HTMLタグと商標法上の使用、不正競争防止法上の商品等表示としての使用について
商標登録された言葉をHTMLソース中にタグとして記述した場合における商標法上の判断事例や、需要者の間に広く知られた商品等表示をHTMLソース中にタグとして記述した場合の不正競争防止法上の判断事例について解説します。
1.商標法上の「使用」とは?
2.不正競争防止法上の「商品等表示」とは?
3.判例
(1)平成27(ワ)547 バイクリフター事件(商標)
(2)平成24(ワ)21067 イケア事件(商標・不正競争)
(3)令和1(ワ)23033 エジプシャンマジック事件(商標)
(4)令和1(ネ)10049 ブロマガ事件(商標)
(5)平成30(ネ)10064等 タカギ事件(不正競争)
4.まとめ
1.商標法上の「使用」とは?
商標権の効力とは
第二十五条 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。
というものですが、時として「使用」という部分が問題になります。
商品パッケージに表示したり、サービスのチラシに表示したり、ウェブサービスのサイト上に表示したりしていれば、「使用」しているという認識に大きな違和感はないと思いますが、今回問題とするHTMLタグ内への記述、特に、通常のブラウジングではブラウザ上には表示されないタグとしての記述はどうなるのでしょうか。
商標法では、「使用」について一応定義されていますが、HTMLタグへの記述に関係しそうな部分を抜き出すと、以下の通り。
第二条
3 この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
(略)
七 電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。次号及び第二十六条第三項第三号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為
八 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為
(略)
ウェブサービスであれば「七」、ウェブを介した広告であれば「八」に該当するので、そのウェブサイト上の表示のためにHTMLソースに登録商標が記述されている場合、つまり<body>タグへの記述であれば、特に議論の必要もなくHTMLタグへの記述が商標法上の「使用」に該当すると言えます。
他方、HTMLソースに記述されていたとしても、そのソースをウェブブラウザで表示した場合にサイト上には直接表示されないタグもあります。そのような場合には上記の定義に当てはめるのがちょっと難しくなります。
2.不正競争防止法上の「商品等表示」とは?
不正競争防止法(以下、不競法)については、とりあえず条文を引用します。
第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
一 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為
二 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為
(以下略)
この通り、「商品等表示」として、需要者の間に広く認識されているもの、著名なものは、商標登録されていなくても保護されるという制度ですが、ここでも「使用」とあり、この「使用」については特に定義はありません。
商標法上の「使用」、不競法上の商品等表示の「使用」それぞれについてHTMLタグの記述に関する判例を見ていきます。
3.判例
登録商標 登録5383617
商 標 バイクリフター\BIKE LIFTER(二段併記)
指定商品・役務
12類 オートバイを横方向にずらし移動するための台車・その他オートバイの運搬用台車
対象となっている商標権は「BIKE LIFTER」の文字の上に「バイクリフター」の文字が読み仮名のように記述された、いわゆる二段併記商標です。
二段併記商標については思うところありますが話がズレますので今回は割愛。
これに対して、被告の行為は「オートバイを横方向にずらし移動するための台車・その他オートバイの運搬用台車」に抵触する商品を「バイクシフター」として販売しており、そのPRをウェブサイトで行う際にHTMLタグに「バイクシフター」の文字を記述したというもので、「バイクシフター」が登録商標に類似すると判断されています。この類似判断についても思うところありますが、今回はあくまでもHTMLタグについてなのでこれも割愛。
被告の行為は判決文で以下のように説明されています。
