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渋谷社会部 文字起こしサービスからみえるこれからの働き方


出演/
 小林幸一郎さん(NPO法人 モンキーマジック代表理事)
 水谷理さん(NPO法人 モンキーマジックコーディネーター)
 中村俊介さん(NPO法人バブリング スタッフ)
 渡部謙太郎さん(株式会社アスカ21取締役)

編集/
 西山真莉絵

テキストライター/
 株式会社アスカ21 https://www.asca-voitex.jp

音声データ/

https://note.mu/shiburadi/n/nb9e289f61cde


2017年3月14日(火)9:00-11:00放送

小林:おはようございます。朝の9時になりました。渋谷社会部こと、毎週第2火曜日は、私、NPO法人モンキーマジック代表の小林がさまざまなゲストをお迎えいたしまして、これから2時間放送してまいります。87.6メガヘルツ、今日も渋谷駅の新南口すぐにありますこの渋谷のラジオのスタジオから放送してまいります。今日も私、小林のほかに、いつものスタッフが二人と、それからゲスト一人お迎えしております。ちょっとじゃ、うちのスタッフから自己紹介してもらえますか。

水谷:モンキーマジック、水谷です。よろしくお願いします。

小林:お願いします。

中村:同じく中村です。よろしくお願いします。

小林:お願いします。じゃ、ちょっとあともう一人ゲストの方は、後ほどちょっとゆっくり自己紹介していただくとして。毎回、私のコーナー始まるときは、最初に自分たちの勝手な自己紹介というか、最近のモンキーマジックのことをお話をさせてもらうんですけれども。トピックは、いつも中村くんのほうにちょっと紹介をしてもらっているので、今月もお願いしていいでしょうか。

中村:はい。本日二つお知らせございます。一つ目が交流型クライミングイベントの先駆け。マンデーマジックが昨日丸5年を迎えました。

小林:はい。ありがとうございます。この番組を初めて聞かれる方も当然いらっしゃると思うんですけども、NPO法人モンキーマジックって一体なんなのよという方いらっしゃると思います。

私たちは、2005年に立ち上がったNPO法人で。私、実は視覚障害者で目が見えてないんです。私と同じように目が見えない人にとってもラジオというのはとっても優しいメディアで、どうしてもテレビなんかですと、「ああ、なんか一生懸命しゃべっている。みんな笑っているけど、ここなんで笑っているんだろう」映像では分からないことが多いんですけども、ラジオはとっても優しいということでラジオにちょっと私もかかわらせてもらうようになったということなんですけれども。私たちは、そんな視覚障害者を対象にクライミングって、最近2020年のオリンピックの種目になったことでちょっと名前も随分売れましたけども、クライミングの普及をすることを目的に設立したNPO法人です。最初は、視覚障害者にクライミングをということで始めたんですけれども、これ2005年ですので、もう12年たちました。

12年の時間がたちますと、さまざまな変化や自分たちの成長もおかげさまですることができて、視覚障害者にだけではなくて障害のある人とない人、しかも障害もさまざまです。目が見えないだけじゃなくて耳の聞こえない方、車いすの方、そのほかにもさまざまな障害の方が自分たちのイベントに来れるような空間をつくろうじゃないかということで始まったのが、今、紹介してもらいました交流型クライミングイベントですね。

クライミングを通じて多くの人が交流できる場所ということで始まったマンデーマジックというのがあります。これ、ちょうど5年前、2012年の4月から始まったイベントでして、毎回、高田馬場にあるエナジーというクライミングジムを使って45人募集で開催してます。昨日も40人近い方に参加していただいて、大変盛り上がったんですけれども。もともとやっぱり社会ってどんな姿なんだろうって僕らなりに考えまして、障害者も高齢者も子どもも外国人も、いろんな人が笑いながら応援し合いながら過ごせるような世界、それが社会ですね。それが本来あるべき姿なんじゃないか。

クライミングって、そんなみんなが一緒に空間共有できるスポーツなんですね。なので、僕らが思い描くあるべき社会ってクライミングにこそあるんじゃないかということで、交流型のクライミングイベント、今、僕ら5年たちまして全国に広げ始めました。北海道から福岡、九州までさまざまな場所で仲間たちが交流型のイベントを始めるようになりました。そして、ここ渋谷区でも毎月開催してます。今月は、今週の金曜日、17日に、午後の6時から9時まで。何時に来てもらって何時に帰ってもらっても大丈夫です。懇親会もあります。お楽しみ懇親会、私ももちろん参加いたしますので、ぜひ皆さん来てみてください。障害のある人、ない人、誰でも参加、大歓迎です。ぜひクライミングを通じて、それからクライミングをやったことがない方も、この機会に新しい世界に触れてもらえたらうれしいなということです。長くなりました。私は、いつも話が長いと言われるんですけども。長くなりましたが、ちょっと思い入れがありました。2012年4月から始まりました交流型のクライミングイベントが昨夜、丸5年を迎えたお知らせでした。

中村:そして、二つ目はNORTH FACEのTシャツの新作が出ました。

小林:ありがとうございます。NORTH FACEのTシャツの新作が出ましただけだったら、それは出るだろうという感じだと思うんですけども、そうなんです。これなんでモンキーマジックのことで紹介してもらったかというと、僕らは今ご紹介させてもらったように2005年から法人としての活動を開始したんですけども、その翌年から、ご存じの方も多いと思うんですけれども、 THE NORTH FACEというアウトドアのブランドが実は僕らの活動を応援してくれてます。僕らの活動というか、障害者にクライミングを普及するということを応援してもらってるんですけれども、その応援する大きな力としてモンキーマジックサポートTシャツというのを作ってもらってまして、その売り上げの一部が私たちの活動の支援にというようなかたちのTシャツを作ってもらってます。このTシャツは2006年から毎年変わったデザインで作られてまして、NORTH FACEの直営店舗、それから、さまざまなアウトドアのお店や百貨店なんかでも売られてまして手に取っていただけます。

その最新版が、つい3日ほど前から市中に出始めました。そして、私たちNPO法人モンキーマジックのホームページからも直接手に取っていただけます。この場合は、ご購入というかたちではなくてモンキーマジックに寄付をしていただく。寄付をしていただいた方に1枚差し上げますよというかたちでご案内してます。今年は、新しい素材も使われて、それからデザインもグルーヴィジョンズというデザインのチームの皆さんに応援をしていただいた新しいデザインで、触っていただくと分かるような仕掛けなんかもされている、とっても格好いいと。僕ちょっと見えないんで、どんな格好よさなのかってうまくちょっと表現できないんですけども、とっても格好いいデザインだというふうに聞いていますので、ぜひ皆さん、モンキーマジックのホームページでチェックしていただくと実際のデザインも見ていただけますのでチェックしていただきたいなというふうに思います。

水谷:小林さん今、着ているやつが今年のモデルですよね。

小林:そうですね。そうです。

水谷:NORTH FACEとモンキーマジックとROCK & SNOWのトリプルネーム。

小林:ROCK & SNOWというのは、クライミングの専門雑誌ですね。山と渓谷という雑誌出版社から出ているクライミングの専門雑誌が、やっぱり応援をしてくれて、紙面上でもこういう取り組みについて紹介してくれているということで今回ROCK & SNOWというロゴも載っているんですね。

水谷:載ってますね。クライミングが岩に張り付いて登る競技・スポーツなので、背中側に大きなデザインをしていて、背中にNO SIGHT BUT ON SIGHT、見えなくたって登り切れるんだぜというようなモンキーマジックのメッセージと共に、その上にクライミングのホールドという掴むところがちりばめられているというようなデザインですね。

小林:一度や二度皆さん見たことあるんじゃないかと思うんですけど、人工の壁のご利用するときのカラフルな石。あれはホールドというんですけど、そのホールドを模したデザインなんですね。

水谷:ですね。

小林:それで、目が見えないということと、それから、今回のTシャツのデザインとちょっと引っかけていて、同じ同系色をうまく組み合わせて、字が見えたり見なかったり、それから、重なっちゃってちょっと見えにくかったりするような感じで、うまくデザイン上に見えない見えにくいということを表現したというふうには聞いてます。

水谷:これはデザイナーさん、デザイン集団グルーヴィジョンズさんという、もう感動的な出会いですね。

小林:本当、現物を手に取っていただきたいなと思う。男女ともにそれぞれ色も6色ずつあります。毎年売り切れごめんです。各店舗に行っていただくと直接現物見ていただけますし、先ほどもお話ししましたけども、私どものホームページからもご覧いただけます。
ちなみにNORTH FACEの店舗は明治通りの、ちょうど渋谷から表参道に向かって歩いていっていただくと、右手の側に大きなもうNORTH FACEの旗艦店がありますので、そちらに行っていただくと手に取っていただけます。ぜひ皆さん手に取っていただきたいなというふうに思います。

