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カフェ4分33秒 ファンタジー編

「世界は一つで、みんなのものです。でも本当は一人一人の世界が無数にあって、それぞれが自分だけのものなんですよ」

 仮分数4分の33を帯分数にすると8と4分の1になる。秘密の路地33番地の嘉平の店で手に入れたゴーグルとヘッドホンを手に8番線と9番線の間から出る特別列車の瀟洒なコンパートメントに身を落ち着けた。珈琲を飲みながら紙の新聞と文庫本を読んでいると向かいの席の乗客が話しかけてきた。
「旅はやはり鉄道に限りますな。先日は年甲斐もなくキックボードだかスケボーだかに乗ってしまい玉突き事故でしたよハハハ」
「それは災難でしたな。実は私の母はいま玉突きに行っているのです。四輪車に私を置いておくのは心配だからこうして線路の旅を手配してくれたのですがねハハハ」
ガクン
「オヤ? 緊急停止ですか」
目と耳の他にも装着していた紙おむつに違和感を感じた。音声が4分33秒にわたって途切れた。
「運転士のゴーグル内で何かが発生したせいですな」

410文字

たらはかに様のお題に参加しています。

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