2024年第4四半期、中小企業M&Aについてのいくつか

noteでのご報告は少し時期を逸してしまいましたが、中小企業M&A関連でのこの2024年第4四半期の露出についてまとめておきたいとおもいます。XやFacebookで報告したこととほぼ同内容です。

NEWS23の取材に応じました

11月14日(木)のNEWS23で介護業界の悪質M&Aというテーマが特集され、コメントしました(リンク先のYouTubeで観ることができます)。
1時間くらい取材を受けてその後も記者さんには色々レクチャーしましたが、使われた映像は一瞬だけ💦まあテレビとはそういうものでしょう。
一瞬しか登場してないので何を伝えようとしていたかここで書かせてください(ちょっと長いけど)❗️今話題になっている悪質な買い手によるM&Aは概ね以下のような手口になります。
・ 仲介から紹介を受けて債務超過などで格安の会社を買収する
・ 買った後で対象会社の現預金を別の用途で引き出して(今回の報道の事案ではキャバクラなどで費消)資金繰りを悪化させて、従業員の給与などの運転資金を支払いを困難にさせる
・ 前のオーナー(個人)の経営者保証がまだ残っているので前のオーナーは連帯保証を請求される
・ 買い手の代表者はのらりくらりと対応してだんだん連絡が付かなくなる
このような悪質な買い手によるM&Aは、
・ 株式会社であれ合同会社であれ、基本的に株主の責任は問われないこと(有限責任)
・ 前のオーナーの経営者保証の解除は会社売却後に取引金融機関により審査され、解除されるとは限らないこと
を巧妙に利用したものといえます。
番組ではこうした悪質な買い手に対しては業務上横領や特別背任で刑事事件として立件できないのか、という問題意識があったようですが、取材では一人株主で会社≒株主なので立件は難しいのではないか、刑事事件で行くとすれば倒産犯罪だけど法的整理に入ることが条件になる、と答えました。まあ、あまりシンプルな答えになってなくてテレビ向きじゃないですね・・・。
現状の対策としては中小M&Aガイドラインが改訂されて、仲介事業者に水際で阻止するため買い手を審査させる義務を課すことでこのような事案が再び起きることのないようにしていますが、リピーターなら別として悪質な買い手であることを仲介事業者の方で事前に見抜いて排除するのは現実には中々難しいでしょうね。狙われる案件の多くは業績が悪化していて売り手が一刻も早く手放したいような会社が舞台だと思いますが、そのような会社では健全で信用力のある買い手が付くとは限らない(怪しげなところでも売るしかない、とにかく早く売りたいと考える)からです。与信管理上難しいですが、金融機関によってオーナーを連帯保証から開放できるかどうかの審査を決済前に行う実務が確立されればこうした悪質なM&Aはだいぶ減るのではないかと思います。

「ビジネス法務」に中小M&Aガイドラインの解説記事を寄稿しました

「ビジネス法務」2025年1月号に「買主の立場からみた『中小M&Aガイドライン(第3版)』のポイント」と題して寄稿しました。昨年末の第2版(※第2版は旬刊商事法務で解説を書きました)から1年も経たずに改訂された第3版は、主として今話題の悪質な買い手によるM&A対策を盛り込んだものですが、これは「ビジネス法務」を購読しているような健全なM&Aをしている買い手企業又はその法務ご担当者の多くにとってはほぼ無縁の話です。私にしてもこの問題に関してはご縁あって新聞やテレビでコメントさせてもらったりしましたが、通常のクライアントワークでは登場する関係者の性質上ほとんど関係がありません。一方で、今回の改訂により買い手企業が反射的に影響を受けることはそれなりにありますし、また、今や多くの買い手候補企業にとって重要なビジネスパートナーとなっているM&A仲介会社とどう付き合っていくかは重要な問題となっていると思います。本稿ではそうした問題について、3版を読み解いて、また、日頃のM&A実務で感じていることを踏まえてまとめたものです。

M&A支援機関協会・資格制度検討委員会委員に就任します

最後に、M&A支援機関協会(一般社団法人M&A仲介協会が2025年1月1日付で名称変更)において新たに発足する資格制度検討委員会の委員に就任することになりました(プレスリリース)。

2025年もよろしくお願いします

2018年に「中小企業買収の法務」を書いたことが遠因となって、中小M&Aの様々な問題を検討し、意見を述べる機会が増えました。2025年も中小M&Aに限らず、情報発信に努めていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

いいなと思ったら応援しよう!