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X(旧Twitter)を活用したSNS採用のトレンド

SNS採用の重要性とX活用が注目される背景

近年、SNS採用(ソーシャルリクルーティング)への注目が高まっています。若年層を中心にSNS利用率が高く、従来の求人媒体ではリーチできない層へのアプローチ手法として、多くの企業がSNS活用を始めています​。

中でも、日本ではX(旧Twitter)の存在感が大きく、日常的にXを利用する若者が非常に多いことから、採用チャネルとして注目されています。実際、Xは10代で約69%、20代で約70%もの人が利用しており​、リアルタイム性と拡散力を備えたプラットフォームとして企業の採用広報に活用されています。

Xが採用面で注目される背景には、低コストで始められることや圧倒的な情報拡散力、そして企業の雰囲気をダイレクトに伝えられる点があります​。

特にスタートアップや知名度の低い企業でも、SNS上で自社のファンを増やし、中長期的に潜在層人材の母集団形成ができる可能性があります​。

本記事では、人事担当者やスタートアップ経営者の方向けに、Xを活用したSNS採用の最新トレンドを分析し、現状の動向や成功事例、そして今後の展望と企業が取るべき対策について解説します(※「SNS採用」というキーワードを押さえつつ、実例とデータを交えてご紹介します)。


現在のトレンド

企業公式アカウントを活用した採用広報

まず、多くの企業が公式の採用アカウント(または公式アカウントの採用向け運用)を設け、積極的な情報発信を行う傾向が強まっています。新卒・中途問わず、採用専用のXアカウントを開設し、インターンシップ情報、会社説明会の案内、社員紹介や日常風景などを投稿する企業が増加しています。例えば、大手IT企業のDeNAでは新卒採用向けの公式Xアカウントを運用し、説明会・インターン・コンペ情報などを随時発信しています​。

さらにX上でライブ配信を行い、社員の生の声を届ける試みもしており、学生はタイムリーに企業情報を得ることができます​。

出版社の講談社では、採用担当者が公式キャラクターになりきって運用するユニークな例もあり、親しみやすい語り口で就活生に企業情報を届けています​。

このように、企業公式アカウントで自社の魅力や最新トピックを発信し、採用広報の一環とする動きが一般化しつつあります。

Xでのダイレクトリクルーティング(直接アプローチ)の活用

Xを活用したダイレクトリクルーティング(直接接触による採用)もトレンドの一つです。具体的には、XのDM(ダイレクトメッセージ)機能やリプライ機能を使って、企業側から欲しい人材に直接コンタクトする手法です。最近では、XのDMを通じて採用につながるケースが増えており​、人材データベース型の求人媒体とは異なる新しい採用ルートとして定着し始めています。例えば、ある企業ではエンジニア志望者の「転職活動」に関するツイートを見逃さず即座にリプライし、関心を引いた上でDMでアプローチすることで、高い確率で返答を得ることに成功しました​。

実際、デジタルマーケティング企業のfavy社はXを使ったエンジニア採用で、スカウトDMの返信率77%という高い成果を上げています​。

このように、X上で日頃から業界知見や転職意欲を発信している人材に対し、タイミング良く声を掛けることで、従来にはない優秀層の獲得につなげている企業も出てきています​。

ダイレクトリクルーティングは掲載型求人と違い費用がかからないメリットも大きく​、中途採用や副業人材募集などで積極的に活用する企業が増えています。

求職者が企業アカウントをチェックする傾向

企業側の発信強化に伴い、求職者側も企業のSNSアカウントをチェックする動きがみられます。特に学生や若手求職者は、企業の公式サイトだけでなくTwitterやInstagramといったSNSを見て社風や雰囲気を調べるケースが増えています。ある調査では、インターンや仕事探しの際に企業の公式SNSアカウントを活用した学生は約15%おり、そのうち「必ず公式SNSもチェックする」と答えた学生も約10%に上りました​。

​割合としては依然高くはないものの、無視できない層がSNS上の情報から企業研究を行っています。「社員の生の声やオフィスの様子など、公式パンフや求人票では得られない情報を知りたい」というニーズが背景にあり、実際マイナビの調査でも「企業にSNSで発信してほしい内容」として社員の人となりや職場の雰囲気、働くやりがいなどが挙げられています​。