中村:以上、今月の二つのトピックスでした。

小林:相変わらず自分のところのことばっかりで長々とすみません。モンキーマジックなんですけれども、今お話しさせてもらったように、いろんなイベントおかげさまで長く続けられてます。それと同じように、この渋谷のラジオの社会部に私たちが出させてもらうようになって、ちょうど今日で丸々1年ですね。来月から新しい2年目に突入というようなかたちになります。そんなわれわれにとってちょっと一つの節目になるこの回に、今日はちょっと僕らにとっても渋谷のラジオをより多くの方に放送したものを伝えるという意味で大きな出会いとなったゲストの方を今日はお呼びしています。じゃ、ちょっと改めて、株式会社アスカ21の渡部さん。

渡部:はい。

小林:を、今日はゲストにお呼びしております。じゃ、渡部さん、改めておはようございます。

渡部:おはようございます。

中村:おはようございます。

小林:朝早くから。

渡部:いや、そうですね。眠いですね。

小林:眠そうな、今伝わってきました。

渡部:やっと話せてリラックスできますね。

小林:昨日、今まさにわれわれ60回迎えました、丸5年になりましたとお話ししましたマンデーマジックにもお越しいただいて一緒にクライミングをしてきました渡部さんです。アスカ21だけだと、一体ちょっとどんな会社の、どんな方なのかというのがよく分からないと思うので、渡部さん、まずはちょっとご自身の自己紹介お願いしてもよろしいでしょうか。

渡部:はい。かしこまりました。株式会社アスカ21の取締役をやっております渡部謙太郎と申します。僕らは、文字起こしのサービスを運営してまして、この録音なんかはWebで文字上でパブリッシュされていると思うんですが、今そちらの文字起こしの協力のほうをさせております。

小林:Web上でパブリッシュされているというのは、私たちの放送が文字化・テキスト化されて、この渋谷のラジオのホームページ上で音声データだけではなくて、文字情報として多くの方に確認できるようになっているということですね。

渡部:そうですね。通常こういう番組の収録ですとかも業務で扱うんですが、そのほかいろんな企業さまの会議ですとか、あるいは裁判資料ですとか、そういったいろんな多彩な世の中にある録音データを、われわれのほうで文字にして、それをご納品差し上げるというサービスをやっております。

小林:アスカ21という会社は、じゃもうその文字起こし、テープ起こし、テキスト起こしというか、それをもうじゃなりわいとしてやってらっしゃる会社。

渡部:そこらへん非常に微妙で、一つのサービスというかたちで文字起こしサービスをやっているというような状況で。元はシステム開発とか、そういったことをやっていたんですが、システムを使って自分自身で何かサービスをつくれないかなというところから文字起こしのサービスが開発されてきました。

小林:システムということは、いわゆるコンピューターに向き合ってソフトウエアを作るとか、そういうことをやってらっしゃった。

渡部:そうですね。

小林:渡部さんご自身は、いつぐらいからアスカ21という会社に。もう立ち上げの時からですか。

渡部:僕は、会社に合流したようなかたちになってまして、それが大体2000年頃ですね。だから、17年ぐらい前ですね。当時は、会社自体、文字起こしというサービスはやっていなくて、システムの開発をメーンでやっていたと。そういうとこに僕が入ってきまして、もう、ちょっとシステム開発つまんないから自分たちで新しいのを何かできないかというので、テープ起こし・文字起こしというのを始めたというところです。

小林:それは何年ぐらい前なんですか。

渡部:サービス自体は10年ほど前にリリースしまして。ちょうど去年、今年かな。サービス開始して10年たったなというような時期でした。

小林:2007年ぐらいということですね。

渡部:そうですね。

小林:2000年ぐらいに今の会社に合流されたということなんですけれども、渡部さん、今お幾つぐらい。

渡部:僕ですか。

小林:はい。

渡部:35歳です。

小林:意外に。

水谷:私と同い年ですね。

渡部:そうですね。

小林:お若い。声だけ聞いていると、もうちょっと上の印象なんです。

渡部:じゃ、もっとカジュアルに話してもいいですか。

小林:勝手にお茶飲みながらの、1杯飲んでるつもりで。

渡部:何かなさってんのかな、これ。

小林:ということは、今35で2000年ぐらいに合流されているということは、もうじゃ、18ぐらいから合流されたことになる感じですかね。

渡部:そうですね。はい。

小林:もともとご出身はどちらなんですか。

渡部:僕は札幌生まれです。

小林:札幌。

渡部:はい。長く住んでいたわけではなくて、もう転々と東北を北から南にかけて。16ぐらいの頃に神奈川の横須賀のほうに。これは父親の仕事の関係でなんですけども。そこから上野に住んで。上野でだから十何年なんだろうな、15年ぐらい住んでいるような感じですね。

小林:じゃ、札幌でお生まれになって東北を転々として、横須賀、今はじゃ、上野の辺りにいらして、じゃ、そこが長いと。

渡部:そうですね。

小林:じゃ、今のアスカ21のお仕事というのもその頃に。そうですよね。上野にいらっしゃる前ぐらいから、じゃ、今のお仕事ということなんですね。

渡部:そうですね。はい。

小林:じゃ、今のアスカ21さんのお仕事をされる頃には、もともとシステムというか、そういうコンピューターというか、そういうデジタルの世界に明るい方だったんですか。

渡部:そうですね。個人事業主みたいなかたちでWebのエンジニアとして活動してまして、その活動の中で今の会社に合流するようなかたちになったという経緯があります。

小林:私は、中学・高校とかって、もう何も夢とか描かずに、ただ日々を漫然と過ごしてたんですけど、今のお話でいくと、18ぐらいの時に今のアスカ21さんに合流されて、その段階ではシステムエンジニアとして活動されてたということですけど。そうすると、もう中学出て高校ぐらいにはもうご自身でお仕事されてたということですか。

渡部:そうですね。僕の場合は高校出てなくて、中学を出て一応高校受験をして高校には入ったんですけども、すぐ半年とたたず辞めまして。

水谷:半年。

渡部:はい。早いですよね。

水谷:早い。

渡部:判断が速いんですね。

水谷:夏休み直後ぐらい。

渡部:ぐらいですね。とはいえ、何かしなければいけないわけですね、仕事はしなければ。仕事をしたほうが、おそらく楽しいんじゃないかと、おカネ入ってきますから。

小林:なるほど。

渡部:アルバイトだったり、いろんなことをしてたんですけども、自分の中で一番刺さっていた面白いものがインターネットとかコンピューターが、ちょうど普及し始めたような時代だったと思います、95年ごろですね。

水谷:小林さんもちょうどオフィスにパソコンが現れたぐらいの時じゃないですか。

小林:そうですね。僕は、ちょうどもう当時サラリーマンやっていて、まさにWindows95、そうですね。

水谷:95。

小林:があって。僕の勤めていた会社はアメリカの会社だったので、アメリカの本体が全部Appleだったので、当時は最初Appleが入ってきたんですけども、とにかく時代はもうコンピューターを使って仕事をしていくというふうにシフトし始めていた頃でしたね。アメリカのその流れに乗ってかなきゃいけない日本人のおじさんたち追いつけていけない、さあどうしようというような感じで、皆さん闘ってましたね。

渡部:いまだに闘ってますね、皆さんね。

小林:よくあの頃、おやじギャグで言ってたけど、「はい。じゃ、まずパソコン立ち上げてください」と言ったら自分が立ち上がるみたいな。そういうような本当に笑い事じゃなく、そういうのを普通にやっている時代でしたもんね。その頃ですか。

渡部:そうですね。なので、なんかものすごい新しいものが、突然ぱっと目の前に現れたような、そういう感覚が僕はすごくわくわくしたというか。自分は、それに触れてみて、これで何ができるのかなというのを。すごくわくわくしていたような記憶がありますね。

小林:すごいわくわくするっていうのって分かる感じがするんですけど、でも、コンピューターゲーム、今でいうニンテンドーDSとかPlay Stationとか、ああいうふうな、要はおもちゃを与えられた感覚のものと、でも、実際、今の渡部さんのお話でいくと、もう既にビジネスの世界にお仕事としてシステムエンジニアとして始めていくというふうなところにどんどん動いていったようなお話だったかなというふうに思うんですけど。

高校生ぐらいなんて、年代的にいうと、遊べるんならいいやぐらいな感じのものが、みんな頭の中を占めてるまだ年代だと思うんですけども。それが、お仕事に、ビジネスの世界に振っていかれたんだなということに今ふと思うわけなんですけど、それは、なんかきっかけとかあったんですか。

