るのが好きなんだな」とか、「やってくれるのが好きなんだな」って思うんです。その時は多分喜んでももらえるからいいと思うんですけど、それは結婚して子どもが生まれたりしてくると、いつまでもそんな彼ごはんなんか作ってらんないって。
――確かに毎日になると話が違いますよね
三木:そうなんですよ。生活になってくるじゃないですか。そこになかなか男性が気がつかなかったりするので、女子力アピールも何かこう、ほどほどにするのか、これはあくまで特別なんだよっていうのを結婚なのか、子どもが生まれるときなのか、どこかのタイミングで示していかないと。ずっとご飯作りますだと、「なんだ、この子はご飯作るのが好きなんだな、だから俺は手を出さないほうがいい」っていう風に男性は思ってしまうかもしれません。
――とんでもないですよ!
三木:思われちゃうことが結構あるなって思ったりします。
――なるほど。女子力アピールをして、しっかり掴んだ後は「はい。フェーズ変わりましたよ」っていうような。
三木:そうなんです。つかんだ胃袋をいかに離すかってことが大事なのかなと思います。
――確かに女性側の意識もありますよね。友達が家に遊びに来た時に、友達夫婦の前でうちの子が「おかわり」っていうお茶碗を、お父さんの前に出したんですね。普段うちは平日、夫がご飯作るんです。そこで、その友達夫婦が「普通はお母さんにお茶碗を出すのにね」ってすごい笑ったんです。その日、私は後で結構ポロポロ泣いて、なんかこう、できてない、ご飯作ってないお母さんだっていうふうに笑われたっていうので、すごく悲しい思いがしたんです。でも、そこで旦那が、そんなふうに自分が考える方が悪いって言ったんです。「別に夫がご飯作ったっていいじゃない」って。その時にハッと、そういうふうに私自身もを恥ずかしいって思ってはいけないんだな、「うちはそうなんだよっ」て言えることがすごく大切なんだとすごく学ばされました。
あれですよね。先ほどの女子力アピールのせいじゃないですけれど、私たちの生活はこういうふうにシェアしているんだよっていうの、別にコレコレが本当にフェアな関係性ですみたいな正解が教科書にない分、夫婦共に変わっていくっていうのが大事ですね
三木:そうですね。今の話でいうと、なんかそこは誇りに思っていいぐらいの部分だと思います。うちはこれだけシェアできているんだよ。対等な関係で家族の関係築いてるんだよっていうのはむしろこう胸張って、大手を振って自慢できちゃうぐらいのすごく素敵な話なんじゃないのかなって僕思ったりもするんですけど。
――わかりました。こんなエピソードあるんですって、売っていきますね(笑)三木さんのお墨付きということで。
あと、復職とか、育休から復帰しての復職してっていう段階は特にそういうのが重要な気がするんですよね。旦那とフェアな状態でお互いの価値というか、家をマネジメントするというふうに見ていくっていうのが。
三木:やっぱり大事なときでもあるし、チャンスでもあるしっていう時だと思うんですよね。やっぱりこのタイミングで少しずつでいいから変えていかないと、結局復帰してすごくしんどくなって、無理が生じてきたりとか、何で今更そんなふうになるのとかっていうことが多くなってくるので、復帰し始める前のタイミング、なるべく早いうちに少しずつシェアの準備っていうのを進めておいたほうがいいのかなと思います。
――今聞いてる復職ママさんは、検索してくださいぜひ。ホームページで見ていただけたらと思います。これから、、男性、女性それぞれの家事シェアに対するマインドを変えるようなサービス、あるいは、お子さんへの家事シェアの取組み等、番組冒頭、全方位からいろんなサービス展開されてますねという話から始まったんですが、これから三木さんの「tadaima!」としての活動、どのようなことをお展開されていく予定があるんですか?
三木:うちの活動で言うと、今話をさせていただいたような準備パックのサービスっていうのをもっといろんな人に届けられるようにしていきたいなっていうのが一つあります。今まで、僕がほとんど1人やってきたものを、うちのスタッフが一名ちゃんと担えるようになりつつある中で、少しつづ今僕の感覚の中でやってきたものがマニュアル化されて可視化されてきている部分があるんですね。なので、そういったものを少しずつでもいいので広められるようにしていきたいなっていうのが一つと、後は子どもに対して家事を教えるっていう手間もやっぱりお母さんが9割以上担っているという現状があるんですね。やっぱそこの負担というのもかなり大きくて、それをシェアする相手って誰かなと思ったときにもちろんパパでもいいんですけど、外にそういう場所があることで、その子どもの成長に応じてかかってくる負担の一つをシェアし合うことかできるんじゃないかって思っています。そういった意味でも、キッズ家事プロジェクトっていうものを一つのママを支えるサービスのひとつに成長させていきたいなというふうに思っています。
――なるほど。キッズ家事プロジェクトも気になるところで…ホームページを見たんですが。
子どもがキッズ家事プロジックトに参加して家事ができるようになるっていうのもあるし、こんなふうに教えるんだっていうのも親も見れるようになってるっていう風にお伺いしたんですけれど、そうですか?
三木:そうですね。結構親御さんが子どもにどう接するかっていうのが大事な部分だったりするので、そこの部分を一緒に学んでいこうってのも、コンセプトになっています。
――なるほど。今日は大切なお話いっぱいいただきました。ということで、最後にこのラジオを聞いている人、実はいろんな世代の人がいると思うんですね。子どもを持ってる人、持っていない人、これから結婚する人、しない人。あるいは世代もいろいろだと思うんですけども、一つこの番組の後、何かこういうふうにやってみようかなって思ったときに、どんなアクションをすれば、より「tadaima!」さんが持ってらっしゃるビジョン実現にお手伝いができそうでしょうか。
三木:やっぱり僕たちとしては1番の骨子にあったのはご夫婦の関係性みたいなところなんですね。男性の方にしてもそうですし、女性の方にしてもそうですし。このラジオを聴いてくださってる方で、まずできるワンアクションって何かなと思ったときに、家の中のことですよね、家事に限らず、育児にしてもその他のことに関しても、今までよりも、一日たったの5分でいいので、夫婦で話をする時間っていうのを設けるとすごくいいなというふうに思います。そういう1日の出来事とかでもそうですし、そういうたった5分の一日のシェアリングの時間からいろんな課題が浮き彫りになってきたりとか、それに対して、僕たち夫婦はこういうふうにしていこうっていうものが少し見えていったりすると思うんですね。いきなり家事シェアしましょうみたいな話をしても多分男性は引いちゃうし。
――そうですね。その瞬間、ザーって引くのが目にみえちゃいますよね
三木:やっぱりいきなりそれから入ると厳しいと思うので、ちゃんと向き合える時間ていうのを5分設けるっていうのがすごく大事なことなのかなって思ったりします。
――ありがとうございます。今日5分作るところから頑張ってみたいと思います。
⇒ この番組の放送内容はこちらからお聴きいただくことができます
聞き手/小林智穂子・津田詩織(NPO法人 サービスグラント事務局)
片柳那奈子(渋谷のラジオ ボランティアパーソナリティー)
テキストライティング/大國 英子さん
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