求職者、とりわけZ世代にとってSNSは日常の情報源であり、企業もそこでの印象が採用成功に影響すると認識する必要があります。

ハッシュタグやスレッド投稿を活用した企業文化の発信

Xならではのハッシュタグ機能やスレッド投稿も、企業が自社の文化やメッセージを発信するのに活用されています。ハッシュタグを付けることで、興味を持ったユーザーに関連投稿を一覧で見てもらいやすくなり、結果として情報の露出を増やすことができます​。

採用に関する代表的なハッシュタグには「#中途採用」「#求人募集」などがありますが、自社独自のハッシュタグを作る企業もあります。例えば、人材サービス大手のリクルートは**「#リクルートの中の人」というハッシュタグを用いて、社員の日常や仕事風景を投稿しています。社員自身による発信を促すことで、リアルな企業文化が伝わり、求職者から高い共感を得ることに成功しています​。

また、投稿文字数が限られるXにおいてスレッド(連続ツイート)機能**を使えば、伝えきれないエピソードや詳細な説明を連投することが可能です。ある企業の採用担当者は、スレッド投稿で「入社〜現在までのキャリア」や「ある一日の業務スケジュール」を紹介し、まとまったストーリーで自社の魅力を伝えていました(※具体的な事例の引用は控えますが、このような活用も増えています)。さらに、採用広報に注力する企業では画像や動画の活用も積極的です。写真付きで社員の日常を紹介するYogibo社の採用チームアカウントでは、休憩時間の過ごし方や整ったオフィス環境などを発信し、応募者のミスマッチ防止に役立てています​。

このように、ハッシュタグで投稿テーマを統一したり、スレッドで情報量を補ったりすることで、企業文化や働く魅力を効果的にアピールする工夫が広がっています。

成功事例:X採用で成果を上げた企業の具体例

SNS採用をうまく活用して人材獲得に成功した企業の例をいくつかご紹介します。それぞれの効果的な運用方法にも注目してみましょう。

  • キー・ポイント(ITスタートアップ):従業員数26名ほどの小規模企業ながら、採用専用のXアカウントで3,500人以上のフォロワーを獲得​

  • DeNA(大手IT):新卒採用向けにXアカウントを運用し、説明会・インターン・コンペ情報などを頻繁に告知​

  • リクルート(人材サービス):自社の社員が発信するツイートに「#リクルートの中の人」という統一タグを付与し、社員の日常や仕事風景を一覧できるように工夫​

  • favy(ベンチャー企業):前述の通り、Xを活用したエンジニア採用で**DM経由のスカウト返信率77%**を達成した事例です​

  • IBM日本法人(グローバル大手):技術者採用において、X上で最先端技術やイベント情報を積極発信しています。専門性の高いコンテンツを継続的に投稿することで、技術コミュニティ内で存在感を高め、優秀なエンジニアの注目を集めることに成功しました​

各社とも、自社の規模やターゲット人材に合わせてXの活用方法を工夫し、SNS採用ならではの効果を上げています。特に、フォロワー数の多寡よりも内容の質や共感に重きを置いた運用が成功のカギとなっている点が共通しています。

今後の展望と対策

Xプラットフォームの変化とトレンド予測

今後、SNS採用におけるX活用はさらに進化していくと予想されます。イーロン・マスク氏による買収後、Twitterは「X」へとブランド変更され、機能面でも様々なアップデートが行われています。アルゴリズムの変化としては、タイムライン上でフォロー関係に限らず興味関心に基づく投稿が表示される比重が増しており、よりエンゲージメント(ユーザー反応)重視の拡散傾向が強まっています。そのため企業側は従来以上にユーザーにリアクションされる内容を意識する必要があります。例えば、「いいね」や「リポスト(リツイート)」が多く得られる投稿は今まで以上に拡散されやすくなるため、単なる告知ではなく共感や参考になる情報を盛り込むことが大切です。

また、2024年10月にはXの有料プラン「Xプレミアム」が開始され、認証バッジ付与や投稿可能文字数の拡大、アルゴリズム上位表示などの特典が段階的に提供されるようになりました​。

今後は企業の採用アカウントでも、状況に応じて有料プランを活用し、投稿のリーチを最大化する動きが出てくるかもしれません。特に認知度向上を急ぎたいスタートアップなどは、**X広告(プロモツイートなど)**との併用も選択肢となるでしょう。もっとも、現状Xは無料機能だけでも十分広報効果を発揮できるプラットフォームですので、まずはオーガニック運用での工夫が重要です。