渡部:コンピューターとインターネット自体が、もう遊びのようなものだったように思います。プログラムがなんで動くのかなとか、システムって裏側でどういうふうな仕組みになっているのかと。それを知って自分で作って、どや顔するわけですど。それが、すごい楽しいんですね。じゃ、これって何かそこでバイトとかできるんじゃないかみたいなので、そうすると世の中あまた求人が高い時給で出ているという時代でした。この渋谷が、いわゆるビットバレーというふうに言うんですが、目黒とか、あるいは祐天寺かいわい。あんまり、これは固有の企業名とか言わないほうがよろしいですか。

小林:いやいや。

水谷:全然と私が言うのもなんですが。

渡部:今でこそ超巨大な楽天さんとかも、祐天寺かいわいにちっちゃな建物でオフィスがあったりとかいうような時代で。実際、僕もそういう世界でまず仕事をし始めるわけですね。おカネが欲しかったんですね、当時は。意外と通じたと、意外と通用したと。なんか自信が付いちゃって、僕にこれができるんだったらこれを仕事にしてもいいんじゃないかなというふうに思っていったというような経緯ですね。

小林:普通に考えればというのは変な言い方ですけど、私はその世界の仕事って全然分からないんで、言うならば、なんの実績もない、学歴もない子が、これどうだと言って、募集のところに持ち込む話なわけですよね。

渡部:はい。

小林:それを買ってくれるような、評価してくれるような業界であったということですか。

渡部:そうですね。たぶんいろんな背景あったかなと思うんですが、極端にまず技術者が不足していたと。強烈に膨張していったような状況だったので、もう猫の手も借りるようなかたちで、たぶん僕の手を借りたんじゃないかなというふうに今になって思いますね。

小林:横のつながりとかっていうのはどうだったんですか。

渡部:当時はまったくございませんでした。

小林:なかった。

渡部:はい。なので、もう体一つで素手で戦いに行くというような世界でしたね。

小林:職場に通勤するような仕事だったんですか。

渡部:当時はそうです。

小林:じゃ、ビットバレーのどこかに。

渡部:そうですね。僕は、その当時は祐天寺のほうに横須賀から通ってまして。ただ、もうほとんど帰れなかったですね。1週間寝ないとかそういう世界が結構当たり前にあって。この渋谷かいわいも、ふわふわした目でおばけのようにさまよっていた記憶が。「もう仕事したくない」とか言いながら。懐かしいですね、この辺り来るのって。

小林:なるほど。そういうことをしていて心がやられなかった人が今こういうふうになってらっしゃるということなんですね。

水谷:いや、そうですよね、ビジョナリーで。だって、インターネットなんて、今でこそインターネット販売とかAmazonをはじめてとしてインターネットで物を買うっていうのなんて当たり前ですけど、10年前、15年前なんてインターネットで物を買うなんてとんでもないぐらいの時代もありましたもんね。

小林:危険だ、危ない、だまされるみたいな。クレジットカードの入力みたいな。

水谷:そう。

小林:そんなでしたよね。なるほど。これちょっと僕すごい面白いです。まだ高校生の頃の渡部さんの先に行けないんですけども、そんなもうろうとしながら歩いていた今日は渋谷に来てもらったんですけれども、きっとこんな雨の日もあったんじゃないかなというふうに思うので、ちょっとそんな頃のことを思い出してもらって、見上げてもらいながらちょっと今日は1曲目にいきたいというふうに思います。

毎回くどいぐらいに僕らは、昨年の4月から渋谷のラジオでこの番組に出させてもらうようになってから、私たちNPO法人モンキーマジックということで、いつかこの人たちと一緒にコラボレーションしたいなという思いを込めて、毎回この人たちの曲を流してきました。今日も1曲目は、この人たちの曲です。MONKEY MAJIKで『空はまるで』。

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小林:はい。いかがだったでしょうか。MONKEY MAJIKで『空はまるで』イングリッシュバージョンでした。今も曲が流れている間ずっと言っていたんですけど、結局1年間くどいぐらいにMONKEY MAJIKと一緒にコラボレーションいつかしたいというのをずっと「やり切ったね、俺たち」って言ってたんですけど。

水谷:言い続けましょう。

小林:来月からも言い続けます。MONKEY MAJIKさん、いつか一緒に。連絡が来るのをお待ちしております。よろしく。こちらから連絡しても、なかなか振り向いていただけないので。熱き片思いをこれからも言い続けます。よろしくお願いします。

ということで、渋谷社会部、毎月第2火曜日は午前9時から11時まで、私、NPO法人モンキーマジック代表の小林が、ここ渋谷新南口すぐにあります渋谷のラジオのスタジオから生放送でお送りしております。87.6メガヘルツです。11時までお付き合いください。よろしくお願いいたします。

今日は、株式会社アスカ21の渡部さんをゲストにお迎えしてお送りしております。まず、前半部始まっているんですけれども、渡部さんご自身のちょっとお話いろいろ伺っているんですけれども、面白いです。この渋谷の街を若かりし日、目を血走らせながら、もうろうとしながら歩いていた日々があったというところの話が今、聞けたところなんです。それなんでかというと、中学を卒業して高校に一度入学されるんですけれども、一度学校を辞められて、これからどうしようかと思っていた時期にインターネット、コンピューターの世界に触れて、そのままそちらの世界で自分を売り込んで、仕事の世界に入り込んでいったというような話だったかと思うんですけれども、実際に、言うならば社会人経験もなくて、そんな1週間も家にも帰してくれないで、「お前もっと働け」と言われるような社会人にいきなり飛び込むわけですよね。

渡部:はい。

小林:辞めてやろうと思わなかったんですか。

渡部:最初は、こういうもんなのかと思って。どのくらいだったかな、1年ぐらいですかね、そういう生活をしてたと思います。でも、やっぱり肉体的にも精神的にもつらいとなった時に、もう辞めますというようなかたちになってしまって、そこで、もう自分でやろう、誰かとやるんじゃなくて自分でやろうというふうに方向を変えまして。そこからフリーのエンジニアとしてやり始めるようなかたちになりました。

小林:今時ブラック企業とかよく言いますけど、本物のブラックだったんですね。

渡部:当時は、たぶんブラックでないIT系ってなかったんじゃないかなと思いますね。今も若干そのけはあるような気はしますけど。

小林:そうですよね。実際に今の渡部さんおっしゃっていたような、私もちょっと友人で何人かいたんですけど、まったく同じような感じで、会社の給湯室の流しをお湯ためて、そこでお風呂に入りたいと思ってしまうぐらいの生活だったってみんな言ってましたもんね。

渡部:ITあるあるですね、それは。寝袋を必ず持ってましたね、皆さん。

小林:いや。それでも、その業界に居続けてフリーランスとして。フリーランス。

渡部:そうですね。

小林:独立されて、いうことなんですね。

渡部:はい。

小林:それは、何年ぐらいその会社に、企業人としてはやられた。

渡部:たったの1年ぐらいだったと思いますね。

小林:じゃ、まだ、それでも17ぐらいだった。

渡部:そうですね。十七、八。ちょっとかなり昔のことなんで実際の年覚えてないんですが、まだ10代だったのは間違いないですね。

小林:そうですね。もうろうとしているうちに、きっと時間がどんどん過ぎたんですかね。なるほど。僕はちょっとその業界のお仕事の仕方が分かんないんですけども、フリーになってからというのは、仕事、仕事のスポットで外注されるような感じの仕方なんですか。

渡部:そうですね。ただ、今のように、今ってクラウドソーシングですとかランサーズですとか、フリーランサーの人が活躍できるプラットフォームというのがかなり活発につくられているんですが、当時は、そういうのはなくて、人づてで仕事を取っていくような世界でしたね。あいにく僕の場合は、コネクションがほとんど周りになかったもので。

小林:まだお若かったですもんね。

渡部:何をやったかというと、システムが必要そうな会社を、もう1000社ぐらいリストアップして全部にメール打っていくっていう、そういう営業をしました。今から思うと非常に稚拙な営業なんですが、そのぐらいしかできることがなくて。そういうふうな営業をやってた中で、今の会社に合流するきっかけになったプロジェクトとかかわっていくというようなことがありました。

小林:今の会社に合流していくきっかけになったプロジェクトという話があった。その前に1000社ぐらいにメールを送りつけていた。

渡部:はい。もうスパマーですよね、完全な。

小林:それはじゃ、さっきブラックだと言っていたIT系の会社にエンジニアとして働いていた時期があって、独立されて。その1000社に送りつけるというのは、そういったIT系の会社にというよりは、もうそういうシステムを必要としていそうな一般の会社にメールを送っていたということですか。

渡部:そうですね。ホームページがなかったり、あるいは施設だったり、何かそこに、例えば、お問い合わせを受け付けるようなバックエンドのシステムがあったほうがいいんじゃないかなというのを、インターネット上、あるいは別のところで探して、それをリストアップして、そこにメールをたくさん送りつけていくといったようなことですね。

