なぜ逆像法がうまくいくのか
与えられた関数の最大値や最小値を求める方法のひとつに逆像法があります。本稿では、どうして逆像法で最大値や最小値を求めることができるのかを解説します。
自然数$${n}$$に対して、$${\Omega \subset \mathbb{R}^{n}}$$を適当な領域とし、$${f: \Omega \to \mathbb{R}}$$は最大値$${M}$$をもつ関数とします。
逆像法とは要するに$${M}$$を求める方法です。
逆像法を説明するには、逆像の説明をする必要があります。
実数$${k}$$に対して、$${k}$$の$${f}$$による逆像とは
$$
f^{-1}(\{k\})=\{ x \in \mathbb{R} | f(x)=k\}
$$
のことです。このとき、
$$
S = \sup \{ k \in \mathbb{R} | f^{-1}(\{k\})\neq \emptyset\}
$$
とします。イメージとしては、$${S}$$は逆像が空集合にならないような$${k}$$の中で最大のものです。
$${M}$$のかわりに$${S}$$を求める方法を、逆像法といいます。
もちろん$${M=S}$$が成り立つので、結果的に、逆像法で最大値を求めることができます。本稿の残りの部分で$${M=S}$$であることを証明しましょう。
$${f^{-1}(\{M\})\neq \emptyset}$$なので、$${M \leq S}$$が成り立ちます。矛盾を導くために$${M< S}$$と仮定します。$${\epsilon=(S-M)/2}$$としましょう。このとき、$${S}$$の定義より、ある実数$${N}$$で
$$
S -\epsilon \leq N < S
$$
かつ、$${f^{-1}(\{N\})\neq \emptyset}$$を満たすものが存在します。したがって、ある$${x_* \in \Omega}$$に対して
$$
f(x_*)=N>S-\epsilon >M
$$
が成り立ちます。しかし、これは$${M}$$が最大値であることに矛盾します。したがって、$${M=S}$$が成り立ちます。
逆像法の使い方の例
$${\frac{8x+4}{x^2-2x+5}}$$の最大値を求めてみましょう。まず、
$$
f(x)=\frac{8x+4}{x^2-2x+5}
$$
としましょう。$${f(x)=k}$$とすると、式変形によって
$$
kx^2-2(k+4)x+5k-4=0
$$
が得られます。したがって、
$$
f^{-1}(\{k\})=\{ x\in\mathbb{R} | kx^2-2(k+4)x+5k-4=0 \}
$$
となります。これが空集合とならない条件は、$${kx^2-2(k+4)x+5k-4=0}$$が実数解を持つことです。
$${k=0}$$のとき$${-8x-4=0}$$より、この方程式は実数解を持ちます。したがって、$${S\geq 0}$$が成り立ちます。
$${k\neq 0}$$のとき、判別式を考えることで
$$
k^2-3k-4 \leq 0
$$
が得られます。この不等式を解くと$${-1 \leq k<0, 0< k \leq 4}$$となります。したがって、$${S=4}$$であることがわかります。