knowledge is king

学生の頃、おしゃれをあさっての方向に勘違いしていた俺は「有名ストリートブランドの服を着てさえいればオシャレ」というファッション初心者丸出しの決めつけで服を買っていた。

Stussy、No.9、X-Large、ape…

デニムはエビス…(後ろポケットにカモメがいるやつ)

思い出すと足バタ案件なのだが、本当にそう思っていた。

それらのブランドは今でもカッコいいと思うし、うまく着こなしている人を見かけると「おおー」となる。しかし当時の俺は着合わせも何も考えず、ただカッコいいTシャツ、パーカー、ジャケットなどを買い漁っていた。

学生にとっては安くないそれらのアイテムに囲まれた日々。それを着るだけでオシャレになれると信じていた俺にとってそれらは、戦隊ヒーローのスーツや仮面ライダーの変身ベルトの様なものだったのかもしれない。

さて、ここでタイトル回収。

俺が買った一枚のTシャツにデカデカと印字されていた言葉。

「knowledge is king」

「知識は王である」という意味の言葉である。知識を持っていることは重要であり、何か行動を起こす時にはその事象の原因や仕組みを理解して行う方が絶対に良い、という、イギリスだかフランスだかの哲学者の「知識は力なり」をもじったのではないかと推測される。

ファッション知識を持っていない勘違いオシャレ野郎の俺がこの言葉のTシャツを着ていたと言うのも、何とも皮肉な話だ。

ちなみに現在も赤いパーカーや柄の入ったシャツを着る事はあるが、全体のバランスを考えて他のアイテムを地味にしている。インナーは黒、パンツはネイビー、とか。

「勘違いオシャレ野郎」から「シンプルにちょいダサ野郎」くらいにはクラスチェンジ出来たと思う。

バーチャル関連のブログになぜこんな長ーい前置きをしたかと言うと、バーチャル業界においても「知識は王であり、力」を実感しているからに他ならない。

先日「素人の趣味とはいえ配信活動してるんだから、機材の一つでも買ってみようかね」と短絡的に思い至り、楽器屋へ向かった。

上辺だけの形から入るという愚行、ファッションでの失敗からの教訓がまるで活かされていない。

安○先生が俺を見たら「まるで成長していない…!」と言われるかもしれない。

楽器屋へ到着、ありました、オーディオインターフェースやらコンデンサーマイクやら。

ネット原始人の俺は、高い買い物をする時にネットショッピングを利用するのをためらってしまう。なので、目で見て店員さんから話を聞いて買いたいのだ。

店員「どういった用途で?」

俺「配信です」

店員「あ、なるほど。それでしたらこちらですねー」

ここで思った。この店員さん、慣れている…!ギターやアンプが立ち並ぶ楽器屋さんで「配信」という単語は浮くかも…「はい?」と聞き返されるかも…という俺の不安は杞憂だった。

一億総クリエーター時代、収益化ライバーだけでも13000人いるこの令和の時代、楽器屋に配信機材を求めて入店するお客さんなど珍しくもないのかも知れない。

その店員さんは優しく頭のいい方で、少し会話しただけで俺の機械や配信についての知識がゼロということに気付き、専門用語をなるべく使わずに丁寧に説明してくれた。

やはり勧められたのはYAMAHAのAG03。まぁ、配信界隈においてのAG03といったら、カレーはハウス、ライブのトリがサンドイッチマン、1番ライト・イチローくらいの信頼感があるものだ。

それを軸に、諸々マイクやら専用部品やらの説明をされているうちに、ふと不安になった。

(俺の配信に、こういう機材必要なのかなぁ…)

元々にして、バーチャル界隈の事など何も知らずにREALITYをインストールし「スマホひとつで貴方もVライバー」という恩恵を受けに受けまくった情報弱者、それが俺だ。

歌い手や声優などを目指すわけでもなし。

事務所所属の公式バーチャルライバー…はたしかに憧れはあるが、今の配信内容がマジョリティに刺さるとも思えない。

PCも骨董品スペック、iPhoneも8、回線はWi-Fiルーター…

機材を揃えるにしても先に用意しなければいけないものが山ほどある。

それに、店員さんの説明を半分くらいしか理解出来てない俺がこの機材を買ったところで、上手くこの子達を活かしきれるのか…

と、グルグル考えて、結局買わずに帰った。

30分ほど丁寧に説明を受けた後「ちょっと考えてまた来ます」と言った俺に対し、店員さんは苦笑していた。

本当にすみませんでした…


配信というものを初めて9ヶ月以上。

話し方や話の内容などの「人間」の部分は営業マンをしていたから少しは持論を語れるが、動画や配信界隈の歴史、現在のスタンダード、今売れているコンテンツなど、ほぼまるで知らない。

好きな配信者が歌っていた「少女レイ」を2020年の最新ナンバーだと勘違いしていたレベルの情弱なのだ。

何かアクションを起こすにしても、俺には知識が足りない。

知識を得て、自分に必要なものを確認してから、機材などを買う様にしよう。

ファッションも配信機材も配信スタイルも、全てに共通して言える事がある。

「それが売れているから、有名だから」

という認識で購入や実行に踏み切るのは危険だ。

ファッションも配信も、まずは「自分」という存在を客観視し「自分」が最も映えるもの、キャラクターが際立つものを選ぶのが理想だ。

例えば、賑やかで明るい配信が好きで、声のでかい俺には「囁きASMR」などは不向きだと思う。自虐ではなく、タイプの違いと認識している。

そうなると、バイノーラルマイクは今の俺にとってはあまり必要じゃないアイテムと言える。

このように、まずは自分を省み、そこを起点として世間の流行とか需要とかを掴んで、自分に合ったものをチョイスするのがいいのかな、と思った次第だ。

ただし、形から入った方がモチベが上がるのは間違い無いと思うので、機材をパーフェクトに揃えてからさあ配信!というスタイルの方はそれはそれで素晴らしいと思う。

やり方は人それぞれで、ただ俺には基礎知識があまりに足りなさすぎるだけの話だ。

これから野球を始めるのに「グローブって、ボクシングのやつでも大丈夫そうですか?」と質問するようなレベルで知識がない。

何事も、まずはお勉強だね。

ちなみに男性ライバーのヤンデレボイスが女性ファンに流行っているらしいのだが、自分がやったらブロックされるんじゃないかと震えている。

機材の知識よりも界隈の理解よりも、自分という存在がどう見られてて、どこが長所でどこが短所かを知ることの方がずっと難しい。

何しろ、それを考え始めたら5分で自己嫌悪の渦に飲み込まれるんだから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?