被告は,そのウェブサイト(http://world-walk.com)の html ファイルの<metaname=″keywords″content=>に,<metaname=″keywords″content=″バイクリフター″>と記載し,<meta name=″description″content=>及び<title>において,<meta name=″description″content=″バイクシフター&スタンドムーバー 使い方は動画でご覧下さい″>,<title>バイクシフター &スタンドムーバー</title>と記載している
注目すべきは、タグの中でも<metaname=″keywords″content=>(キーワードメタタグ)、<meta name=″description″content=>(ディスクリプションメタタグ)、<title>(タイトルタグ)の3点ということです。
早速、裁判所の判断を見てみます。まずは、ディスクリプションメタタグ及びタイトルタグについて。
~html ファイルにディスクリプションメタタグないしタイトルタグを記載することは,商品又は役務に関するウェブサイトが検索サイトの検索にヒットした場合に,その検索結果画面にそれらのディスクリプションメタタグないしタイトルタグを表示させ,ユーザーにそれらを視認させるに至るものであるから,商標法2条3項8号所定の商品又は役務に関する広告を内容とする情報を電磁的方法により提供する使用行為に当たるというべきである。また,上記のディスクリプションメタタグないしタイトルタグとしての被告標章1の使用は,それにより当該サイトで取り扱われている被告商品の出所を表示するものであるから,被告商品についての商標的使用に当たるというべきである。
(略)
確かに,ウェブサイトの html ファイル上のコードの記載は,ブラウザの表示からソース表示機能をクリックするなど,需要者が意識的に所定の操作をしない限り視認できないものである。しかし,前記のとおり,ディスクリプションメタタグないしタイトルタグの記載は,それと同一の記載内容が自動的に検索結果画面上に表示され,広告の内容として需要者に視認されるに至るのであるから,ディスクリプションメタタグ又はタイトルタグに標章を記載する行為は,それを需要者に視認させる行為と同視することができるというべきである。したがって,被告の上記主張を採用することはできない。
ということで、ディスクリプションメタタグ及びタイトルタグについては、検索エンジンでの検索結果において表示されることが意図されているとして、冒頭に引用した商標法上の使用の定義のうちの「八 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当すると判断されました。
これを読むと、次のキーワードタグについてどう判断されるかがなんとなく予想されますが、判決文を見てみます。
~キーワードメタタグは,被告のウェブサイトを検索結果としてヒットさせる機能を有するにすぎず,ブラウザの表示からソース機能をクリッするなど,需要者が意識的に所定の操作をして初めて視認されるものであり,これら操作がない場合には,検索結果の表示画面の被告のウェブサイトの欄にそのキーワードが表示されることはない。
(略)
商標による出所識別は,需要者が当該商標を知覚によって認識することを通じて行われるものである。したがって,その保護・禁止の対象とする商標法2条3項所定の「使用」も,このような知覚による認識が行われる態様での使用行為を規定したものと解するのが相当であり,(略)広告の内容自体においてその標章が知覚により認識し得ることを要すると解するのが相当である。
そうすると,本件でのキーワードメタタグにおける原告商標の使用は,表示される検索結果たる被告のウェブサイトの広告の内容自体において,原告商標が知覚により認識される態様で使用されているものではないから,商標法2条3項8号所定の使用行為に当たらないというべきである。
(略)
検索サイトにおける検索キーワードと検索結果との関係にさまざまな濃淡があることは周知のことであることからすると,検索結果画面に接した需要者において,検索キーワードをもって,検索結果として表示された各ウェブサイトの広告の内容となっていると認識するとは認め難いから,検索キーワードの入力や表示をもって,キーワードメタタグが,被告のウェブサイトの広告の内容として知覚により認識される態様で使用されていると認めることはできない。
というわけで、「キーワードメタタグは表示するためのタグではないからセーフ」という判断です。
タグというのはあくまでも属性の定義でしかなく、その内容を表示するか否かというのは(ある程度の定石、常識はあるにしても)ブラウザの仕様や検索エンジンを始めとしたウェブサービスによるHTMLソースの処理に委ねられているはずなので微妙な判断だなぁと思ったりもします。検索結果の画面においてキーワードメタタグをヒット要因として表示するような検索エンジンがあったらどうするんだろう。
