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2年間米国株投資を経験して思うこと

始めて米国株式を買ったのは2020年1月初頭。

当時仕事で偶々知った自動車業界の熱さ、特にEVのポテンシャルに惹かれてTSLAを買った日から、2年が過ぎました。

この2年間は非常に有益でした。コロナの大暴落も、その後の急回復も、長期金利高騰によるバリュエーションの圧縮も、色々なことを経験してきました。2021年1月にはTwitterも始め、米国株の情報を交換し語れる仲間も多くできたことは非常に嬉しかったです。

メンタルをえぐられるような思いもしたことがありましたが、それでも数十年に1度あるかないかの絶好の機会に恵まれたり、スタグフレーション間際の荒れている市場環境を身をもって経験したり、その中で多くの人と繋がれたりしたことは幸いだったと思います。

それらの経験を積んでいくにつれて、株式投資に対して抱いている考え方は大きく変わっていきました。まだまだ稚拙な点も多いですが、株式投資を始めたばかりの頃と比べれば幾分マシにはなっているはずです。ただ、文字にしてまとめたことがないため、一貫性があるのかは怪しいところもあります。

そこで今回の記事では、普段自分が考えていることを整理も兼ねてつらつらと書きます。当たり前のことしか書かないので面白くないと思います。尚、投資手法、投資哲学、個別銘柄や市場分析等々の詳細は専門の方々に任せます。


1.株式投資の目的は「資産の拡大」

当たり前のことではありますが、ふとしたときに見落としてしまいがちになります。

特に、小型株やグロース株が強かった2020-2021年まで、この目的を忘れたまま銘柄を購入、ホールドし、必ず成長すると信じて結局資産を大きく減らしてしまうことが多々ありました。

どんなに有望と思われる銘柄であっても、不利な見通しがあると察知したならば直ぐに逃げるべきだったと反省しています。右肩上がりと信じてホールドし続けて資産を築き上げることが出来ればそれは喜ばしいことだし感動的ではありますが、将来の株価は誰も分かりません

IntelやCiscoの様な著名な大手企業でも、右肩下がりの期間が長く最高値を更新できずにいます。この2つはコロナバブルで最高値に近づいたからまだ良い方だと思いますが、十年間単位で株価が低迷したままの銘柄は枚挙に暇がありません。

そのため、私には未来永劫勢いを保てる強い銘柄を見つけられる自身はないし、見つけられたとしても10年単位の期間をずっとホールドし続ける勇気はないです。出来るとすれば、S&P500や全世界株式のインデックスファンドの積立だけでしょう。


2.市場環境を鑑みて投資対象、投資方法を取捨選択する

株式投資では「大手企業との協業が発表された」「世界で初めて発見/達成/商品化した」「注目を集めるような決算を発表した」等の情報を基に特定の銘柄の株価が急騰/急落する、というイメージはないでしょうか。実際、株式投資を始めた当初、私はそう思っていました。

しかし、実際に株式投資をやってみた所、その様な情報で株価が上下することは確かにある一方、予想とは逆に動いたり、もしくは全く反応しないことの方が体感的には多いことに気が付きました。

それよりも、経済動向や国際情勢によって特定のセクターが売買され、株価が大きく動くことの方が多く、むしろその時の方が短期~中期的に見て値動きが激しいこともありました

またオニールの代表的な投資基準であるCAN-SLIMにおいても、一番最後のM(Market)の方向性を知ることが重要であり、他の要素が良好でもMが下向きならば損をする確率は高いとされています。

これらのことから、株価推移はその銘柄事態の事業動向よりも市場環境の要因が強く影響するということを学びました。特に、昨今の株式市場は十年単位で好調だった故に、今後その分の反落が来る可能性は十分にあると考えています。

2020年3月以降、FRBによる金融緩和によりマネーサプライが莫大であったことから米国の各種株式指数はかなり押し上げられています。超長期のチャートを見ると株式指数もM2もかなり高水準にあることがわかります。

これまでは市場に大量の資金が出回り、大手から超小型の銘柄まで幅広くその恩恵を受けることが出来ました。つまり、2020年、2021年はどのような銘柄でも保有していれば上がるというかなり特殊な相場だったとも言えます。

ですが、今はFRBやECBによる資金回収が始まっています。高止まりしているインフレを抑制するため、昨年からテーパリングが始まり、今後は利上げやQTといった更なる金融政策が実施されようとしています。これにより、バリュエーションが高く、決算の数値が宜しくない銘柄は大幅に株価を落としています。

