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青い空碧い海白い砂浜・沖縄で堂々モヤる

南国の日差しをたくさん浴び、専門分野を横断して集まれた喜びを胸に酒を飲み肉を喰らい語らい、水を浴び音楽を掻き鳴らし酔う数日間。

参加者は研究者とアーティスト、そしてなんでもない自分(強いて言えば旅人か…?)。全員男の中、ひとり女である自分。若いし、あの状況を客観視すれば、わたしは弱者の象徴ようなものだった。

これを理解した時、全体へ投げられる言葉から取りこぼされていることに気づく。
語られるどの言葉も自分に向いていないとわかるようになった。

「手に職強いな〜」
「研究者の分析のおかげで」
「ホストありがとう」

楽しいけれど、なんとなくずっと意のままに会話ができない、いつまでもスッキリしない感覚はだいたいこれで説明がつきそうだった。

わたしをこの機会に繋げてくれた親しい現代美術アーティストが、
研究者含むその場のほとんどの人が、異分野協働の可能性を探るため集まっていながら、結局はピラミッド型の男縦社会に落ち着いているという構造に気づいていないのではないかという仮説を立てた。
これを、時間をもらっているワークショップのテーマに落とし込もうと目論んだのだ。

こちらとしては、物理的に地道な作業を伴う、手触り感ありまくりの草の根的ワークショップの中で、嘘偽り誤魔化しなく、ほとんどの人が気づかなかった見方で風穴を開け痛いところを刺せるかもしれないと期待が高まった。
だれも悪くないが、無意識無自覚のうちに抑圧状態に置かれることになった自分が、ここにいる意味をやっと獲得できるぞと思ったから。

木版画をやった

しかしやってみてどうだらう。

やはり図画工作的な作業を恥じらうおじさんや、ジェンダーみたいなテーマはこわいとかいって向き合おうとしないおじさんが出てきた。もちろん全員ではないが恐れていたことが起きた。
手持ち無沙汰になり旅の精算をはじめたり、ものを取りに行くなど会場の出入りが増えたり、そんなわけでいっこうに静かにならない。
作業する、思考する沈黙の時間すらも飲みニケーションに回収されていく感じがなんとも虚し悔しかった。ほかのワークショップのときはわりと没入していた感じもしたのでなおさら。

するとこちらも主語デカになって、「あーやっぱり男ってこうなのね」と自棄的になってしまう。
必要以上に静かにするし必要以上に作業に打ち込む。必要以上に深刻に思考して、必要以上にそれらを顔や態度で表そうとした。

そんな時間を過ごしたあと、最後にそのアーティストが、それぞれが作った作品を一つにまとめあげてまた別の作品を作った。

できあがってみんなで鑑賞する段になると、散り散りになっていた人も集まってきた。
話し慣れしている人が多かったから、言葉でもいい感じに解釈が加わりまとめられていき、旅全体の総括を含めて「いい感じ」になった。
内容には概ね同意しているが、これにて誰も痛がらなかったという結果が予定通りに出て、やっぱりねと不貞腐れる自分もいた。

そしてこう思うのもまたわたしだけ。構造は覆らない。

何日間か状況を客観視してきて、共にテーマを練りワークショップを進めた彼はどうか、彼はやはりアーティストだ。
ワークショップを始めて、みんなにものをつくらせたときから、場の主導権は彼の手を離れた。以後はどうなろうと最後に制作する自分の作品から何かしらを回収できるので関係がない。彼は彼なりに場を面白がり、何かを得たのだった。

それを聞いてわたしは、自分が人生全体を通して予定不調和をめざしていながら予定調和的な思考パターンの中にいることに気づくしかなかった。

コミュニティを過ごす主体としての自分とそれを俯瞰する自分のあいだで揺れ動きながらも、
思った通りになるだろう
思った通りになったらいいな
思った通りにならないと困る
という考え、またジェンダーというテーマそのものに支配されていた。
ここでのテーマは、ワークショップのフィールドづくりのために設定したもので、そのものを論じることが目的ではなかったのに…

結局のところこんなふうに考えて、自分を見つめ振り返る内省的な旅になってしまった。
風景を観察したり、少ない人数で話し込んだりすれば、思考の対象が外部化され、また全体の構造的な問題に目がいかないため純粋に新たな人やものとの出会いと状況を楽しむこともできた。 
でも大部分は釈然としなかったのだ。
(言わずもがな数々のおもてなしやお取り計らいはありがたい限りでした)

あの青い空碧い海白い砂浜の沖縄で!沖縄であるにも関わらず!

しかし、だからこそ?、私はなにかからこぼれ落ちてしまう存在に敏感になれるということにも気づいた。考えてみると、いつもこぼれ落ちるほうの側に興味がある。それは全くもって自分だからだが。
とまたしても内省的な結論!けれども自分のいいところが見つかった。

次に行く時は、ダークツーリズムと地道なフィールドワークをしよう。

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