ともかく、タイトルタグ、ディスクリプションメタタグへの記述は、ユーザーに対して「表示する」ことが目的となる記述であるため、商標法上の「使用」に該当し、キーワードメタタグへの記述は、あくまでも検索エンジンの検索機能にヒットさせるための記述であって、ユーザーに対して「表示する」ことが意図された記述ではないため、商標法上の「使用」には該当しないということが示されました。
登録商標 登録5197726
商 標 IKEA
指定商品・役務
35類 織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,etc
登録商標 登録1634247
商 標 イケア(標準文字ではなく明朝体風の字体による)
指定商品・役務
6類 金属製靴ぬぐいマット,金属製立て看板,金属製の可搬式家庭用温室
16類 紙製テーブルクロス
19類 灯ろう,可搬式家庭用温室(金属製のものを除く。)
20類 家具,屋内用ブラインド,すだれ,装飾用ビーズカーテン,つい立て,びょうぶ,ベンチ,アドバルーン,人工池
21類 花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴,香炉
22類 天幕,日覆い
24類 織物製いすカバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳
26類 造花の花輪
27類 敷物
31類 生花の花輪
おなじみ、家具のIKEAの登録商標です。
これに対して、被告は「IKEAの買い物代行事業」というなんとなくグレーに感じる事をやっていたようです。
HTMLタグへの記述について、判決文での説明は以下の通り。
被告は,平成22年7月29日,被告サイトを表示するためのhtmlファイルに,タイトルタグとして,「<title> 【IKEA STORE】イケア通販</title>」と記載し,メタタグとして,「<metaname=”Description”content= “【IKEA STORE】IKEA通販です。カタログにあるスウェーデン製輸入家具・雑貨イケアの通販サイトです。”/>」と記載していた(甲10,被告本人)。
平成24年7月ころ及び平成25年3月ころの被告サイトを表示するためのhtmlファイルには,タイトルタグとして,「<title> IKEA【STORE】イケア通販 </title> 」 と 記 載 され, メ タ タ グ と し て , 「<metaname=”Description” content= “イケア通販【STORE】IKEA通販です。期間限定!!最大1万円割引クーポンを商品ご購入者様,全員にプレゼント!!カタログにあるスウェーデン製輸入家具・雑貨イケアの通販サイトです。IKEAではハイデザインと機能性を兼ねそなえた商品を幅広く揃えています。>」と記載されていた(甲13,80)。
これらのタイトルタグやメタタグの記載の結果,検索エンジンで「IKEA」,「イケア」とキーワード検索すると,検索結果の一覧が表示されるページにおいて,被告サイトは,上記各タイトルタグ及びメタタグの内容のとおり表示されていた(甲14ないし19,126)。
以上の通り、タイトルタグ及びディスクリプションメタタグとしての使用なので、その判断も推して知るべし。
インターネットの検索エンジンの検索結果において表示されるウェブページの説明は,ウェブサイトの概要等を示す広告であるということができるから,これが表示されるようにhtmlファイルにメタタグないしタイトルタ
グを記載することは,役務に関する広告を内容とする情報を電磁的方法により提供する行為に当たる。そして,被告各標章は,htmlファイルにメタタグないしタイトルタグとして記載された結果,検索エンジンの検索結果において,被告サイトの内容の説明文ないし概要やホームページタイトルとして表示され(甲20,21),これらが被告サイトにおける家具等の小売業務の出所等を表示し,インターネットユーザーの目に触れることにより,顧客が被告サイトにアクセスするよう誘引するのであるから,メタタグないしタイトルタグとしての使用は,商標的使用に当たるということができる。
というわけで、タイトルタグ及びディスクリプションメタタグへの登録商標の記述は商標法上の「使用」に該当するという判断は確定路線のようです。
また、本件においては不正競争との主張もなされており、それについての判断もあります。上記で引用した判断、つまり商標権の侵害となる「使用」行為であることを前提として、不正競争の要件である混同のおそれがまずは判断されます。