小林:私のイメージとしてエンジニアの方とか、どっちかというと職人さんっぽいイメージがとっても強くて。でも、他方今のお話を伺うと、開拓していく精神というか、営業していく力というか、そういうものをすごくお持ちになっているので。なので、会社を辞めてまた別の会社に行こうではなくて、フリーで自分で売り込んでいくという道をきちんと模索されてったのかなというのが、とっても印象的なんですけども、その売り込んでいくということに対して、ちょっと俺にできるのかなとか、そういうような思いってお持ちだった。

渡部:ありましたね。

小林:ありましたか。

渡部:そもそも業界的には人材が不足していたものの、自分自身に専門性ですとか、あるいは学歴ですとか、あるいはキャリアですとか、そういったものは一切ないに近いような状態だったので、そういうビハインドを持ったうえでも仕事をするには、自分でやるっていうのが一番近道なのかというふうなのを当時思って、1000社のメールという方向に行ってしまったということなんですね。

小林:すごくない。1000社。

水谷:すごい。反応はどうだったんですか。

渡部:反応は1,000打った内の幾つあったかな、2、3とか、そんな反応しかなかったですね。

水谷:仕事になったのがですね。

渡部:そうですね。その一つ突破したらまた次がそこから生まれてくるというような状況がございましたね。でも、やっても、ただ恥ずかしい思いをするだけなので、別に構わないかなと思って1件1件1000社メール打ってましたね。

小林:いや、その恥ずかしい思いするだけっていうのができる人とできない人っていうのが、やっぱり世の中にはいるんじゃないかなと思って、それができる人っていうのが、やっぱりその先の渡部さんの道にきっと大きく影響してくるんじゃないのかなって思いますし。1000分のゼロだったのか、1000分の2とかでもやっぱり引っかかったものがあったのかっていうのってすごい大きかったんじゃないですかね。

渡部:そうですね。ゼロだったらちょっと折れていたかもしれませんね。

小林:普通折れますよね。

渡部:だから、モンキーマジックさんへのアピールも1000回ぐらいやったらたぶん、もしかしたら返ってくるかもわからないです。

小林:そうですね。僕らまだ2回か3回と、あと放送のたび12回言っただけですからね。

水谷:そうですね。言っているだけですからね。

小林:頑張りましょう。

水谷:頑張りましょう。

小林:なるほど。じゃ、1000社から2、3当たったぐらいな感じの中で、あるプロジェクトというところで今のアスカ21さんを知るということなんですが。これ、差し支えなかったらどんなプロジェクトだったんですか。われわれ素人で分かる言葉だったらでいいですけど。

渡部:ほぼ大失敗したプロジェクトなんですが。今でこそ忘れ物を防止するためのタグ、ブルートゥースとか、あるいは、そういう位置情報を発信するようなタグってあるんですが、当時そこまでテクノロジーは発達していない中で、物にID番号を張り付けて、もしなくしたときに、それを検索して出てくるようなシステムを作ろうというような、すごいアナログではあるんですけど、そういう遺失物を検索するっていうサービスをつくろうというようなプロジェクトでした。結局それは、民間の範疇には収まらないようなビジネスモデルになってしまって。要するに警察とかの管轄と絡んでくるところがあって。

小林:確かに。

渡部:もうプロジェクトはちょっと進められないなというかたちで失敗に終わったんですが。今の弊社の代表の山田と考えがちょっと意気投合するところがございまして、彼自身が経営者という立場でもあるので。「じゃ、会ったときに一緒に何かやらないか」と言うので、今の会社に合流していくというようなかたちですね。

小林:じゃ、もともとのお仕事、アスカ21さん、山田社長の下でお話があって、そこで一緒に。

渡部:そうですね。

小林:そうすると、うちでやらないかということで、社員として働かないかというお声掛けだったということですか。

渡部:そうですね。

小林:それはブラック企業で渋谷で苦しんだあの日々がフラッシュバックしなかったんですか。

渡部:とはいえ、それからは逃れないというのも半分思っていましたので。それ以降もさらにブラックな生活は続いていくわけなんですね。

小林:なるほど。ちょっと現存している会社なので、逃れられないとかあんまり言わないほうが。

水谷:そうですね。取締役だしみたいな。

小林:そうね。なるほど。

渡部:ちなみに、わが社はホワイトだと思ってますので。

小林:思ってるそうですから。なるほど。分かりました。でも、やっぱり仕事をするというのは、当然どこでもメリハリもありますし、当然超えなきゃいけないちょっと今頑張り時だというのはどこでもありますからね。なるほど。
今の渡部さん取締役をお務めになられているアスカ21というお名前がここで初めて出てきたんですけれども。今度じゃ、アスカ21という会社のことを少しお聞きしたいんですけど。アスカ21というのは新しい、いわゆる先ほどのビットバレーのお話出ましたけど。ビットバレー、このへんそうですよね。

渡部:そうですね。

小林:出ましたけれども。のような場所にあったやっぱり新興企業だったんですか。

渡部:いいえ、もともとは古いコンピューターシステム会社でして、イメージ的には渋谷、目黒、恵比寿とかのITの企業ってすごく華やかなイメージ、分かんないですよね。ただ、古い会社も実はありまして、当時白衣を着てテープに穴を空けて、それをコンピューターに読み取らせるという本当の古いコンピューターサイエンスというレベルの会社です。当時は、技術者を派遣したりとか、そういった仕事をしているような会社でした。なので、いわゆるIT系というようなイメージとはちょっと違うようなかたちですね。

水谷:磁気テープって言われるやつでしたっけ。

渡部:そうですね。山田辺りは、その辺りを駆使してやっていたという話聞いてますね。

小林:ちょうどだから、ビル・ゲイツとかスティーブ・ジョブスが世の中を接見する前を引っ張ってきたような。

渡部:そうです。インターネット登場以前の、いわゆるコンピューターというものを、システムというものを作っていたような、そういうカルチャーが母体になっています。

小林:私、実は先日渡部さんにお会いしに行ってきたんですけど、山田社長ごあいさつさせてもらったんですけど、すみません、社長お幾つとおっしゃって。

渡部:70、今3だったかな。

水谷:元気でした。元気というか、若々しいというか。なんか私が言うのもあれですけども、「幾つに見えますか」って最初言われたんですよ。小林さんに見えますかって。「幾つに見えますか」って。

小林:めっちゃ答えづらい。幾つに見えますかってすごい答えづらいですよね。でも、すごくやっぱり印象として、ご自身がこの分野を切り開いてきたんだと。自分はパイオニアなんだっていうようなお含みをすごく感じる幾つもの言葉だったなというような印象だったですけども。でも、73ぐらいの山田社長と今の渡部さんのお年、35。

渡部:35です。

小林:5ですか。

渡部:はい。

小林:倍以上違うわけですよね。

渡部:そうですね。当時は、だから僕がまだもう10代、あるいは20代になるかならないか。彼が。

小林:もう50代。

渡部:五十幾つ。だから、子ども扱いですよね、基本的には、おそらく、そっちも。高度成長期の会社経営してたような人間ですから、吸収していかなきゃいけないなというような感じでやってました。

小林:社長が若い発想を吸収していかなきゃいけない。

渡部:逆ですね。

小林:逆。

渡部:僕がそこについていかなきゃいけないなという。経営者の考えってかなり面白いなというようなのをそこで勉強したような気がしまして。ありとあらゆることを仕事を切り開くために考えて実行していくというのの英才教育をしてもらったようなところですね。

水谷:考え方変わるって言いますよねというか、やっぱり経営者になると、中間管理職になって、それより上に行くと、要は僕らのプレーヤーは、今日、明日、来月、再来年の話しするけど、経営者層はもう5年、10年、20年後の社会のためにみたいなことを考えるから、そこでもう考え方の違いとかずれが生まれてしまって、そこで共感し合えば、どんどん上に上がれるみたいな。

渡部:そうですね。

水谷:この感覚ですかね。

渡部:そうですね。

小林:当時は、社長の下、何人ぐらいのスタッフの方で会社はやられたんですか。

渡部:実質僕一人みたいなかたちです。

水谷:ちなみに今は何名体制なんですか。

渡部:今は、会社自体は20名と、あと文字起こしのスタッフも含めますと、在宅のスタッフなんですが、今ですと200名で。その中でアクティブに活発に動いているライターは50名から100名ぐらいというようなかたちですね。

水谷:へええ。

小林:すごい。つまり渡部さんがアスカ21に合流した当時、言うならば山田社長の個人事業だったわけですね。

渡部:たぶんこれを言ったら怒られるかもしんないけどそんな感じです。

小林:それが、合流されて、もう実質山田社長と渡部さんのお二人でこの会社を自分たちの思い描く夢の世界のために、次の社会のために頑張っていこうじゃないかと。

水谷:あと20秒ぐらいでお知らせに入るんで、その辺りじゃ、後半の1時間で聞いて、ちょっとテープ起こしの話なんかもじっくり聞きたいなという、さっきの在宅とかのお話もすごい聞きたいなというところなので。

