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「記憶脳」 樺沢紫苑著 読書感想

AI時代は記憶をどう使うか

本書は記憶力を伸ばすために必要な要素がふんだんに盛り込まれています。勉強と記憶は切っても切れない関係にありますが、記憶力を伸ばす方法があれば人生がもっと違う方向に向かったのではないかと思う人は少なくないはずです。

しかし、ネットに繋がってクリック一つで知りたい情報にアクセスできる現代の我々にとって、果たして記憶力は本当に必要なのかと疑問をお持ちの方も多いと思います。

そんな疑問を吹き飛ばしてくれるのが本書です。著者の樺沢さんはAI時代にこそ記憶力が必要と力説します。記憶には3つのプロセス(①記名、②保持、③想起)があり、それぞれ(①入口、②保持、③出口)に対応しています。これらのうち「保持」はデジタル機器やネットが代用してくれるので、これからは①入口と③出口を強化することが大切になるといいます。

これからの時代、記憶(過去に遭遇した情報、知識、経験)をいかに速く引き出し、活用できるかが勝負となります。本書を通してAI時代に相応しい記憶のあり方を身につけていきましょう。

ここからは、本書で特に大切だと思った3点について解説していきます。

①記憶で大事なのはまず「理解」すること

記憶の仕組みはこうです。まず物事を「理解」する。そしてそれを頭の中で「整理」して、「記憶」に留める。記憶したものを何度も「反復」して触れることで記憶がさらに高まる。つまり、理解→整理→記憶→反復というステップを踏みます。
著者はこの4ステップのうち最も重要なのが「理解」と「整理」といいます。

なぜなら、図や表にまとめるなど頭の中を「整理」し「理解」を促すと圧倒的に忘れづらくなるからです。だから暗記そのものに時間を使うよりも「理解」や「整理」に時間を使うべきだというのです。

これは頭の中で良く「整理」されて「理解」された記憶は「エピソード記憶」として脳に刻み込まれるからです。他人に理由を説明できる状態になれば、記憶は単なる無関係な言葉の羅列であることをやめ、エピソードとして脳に保存されるからです。

俗に頭のいい人とは単に記憶力の良い人のことだと思われていますが、実際は記憶の前提である物事を理解したり頭の中を整理する能力が高い人のことなのです。

自分を振り返ってみると案外、解らないところは飛ばして次に進んでいたり、何となくの理解で済ませていることが多い気がします。しかし、本当に記憶しなければならないことは闇雲に暗記するよりも理解を優先にすると肝に銘じておきます。

②「覚える」より「解く」

次に印象的だったのが、教科書を読むよりも問題集を解いたほうが記憶に残るということ。これは脳は実践的に活用する方がより重要な情報だと認識するためで、結果的に記憶の定着が良くなります。

また、本書で紹介されている過去問の分析方法は受験生のみならず社会人にもとても効果的であると思います。

試験問題などの過去問の勉強法では、まず過去問にひと通り目を通す。そしてどんな問題がどんな形式で出ているのかを徹底的に把握していきます。出題された部分がテキストのどこにあるか探し、マーカーを引きます。四択問題では正答以外の部分もマーカーを引きます。これを最低3年、できれば5年分遡って行えば試験対策はバッチリとなります。

しかもここで重要なのは過去問を必死に暗記するのではなく、「ここは出る」「ここは出ない」という傾向を把握することなのです。どんな問題が出ていて、これからも同じような問題が出るはずという予想をしながら未来志向で試験対策を行う必要性を著者は説いています。

私自身の経験から試験対策では、真っ先に教科書を読み込むことをしていました。そしてある程度理解が深まったところで過去問に挑戦してその実力を計っていましたが、脳機能的には最初から問題をバンバン解いた方が記憶の定着には良いことが分かりました。これはある意味衝撃です。

学生時代にこの方法を知っていたら間違いなく勉強がもっと楽だったと思うとやるせ無い気持ちになります。

③「体験」と物事から得られた「気付き」が重要

最後に心に残ったのが、あなた(自分自身)に関する情報です。現在、ネット上にはありとあらゆる情報が氾濫しています。調べものがあったら、検索すれば直ぐにその情報にアクセスできます。

しかし検索結果に出てこないものがあります。それがあなたの「体験」です。また、そこから得られた「気付き」です。本を読んだら本の内容や構成などの情報そのものを記憶しておく必要はないのです。その代わり、あなたの「感想」や「気付き」は記録しておかないと1年後には、きれいさっぱりあなたの頭から消え去ってしまいます。

せっかくの貴重な体験や時間をかけた経験も記録しておかないと記憶から消え去ってしまう。これはとても恐ろしいことで、これは言い換えれば体験も経験もしていなかったことと同じなのです。

ではその対処法は?それは著者が口酸っぱく言っているアウトプットに尽きます。本を読んだら大事なところにアンダーラインを引き、余白にあなたの感想や気付き、アイデアを書き込んでいく。そしてそれらをノートにまとめる。そうすることであなたは自己成長を感じながら他人から認められる存在となるのです。

まとめ

記憶力の強化に必要なのは、まずは物事を理解すること。理解せずにただ闇雲に暗記しようとしても脳は拒否するだけです。理解して整理することで「エピソード記憶」として頭の中にインプットされるのです。だから是非、頭の中を整理整頓してクリアな状態を保ちましょう。

また、試験対策では教科書を読むよりも問題を解いたほうが効率的です。人間の脳は実践的に頭を使ったほうが何倍も記憶しやすくなるからです。試験対策の方法も出題傾向を徹底的に把握して未来志向で解いていくと良いでしょう。

これからの時代、情報の価値はどんどん下がっていきます。その代わり重要度を増すのが個人の体験や感想、気付きです。それほどまでに大事な個人の体験、感想も記録しておかないと記憶からは消え去ってしまいます。

是非、貴重な経験、体験、アイデアは記録していきましょう。そしてAI時代に相応しい唯一無二の存在となりましょう。

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