被告各標章は,原告の商品等表示である「IKEA」ないし「イケア」に類似し,また,両者とも家具等の小売を目的とするウェブサイトで使用され,現に,被告サイトを原告サイトと勘違いした旨の意見が複数原告のもとに寄せられていることが認められる(甲32,95)から,被告各標章を使用する行為は,原告の営業等と混同を生じさせるものである。
そして、これらの要件が満たされた結果として、被告の行為が不正競争に該当すると判断されており、HTMLタグへの記述については、商標法上の「使用」に該当する要件と、不競法上の商品等表示の「使用」に該当する要件とで差をつけていないことがわかります(商品等表示の周知性や混同を生じさせるか否か等の不競法独自の判断基準は別)。
本件はタイトルタグとしての使用で、上記2つの判例からも判断は分かりきっている感じなので判決文のみ引用します。
当然、タイトルタグとしての使用は商標法上の「使用」に該当するという判断です。
被告が,被告各ウェブページを表示するための電子ファイルに被告標章12をタイトルタグとして記載する行為は,少なくとも,本件被告販売商品1-1及び1-2が属する被告商品1に関する広告を内容とする情報に被告標章12を付して電磁的方法により提供する行為であるから,同号(商標法2条3項8号)所定の「使用」に当たり,同法37条1号により,原告が有する原告各商標権を侵害するものとみなされる。
(4)令和1(ネ)10049 ブロマガ事件(原審: 平成28(ワ)23327等)
本件はニコニコとFC2双方が「ブロマガ」という商標登録を有しており、それについてバチバチにやり合った事件です。
悲しいかな、先日ブロマガのサービス終了が発表されました。この記事を書こうと思ったタイミングでのサービス終了、時代の節目を感じます。
タグの種類としては「記述メタタグ」、「メタタグ」という説明、検索結果として表示されるという説明があるので、ディスクリプションメタタグでの記述のようです。というわけで判断も上記と同様。
以下、地裁の判決文の引用ですが、高裁でも地裁の判断が支持されています。
~ドワンゴは,乙標章を,ニコニコのウェブサイトのトップページのHTMLソースコードの記述メタタグに記載していることは当事者間に争いがなく,乙標章は,ニコニコのHTMLファイルにメタタグとして記載された結果、検索エンジンの検索結果において、ウェブサイトの内容の説明文ないし概要やホームページタイトルとして表示され、これらがニコニコのウェブサイトにおける,ブログ開設及びブログ記事作成,投稿機能を含む各種サービスの出所等を表示し、インターネットユーザーの目に触れることにより、顧客がニコニコのウェブサイトにアクセスするよう誘引するのであるから、ドワンゴによる乙標章のメタタグとしての使用は役務の出所識別機能を果たす態様で使用されているといえる。
(5)平成30(ネ)10064等 タカギ事件(原審:平成29年(ワ)第14637)
5つ目は不競法のみの事案です。
「タカギ」という浄水器のメーカーを聞いたことがあるでしょうか。割と有名なんじゃないかと思います。
これに対して、被告はタカギの浄水器に取り付けられるカートリッジ等を販売する、いわゆるサードパーティ。そのウェブサイトのタイトルタグやディスクリプションメタタグに、
タカギ 取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カートリッジ 浄水カートリッジ (標準タイプ) ※当製品はメーカー純正品ではございません。ご確認の上、お買い求めください。
といったような記述を行っていました。
浄水器のメーカーとしては割と有名ということで、「タカギ」の記述は不競法2条1項1号の「需要者の間に広く認識されているもの」として認められました。
本件、「※当製品はメーカー純正品ではございません。」という注意書きから、不競法の2条1項1号にあるところの「他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」には該当しないんじゃないかとか、色々と面白い論点はあるのですが、ここでは単純にHTMLタグへの記述が不競法上の「使用」に当たるのかだけを見ていきます。
被告ウェブページ1~4のタイトルタグ及びメタタグに <上記で引用した「タカギ 取付互換性のある~」の文章> のとおり記載していたこと,その結果,①グーグルや楽天市場でキーワード検索した場合に,検索結果を表示する画面にタイトルとして被告標章1又は2が表示され,空白部分を挟んで「取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カートリッジ」として商品の種類が表示され,②楽天市場では,タイトルの横に被告商品の画像が表示され,さらに,③グーグルでは,場合によって,タイトルの下に被告標章2を含む「タカギ 取付互換性のある交換用カートリッジ 浄水器カートリッジ 浄水カートリッジ(標準タイプ)※当製品はメーカー純正品ではございません。ご確認の上,お買い求めください。」などの表示がされていたことが認められる。
