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不屈の男

自称プロ草野球選手である相方のK氏は、元プロ野球選手・古田氏をライバル認定している。
K氏と古田選手は同年代のキャッチャーだからだ。
K氏によると、「自分の身長が2mあったら、古田選手に負けなかった」のだそうだ。
 
そんなことを言えば、私だって身長が2mあったら全日本女子バレーボールチームで活躍していたかもしれない。
私の場合は156cmの身長を受け入れ、全日本入りをあきらめてしまった。
でも、K氏は違う。
せっせと草野球に励んでいるのは、「打倒! 古田選手」の思いを失っていないからだ。

対外的には「趣味で草野球を嗜んでおります」なんて風を装っているが、おそらく、「頑張っている姿を人には見せたくない」という昭和の男のプライドがそうさせるのだ。
だれも見ていないところでは、手に血豆をつくりながら素振りをしたり、
大リーグボール養成ギプスをつけたまま仕事をしたり、自分でノックしたボールを自分でキャッチする猛練習を繰り返したりしているはずだ。
きっとそうだ。
 
5~6年前、K氏が誕生日に花を贈ってくれた。

素直な感想をお願いします。

きれいだけれど、「ステージ上の演歌歌手に手渡す花」のような派手さにK氏自身も違和感を覚えたようだ。
花束の入った特大紙袋を手渡しつつ「ブログネタにしていいよ」とつぶやいていた。
もちろん、私はネタにした。 

このときの敗因は、たまたま有名な劇場近くの花屋さんで買ってしまったことと、私の年齢を正直に伝えてしまったことだ。
花屋さんはおそらく、「コーラスの発表会に参加する有閑マダム」をイメージして花束を作ったのだろう。

この経験で、「花を買う」という行為はトラウマになっただろうと思っていたが、K氏は不屈の男だった。
1年間熟考を重ねた上で、再チャレンジしたのだ。
失敗を踏まえて、今回は近所の花屋さんに行き、「20代の女性に贈る」と言ったらしい。
その結果がコレだ。

再度、感想をお願いします。

少なくとも、色合いは大幅に若々しくなっている。
この年のK氏は、若干の進歩を感じつつ、
なぜ花束が巨大化してしまうのか?という新たな課題にも直面していたようだ。
 
課題の解決法は、実は簡単。予算を下げればいいのだ。
花屋さん経験が浅いK氏は、花の値段の見積もりを誤っている。
高すぎる値段設定で花屋さんに「おまかせ」にしてしまうため、
やたらと豪華な花が使われたり、花の種類や本数が増えすぎたりしてしまうのだ。
価格設定を半分にすれば、サイズ・雰囲気ともにほどよい花束になるはずだ。
 
……と思ったけれど、もちろん口には出さなかった。
年に一度ぐらい、笑えるほどリッチな花をもらうのも悪くないからだ。
 
なーんてことから数年。
K氏は「花束チャレンジ」をあきらめたのだと思っていたのだが……。
野球部と草野球チームで心身を鍛錬してきたK氏は、私の想像を超える不屈の魂をもっていた。
そして、ついにやった!

やればできる!

私が何度も人に贈ってきて、一度ぐらい自分がもらいたいと思っていたおしゃれフラワーショップのものだ。

K氏、ありがとう。
おそらくこの数年、あなたは人知れず努力を続けてきたのでしょう。
血の汗を流し、涙も拭かずに、お花のセンス磨きに打ち込んできたのですね。
あなたは私に、人間はいつでも、いつまでも成長し続けられることを教えてくれました。
あなたこそ、尊敬に値する不屈の男です。
 
まあ、このぐらい言っておけば、来年もこのシリーズの花を贈ってくれるだろう。

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