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小林:合流して夢の次なる社会が社長と二人で始まっていくような感じが。朝の10時になりました。おはようございます。今日がお休みで寝ている皆さん、渋谷で聞いてらっしゃる皆さん、おはようございます。毎月第2火曜日は、私、NPO法人モンキーマジックの小林が社会部をお届けしております。今日も渋谷駅新南口からすぐの渋谷のラジオのスタジオから生放送でお届けしております。87.6メガヘルツ。あと1時間お付き合い、ぜひいただきたいなというふうに思っております。今日は、株式会社アスカ21の渡部さんにゲストでお越しいただいております。じゃ、渡部さん引き続きましてよろしくお願いします。

渡部:よろしくお願いします。

水谷:よろしくお願いします。

小林:めっちゃ面白いです。

渡部:いやいや。

小林:中卒って今、話をしてたんですけど、中学で卒業されて高校1年も本当に夏休み明けぐらいでお辞めになられて、それから紆余曲折がありいの、今のアスカ21に合流されてというところまでお話を伺ったんですけども。アスカ21という会社なんですけども、先ほどの一番最初に冒頭の自己紹介のところでも、文字起こしを今、積極的に広げるお仕事をされてらっしゃるというふうに聞きました。
でも、ここまでの渡部さんのご紹介のお話でいくと、われわれが今聞いてきたのってITな感じの、コンピューターとかソフトウエアだったりとか、そういうシステムの開発をなりわいとしてきましたよという渡部さんのお話でした。僕は、ちょっといまひとつつながってきてなくて、一体このへんってどうつながっていって今のアスカ21で展開していらっしゃるんですか。

渡部:ちょっと先ほどもお話ししたような。先ほど言ったのは、なくしたものを見つけるよみたいな、そういう遺失物を検索するようなサービスの開発で。

小林:アスカ21に出会うきっかけだったプロジェクトですね。

渡部:そうですね。システムというのは何か先に社会性、あるいは機能性、そういったものがなければシステム化されないんですね。弊社の山田は、そこにある社会に対してなんらかのメリットがあるシステムを作りたいというふうな思いが非常に強くて、当時のわれわれのできることの中で、かつ社会的意義があるものって一体何なのかなというふうに考えたところ、テープ起こし・文字起こしのサービスをシステム化するというところに行き着いたという状況でした。

小林:じゃ、いくつかきっとそういう社会性があるものを検討している中で、そこに行き着くわけですね。

渡部:はい。そうですね。

小林:ちょっとなんでそれがって、話がなくなってしまうと思うので、ちょっと先にじゃ、行きたいんですけれども。文字起こししていくっていうような辺りに着目されるわけなんですけれども、それは、どうしてそこに着目されたんですか。

渡部:まず、われわれは日本語を扱う会社です。これ、日本人だったら誰しも日本語。誰しもではないかもしれないですが、多くの人が知っていると。場所にも縛られる必要がインターネットの登場によってなくなったと。コンピューターがあれば家でも仕事ができる。その仕事をする人たちは、おそらく日本人である。だから、特別なスキルが必要なく在宅での仕事が可能になるんではないかなと。そういうふうなコンパクトなシステムであればあるほど僕ら運用しやすいわけですね。コストもかからない。必要なリソースは日本語ですので、特別なスキルを持った人を集めなくてもいいというような考えで文字に着目をしました。

小林:ちょっと立ち返ってなんですけど、今われわれがここで話している文字起こしとかテキスト起こし、テープ起こしというか、これって具体的にどんなことを指しているのかちょっと共有しておきたいなと。

渡部:そうですね。文字起こしとは、録音された音声、もうあらゆる録音された音声を、それを聞きながら文字に打ち替える、データ入力するというような仕事です。内容は、冒頭話したとおりかなり多岐にわたります。
こういった番組の収録もございますし、インタビューですとか、シンポジウム、講演会、座談会、あるいは裁判資料、そういう場所で録音されたあらゆる音声データを文字にしてお渡しするというようなものですね。

小林:国会とかだと、なんかしゃべっている下で書記の人たちがカリカリ書いていた人がいたようなイメージがありますけど、あれはもうその場で記録としてやってますけど。こういう私どもでいえば、まさに私たちが担当させてもらっている渋谷のラジオ社会部第2火曜日の放送を文字にしてくださいというような依頼を文字に起こしてもらって、私たちであれば耳の聞こえない皆さんにも私たちのラジオの放送を楽しんでもらいたいんですというニーズを満たしてもらったり。
それから、私たまにテレビの取材なんかを受けることがあるんですけれども、ディレクターさんに「どうやって編集するんですか」って伺うと、「カメラで撮ったものは一度全部文字起こしをして、それと付き合わせながら印象的なことをしゃべっているところを切っていくんです」というふうにおっしゃっていたので、まさにそんなような。あと、会議の記録とかもみんなそうですよね。なんか会議とか、みんな。

渡部:そうですね。音声をゼロから最後まで聞いていると、その時間だけ時間が奪われてしまうんですが、文字にすると目で見て斜め読みでもして一瞬で概要が把握できるようになるんですね。そういった時間の短縮のために存在しているような仕事になってますね。

小林:つまり、さっきアスカ21の社員のお話の中でも出てきましたけども、事務所にいるのは20人ぐらいなんですよ。でも、実際に仕事をしているのは200人ぐらいというふうにお名前が出てきた、その180人の差っていうのは、文字起こしをするお仕事をしている方たちがその人数ということ。

渡部:そういうことですね。

小林:なるほど。そうすると、テープって、今時カセットテープなんてね。データで、まさにここがインターネットの力なのかなと思うんですけれども、録音されたデータをネット上のやりとりなのか。

渡部:そうですね。ネット上で。

小林:送って。それを文字で起こして完成されたものが上がってくる。

渡部:そうですね。

小林:いうようなお仕事。

渡部:そうですね。いろんなたぶん。弊社の場合は、そういうかたちでやらせていただいているんですが。いまだに物流を介しながらやっているところもおそらくあるんじゃないかなとは思いますね。

小林:ニーズとしてすごいありそうな感じがするんですけど。

渡部:そうですね。特に最近は、生産性ですとか効率化っていうものが、かなりキーワードとして社会に出始めていますので、例えば、何かコンサルタントをしている方なんかは結構インタビューとかされるんですね。そのインタビューした内容を文字に起こすわけです。
本来はコンサルタントが彼らの本分で、そこにとがって仕事をしているほうが生産性というのは高くなるんですけども、文字起こしなんてやっていると何時間もそこに時間を取られてしまって本来の価値が発揮できないような状況があると。そういうものは、どんどんアウトソーシングしていきましょう、そういうようなニーズがかなり高まっているような気がしますね。

小林:ニーズがあるっていうのは、ちょっと全然素人の僕らにもなんとなく回るだろうなって想像がつくんですけど、競争は激しい業界なんですか。

渡部:ううん。どうですかね。激しいとは思いたくない。やっぱりわれわれよりも大きな会社さまいらっしゃって、いつか虎の尾を触れればいいなとは思っている感じはございます。

小林:なるほど。でも、きっと競争があるということは、今度はクオリティーだったりとか、そういうようなところでの付加価値であったりとか、いろんなものが出てくるんじゃないのかなというふうに思うんですけれども、これ渡部さんたちのとこで180人ってさっき人数が出てきました。それから、こういった競争があって、それから大手さんもあるというふうなお名前が今出てきたんですけれども、実際どんなふうにして文字起こししてくれる人を増やし、それからクオリティーを高めるようなことをされているんですか。

渡部:弊社ですと、弊社が連携している音声テキスト化協会という協会がございまして。

小林:音声テキスト化協会。

渡部:はい。そこでテープ起こし・文字起こしの技術の教育コンテンツというものを作っております。それを受講されて検定試験に合格された方に、弊社アスカ21のほうで就業の支援を行っていて、実際われわれの会社で働いてもらうというようなかたちのライターの確保の仕方を今取り組んでおります。

小林:つまり、音声テキスト化協会さんが行っている資格認定ですか。

渡部:そうですね。最終的には資格の検定試験をやっております。

小林:資格認定試験を経た方で、その資格をお取りになられた方を一定の能力を持っている方として雇ってらっしゃると。

渡部:そうですね。

小林:その資格認定というのは、僕、自分が目が見えないので、これ俺でもできる仕事なんじゃないかな。耳使って僕らでも音声で読み上げるパソコン使えば文字に打ち出すことはできるので、これは俺にもできる仕事なんじゃないかなと思うので、ちょっとあとでまたそのへん聞きたいんですけども。実際に、どのぐらいの期間かけて皆さん資格というのをお取りになるんですか。