邪推なのかもしれませんが、ITバブル崩壊のときこのような感じだったのではないでしょうか。社名に.comが付けば株価が高騰するというレベルで株価は高騰し、誰しもが楽観的な見通しでポートフォリオをハイテク系へ極端に寄せていましたが、割高過ぎるバリュエーション、FRBによる金利の引き上げ、同時多発テロ、大手IT企業への規制という多数の要因が重なり、数年に亘りNASDAQ総合指数は最高値から78%も下落しました。個別銘柄を見れば株価が数十分の一、数百分の一まで落としたり、株式が紙屑と化したりしたものも多々あります。

【3 Lessons for Investors From the Tech Bubble - Kiplinger, NASDAQ】
https://www.nasdaq.com/articles/3-lessons-investors-tech-bubble-2015-02-11

この他にも、80年代前半にスタグフレーション中の金融引締を強行して引き起こされたボルカーショックも起きる可能性が否めないと思います。この時、FRB議長のボルカーによる3年間に及ぶ金融引締政策が行われ、インフレを止めることは出来た一方、GDPは3%減少、産業稼働率は60%に低下、失業率は11%まで上昇と、相当なダメージを受けることになりました。

これらの怖いところは、数年間に亘ってじわりじわりと下げていって、回復にも相当な期間を要した点です。数日、数週間の単位で下落するのであれば反発も期待できますが、長期でのホールド一択であった場合、インデックスファンドですら大幅に資産を減らすことになりかねません。加えて、配当の再投資による複利を期待したとしても、その資産の回復まで下落期間よりも更に長い期間がかかるか、そもそも回復しない可能性もあります。

そして、こういった市場環境は米国10年債利回りを始めとする国債の利回り株式のバリュエーション(割高or割安)に反映されます。バリュエーションを表す指標は多数ありますが、代表的なものは株価収益率(PER)です。この値はセクター毎に異なることに加え、国債の利回りと対照的な値動きをします。

PERを用いると、株価は以下の数式により求められます。

株価=EPS × PER
EPS: 一株当たり純利益 PER: 株価収益率 

上記の式において利益(EPS)が一定と仮定した場合、PERと株価は比例関係になります。

国債は雇用統計、CPI、PMI等の経済指標、FOMCでの議論内容や決定事項を鑑みて売買され、その利回りが日々変動します。この利回りの動く幅により各株式のPERも変動し、最終的にはその銘柄の適切なPERへと収斂します。そして、株価推移は各部式のセクター別ヒートマップに落とし込まれ、またS&P500やNASDAQ, DOWといった代表的な株式指標に反映されます。

これらの情報を全て鑑みた上で、その時々において投資対象、投資手法を選ぶことがベターでしょう。ただ、正直に言えばどのタイミングでセクターローテーションが発生するかとか、何が旬な投資対象かなどは全く理解できませんし分かりません。その時その時の経済指標、国際情勢、各セクター毎のパフォーマンスから総合的に判断するしかないと思います。

ただ、今の相場について言うならば、

① サプライチェーンの混乱&ウクライナ危機による各原材料のインフレ
② 生産性を伴わない賃金の高騰
③ ①②を抑えるために半ば強行的に行われる金融引締
④ ①②③によるスタグフレーションの懸念

という点から、不景気になっても需要が減らず、かつインフレにも強いと言われる銘柄が良いと推測されます

大きく入るとしたら、エネルギー、穀物、医薬品、不動産、通信、公共事業、防衛あたりが無難でしょう。急激な高騰ではなく、じわじわと株価を押し上げていくことを期待している人にはお勧めです。

一方、急騰を狙いたいのであれば、暴落した小型銘柄の底を狙うというのも手です。小型のグロース銘柄で下落中に10~20%程度跳ねるものもあるため、当たればリターンは大きいです。私の場合、DWACで短期的に狙いに行こうとは考えていますが、ギャンブル枠であることは言うまでもありません。


3.如何なる場合でも個別銘柄の決算と財務状況は確認する

2でPERの話を取り上げましたが、これはEPS、言い換えれば企業が生み出す利益が一定であることを仮定した場合の話です。

PERが一定の場合、利益が増減すればその分株価も動きます。売上は拡大していても赤字が続いているグロース銘柄であれば、将来のEPSを織り込みます。そのため、どんなにPERが圧縮されようとも、将来の成長(利益の拡大)が見込めるのであれば、その分株価に反映されます。

