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カフェ4分33秒 ②

「私のお気に入りの曲をかけるよ? 静かに聴いてネ!」
弾む声がスピーカーから流れた。後に人気女子アナとなった放送部員千春の声だ。学食内はシーンとなる。
4分33秒後
「ジョン・ケージの4分33秒でした!」
昼休みのざわめきが蘇る。俺はその間必死で予習をしていた。短時間で半端な知識を頭に詰め込んだ。他の奴らは身動ぎもせずに彼女のお気に入りに耳を澄ましていた。人よりいい点を稼いでいい人生だったのかって? そうかも知れないし、そうじゃないかも知れない。でもお前は人が追いかける物を素直に追いかけて平凡で幸せそうに見えたよ。テストより文化祭とか体育祭とか。俺は少しばかり稼いで同じくらいふんだくられた。そして今は。音が途絶えた。
5分弱の間。
一人で語っていると時折音が聞こえなくなる。

人気のヘルパー千秋がカフェテリアに入ってきた。彼女が人気なのは入所者を差別したりしないからだ。例えばあの人現役時代を鼻にかけてるとか理屈っぽいなどと。

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たらはかに様のお題に参加しています。

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