渡部:早い方ですと、およそ1カ月半ぐらいですかね。

小林:それは、学校に通うみたいな。

渡部:いいえ、在宅でネット上で教育コンテンツを受信して教育していただけるようなかたちになってます。

小林:じゃ、資格の認定試験みたいなのを。

渡部:そういうのもネットで今行っています。

小林:それを合格するまでで大体1カ月半ぐらい。

渡部:そうですね。

小林:ちょっと下世話な話なんですけど、それおいくらぐらい資格を取るのに。

渡部:資格は、すみません、ちょっと協会のことなので数字が正確ではないんですが、資格検定試験は6千だったか7千円ぐらいでしたね。

小林:え。7千円。

渡部:ただし、資格を合格するためには結構なスキルが実は必要なんですね。そのスキルを埋めるための講座というのもまた別にございまして。いきなり検定試験を受けられて合格される方ももちろんいます。いるんですが、基本的には前段階の講座を受講していただくというような流れになっております。

水谷:私1回テキスト拝見させていただいたことあるんですけど、300ページぐらいある、もっとありますよね。

渡部:そう。300ぐらいですね。

小林:テキストって教科書が。

水谷:もう教科書か。テキストって言っちゃいますね、教科書が。そう。だから、もともと渡部さんが、かかわりだしてアスカ21さんが手伝っていただいたという経緯も、われわれのモンキーマジックのFacebookで文字起こし協力隊員ボランティア募集みたいな告知をしたら、同じクライミングを通じて渡部さんが会社を通じて連絡をくれたというのがきっかけだったですよね。少なくとも私は、音声をテキスト化するということが、比較的時間さえかければできるものだと思っていた。やってみたところ、すごく大変なことに気づいたと。去年に聴覚障害の仲間が出てくれた回とかは何人ぐらいですかね、モンキーマジックの仲間5人ぐらいで文字起こしをやったんですけど、2週間、3週間ぐらいかけてやっとものが出来上がって、これをじゃどうまとめて、どう世に出すのが一番ベストなのかというようなところも分からない状態だったというようなところ。

小林:ちなみに2時間の放送というのは、何文字ぐらいになる。

渡部:平均しますと、3万6千文字ですね。

小林:3万6千文字。

渡部:はい。

小林:もうちょっとしゃべるの少なくしたほうがいいかな。3万6千文字。

渡部:そうですね。1分辺り大体300文字ぐらいが平均なので。これを不慣れな方が文字起こししようとすると、大体1時間の音声データで速くて8時間、遅くて12時間。2時間ですと16時間から24時間という労働が必要になってくるんです。

水谷:いや、もっとかかるような気がしました。5分を文字起こしするのに、もう1時間たったみたいな。

小林:確かにね。

渡部:夢中ですよ、文字起こしに。

小林:それを、しかも、じゃ、お仕事として、これで納品しますというレベルにするのには、もっと時間がやっぱりかかるんですね。

水谷:そうですね。技術がかかるということですね。

渡部:最初は、日本語なんか誰でも使えるから商材にしやすいんじゃないかっていうふうなかたちでビジネスモデル、弊社の山田が開発して。いざ取り組んでみたら、日本語の奥深さたるや、もう恐ろしいことがやり始めて分かったという。実は、こんなに複雑なんだなというのを、やればやるほど見えてくるという困った状況があって。
当時は自分たちで、その場その場でライターに研修のようなことをしていたんですけども、非常にこれは大変で、もうコンテンツ化して、それを基本的に読んでいただいて、それを卒業された人に仕事をしてもらうというのが一番お互いメリットがあるんじゃないかというところに行き着いて、その協会というのを立ち上げたというような経緯ですね。

水谷:でも、対価があったほうが、それはクオリティーは全体的に安定はしますもんね。

渡部:そうですね。

小林:そうだよね。

中村:音声テキスト化協会のホームページを見たら24科目あって。

小林:長いですよね。

中村:そう、いろいろ。実践も含めてなんですけど、面白いなと思ったのが、話し手の声を聞き分けましょうみたいな科目がありまして。確かに言われてみると。今日も4人しゃべってますけど、誰が誰をどこの部分しゃべっているかというのを確かに聞き分けないとおかしくなっちゃうなという。

渡部:実は現実にそれが必要だというのが、想像からは実はなかったりとか。

水谷:そうですね。言われてみると確かにそうだなと今見てました。

小林:視覚障害者がやって本当に思う。

水谷:本当ですよね。

小林:僕らからしたら、それはもう常に日常だから、大体飲み屋に行って、もう8人とかいようもんなら最初誰がどこにいるのか把握することから始めないといけないですもんね。じゃ、それが科目になっているんだね。

中村:そうなんですよ。いろいろほかにもあってね。

水谷:この科目として組み立てたのは、いつ頃なんですか。協会自体は。

渡部:今年ぐらいですと、1年とか2年とかいう時間をかけて作っていたので。今もいろいろバージョンアップが繰り返されているような状況で。なので、僕の認識と今の認識ちょっと違うかもわかんないですけど、もし興味ある方いたらホームページのほうをご覧になっていただければ。

中村:私にもできるのみたいなQAがホームページの中にあるんですけど、どういう方が応募されているんですか。

渡部:やはり在宅で仕事ができるというところに皆さん魅力を感じているような状況だと思います。つまり、家から出れない、あるいはまとまった時間が取れない、フルタイムで出勤することができない、そういった方たち。
例えば、育児中の母親ですとか、あるいは聴覚過敏症というんですか、あまり人混みとかに行きたくないという人とか、あるいはご自身が病気で外に出るのが怖い、あるいは介護に従事しなければいけない、そういった方々が在宅というものに、むしろそれじゃないと仕事ができないというところにニーズがあって、そういう方たちが学ばれているような状況です。

水谷:この間のなんでしたっけ。旅をしながら、されてましたね。

渡部:ありましたね。

水谷:稼ぐというのを聞いて。

渡部:そうですね。場所にとらわれずに仕事できるような状況なので、パソコンを持って国内・海外、インターネットが使える所であれば、どこでも仕事ができちゃいますので、海外を旅しながらテープ起こし・文字起こしをやっているライターも弊社の中にはおります。
当然セキュリティー上いろいろ懸念しなきゃいけないものもあるので、仕事の切り分けというのは当然行うんですが、ちょっと僕はその人を見て感動しました。そんな生き方、昔はできなかったのに、インターネットの発達によって、こんなラックパック、バックパッキングできちゃうの、うらやましいみたいな、なんで僕はそれができないんだみたいな。

水谷:そうですよね。かつてなんて、札がなくなった、どうしようみたいな感じで、そこからおカネを生むなんていう発想なんてなかったのに。

渡部:そうですね。現地でバイトをするか、あるいは写真を売るかというような大体そういう選択肢だったんですが、今はインターネットを通じて円を現地で稼ぎ出すということができるというのが、僕はなんかものすごい面白い現象だなと思って。それは、すごい誇りに思ってますね。

小林:すごいですね。これ今、発信しているの渋谷なので、ものすごいこれ、俺も明日らか旅人になるっていう人が増えそうな気がするんですけど。

水谷:でも、確かにすごく増えそうな気がするというのは私もあながちうそじゃないんだろうなと思うのが、例えばなんか在宅ワークとか移動しながら仕事をするって、なんかプログラミングができるとか、専門性で何か人にコンサルティングできるみたいな、アドバイスができるとか。

渡部:昔の作家とか画家とか、そういう特別なスキルを持った人たちが過去イメージされていたと思うんですね。

水谷:そうなんです。なんだけれども、やっぱり自分でもできるんじゃないか。もちろんその先には、やっぱり簡単にできるものじゃなくて技術は必要で、そのプロセスを経てにはなるんだけれども、自分でもアクセスできるようなところにあるんだというのは感動的でしたね、私も。

渡部:そういう新しい働き方。昔であれば、誰かの手助けが必要になっていた方、介護に従事しなければいけない方とかそうだったと思うんですが、彼らが、ちょっとでも自立できるようなかたちの雇用が僕らがいることによってあるというところに、かなり実は誇りを感じてまして。
もともとものを作っているのが僕すごい好きなんですね。なので、プログラムを作ったりとかシステムを作ったりとかしてたんですけども、人に対して就業機会をつくるという、これも一つのものづくりというか、仕組みづくりだとすると、なかなかいいものをつくれてんじゃないかなみたいなというふうに思います。

小林:格好いい。

渡部:ちょっと自画自賛になっちゃって申し訳ないです。

水谷:いやいや。もっと言っていってほしいです。

小林:すげえ。なんでしょうね。やっぱり先ほど来、ITなお話から始まってって、なんかそれって形がないものなイメージがあるんですけど。でも、それが実は実態のあるものにどんどん変わっていって、人の職をつくり、文字として形が残りというようなものが、そこで生み出されていっているんだなというのがすごいなというふうに思って。本当まさにこれ、新しいビジネスのかたちであって。それから社長と出会われた頃に社会性がすごく大事なんだっておっしゃってたって伺ったところには、本当今で言うとこのソーシャルビジネスなんていうのがかたちになってらっしゃるんだなというふうに思って、すごいことだなと思うんですけど。私らみたいな目の見えない人間でも、これってできる仕事ですか。