上記のような態様で被告標章1及び2を使用した場合,需要者は,独立して表示された被告標章1及び2及びその後に空白を挟んで表示されている語句(「取付互換性のある交換用カートリッジ」,「浄水器カートリッジ」,「浄水カートリッジ」)や被告標章1及び2の近くにある被告商品の写真から,被告標章1及び2が被告商品の出所を示していると認識するといえる。
そして,このような表示は,タイトルタグやメタタグの記載によって実現されているものであるから,タイトルタグやメタタグに被告標章1及び2を記載することは,被告標章1及び2を,商品を表示する商品等表示として使用(不競法2条1項1号)するものと認められる。
この通り、上4つの商標法における判断と同様に、タイトルタグや(ディスクリプション)メタタグの記載により、検索エンジンの検索結果として「表示される」ので、需要者に認識されるからには「使用」に該当するという判断です。
なお、「※当製品はメーカー純正品ではございません。」の記載については以下のような判断がされています。
また,「当製品はメーカー純正品ではございません」という記載については,被告商品が一審原告の製品とは異なることを端的に述べたものではなく分かりにくい記載となっている上,需要者がウェブサイトの記載を注意深く読むとは限らず,当該記載が末尾に記載されていることからすると,それが常に認識されるとはいえないし,被告商品と一審原告の製品との外観上の差異(乙10)についても,本件浄水器に使用される交換用カートリッジが普段露出しているものではなく,需要者が被告商品と一審原告製品との外観上の差異を明確に認識できるとは限らないから,需要者が被告標章1及び2が商品の出所を示すものとして使用されていないと認識するとはいえない。
この判断からすると、どんな場合でも「書いても無駄」というわけではなさそうです。むしろ、HTMLタグという読みづらい位置での記述が仇となってしまった形でしょうか。
4.まとめ
というわけで、タイトルタグやディスクリプションメタタグへの記載は検索結果においてユーザーに対して「表示される」ので、商標法上の「使用」や不競法における商品等表示の「使用」に該当するという判断が行われています。
これに対して、バイクリフター事件ではキーワードメタタグへの記述も争点として争われ、こちらはユーザに対して表示されることが意図された記述ではないので「使用」には該当しないというのが現状の判断。
バイクリフター事件のおかげで判断事例が蓄積され、より境界が明確になっている感じです。
ただし、
・タイトルタグ、ディスクリプションメタタグへの記述は「使用」になる
・キーワードメタタグへの記述は「使用」にならない
という単純な理解にはあまり意味がなくて、なぜそのように判断されたのかを理解することが重要ですね。
今回であれば、ユーザーが「視認する」か否か。
その趣旨が理解されていれば、上記のタイトルタグ、ディスクリプションメタタグ、キーワードメタタグ以外のタグへの記述にも応用して考えることが可能ですし、判断基準の変化でどのような変化が起こり得るかを予想することも可能です。
特に、バイクリフター事件は地裁で終わっているというのが心許ないところ。もしかしたら今後、高裁の判決としてキーワードメタタグへの記述も商標や商品等表示の「使用」として認められるかもしれません。
もしそのような判断の変化があるとすれば、それは判断基準の要点が現状の「視認する」ことから、「認識する」ことに変化した場合じゃないかと思います。判断基準が「認識する」ことであれば、キーワードメタタグへの商標や商品等表示の記述によりウェブサイトが検索エンジンでヒットする結果として、ユーザーはその商標や商品等表示に関連して対象のウェブサイトを「認識する」ことになるという理屈。
そもそも、「音」が商標として認められているわけですし、海外に目を向ければ匂いや触感も商標として認められるわけなので、「視認する」ことは商標や商品等表示の絶対条件とはなり得ないわけです。
需要者がどのように商品やサービスの出所、ブランドを認識するか、時代に応じた変化に伴って商標や商品等表示の対象も変化していくので、現状(2021年9月)の状況はあくまでもその時点での判断結果でしかありません。いつか判断が変わるかもしれないっていうのは非常に不安ですが。
ともかく、現状の判断基準は以上説明した通りです。
繰り返しですが、他社の商標権に侵害する言葉をキーワードメタタグに記述して検索エンジンにヒットさせる行為というのは、現状の判断基準の上ではセーフということになりますが、裁判での判断がいつどのように変わるかは未知数なのでご利用は計画的に。