では、この場合の「利益の拡大」はどのように確認できるのか?それを確認できるのは決算資料しかありません。決算資料は売上や利益が具体的にどの程度出ているかを表している一時資料であり、他にも事業の継続・発展に問題がないBS/CFか、資産を有効活用しているか、発行済みの株式数が異常に増えていないか等も確認できる優れものです。

私はTwitterで度々決算や財務諸表について言及してますが、これらについて批判の声を見ることも多々あります。

・財務諸表は将来性や事業動向を勘案していない
・公認会計士は株式投資のプロではない
・監査法人でも監査しきれていないはずだ
・立ち上がったばかりの企業に完璧な財務状況を求めること自体が間違いだ

これらの意見を否定するつもりはありませんが、これらの意見に共通して言えることは決算資料から得るべき情報から目を逸らしているという点です。

将来性や事業動向を知りたいのであればIR、各種ニュース記事、第三者の市場分析、事業内容の詳細を精査すべきと考えます。一方、本当にその事業の実績や株主にとってリスクが数字に表れていないかはその企業がリリースする四半期毎の決算とSECへの提出資料でしか確認できません

テクニカル分析一本で儲けようとしている場合は例外ですが、決算資料には第三者の分析や報道の一次ソースも含まれている場合もあるため、銘柄を選ぶ際には目を通しておくに越したことはないでしょう。

ちなみに、テクニカル的な視点に重きを置くミネルヴィニの投資手法でも銘柄選定時に決算や財務状況を確認するステップがあります


4.必ず右肩上がりの銘柄を買う

もし仮に、全くの投資の素人に銘柄の選定方法を簡単に教えるとしたら、「誰もが知っている有名な企業か、特定の市場で上位にいる企業で、週足のチャートがじわじわと上がっているものが良い」と言うでしょう。

チャートは市場に出回る情報と投資家の心理が反映されて出来上がる図です。単純に良い銘柄であれば人の買いが集まり、売られることも少ない。そして、その逆もまた真なり。誤解を恐れず言うのであれば、銘柄の良し悪しはチャートだけでもある程度は判断できると思います

このような話になったとき「その銘柄は上がり切っていて割高である」という意見が良く出てきます。ですが、むしろそのような時こそ買い時であることも多く、右肩上がりの銘柄を買った方が利益が出やすいです。言い換えれば、中期的なイナゴがベターな手段なのです。

ちなみに、これはミネルヴィニやオニールの投資法においても同じことが言及されています。ミネルヴィニもオニールも参照する情報の範囲がそれぞれ異なりますが、両者とも「割高な銘柄を買って更に割高になったときに売る」「極端に割安であったり底を打ち続けたりしている銘柄は避ける」という点では共通しています。


5.長期投資は結果論である

GAFAMのような優良銘柄を例に挙げ、将来の成長が見込める企業を長期で保有し続けること、いわば長期投資が最も優れていると言われることがあります。

この「長期投資」という姿勢に対して、人それぞれの解釈の仕方はあるかもしれませんが、私はこの記事で最初に挙げた1を忘れず2~4を愚直に行い、結果的に1年以上持ち続けたものだけが長期投資になり得ると考えています。

かつて、長期で保有すれば必ず利益が出ると私も考えていましたが、それはこの2年足らずの間だけ有効であった手段でした。その時の市場環境によっては、利確、損切といった手段が適切なケースもあります。私の場合、適度に売買をするようになってから、ホールドし続けるよりもリスクを避けやすく心理的な負担も少ないと感じています。

株式投資の儲けには再現性がありません。長期で儲かったのは、この10年間の相場が良かったからで、その先は誰もわかりません。如何なる場面でも勝てる画一的な手法は存在せず、法に触れずに利益を上げれば勝ち、という総合格闘技の様なものです。だからこそ、常にアンテナを張り、投資対象と手段を変え、利益を出す&適度に逃げるということを忘れてはいけないなと思います。


6.最も忘れてはいけないこと

色々書いてきましたが、最後に、何なる時も、自分は株式のことが分からないカモであることは忘れないようにしたいです。

私は単なる一介の事務員です。専業として株式投資も出来ないし、投資の最適解を得るための高尚なアルゴリズムを創り出して自動売買も出来ない。加えて、勉強できる時間も限られてます。

だからこそ、この先も過度なリスクを避ける投資を実践し、投資の経験が豊富な方々の意見には素直に耳を傾けていこうと思います。


■参考文献


以上


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