渡部:もちろんできますね。むしろ、そういう方々にわれわれやっていただきたいなというふうに思っている節があります。

小林:ああ。そうですね。さっき向いている方というのの中に、子育て中のママから聴覚過敏の方とか、やっぱりそれから外出が怖い方なんていう名前が出てきた中で、俺も家から出るの大変怖いみたいなのはやっぱりあったりするので、同じように視覚障害で、できれば外出することなく家で仕事を完結させたい人とか、それからテレワークみたいなのが今どんどん広がっている中で在宅勤務の一つのかたちとして、こういうようなものが自分でもできたらいいなというふうに思う視覚障害の人間もとっても多いと思います。
それから、さっき水谷とも話してたんですけど、一度出てきた文字化されたものを、もう一度整えるというか、そういう仕事として今度は聴覚障害の人とペアを組んで仕事をするのも。

渡部:そうですね。機能を切り分けてタッグを組めばなんでもできちゃう、そんな気がしますね。

小林:実際に今お勤めの方180人いらっしゃるという方の中に、差し支えない範囲、障害をお持ちの方というのはいらっしゃったりするんですか。

渡部:視覚障害の方に関しては、ちょっと把握はしてないんですが、聴覚障害の方はいらっしゃいますね。

小林:聴覚障害の方がいる。

渡部:はい。逆に聞こえすぎてしまうという障害になるかと思うんですが。われわれは別にそういったものを一切分別なくやってまして、できるんだったらやりましょうというようなスタンスなので、ぜひ参加していただきたいなというふうに思っているような段階ですね。

水谷:日本語が扱えれば、まずはベースとしていいというような感じなんですね。

渡部:そうですね。はい。

小林:なるほど。お仕事自体は、これは渡部さんたちの会社で営業というか、仕事は取ってこられる。

渡部:そうですね。営業は僕らが当然やります。僕もやります。

小林:なるほど。じゃ、会議の記録、文字起こしてくださいとか、それから、こういった収録を文字にしてくださいとかいうような仕事ありませんかというのはやってもらえて。

渡部:そうですね。

小林:あとはじゃ、それを実際に作業するものとして資格を取ったチームに振ってくというか、振り分けていくわけですね。

渡部:われわれの内部のスタッフとして、僕らが仕事をスタッフにお願いしていくというようなイメージ。

水谷:業務委託契約になるんですかね。

渡部:そうですね。

小林:例えば、アスカ21という会社の中では、今までは文字起こしするという業務としてイメージなかったんだけれども、こういうことを文字起こししたほうがいいよねみたいな、新しく発想したこととか生み出したことってあるんですか。

渡部:文字起こしとはちょっと変わるかもしれないんですが、最近こういったラジオも含めインターネットを通じたメディアの数すごく増えていると思うんですね。ちょっと今、話題になっているトラブル、例えばDeNAさんの情報がちょっと怪しいとか。
情報の信頼性をどういうふうに担保するかちょっと考えなければいけないような人たちも多くいると思うんですね。おそらくたぶんそういうのは第三者がやったほうが信頼付けというのはされると。
なので、校閲とか情報の信頼付けというのを受注して。文字起こしできる人であれば、それがおそらく可能です。そういうことも可能性としてはあるのかなとはちょっと考えてますね。

水谷:なるほど。

小林:コンプライアンスに近いようなことを受けていけるような感じなんですかね。

渡部:そうですね。おそらくたぶんチェック。うん、そうですね、なんかの問題がないかとか。ただの可能性の話で。なんだったらパッと思いついただけ。

小林:いや、でも、そういうのって、こういう利用の仕方もありますよというのは、われわれにとってみは皆共通の言語である日本語というベースがあって。
しかも、音で聞いてくださいじゃなくて、やっぱり文字にされたものを渡されて、こことここにこういう問題がありましたとか、ここをこういうふうに改善されたほうがいいと思いますというようなことも出してもらえると納得性もすごいありますよね。

渡部:そうですね。

水谷:逆に小林さん、視覚障害者界隈というんですかね、要は、こういう働き方というのは、今もまだまだ求められているっていう印象ですか。

小林:実はつい先日、私が理事をやらせてもらっている視覚障害リハビリテーション協会というところの研修会をやって、それテーマが就労だったんですね。視覚障害者の就労だったんですけども、そこでは、実は本当ここ、先ほども出てたインターネット普及によって、視覚障害者もパソコンを使う、パソコンの画面を読み上げてくれるソフトを使うことによって、私たちもパソコンを使って仕事に就けるんだ。
昔は、マッサージをするような人とか、おきゅうをしたり針を打ったりという仕事が視覚障害者のもう仕事だというふうに思われていたんですけども、それがそうではなくて、パソコン使うことによってっていわれていたはずなのに、実際のところは、大きな会社になればなるほど社内のイントラネットが整備されて独自のシステムが走ることによって、共通のシステムが読み上げてくれるソフトでは読み上げないという課題にみんな直面して実は視覚障害者が企業の中で仕事ができないという現実に今ぶつかっているんですよということがちょっと出てきたんですよね。
なので、せっかく見つかったマッサージ以外の仕事の選択肢が実は今狭まっているんだというような現実が出てきていて、そうなってくると、またこういう音声のテキスト化というニーズが社会の中でたぶんこれはなくならないと思うんだよね。

水谷:なくならないですね。

小林:なくならない仕事は、われわれ視覚障害にもできる仕事だというふうに思うし。特にパソコンを使うことによって、居住地、それから働く場所を問わずにできるという意味では視覚障害者にとても適している仕事だなと思うので。過渡的なものになるかもしれない。イントラの読み上げの問題なんていうのも、いつか解決されるかもしれないんですけども。視覚障害人数が少ないので、障害者というものの中でも人数が少ないので、これ、とっても期待できるものだなって私なんかは思って聞いてます。

水谷:スキルの一つになるというのも大きいですよね。能力になるというのも。

小林:そう。何歳になってもやれますからね。

渡部:あるいは、これができれば、例えば翻訳ですとか、そういったこともおそらく可能になるとか。どんどん発想が広がっていくような感じがしますね。

小林:そうですね。

水谷:じゃ、これから働き方の話もあったんで、これから先の話というのを、ちょっと曲を挟んだあとに。あと20分ぐらいなんでいきたいと思います。曲を挟んで休憩したいと思います。不可思議/wonder boyで『世界征服やめた』です。

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小林:渋谷の社会部、毎月第2火曜日、午前9時から11時は、私、NPO法人モンキーマジックの小林が、ここ渋谷駅新南口すぐ近くの渋谷のラジオのスタジオから生放送でお届けしています。87.6メガヘルツ。11時までが、この渋谷の社会部、小林の担当になっておりますが、もうしばらく、ぜひお付き合いください。すごい面白いことになってます。

今日は、そんな株式会社アスカ21の渡部さんにゲストとしてお越しいただいておりまして、何が面白いのか、ちょっとこれから最後の締めの部分に入っていきたいというふうに思うんですけども。渡部さんの会社は、文字起こし、音声の例えば、こういった私どもの渋谷のラジオの番組を2時間しゃべったものを文字にしてもらうというようなことを仕事としてやっておられる。これ2時間の皆さん放送って3万6千文字ぐらいあるそうです。恐ろしい文字の数なんですけども。

中村:天文学的ですね。

小林:そうですね。意味がもう今よく分からんぐらいですけども。その3万6千文字にするということを、より価値づけて広げていこうじゃないかというような話だったり、それから在宅でお仕事ができるということで、いろんな方に新しい仕事のチャンスを広げてますよなんていうような話が、ここまで広がってきました。

私、目見えないんですけども、私たち視覚障害者にとっても新しい仕事の可能性につながりそうですねというような感じの話が展開されてまして、今とっても面白いところまで来ているんですけども。渡部さんご自身は、この仕事ってどんな辺りに一番可能性を感じてるんですか。

渡部:いろいろ要素あるんですが、僕が一番面白いなと思っているのは、ちょっと先ほど話に出た旅をしながら仕事をしている。昔はあり得なかった状況でも仕事ができる。
仕事って別にやんなくてもいいじゃんとは思わないわけですね。例えば、僕なんか仕事なくなっちゃったら生活できなくなっちゃいますし、何か人間っていうのはどこかで経済活動に接していて、そこで自分を生かすためのおカネを生み出して、それで自分を生かしていくという活動をしていなければいけないと思うんですね。なぜか今までの日本の社会では、雇用というかたちが非常に画一的なものとされていて、その画一性に合わない方たちが、そういった生きるための活動をする機会を奪われていたような状況があったと思います。
それが、僕らみたいな在宅で、しかもインターネットで好きな時間に仕事ができるというものは、その画一性をぶち壊しにかかっているような気がして僕はとっても好きですね。