トレンド予測として、動画や音声コンテンツの充実が挙げられます。Xでは画像・動画投稿はもちろん、音声スペース(Spaces)によるライブ配信機能も提供されています。採用担当者が主催するカジュアル面談スペースや、社員との座談会をライブ配信するなど、インタラクティブな企画が増える可能性があります。また、他SNSとのクロスプラットフォーム戦略もますます重要になるでしょう。Xで興味を持った候補者が、リンク経由でYouTubeの採用動画やLinkedInの企業ページに流入する、といったようにSNS間連携を意識した情報発信が増えていくと考えられます。

企業がこれから取り組むべきこと

以上のトレンドを踏まえ、企業の人事担当者やスタートアップ経営者が取るべき対策を整理します。

  • ターゲットの明確化とプラットフォーム選定:まず、自社が採用したい人材層がどのSNSを主に使っているかを把握しましょう。若手エンジニアが多いならX、学生向けにはInstagramも併用、専門職にはLinkedInなど、ターゲットにマッチしたSNS選びが重要です​。

  • コンテンツ計画と継続発信:採用広報の目的(例:認知度向上、応募促進、ミスマッチ防止)を明確にした上で、それに沿ったコンテンツを計画します。企業文化や価値観を伝える投稿、募集要項やイベント告知、社員インタビューなど、発信テーマをいくつか用意すると良いでしょう。重要なのは継続的な情報発信です​。

  • エンゲージメント重視と双方向コミュニケーション:一方通行の情報発信だけでなく、ユーザーとの対話も心がけましょう。投稿へのコメントに返信したり、求職者からのDM質問に丁寧に答えたりと、双方向のコミュニケーションを取ることで企業への親近感が増します。応募者とのやりとりの場としてSNSを活用することは、応募ハードルを下げる効果もあります。​

  • 社員の巻き込みとリアルな情報発信:採用担当者だけでなく、現場社員にもSNS発信に協力してもらうと、コンテンツの幅が広がり信憑性も増します。社員の生の声やエピソードは、求職者にとって最もリアルな情報です。例えば、「#〇〇の中の人」タグで社員が自主的に投稿する文化を醸成したり、社内イベントの様子を写真付きで共有してもらうなど、社員参加型の運用を促しましょう​。

  • 効果測定と改善:SNS運用はやりっぱなしにせず、定期的に効果測定と改善を行います。Xにはアナリティクス機能があり、各投稿のインプレッション数やエンゲージメント率、フォロワー増減などを確認できます​。

以上の対策を講じつつ、常にSNS全体の潮流にもアンテナを張っておくことが大切です。特にXはサービス仕様が変わるスピードも速いため、新機能やアルゴリズム変更の情報には日頃から注目し、自社運用に取り入れる柔軟性を持ちましょう。

まとめ:XでのSNS採用を成功させるためのポイント

SNS採用は今や人材獲得戦略の重要な一翼を担い、X(旧Twitter)はその中でもリアルタイムな情報発信と幅広いリーチを可能にする有力なプラットフォームです​。

本記事では、企業公式アカウントの活用からダイレクトリクルーティング、求職者の動向、そしてハッシュタグなどによる企業文化発信まで、Xを取り巻く採用トレンドを見てきました。最後に、XでのSNS採用成功に欠かせないポイントを改めて整理します。

  • 一貫したブランディング:企業の雰囲気や価値観が伝わる発信を心がけ、採用ブランディングの一貫性を保つ。

  • 継続的な発信とエンゲージメント:定期的な情報発信でフォロワーとの接点を維持し、双方向のコミュニケーションで信頼関係を構築する

  • タイムリーかつ有益な情報提供:求人情報やイベント告知はタイミングよく発信しつつ、求職者にとって有益なコンテンツ(社員の声、キャリアtips等)も織り交ぜる。

  • ハッシュタグ・拡散力の活用:適切なハッシュタグを活用して投稿の露出を高め、社員投稿や他媒体とも連携して情報を広げる​

  • リスク管理とガイドライン整備:SNSならではの炎上リスクに備え、社内で投稿ルールを共有しチェック体制を設ける。

Xでの採用活動は無料で始められ手軽である反面、その拡散力ゆえのリスク管理も欠かせません。しかし、若い世代の利用者が多く費用対効果も高いことを考えると、Xは今後も採用プラットフォームとして非常に有効なツールであり続けるでしょう​。

人事担当者や経営者の方は、本記事で紹介したトレンドや事例を参考に、自社に合ったSNS採用戦略を検討してみてください。継続的な取り組みと創意工夫によって、Xでの発信が優秀な人材との出会いにつながることを期待しています。


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