小林:こういった文字起こしっていうようなかたちですと、確かにこれまでとは違うような働き方というのが広がってくると思うんですけども、これって、例えばアルバイトとかいうような感じのスポットでのお仕事っていうところから、もっと広いかたちで安定的な仕事にこれから発展していくんですかね。

渡部:おそらくもっと多様化していくんじゃないかと思います。例えば文字起こしをしながら、また別のことをやる。今インターネットとかで文字起こしのような仕事、あるいはデータ入力の仕事、あるいはWebライティングの仕事、こういう仕事がいっぱいインターネットを通じて受けることができるような状況になっているかなと思うんですが、文字起こしだけではなくて、いろんな仕事に細かくアクセスできる状況がおそらく来るんじゃないかなと思いますね。あるいは勤めながら副業として文字起こしをされたり、そういうこともあり得るかなと思いますね。

小林:日本にきっと限らないと思うんですけれども、企業というのは、働いている人たちに対して副業を多くのところはやっぱり禁止していて。
禁止しているのは、おカネを得る得ないを問わずに何かにかかわることを禁止しているなんていうのを聞いたこともあって。でも、やっぱり時代はそういうものではなくて、いくつもの仕事を兼業しながら自立をする道を描くような手段の一つとして成り立つんじゃないかいうような感じですかね。

渡部:そうですね。おそらくたぶん人間のいろんな状況、いろんな多様性というものを一つの組織が全部賄いきれないような状況になっているのかなというふうに思いますね。
その賄えない分を、じゃ、ほかで自由に自分でちょっと賄えるような、例えば副業していいですよとか、多様性に対応したような企業がおそらく今後増えてくるんじゃないかなと思ってます。

小林:アスカ21さんは、事務職の方も20人ぐらいいらっしゃるとおっしゃってたんですけど、実際会社の中で副業されてたり、もしくは副業とまではいわなくても会社以外で何か別の、例えばNPOにかかわっているとか、そんなような方って結構いらっしゃったりしますか。

渡部:副業をやるNPOさんとのかかわりというのはないとは思うんですが、スタッフのほとんどは、お子さんのいる母親なんですね。ほぼ9割がそうです。

小林:9割。

渡部:はい。そういう状況なので、突発的に仕事を休まなければいけないというのはザラにあるんですが、そういうのも全然生きるために必要なんだから、「もう構わないよ、好きなようにやって」というような雰囲気ですね。

水谷:未来的な。未来じゃないですね。もう現代的なという感じですね。

小林:そうだよね。

渡部:よりそういうカルチャーを僕らの会社の中では加速させたいなというふうに個人的には思っているようなところです。

小林:未来に向かっていくというか。これだけ少子高齢化というふうにいわれて、もう本当久しくって。そういう中でいくと、働き方の姿、本当いろいろ多様化していかなきゃいけないなということの表れだと思うんですけど、これまでなかったものを仕組みとして世の中に打ち出して、これから未来につなげたいななんていうふうに渡部さんさっきおっしゃってもらっていたと思うんですけど、この文字起こしの働き方、文字起こしということ自体というのは、渡部さんにとってどんな未来につながっていくんですかね。

渡部:そうですね。未来ですよね。

小林:はい。

渡部:僕は文字起こしのサービスで本当に感じたのは、もう働き方というのはいろいろあっていいんだなというのが自分の手元で起きているという実感だったんですね。よくテレワークとかそういった話を人にしますと、「仕事の仕方というのは、いや、会社に行って、朝9時から夜18時まで、土日は休みで、じゃないとあり得ないじゃん」というような疑問を投げかけられるんですね。でも、それって僕の手元で起きてることも現実なわけですよ。そのテレワークっていうものが、人を結構幸せにしていたりとか目の前で見ているので、これをみんなにちょっとやってほしいなというふうに。未来なのか僕の願いなのかちょっと分からないですけども、僕自身もそういう働き方がしたいなというふうに思っていて、現実おそらくできるんじゃないかと思ってます。

小林:なんかそうですよね。やっぱりかかわれる人みんなが幸せになれるってすごいすてきなことだなと思いますし。僕は、未来というのにつながるのか、ちょっと違うかもしれないんですけど、このラジオに出るようになってちょうど丸1年がたちましたというお話を冒頭にさせてもらったんですけど、この文字化するということにおいてでいうと、私たちの活動に参加してくれる耳の聞こえない仲間たちが、私がこうして出ているラジオの番組を聞きたい、聞くってことはできないから知りたい。その知りたいということは、文字起こしを通じて文字化されることによって、ラジオを手にすることができなかった仲間たちが、ラジオという文化を手にすることができることにつながるんだということに僕はすごい正直全然気づいていなかったんですね。それが、文字にするということができる力なんだなと。
そういう目で考えると、仕事としての可能性がまず一つ大きくて、それから、その仕事をかたちにするうえで、これまで手にできなかった情報をたくさん手にできる人たちがそこに生まれるんだということもあって、すごい夢がそこには詰まっている感じがするなというのが、すごい思ったんですよね。だから、僕は、たまたまこのラジオの番組で実際に、ただ仕事として記録として残す文字ではなくて、人に届けられる夢としてこういうものがあるんだということに気づかせてもらったんですけど。

水谷:もしかして放送を聞いている方って。あと4分ぐらいなんですけど、今って声に出したものが自動的に文字化されつつあるんじゃないかという、技術的なものでという。そういうところの兼ね合いみたいなものってどうお考えになられているんですか。

渡部:おそらくたぶん音声認識のお話だと思うんですが。

水谷:そうですね。

渡部:現段階でもかなり高い精度にはなっていますね。今後たぶん5年から10年にかけて、より加速していくんではなかろうかと思ってます。ただし、最後には人間が校正をしたり、あるいは人間が編集をしたり。ちょっとAIがそこにどう絡んでくるかすごい難しい話なんですが、どこかで人の手というのは残るんではないかなと思っていて、われわれもそういったちょっと先の未来を見据えて仕事のバリエーションを増やしていこうかなというふうには考えてます。

小林:そうですよね。ノートをとるって僕ら学生の頃から言われましけど、ノートをとるのは要約筆記ですよね。

渡部:そうですね。

小林:この文字起こしというのは、きっと要約筆記なわけですよね。語尾をきれいに整えたりとか必要のないものは載せる必要がなかったりとか。

渡部:そうですね。

小林:そのへんは人間の力がやっぱり必要で、やっぱりこのへん本当プロのクオリティーってそういうところなのかなという感じがしますよね。

水谷:そうですね。

渡部:あと、こういうふうにきれいにとられている録音ばかりではなくて、二人が同時に話していたり、あるいは酔っぱらっている人の声が後ろでしたり。それをかぎ分けるというのは、なかなか人間じゃないと、まだまだ難しい。

水谷:なるほど。

渡部:当面は残るんじゃないかなと思ってます。

小林:なんかすごい人間らしさと、それから広がりとというのが。なんか技術が広げられる広がりとというのが両方ありそうな感じで。

水谷:なんか人間くささが残っているっているというのはいいですね。人の手が加わっているという。分かんない。もうこの考え方が前時代的なのかもしれないですけど。

小林:そうね。

渡部:どこかでやはり人間の手というのは、残っていくんではないかなというふうには考えてます。

小林:渡部さん自身は、この今の文字起こしの仕事が世の中に着地にすることが、ご自身の今の目標なんですか。

渡部:文字起こしもそうなんですが、僕は、こういった新しい働き方をもっといくつも展開したいというふうに思ってます。

小林:こういうのをじゃ、一つの事例として、こういった働き方というのを世の中に提案していくような生き方をご自身はされていきたい。

渡部:そうですね。もっと自由でいいんだぞっていうような話ですね。

小林:なるほど。かっけえな、やっぱり。

水谷:そうですね。いいですね。だから、これから、まず、ここでテープ起こしのテキストの能力を身に付けて、それで旅をしながら仕事をしていったら、また新しい働き方をアスカ21さんが提案してくれるから、そこにまた乗っかってまたスキルを身に付けるという。

渡部:やることいっぱいですね。

小林:ですね。すてきな仕組みを世の中に、未来に向かっていっぱい生み出していってほしいですね。

渡部:はい。そういう会社でいたいなというふうに山田も僕も思っていますので。

小林:かっけえ。これだ。

水谷:ありがとうございました。

小林:ありがとうございました。超面白かったです。ありがとうございました。

渡部:いいえ、すみません。

水谷:株式会社アスカ21の渡部さんでした。ありがとうございました。

渡部:ありがとうございました。

(テキストライター/株式会社アスカ21 https://www.asca-voitex.jp

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